小説 - 新潮社作品一覧

  • あのころなにしてた?
    3.4
    1巻1,430円 (税込)
    感染者数の増減に一喜一憂したりと深刻さと楽観視がくるくる入れ替わる心理状況は、まるで洗濯機のなかで洗浄モードと脱水モードが繰り返され、生地がすり減っていく洗濯物みたいだ――。コロナ禍による創作への思わぬ影響、家族との生活の変化、めまぐるしい世界の動きを、パンデミック収束への願いをこめながら綴った2020年の日記。
  • あのひとは蜘蛛を潰せない
    4.0
    ドラッグストア店長の梨枝は、28歳になる今も実家暮し。ある日、バイトの大学生と恋に落ち、ついに家を出た。が、母の「みっともない女になるな」という“正しさ”が呪縛のように付き纏(まと)う。突然消えたパート男性、鎮痛剤依存の女性客、ネットに縋る義姉、そして梨枝もまた、かわいそうな自分を抱え、それでも日々を生きていく。ひとの弱さもずるさも優しさも、余さず掬う長編小説。
  • あの日の僕らにさよなら
    3.5
    桜川衛と都築祥子。共に17歳。互いに好意を抱きつつも、一歩踏み出せずにいた。ある夜、家族不在の桜川家を訪ねた祥子は偶然、衛の日記を目にする。綴られる愛情の重さにたじろいだ祥子。何も告げず逃げ帰り、その後一方的に衛を避け続け二人の関係は自然消滅に……。あれから11年。再会を果たした二人が出した答えとは──。交錯する運命を描く恋愛小説。『冥王星パーティ』改題。
  • あの夕陽
    -
    1巻385円 (税込)
    少年時代、敗戦によって夢が破れた経験をもち、それが元で人生の総てに投げやりになってしまった私。成人して新聞記者になり、なんでも唯々諾々と言いなりになる妻と坦々とした日々を過ごしている。私はソウル特派員時代に知り合った李という女性のことが忘れられない。虚無感を夕陽が照らすようにくっきりと描き出した秀逸な短編。芥川賞受賞作品。ほかに『野の果て』『無人地帯』『対岸』『遠い陸橋』を収録。
  • あぶない叔父さん(新潮文庫)
    3.5
    寺の離れで「なんでも屋」を営む俺の叔父さん。家族には疎まれているが、高校生の俺は、そんな叔父さんが大好きだった。鬱々とした霧に覆われた町で、次々と発生する奇妙な殺人。事件の謎を持ちかけると、優しい叔父さんは、鮮やかな推理で真相を解き明かしてくれる――。精緻な論理と伏線の裏に秘された、あまりにも予想外な「犯人」に驚愕する。ミステリ史上に妖しく光り輝く圧倒的傑作。
  • アブラクサスの祭
    3.4
    東北の小さな町の寺に勤める僧・浄念は、躁鬱に苦しみつつ薬と酒の力を借りて法要をこなす毎日。不惑間近となったいま、学生時代にのめり込んだバンドへの情熱が心を占める。やっと実現にこぎつけたライブのステージで、強烈な恍惚感とともに降りてきた啓示の正体は……。精神を病みロックに没入する僧が、祝祭の只中で感じた歓喜と安らぎ、心のひそやかな成長を描く芥川賞受賞第一作。

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  • アマノン国往還記
    3.6
    モノカミ教団が支配する世界から、幻の国アマノンに布教のため派遣された宣教師団。バリヤの突破に成功した唯一の宣教師Pを待っていたのは、一切の思想や観念を受け容れない女性国だった。男を排除し生殖は人工受精によって行われるこの国に〈男〉と〈女〉を復活させるべく、Pは「オッス革命」の遂行に奮闘するが……。究極の女性化社会で繰広げられる、性と宗教と革命の大冒険。
  • アミダサマ
    3.1
    幼子の名はミハル。産廃処理場に放置された冷蔵庫から発見された、物言わぬ美少女。彼女が寺に身を寄せるようになってから、集落には凶事が発生し、邪気に蝕まれていく。猫の死。そして愛する母の死。冥界に旅立つ者を引き止めるため、ミハルは祈る。「アミダサマ!」――。その夜、愛し愛された者が少女に導かれ、交錯する。恐怖と感動が一度に押し寄せる、ホラーサスペンスの傑作。

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  • 雨

    -
    「行方不明の旦那様」にうり二つと、羽前国平畠藩の紅花問屋の当主にまつり上げられた金物拾いの浮浪者徳。莫大な財産と美貌の新妻を目のあたりにして、本物の当主になりおおすべく、色と欲との二股かけた必死のお芝居の始まり。東北弁もマスターし、邪魔者は消して、大願成就と思いきや……。根なし草の主人公を襲うどんでん返しの運命。
  • 雨のち晴れ、ところにより虹
    4.5
    人を好きになったら、相手にも同じように想い返してほしい。それって、奇跡を望むことなのかな? 小さなことがきっかけですれ違った夫と妻。母の恋人の存在をうたがう女子高生。思春期の頃にひどく傷つけてしまった女の子の記憶に悩む、余命いくばくもない男。由比ヶ浜、鶴岡八幡宮、江ノ電、逗子マリーナ……潮騒の町を舞台に、離れた心と心が再びつながる瞬間を描く、湘南・六つの物語。
  • アメリカ最後の実験(新潮文庫)
    3.8
    音楽家の父を探すため、アメリカの難関音楽学校を受験した脩。癖のある受験生や型破りな試験に対峙する中、会場で「アメリカ最初の実験」と謎のメッセージが残された殺人事件が発生。やがて第二、第三と全米へ連鎖していくその事件に巻き込まれた脩は、かつて父と仲間が音楽によって果たそうとした夢こそが事件に深く関わっていたと知る。気鋭の作家が描く全く新しい音楽小説、ここに誕生!(解説・吉田隆一)
  • アメリカひじき・火垂るの墓
    4.0
    昭和20年9月21日、神戸・三宮駅構内で浮浪児の清太が死んだ。シラミだらけの腹巻きの中にあったドロップの缶。その缶を駅員が暗がりに投げると、栄養失調で死んだ4歳の妹、節子の白い骨がころげ、蛍があわただしく飛び交った……戦後どれだけの時間が過ぎようと、読む度に胸が締め付けられる永遠の名作『火垂るの墓』をはじめ全6編を収載。

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  • アメリカン・スクール
    4.2
    占領下の時代に、アメリカ人の学校を参観しに出かけた日本の中学校教員の、貧しく、それゆえにも滑稽な姿を描いて、芥川賞を受賞した「アメリカン・スクール」。ほかに、現代の複雑な世相を、批評精神に貫かれた知的感覚で捉え、人間ドラマを深味のあるユーモアと鋭く深く屈折した諷刺で描いた小島文学初期の傑作「汽車の中」「燕京大学部隊」「小銃」「星」「微笑」「馬」「鬼」を収める。
  • あやまちは夜にしか起こらないから(新潮文庫)
    4.8
    1巻605円 (税込)
    私の二番目の恋人(セカンダリー)になってください――自由な校風の私立学園の新任教師・佐竹は妖艶な音楽教師・万輝と一夜の関係を持つが、彼女の一言で運命が狂っていく。癒し系の家庭科教師・雪乃の性戯を愉しみながらも、万輝が忘れられない佐竹。やがてその学園にはポリアモリーという性愛が横行することが判明。その渦に巻き込まれていくが、快楽の極みは悲劇の幕開けだった。官能ロマンの衝撃作!
  • 嵐が丘
    4.2
    寒風吹きすさぶヨークシャーにそびえる〈嵐が丘〉の屋敷。その主人に拾われたヒースクリフは、屋敷の娘キャサリンに焦がれながら、若主人の虐待を耐え忍んできた。そんな彼にもたらされたキャサリンの結婚話。絶望に打ちひしがれて屋敷を去ったヒースクリフは、やがて莫大な富を得、復讐に燃えて戻ってきた……。一世紀半にわたって世界の女性を虜にした恋愛小説の“新世紀決定版”。

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  • 嵐吹く時も(新潮文庫)
    4.5
    1巻1,045円 (税込)
    天売・焼尻島を眼前に望む北海道苫幌村唯一の商店は、中津順平が行商から興した店だった。妻のふじ乃は美貌と陽気な性格で店を側面から支え、娘の志津代は賢明に成長しつつあった。順平の留守のある日の深更、志津代は、庭から逃げる男を見た。月を経てふじ乃は男児を出産。この時から中津家の人々の人生は、暗転しはじめる。三浦文学の源流、二組の祖父母をモデルに人生の輝きと儚さを描く。(解説・難波真実 ※久保田暁一氏の解説は収録しておりません。)
  • アラスカ物語
    4.4
    明治元年、宮城県石巻町に生れた安田恭輔は15歳で両親を失う。外国航路の見習船員となり、やがてアラスカのポイントバローに留まった彼はエスキモーの女性と結婚してアラスカ社会に融けこんでいく。食糧不足や疫病の流行で滅亡に瀕したエスキモーの一族を救出して、アラスカのモーゼと仰がれ、90歳で生涯を閉じるまで日本に帰ることのなかったフランク安田の波瀾の生涯を描く。

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  • アラビアン・ナイト 艶笑傑作選
    -
    原名はアラビア語でアルフ・ライラ・ワ・ライラ、千夜一夜物語と呼ばれる。ペルシアからアラビア回教圏に広まりながら、次第に数を増していった多種多様な民間説話集である。本篇は原典に忠実なマルドリュス版により、本民話集中の花ともいうべきエキゾティックな代表的恋愛物語五篇を選び、天馬空をゆく機知とともにここにあふれる官能的な肉感美を玩味していただきたいと願う。
  • 蟻地獄(新潮文庫)
    3.8
    二村孝次郎(にむらこうじろう)は、親友の修平(しゅうへい)と共に一攫千金を目論み、裏カジノに乗り込む。大金を手に入れたかと思いきや、イカサマは見破られていた。5日後までに300万円を差し出さなければ、人質にとられた修平は殺される。金をつくるため、孝次郎が向かった先は、青木ケ原樹海。19歳の青年は奔る! 地獄から生還するために――。圧倒的筆力で読む者を欺く、超弩級ノンストップ・エンタテインメント!(解説・道尾秀介)
  • 蟻の棲み家(新潮文庫)
    3.5
    東京都中野区で、若い女性の遺体が相次いで発見された。二人とも射殺だった。フリーの事件記者の木部美智子は、かねてから追っていた企業恐喝事件と、この連続殺人事件の間に意外なつながりがあることに気がつく。やがて、第三の殺人を予告する脅迫状が届き、事件は大きく動き出す……。貧困の連鎖と崩壊した家族、目をそむけたくなる社会の暗部を、周到な仕掛けでえぐり出す傑作ノワール。(解説・大森望)
  • ある一日
    3.9
    「予定日まで来たいうのは、お祝い事や」。にぎやかな錦市場のアーケードを、慎二と園子は、お祝いの夕食にと、はもを探して歩いた。五年前には、五ヶ月でお腹の赤ちゃんの心音が聞こえなくなったことがある。今回は、十ヶ月をかけて隆起する火山のようにふくらんでいった園子の腹。慎二と迎えたその瞬間、園子に大波が打ち寄せた――。新たな「いのち」の誕生。その奇蹟を描く物語。
  • ある偽作家の生涯
    -
    1巻451円 (税込)
    ひとりの天才日本画家と知り合って相手の重さに打ちひしがれ、自らを磨滅した凡庸な画家の悲劇を描いた表題作。ほかに、千古の昔に渡来して現代の荒廃の中で天日を浴びた宝物の神秘的な流離の跡をしのぶ『玉碗記』『漆胡樽』、高野山の破戒僧の物語『澄賢房覚え書』、信玄の娘松姫の波瀾の生涯『信松尼記』、長い在唐のために日本語を忘れて帰国した留学僧の悲しみ『僧行賀の涙』。
  • 或る「小倉日記」伝―傑作短編集(一)―
    4.0
    身体が不自由で孤独な一青年が、小倉在住期の鴎外を追究する芥川賞受賞作『或る「小倉日記」伝』。旧石器時代の人骨を発見し、その研究に生涯をかけた中学教師が、業績を横取りされる『石の骨』。功なり名とげた大学教授が悪女にひっかかり学界から顛落する『笛壺』。他に9篇を収める。

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  • ある倒産
    -
    定年を二年後にひかえた調査部長原口は、下請会社へ専務として出向を命じられる。突然の辞令にとまどいながらもはりきる原口。だが、その会社はすでに再建不能の状態であった。倒産の裏面で展開される男たちの息づまる格闘を描いた表題作。ほかに、『絶叫の街』『魔の同伴』『楽天地へ』など、複雑なビジネスの世界に生きる人間の哀歓をリアルに描き出した作品八編を収録する。

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  • ある奴隷少女に起こった出来事(新潮文庫)
    4.2
    好色な医師フリントの奴隷となった美少女、リンダ。卑劣な虐待に苦しむ彼女は決意した。自由を掴むため、他の白人男性の子を身籠ることを――。奴隷制の真実を知的な文章で綴った本書は、小説と誤認され一度は忘れ去られる。しかし126年後、実話と証明されるやいなや米国でベストセラーに。人間の残虐性に不屈の精神で抗い続け、現代を遥かに凌ぐ〈格差〉の闇を打ち破った究極の魂の物語。
  • アルファ・ケンタウリからの客(新潮文庫)
    -
    極悪非道の養父からやっとのことで逃げ出した佳代は、それまでの不幸を帳消しにしてくれるようなすばらしい恋人とめぐりあった。作曲家を志し、今まさに才能が認められようとしている青年・悠介。夢に見た幸せまではあと一歩だ。けれどもその佳代を、はるか天空からじっと見つめ続ける知的生命体たちがいた……。広大な宇宙を背景に、甘く、優しく、暖かく描かれた、小さな愛の物語。
  • アルマジロの手―宇能鴻一郎傑作短編集―(新潮文庫)
    3.0
    彼は「手が……アルマジロの手が」というばかりだったのです――。不気味な緊張感を孕む怪奇な作品「アルマジロの手」、美しい姫君に恋をした狸の哀切「心中狸」、むさぼり喰らう快楽にとり憑かれた男の無上の幸福「月と鮟鱇男」の他、「海亀祭の夜」「蓮根ボーイ」「鰻池のナルシス」、そして甘美な爛熟世界に堕ちた男を描く傑作「魔楽」を収録。官能の深みと生の哀しみを短編に昇華させた七編。(解説・鵜飼哲夫)
  • アレス―天命探偵 Next Gear―(新潮文庫)
    3.6
    1巻737円 (税込)
    外相会談を狙うVXガス・テロを阻止せよ! いまだ昏睡状態が続く志乃の夢を可視化する〈クロノスシステム〉が次々と犠牲者を予知するなか、遂に想像を絶する未来が映し出された――。最悪の事態を回避するため、真田と黒野の最強バディが疾走する! だがそこに立ちはだかるのは、過激派の秘密結社〈愛国者〉、そして凶悪極まる白髪の闘神〈アレス〉。衝撃のアクション・エンタテインメント。
  • 荒地の家族
    3.6
    1巻1,870円 (税込)
    元の生活に戻りたいと人が言う時の「元」とはいつの時点か――。40歳の植木職人・坂井祐治は、あの災厄の二年後に妻を病気で喪い、仕事道具もさらわれ苦しい日々を過ごす。地元の友人も、くすぶった境遇には変わりない。誰もが何かを失い、元の生活には決して戻らない。仙台在住の書店員作家が描く、止むことのない渇きと痛み。
  • 暗号名は「金沢」―十津川警部「幻の歴史」に挑む―(新潮文庫)
    3.0
    太平洋戦争末期、連合国は、敗色濃い日本に降伏を迫るポツダム宣言を発表した。宣言を受け、日本政府中枢が、降伏か徹底抗戦かで真っ二つに割れる中、日本と中立国の間をしきりに飛び交う、謎の暗号「カナザワ」。この暗号の指し示すものはいったい何なのか? 敗戦から七十年の時を経て、太平洋戦争と現代日本を繋ぐ、恐るべき謀略に十津川警部が挑む、新機軸の長編歴史トラベルミステリー。
  • 暗殺
    3.4
    1巻1,815円 (税込)
    大学受験の朝、駅で射殺事件を目撃しながら通報を怠った麻紀。やがて親友の恋人として再び姿を現した犯人は職業的殺人者だった――。一方、事件を追う刑事のことみは現役大臣の秘書と交際するうち、大臣の特殊な性癖と周囲の不審な事件を知り、密かに調べを進める。殺人の構図と人間の暗部が読者を打ちのめす傑作長篇。
  • 暗殺者たち
    4.5
    1巻1,408円 (税込)
    安重根による伊藤博文暗殺。大逆事件で処刑された幸徳秋水、管野須賀子、大石誠之助。生きのびた荒畑寒村……。日本近代史のなかの人々が、いまそこに生きている人として語りなおされ、歴史の記述にはおさまらないいきいきとしたポルトレとして浮かびあがってくる。小説ならではの達成として動乱の時代を語る画期的な長篇。
  • 晏子(一~四)合本版(新潮文庫)
    -
    強国晋を中心に大小いくつもの国が乱立した古代中国春秋期。気儘な君公に奸佞驕慢な高官たちが群れ従う斉の政情下、ただ一人晏弱のみは廟中にあっては毅然として礼を実践し、戦下においては稀代の智謀を揮った。緊迫する国際関係、宿敵晋との激突、血ぬられた政変……。度重なる苦境に晏弱はどう対処するのか。斉の存亡の危機を救った晏子父子の波瀾の生涯を描く歴史巨編。 ※当電子版は新潮文庫版『晏子』一~四巻をまとめた合本版です。
  • 安全のカード
    3.9
    1巻539円 (税込)
    休日に青年の部屋におとずれたセールスマン。その男がカバンからとりだしたのは、名刺くらいの大きさの金属製のカードだった。なんとこのカード、絶対的な安全を保障するという不思議なカードだった……。平凡に過ぎてゆく日々。何となくつまらない毎日。そんな時、ショートショートの扉を開いてみませんか。表題作をはじめ、悪夢とロマンの交錯する奇妙な味の16の物語を収録。
  • アンソーシャル ディスタンス(新潮文庫)
    3.6
    心を病んだ恋人との生活に耐えきれず、ストロングゼロに頼る女。年下彼氏の若さに当てられ、整形へ走る女。夫からの逃げ道だった、不倫相手に振り回される女。推しのライブ中止で心折れ、彼氏を心中に誘う女。恋人と会えない孤独な日々で、性欲や激辛欲が荒ぶる女――。絶望に溺れて掴んだものが間違っていたとしても、それは、今を生き抜くための希望だった。女性たちの疾走を描く鮮烈な五編。(解説・朝井リョウ)
  • アンタッチャブル―不可触領域―
    3.5
    1巻1,584円 (税込)
    「凡戦の帝王」と呼ばれた元プロボクサー。落魄した往年の人気俳優のマネージャー。二人が邂逅した時、その足元で暗黒の底が抜けた。ラーメン屋主人夫婦の不自然な失踪、八王子で福生で床下から次々に見つかる死体、美少女を取り巻く得体の知れない男たち。世界は二転三転、酷薄な様相を顕にする。衝撃のノワール・ミステリー。
  • アントニーとクレオパトラ
    3.6
    シーザー亡き後、ローマ帝国独裁の野望を秘めるアントニーはエジプトの女王クレオパトラと恋におちる。妖女の意のままになったアントニーはオクテイヴィアスとの大海戦に敗れ、クレオパトラ自殺の虚報を信じて自殺する……。多様な事件と頻繁な場面転換を用い、アントニーとクレオパトラの情熱と欲情を描いて四大悲劇と並び称される名作である。
  • 杏奈は春待岬に(新潮文庫)
    3.6
    少年の日、健志は恋をした。桜の咲く頃だけ春待岬の洋館で会える、美しい少女・杏奈に。なぜ、彼女が現れるのは一年のうち数日だけなのか。なぜ、館に暮らす老人を「兄さん」と呼ぶのか。杏奈の秘密を知った健志は、彼女をいつか救い出そうと決意する。月日は流れ健志は年を重ねていくが、杏奈はずっと少女の姿のまま……。幼い初恋はやがて究極の純愛へ。切なすぎるタイムトラベルロマンス。(解説・笹本祐一)
  • 暗幕のゲルニカ(新潮文庫)
    4.2
    ニューヨーク、国連本部。イラク攻撃を宣言する米国務長官の背後から、「ゲルニカ」のタペストリーが消えた。MoMAのキュレーター八神瑤子はピカソの名画を巡る陰謀に巻き込まれていく。故国スペイン内戦下に創造した衝撃作に、世紀の画家は何を託したか。ピカソの恋人で写真家のドラ・マールが生きた過去と、瑤子が生きる現代との交錯の中で辿り着く一つの真実。怒濤のアートサスペンス!(解説・池上彰)
  • 安楽病棟
    3.9
    深夜、引き出しに排尿する男性、お地蔵さんの帽子と前垂れを縫い続ける女性、気をつけの姿勢で寝る元近衛兵の男性、異食症で五百円硬貨がお腹に入ったままの女性、自分を23歳の独身だと思い込む女性……様々な症状の老人が暮らす痴呆病棟で起きた、相次ぐ患者の急死。理想の介護を実践する新任看護婦が気づいた衝撃の実験とは? 終末期医療の現状と問題点を鮮やかに描くミステリー!
  • R62号の発明・鉛の卵(新潮文庫)
    4.0
    会社を首にされ、生きたまま自分の「死体」を売ってロボットにされてしまった機械技師が、人間を酷使する機械を発明して人間に復讐する「R62号の発明」、冬眠器の故障で80万年後に目を覚ました男の行動を通して現代を諷刺した先駆的SF作品「鉛の卵」、ほか「変形の記録」「人肉食用反対陳情団と三人の紳士たち」など、昭和30年前後の、思想的、方法的冒険にみちた作品12編を収録する。(解説・渡辺広士)
  • いいひと、辞めました
    4.0
    1巻1,760円 (税込)
    四十路の独身男、平田は自他ともに認める「いいひと」。だが、モテない。結婚はおろか恋人すらできない。「いいひとなんだけどね……」って、もういい! こうなったらとことんサイテーになってやる! 立派な「サイテー男」になるべく向かった場所とは――ふかわりょうが描く、痛快! 人生180度逆転劇!
  • イエスの生涯
    4.3
    英雄的でもなく、美しくもなく、人々の誤解と嘲りのなかで死んでいったイエス。裏切られ、見棄てられ、犬の死よりもさらにみじめに斃れたイエス。彼はなぜ十字架の上で殺されなければならなかったのか?――幼くしてカトリックの洗礼を受け、神なき国の信徒として長年苦しんできた著者が、過去に書かれたあらゆる「イエス伝」をふまえて甦らせた、イエスの〈生〉の真実。
  • 家なき子(上)(新潮文庫)
    4.3
    優しくぼくを見つめる、母と思っていたその人は母ではなかった。ぼくは捨て子だったのだ……。家を追われた8歳の少年レミは、謎の老旅芸人ヴィターリスの一座に加わり、芸をする動物たちとともに巡業の旅に出発する。大都会から炭鉱町まで、時に厳しい荒野を渡り、吹雪を耐え、川を越え――レミは真の幸福を求めて旅を続ける。時代を超えて読み継がれるフランスの児童文学の傑作を完訳!
  • 家の中で迷子
    -
    1巻1,232円 (税込)
    家の中で迷子になっていた――。見慣れた部屋が森に変貌し、水で溢れる。迷子の相棒は歌、偶然、そしてネズミ。海辺の老人に導かれ、言葉を話さない少女アゲハ、コンパス売りのハジと出会い、自身のなかに湧きあがる尽きせぬ記憶の果てに見た、この世界の姿とは。地上に宿るすべての生が時空を超えて響きあう深遠なる物語。
  • 家守綺譚(新潮文庫)
    4.1
    庭・池・電燈付二階屋。汽車駅・銭湯近接。四季折々、草・花・鳥・獣・仔竜・小鬼・河童・人魚・竹精・桜鬼・聖母・亡友等々々出没数多……本書は、百年まえ、天地自然の「気」たちと、文明の進歩とやらに今ひとつ棹さしかねてる新米精神労働者の「私」=綿貫征四郎と、庭つき池つき電燈つき二階屋との、のびやかな交歓の記録である。――綿貫征四郎の随筆「烏蘞苺記(やぶがらしのき)」を巻末に収録。
  • 家康の女軍師(新潮文庫)
    3.5
    家康の側室於奈津は、鎧姿で関ヶ原の戦場に立った。将軍の女影武者・軍師として戦況を見極めつつ、「お屋形様の本気を」と鼓舞。小早川秀秋へ問い鉄砲を仕掛けさせる――。この女傑、元は商家の女番頭。持ち前の機転で家康の心を摑み、物事に動じぬ良き相談相手となった。大坂冬夏の陣にも参陣し、真田信繁とも対峙。今は徳川家の菩提寺に眠る波瀾の生涯を描く。『将軍家康の女影武者』改題。(解説・末國善己)
  • 硫黄島に死す
    3.7
    〈硫黄島玉砕〉のニュースが流れた四日後、ロサンゼルス・オリンピック馬術大障碍の優勝者・西中佐は、なお残存者を率いて戦い続けていた。馬術という最も貴族的で欧米的なスポーツを愛した軍人の栄光と、豪胆さゆえの悲劇を鮮烈に描いて文藝春秋読者賞を受賞した表題作。ほかに「基地はるかなり」「軍艦旗はためく丘に」など、著者の戦争体験と深くかかわった作品全7編を収める。

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  • いかれころ(新潮文庫)
    5.0
    昭和の終わり、南河内に暮らす一族の娘に縁談が持ち上がる。女性は25歳までにと見合い結婚する者も多い時代。本人の考えを他所に、結納金や世間体を巡り親戚中の思惑が忙しくぶつかり合う。その喧噪を、分家に暮らす4歳の奈々子はじっと見つめていた――「家」がもたらす奇妙なせめぎ合いを豊かに描き、新人らしからぬ力量と選委員が絶賛、三島由紀夫賞&新潮新人賞ダブル受賞のデビュー作。(解説・町田康)
  • 息

    3.9
    1巻2,090円 (税込)
    喘息の一息一息の、生と死のあわいのような苦しさ。その時間をともに生きた幼い日の姉と弟。弟が若くして死を選んだあと、姉は、父と母は、どう生きたか。喪失を抱えた家族の再生を、息を繋ぐようにして描きだす、各紙文芸時評絶賛の胸を打つ長篇小説。新潮新人賞受賞作「わからないままで」を併録。注目の新人、初めての本。
  • 生きてるだけで、愛。(新潮文庫)
    4.0
    あたしってなんでこんな生きてるだけで疲れるのかなあ。25歳の寧子は、津奈木と同棲して三年になる。鬱から来る過眠症で引きこもり気味の生活に割り込んできたのは、津奈木の元恋人。その女は寧子を追い出すため、執拗に自立を迫るが……。誰かに分かってほしい、そんな願いが届きにくい時代の、新しい“愛”の姿。芥川賞候補の表題作の他、その前日譚である短編「あの明け方の」を収録。
  • 生き延びるための世界文学―21世紀の24冊―〔電子版〕
    4.0
    1巻1,760円 (税込)
    タオ・リン、アレハンドロ・サンブラらの新鋭から、J・M・クッツェー、トニ・モリスンらの大御所まで。世界文学の「いま」を伝える、最速・最強のガイド、待望の第二弾。文句なしに面白い21世紀の24冊を紹介。※単行本に掲載の[訳し下ろし短編]は、電子版には収録しておりません。
  • 異郷の友人
    3.6
    1巻1,232円 (税込)
    阪神大震災を予言し、信者を増やす淡路島の新興宗教。教祖Sはイザナキ、イザナミの国生みの地で、新たな世界創世を説いていた。ある日、アメリカ西海岸の秘密組織から男たちが訪ねてくる。彼らは何を企んでいるのか。すべてを見通す僕とは、いったい何者か? 世界のひずみが臨界点に達したとき、それは起きた――。大注目の芥川賞候補作。
  • 幾度めかの命
    -
    1巻2,420円 (税込)
    母は私たち姉妹のどちらに寿命を贈るつもりなのか決して明かさない。女性問題から家を出た父は、再会した直後から妻や子供に「譲命」を迫られていると漏らす。遺産相続問題よろしく、社会の人間関係が奇怪な形に変ってゆく……。「保管士」資格者の使命感で事故現場を駆け回る私に忍び寄る悪意。異色ファンタジー長編。
  • 幾松という女
    3.5
    「この人と一緒にいたい」京都随一の美妓・幾松が見初めたのは維新の志士・桂小五郎の颯爽たる姿だった。幕末の嵐を共に乗り越え、桂は新政府の参議・木戸孝允となり、幾松はその妻・松子となるが、結婚を境に二人の愛は姿を変える。国事に忙殺され次第に消耗する木戸。苛立ちと愛の渇きを、若い役者との「遊び」で紛らわす松子。――動乱期の女性の生きざまと、愛の軌跡を綴る。
  • 遺訓(新潮文庫)
    4.2
    1巻1,045円 (税込)
    沖田総司の甥にして、天然理心流の遣い手たる沖田芳次郎は、旧庄内藩重臣から西郷隆盛の警護を依頼された。青年剣士はやがて西南戦争という激流に巻き込まれてゆく。西郷、大久保という二つの巨星。悲恋、戦塵をくぐり抜けながらの成長。戊辰戦争ののち西郷と庄内侍の間には熱い絆が結ばれた。『南洲翁遺訓』を後世に伝えた鶴岡に生を受けた著者が、深き感慨をこめて描く、本格時代長篇。(解説・大矢博子)
  • 池波正太郎劇場
    -
    鬼平こと長谷川平蔵、老剣客・秋山小兵衛、そして仕掛人・藤枝梅安――。池波正太郎の作品が読者を惹きつけてやまないのは、登場人物のキャラクターとそれを描写する「ことば」に魅力があるからだろう。本書は、小説だけでなく、脚本やエッセイにも広がる多彩な「池波ワールド」を、作中の登場人物たちと、作家・池波を取り巻く実在の人々を手がかりに探索していく。「人間 池波正太郎」の生い立ちから、作品誕生の舞台裏まで描いた、池波正太郎読本の決定版。

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  • 犠牲(いけにえ)にあらず
    3.0
    1巻1,320円 (税込)
    殺人罪に服した七年間に、俺は我知らず修羅を飼っていたらしい。出所直後から週刊誌の取材攻勢に曝され、気づけば一転、有名人に祭りあげられた男。その空騒ぎのただ中で、彼は七年の彼方からシグナルを受け取った。計画を始動する時が来たのだ。被害者側と加害者側をたやすく逆転させて楽しむ世間を消去する必要があった。

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  • 石川啄木(新潮文庫)
    4.0
    僧侶の「私生児」として生まれたのち、文学と恋愛に心を奪われて中学を中退。北海道を彷徨う漂泊の日々。転職につぐ転職。友から借銭して娼婦と遊んで妻を苦しめ、放蕩の限りを尽くしたかと思えば社会主義に傾倒する――。貧しさに喘ぎつつ、引き裂かれるほどの烈しい精神を歌に刻印した劇的な生涯。膨大な資料をもとに、感傷的な歌を残した夭折詩人というイメージを覆す生彩豊かな傑作評伝。(解説・平野啓一郎)
  • 碑・テニヤンの末日
    -
    幕末から維新にかけての激動期に、剣の道ひとつに賭けた武士の人生の哀歓と誇りを描く「碑」。二人の若き軍医を主人公に、テニヤン島が敵襲を受けて陥落するまでの凄絶な日々を追う「テニヤンの末日」。異常性格で色気と欲気の餓鬼でありながら見事な厚物咲の菊作りに成功した後横死する老人と、その友人の堅気な人生とを対照させて描く芥川賞受賞作の「厚物咲」など7編。歳月の流れの中に浮沈する人間の運命を香気豊かに描く中山文学の代表作選。
  • 移植医たち(新潮文庫)
    4.2
    目の前で失われてゆく命を救いたい。臓器移植を学ぶために渡米した男女三人の医師を待ち受けていたのは、過酷きわまりない現場だった。時間との闘い、そして拒絶反応。幾つもの笑顔と出会い、数え切れぬ苦さを噛みしめ、彼らは帰国。北海道で専門外科を立ち上げる。だが、日本に移植医療を根付かせるのは想像以上に困難だった。徹底取材の上に築かれた、圧巻の人間ドラマ。(解説・海堂尊)
  • いじわるペニス
    -
    1巻528円 (税込)
    3年間を捧げた同僚に振られて、29歳の私は会社を辞めた。彼は同じ会社の別の女と結婚したのだ。あの時から、私は、普通の恋愛というものから、なるべく遠ざかるように生きている…。勃たないウリセンボーイに募る想い、哀しいため息、膨らむレディースローン。最後に二人を結ぶのはお金?それとも愛?このまま、私はどこに行ってしまうんだろう…。

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  • 異人たちとの夏(新潮文庫)
    NEW
    4.0
    妻子と別れ、孤独な日々を送るシナリオ・ライターは、幼い頃死別した父母とそっくりな夫婦に出逢った。こみあげてくる懐かしさ。心安らぐ不思議な団欒。しかし、年若い恋人は「もう決して彼らと逢わないで」と懇願した……。静かすぎる都会のひと夏、異界の人々との交渉を、ファンタスティックに、鬼気迫る筆で描き出す、名脚本家山田太一の独自の小説世界。第一回山本周五郎賞受賞作品!(解説・田辺聖子)
  • いずこより
    5.0
    「出家遁世と放浪は、いまや私のもっとも深い憧れとなって、心をそそのかしてくる」(本文より) 明るくのびやかな少女期から、短い結婚生活を経て、家も子供も捨てて奔った激しい恋。やがて自立の道を求めて一途に文学に志し、いつしか出離の想いに促されるまで。自立する女の新しい生き方を自ら切り拓いてきた著者が、その波乱の半生を鋭い自己凝視で綴る自伝小説の傑作。
  • 伊豆の踊子
    3.8
    旧制高校生である主人公が孤独に悩み、伊豆へのひとり旅に出かける。途中、旅芸人の一団と出会い、そのなかの踊子に、心をひかれてゆく。清純無垢な踊子への想いをつのらせ、孤児意識の強い主人公の心がほぐれるさまは、清冽さが漂う美しい青春の一瞬……。ほかに『禽獣』など3編を収録。

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  • 異端の大義(上)
    3.8
    1~2巻814~858円 (税込)
    シリコンバレーからの帰還──。世界有数の大手電機メーカー・東洋電器産業の高見龍平は、米国の半導体開発部門撤退という大任を果たして帰国した。長い海外勤務から戻った彼の目を驚かせたのは、創業者一族とその取り巻きによる恣意と保身の横行。入社同期で一族に連なる人事本部長へ直言するが、それが仇となる。高見は、工場閉鎖という過酷なリストラ業務を命じられてしまった。
  • 一握の砂・悲しき玩具―石川啄木歌集―
    4.2
    啄木の処女歌集であり「我を愛する歌」で始まる『一握の砂』は、甘い抒情にのった自己哀惜の歌を多く含み、第二歌集の『悲しき玩具』は、切迫した生活感情を、虚無的な暗さを伴って吐露したものを多く含む。貧困と孤独にあえぎながらも、文学への情熱を失わず、歌壇に新風を吹きこんだ啄木の代表作を、彼の最もよき理解者であり、同郷の友でもある金田一氏の編集によって収める。

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  • 1Q84(BOOK1~3)合本版(新潮文庫)
    4.5
    1巻4,114円 (税込)
    1Q84年──私はこの新しい世界をそのように呼ぶことにしよう、青豆はそう決めた。Qはquestion markのQだ。疑問を背負ったもの。彼女は歩きながら一人で肯いた。好もうが好むまいが、私は今この「1Q84年」に身を置いている。私の知っていた1984年はもうどこにも存在しない。……ヤナーチェックの『シンフォニエッタ』に導かれて、主人公・青豆と天吾の不思議な物語がはじまる。 ※当電子版は新潮文庫版『1Q84』BOOK1~3の全6冊をまとめた合本版です。
  • 1Q84―BOOK1〈4月-6月〉前編―(新潮文庫)
    完結
    3.8
    全6巻649~737円 (税込)
    1Q84年──私はこの新しい世界をそのように呼ぶことにしよう、青豆はそう決めた。Qはquestion markのQだ。疑問を背負ったもの。彼女は歩きながら一人で肯いた。好もうが好むまいが、私は今この「1Q84年」に身を置いている。私の知っていた1984年はもうどこにも存在しない。……ヤナーチェックの『シンフォニエッタ』に導かれて、主人公・青豆と天吾の不思議な物語がはじまる。
  • 一九六一 東京ハウス
    3.5
    1巻1,815円 (税込)
    賞金につられてリアリティショーに集まった二つの家族。古き佳き時代であるはずの昭和の生活は、楽じゃないどころか、令和の今より地獄の格差社会。お気楽バラエティのはずが、外野も巻き込みどんどん不穏になっていく現場は疑心暗鬼で大荒れの末、まさかまさかの超展開。次々と起こる惨劇は虚構か、現実か!?
  • 無花果の森
    3.5
    小雨の降りしきる午後、夫の暴力に耐え切れなくなった新谷泉は、家を飛び出した。隠れ場所を捜し、ごくありふれた地方都市に降り立った彼女は、狷介な高齢の女性画家に家政婦として雇われることになる。降り続く雨のなか、時間だけが静かに流れゆく日々を過ごす泉は、思いがけない人物と出会う……。追いつめられ、全てを失った男女の愛と再生の物語。芸術選奨文部科学大臣賞受賞。
  • 一の糸
    4.3
    造り酒屋の箱入娘として育った茜は、十七歳の頃、文楽の三味線弾き、露沢清太郎が弾く一の糸の響に心を奪われた。その感動は恋情へと昂っていくが、彼には所帯があった。二十年が過ぎた。清太郎は徳兵衛を襲名し、妻を亡くしていた。独身を通した茜は、偶然再会した男の求婚を受入れ、後添えとなるのだった。大正から戦後にかけて、芸道一筋に生きる男と愛に生きる女を描く波瀾万丈の一代記。
  • いちばんここに似合う人
    3.8
    水が一滴もない土地で、老人たちに洗面器一つで水泳を教える娘。英国のウィリアム王子をめぐる妄想で、頭がはちきれそうな中年女。会ったこともない友人の妹に、本気で恋焦がれる老人――。強烈な個性と奇妙な優しさに満ちた16の短篇を、物語の声にぴったりと寄り添う岸本佐知子訳で。フランク・オコナー国際短篇賞受賞。
  • いちばん長い夜に
    4.0
    ペットの洋服作りの仕事が軌道に乗ってきた芭子と、パン職人の道を邁進する綾香。暗い場所で出会い、暗い過去を抱えながら、支え合って生きてきた。小さな喜びを大切にし、地に足のついた日々を過ごしていた二人だったが、あの大きな出来事がそれぞれの人生を静かに変えていく。彼女たちはどんな幸せをつかまえるのだろうか――。心を優しく包み込む人気シリーズ、感動の完結編。
  • いちばんの願い
    4.0
    ホタルは太陽のように輝きたい。クマは二度とケーキを食べたくない。アリはリスと真剣に話したい。カメはカタツムリにやさしくされたい。フクロウは願いなんかもちたくない――。63のどうぶつそれぞれに、まったくばらばらの奇妙で切実な願いがあり、その奇妙さがわたしたちの心を映しだす。大人気のシリーズ最新刊。
  • 1ミリの後悔もない、はずがない(新潮文庫)
    4.1
    「俺いま、すごくやましい気持」。ふとした瞬間にフラッシュバックしたのは、あの頃の恋。できたての喉仏が美しい桐原との時間は、わたしにとって生きる実感そのものだった。逃げだせない家庭、理不尽な学校、非力な子どもの自分。誰にも言えない絶望を乗り越えられたのは、あの日々があったから。桐原、今、あなたはどうしてる? ――忘れられない恋が閃光のように突き抜ける、究極の恋愛小説。(解説・窪美澄)
  • 1R1分34秒(新潮文庫)
    3.8
    デビュー戦を初回KOで華々しく飾ってから、3敗1分けと敗けが込むプロボクサーのぼく。そもそも才能もないのになぜボクシングをやっているのかわからない。ついに長年のトレーナーに見捨てられるも、変わり者の新トレーナー、ウメキチとの練習の日々がぼくを変えていく。これ以上自分を見失いたくないから、3日後の試合、1R1分34秒で。青春小説の雄が放つ会心の一撃。芥川賞受賞作。(解説・町田康)
  • 一週間
    4.2
    スパイMの奸計により逮捕され共産党から転向した小松修吉は、Mを追って満洲に渡り、終戦後、捕虜となる。昭和21年早春。ハバロフスクの日本新聞社に移送された修吉は、脱走に失敗した軍医の手記を書くよう命じられた。面談した軍医は、レーニンの裏切と革命の堕落を明かす手紙を彼に託した。修吉はこれを切り札にしてたった一人の反乱を始める……。著者の集大成。遺作にして最高傑作。
  • 一瞬の夏(上)
    4.1
    1~2巻737円 (税込)
    強打をうたわれた元東洋ミドル級王者カシアス内藤。当時駆けだしのルポライターだった“私”は、彼の選手生命の無残な終りを見た。その彼が、四年ぶりに再起する。再び栄光を夢みる元チャンピオン、手を貸す老トレーナー、見守る若きカメラマン、そしてプロモーターとして関わる“私”。一度は挫折した悲運のボクサーのカムバックに、男たちは夢を託し、人生を賭けた。
  • いっちみち―乃南アサ短編傑作選―(新潮文庫)
    3.4
    家族が起こした不祥事で故郷を離れ、コロナ禍のなか帰郷した女性。父と離婚した母の実家で、家業の秘密を知った息子。両親を事故で失い、我が家にやってきた不思議な従妹。わかりあえると思ったら遠ざかる。温かいのに怖い。恋があって、愛があって家族になったはずなのにーー。「人間」という最大のミステリーを描き続けてきた作家による、傑作短編を精選した文庫オリジナルアンソロジー。
  • いつか、この世界で起こっていたこと
    3.8
    1巻1,496円 (税込)
    犬を連れ、白樺とモミの林にきのこ狩りにでかけていたチェーホフ。一九七七年のエルヴィスの死と、アメリカ核施設見学ツアー。ユーゴから日本へと逃れてきた女性シンガー。関東大震災の津波で生死を分けた鎌倉の夫婦。震災後に生きるわたしたちを小さな光で導く、いつか、どこかで、起こっていたこと。深い思索にみちた短篇集。

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  • いつか陽のあたる場所で
    3.7
    小森谷芭子29歳、江口綾香41歳。ふたりにはそれぞれ暗い過去があった。絶対に人に知られてはならない過去。ふたりは下町の谷中で新しい人生を歩み始めた。息詰まる緊張の日々の中、仕事を覚え、人情に触れ、少しずつ喜びや笑いが出はじめた頃──。綾香が魚屋さんに恋してしまった! 心理描写・人物造形の達人が女の友情に斬り込んだ大注目の新シリーズ。ズッコケ新米巡査のアイツも登場。

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  • 五つ星をつけてよ(新潮文庫)
    3.8
    PC上で輝く星(レビュー)だけが、進むべき道を照らしてくれる――。離婚して実家に戻った恵美は、母の介護を頼んでいるホームヘルパー・依田の悪い噂を耳にする。細やかで明るい彼女を信頼していたが、見る目がなかったのだろうか。動揺する恵美に、母が転んで怪我をしたと依田から連絡が入り……。ネットのレビュー、ブログ、SNS。評価し、評価されながら生きる私たちの心を鮮やかに描き出す6編。(解説・彩瀬まる)
  • いつまで
    4.0
    1巻1,595円 (税込)
    長崎屋から妖が消えた! 最初は噺家の場久、次は火幻医師。彼らを探すため、影内に紛れ込んだ病弱若だんなは、すべて西から来た妖・以津真天の仕業だと知る。大事な友を救うため、果敢に悪夢に飛び込んだ若だんなだが、目覚めた先はなんと五年後の江戸。鍵を握るのは、以津真天なのか、それとももっと大きな力なのか……。
  • いつも彼らはどこかに
    3.7
    たっぷりとたてがみをたたえ、じっとディープインパクトに寄り添う帯同馬のように。深い森の中、小さな歯で大木と格闘するビーバーのように。絶滅させられた今も、村のシンボルである兎のように。滑らかな背中を、いつまでも撫でさせてくれるブロンズ製の犬のように。――動物も、そして人も、自分の役割を全うし生きている。気がつけば傍に在る彼らの温もりに満ちた、8つの物語。
  • いつもと同じ春
    -
    1巻495円 (税込)
    百貨店の社長として烈しい競争の世界を疾駆し続ける〈私〉の胸に、ふと、引き裂くように自由への渇望がこみ上げる。そのような時にはまた、宿業を負った生い立ちから、理想に燃えて父に反逆した青年期が思い起こされる。――一族の血の重さに耐えつつ、ひたすらに事業を拡大し、なおしなやかな感性を保ち続けようとする生きざまを、驚くべき真率さで物語る。平林たい子文学賞受賞。
  • 偽りのラストパス
    3.7
    1巻1,496円 (税込)
    バスケ部で全国を目指す見原陽司。親善大会を控えたある日、地元の不良として名高い小金井進が居候することになる。戸惑いを隠し切れない陽司と弟の良哉。小金井の狼藉が激しさを増すなか、ある日、決定的な悲劇がもたらされて――。誰しもが抱いていた少年時代の郷愁に心打たれる、新潮ミステリー大賞受賞後第一作。
  • 凍てる庭
    -
    1巻869円 (税込)
    凍てついた地殻を割って、春いち早く芽をふく蕗。逆境にめげず、強く素朴に生きてほしいという願いをこめて、娘に蕗代と名づけた私は、戦後の混乱期に、極貧の底で妻に逃げられ、職を転々と変えねばならなかった。屈辱感と自己嫌悪にまみれながらも、胸に不屈の意志を秘め、一人娘への愛の灯をともしつづける。――作家・水上勉誕生まえの苦闘の日々を綴って感動をよぶ自伝的長編。
  • 愛しい女
    3.0
    婦人雑誌記者の清里は、妻子を連れて温泉地で休暇を過した折、旅先の吊橋で立ち往生して動きのとれぬ女性二人を救う。その一人は同じ会社の電話交換嬢・妙子で、もう一人は、その友人のスタイリスト留美であった。留美の異様な眼差しが、清里の心を射抜く。留美は清里に強く惹かれ、彼との結婚を強く望むようになる。が、道ならぬ恋を諦めてヨーロッパへ旅立つまでの、濃密な愛の日々。
  • いとみち(新潮文庫)
    4.2
    1~3巻693~737円 (税込)
    相馬いと。青森の高校に通う16歳。人見知りを直すため、思い切ってはじめたアルバイトは、なんとメイドカフェ。津軽訛りのせいで挨拶も上手に言えず、ドジばかりのいとだったが、シングルマザーの幸子やお調子者の智美ら先輩に鍛えられ、少しずつ前進していく。なのに! メイドカフェに閉店の危機が~~。初々しさ炸裂、誰もが応援したくなる最高にキュートなヒロインの登場です。
  • 移動祝祭日
    4.0
    1920年代、パリ。未来の文豪はささやかなアパートメントとカフェを往き来し、執筆に励んでいた。創作の苦楽、副業との訣別、“ロスト・ジェネレーション”と呼ばれる友人たちとの交遊と軋轢、そして愛する妻の失態によって被った打撃。30年余りを経て回想する青春の日々は、痛ましくも麗しい――。死後に発表され、世界中で論議の渦を巻き起こした事実上の遺作、満を持して新訳で復活。
  • 田舎司祭の日記
    -
    モーリヤックが、真の信仰を失ってその形骸だけを守る人々の生活を綴ったのに対し、同じくフランス二十世紀前半の作家、ジョルジュ・ベルナノスは、信仰に真に生きようと努力する人々を真正面から描き出す。本篇は一田舎司祭の日記の形式を借りて、従来の小説に全く捕捉されなかった神の姿を司祭の中に見出し得たのである。神と悪魔の闘いに迫った作者の代表作。1936年作。
  • 犬の心臓・運命の卵
    3.6
    ヒトの脳下垂体と睾丸を移植された犬が名前を欲し、女性を欲し、人権を求めて労働者階級と共鳴し、ブルジョワを震撼させる(「犬の心臓」)。繁殖力を高める生命光線を浴びて、大量発生したアナコンダが人々を食い荒らす(「運命の卵」)。奇想天外な空想科学的世界にソヴィエト体制への痛烈な批判を込めて発禁処分となった、20世紀ロシア語文学の傑作二編を新訳で収録。
  • 犬は歌わないけれど
    -
    1巻1,485円 (税込)
    「未来はどこにあるの?」幼い息子の本質を突く問いに考え込む。バンドデビューした高校時代、背中を押してくれた友人の言葉。事務所から独立して初めて知る社会の一般常識。いとおしい愛犬の存在。そして親友のグループ脱退……。地下スタジオにこもって音楽と向き合う中で心に浮かんだ大切な記憶と想いを紡ぐエッセイ集。
  • 犬も食わない(新潮文庫)
    3.6
    派遣秘書の福は雇い主と出かけた先のビルで、廃棄物処理業者の大輔とぶつかった。ろくな謝罪もない舐めた態度に激高した福は罵詈雑言の限りを尽くし、大輔は一言でやり返す……そんな最悪な出会いから始まった。ベッドの半分を占める体は邪魔だし、同じシャンプーが香る頭は寝癖だらけ。他人の「いいね」からは程遠い、喧嘩ばかりで格好つかない恋愛の本音を、男女の視点別に描く共作小説。
  • 井上成美
    4.3
    1巻1,034円 (税込)
    昭和五十年暮、最後の元海軍大将が逝った。帝国海軍きっての知性といわれた井上成美である。彼は、終始無謀な対米戦争に批判的で、兵学校校長時代は英語教育廃止論をしりぞけ、敗戦前夜は一億玉砕を避けるべく終戦工作に身命を賭し、戦後は近所の子供たちに英語を教えながら清貧の生活を貫いた。「山本五十六」「米内光政」に続く、著者のライフワーク海軍提督三部作完結編。 ※新潮文庫版に掲載の写真は、電子版には収録しておりません。
  • 井上靖全詩集
    3.0
    清冽な抒情のあふれる散文詩の世界は、井上文学の精髄であるとともに、現代詩の系譜のなかでも類を見ないユニークな光彩を放っている。人生への愛、使者への慟哭、青春の疼き、運命に対する畏怖など、さまざまなモチーフを謳った詩篇には深い静寂と諦念にも似た明澄さが漲っている。既刊の5冊の詩集のすべてと最新作、拾遺詩篇多数を収録する。半世紀に及ぶ詩業の集大成。
  • イノセント
    3.4
    1巻1,144円 (税込)
    男の住むマンションを見上げながらガソリンを被って焼身自殺したソープ嬢。彼女が死んだ理由を探し求める牧師の父親。そして娘の素顔を辿る父には信じられない事実が突きつけられる。自殺それとも他殺? 誰が犠牲者で誰が犯人なのか。真実はおぼろげに霞んで、虚像が独りで歩き出す。そして衝撃のラストシーン!読者は毒々しく染め上げられた結末に立ち尽くす。中村うさぎが描く、愛と憎悪と絶望の物語。
  • イノセント・デイズ(新潮文庫)
    4.2
    田中幸乃、30歳。元恋人の家に放火して妻と1歳の双子を殺めた罪で、彼女は死刑を宣告された。凶行の背景に何があったのか。産科医、義姉、中学時代の親友、元恋人の友人、刑務官ら彼女の人生に関わった人々の追想から浮かび上がる世論の虚妄、そしてあまりにも哀しい真実。幼なじみの弁護士たちが再審を求めて奔走するが、彼女は……筆舌に尽くせぬ孤独を描き抜いた慟哭の長篇ミステリー。
  • 異邦人(新潮文庫)
    4.2
    母の死の翌日海水浴に行き、女と関係を結び、映画をみて笑いころげ、友人の女出入りに関係して人を殺害し、動機について「太陽のせい」と答える。判決は死刑であったが、自分は幸福であると確信し、処刑の日に大勢の見物人が憎悪の叫びをあげて迎えてくれることだけを望む。通常の論理的な一貫性が失われている男ムルソーを主人公に、理性や人間性の不合理を追求したカミュの代表作。(解説・白井浩司)

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