いちばんここに似合う人

いちばんここに似合う人

小説・文芸
2,640円 (税込)

13pt

水が一滴もない土地で、老人たちに洗面器一つで水泳を教える娘。英国のウィリアム王子をめぐる妄想で、頭がはちきれそうな中年女。会ったこともない友人の妹に、本気で恋焦がれる老人――。強烈な個性と奇妙な優しさに満ちた16の短篇を、物語の声にぴったりと寄り添う岸本佐知子訳で。フランク・オコナー国際短篇賞受賞。

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いちばんここに似合う人 のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    半泣きのような、半笑いのような。一編を読むごとに、きっとヘンな顔になっている。
    ゾクゾク、ゾワゾワして、しんとする。僕の中の埃が溜まったへこみを押し開けて、入り組んで届きにくいカーブに指をぴたっと添わせてグイグイ突いてくる。
    なんともイタ気持ちいい読後感。しばらく動けない。

    ギュッと腕を身体に巻き付けて、バラバラに解けてしまいそうな自分の形を保つのに必死なとき。一緒にベッドに潜り混んでいる人の寝顔が、見知らぬ他人だと思うとき。バスタブの中で息を止めて、「ねぇ、私は悪くないよね」って呟くとき。
    そんな危うい瞬間を潜り抜けて、残念な今日とウンザリな明日を生きていく誰かさんに、奇妙な回線で、接続してしまった。

    『水泳チーム』
    “朝起きるとわたしはまず思った。ー きょうは水泳の練習の日。それ以外の日は、朝起きると思ったー きょうは水泳の練習のない日。”
    圧倒的な孤独の中に消失してしまいそうな自我をかろうじて繋ぎ止めるために、わたしは「水泳コーチ」という役割を進んで引き受ける。
    教え子の老人達もまた、何もないちっぽけな町の中で耐え難く老いていく自分に抗うように、水泳の練習に打ち込んでゆく。
    例えそれが、水を張った洗面器に顔を沈めて、手足を床の上でバタバタさせるだけだとしても。

    アスリート特有のピュアで滑稽な真剣さを共有した素晴らしいチームを、後年に彼女はジョークにできない。
    “もしあなたがこの話をおもしろがるような人だったら、わたしだってとっくに話してただろうし今もまだあなたと付き合っていたかもしれない”

    悲しみと共に、アパートで泳ぐ老人のイメージが心に焼き付く。一番大好きな物語だ。


    0
    2023年10月28日

    Posted by ブクログ

    他人の生きざまを知るということが、これほど自分を、そして自分と関わってくれるすべての人を救ってくれるとは。孤独に、けれど「何か」を追い求めるそれぞれの主人公が、目の前を通り過ぎていく。私には彼らが何をしたいのか、何が目的なのか分かっている。自分のことは分からないくせに。
    それでも、そのヒントを垣間見た気がする。今日も、いちばん「ここ」に似合う人として、生きていこうと思う。

    0
    2015年11月25日

    Posted by ブクログ

    16編からなる短編集。
    様々なキャラクターの内面に触れることができ、ちょっと自分と似てるかも、と共感できるキャラクターや考えもしなかった不思議な感情に出会える作品。

    誰にも理解してもらえないような性格や感情って、結局自分一人で抱え込んでしまう。
    そんなものを「はい。これちがう」と切り捨てず、一時だけでも受け入れてくれ、孤独の殻に小さな穴を開けてくれるようなストーリ。
    そんなあなたを肯定してくれ、あからさまでない優しさを感じる作品でちょっと好きかもしれない。
    著者の他の作品も読んでみようと思う。

    0
    2026年05月27日

    Posted by ブクログ

    加納愛子さんのおすすめで読みました。とても面白かった!ややアダルトな描写も多々あるのでそこだけは自分的な評価として星4で…。子供にはおすすめしません。

    0
    2026年03月06日

    Posted by ブクログ

    世間一般の普通から少しズレた人たちの孤独が描かれていて、そこなら抜け出したいんだけど、結局は孤独な場所に戻ってくる。みたいなお話が多かった。

    映画も凄いけど、小説も凄かったなー。才能豊かな人だなー、と感心。

    0
    2025年04月14日

    Posted by ブクログ

    作品紹介・あらすじ

    水が一滴もない土地で、老人たちに洗面器一つで水泳を教えようとする娘(「水泳チーム」)。英国のウィリアム王子をめぐる妄想で頭がはちきれそうな中年女(「マジェスティ」)。会ったこともない友人の妹に、本気で恋焦がれる老人(「妹」)-。孤独な魂たちが束の間放つ生の火花を、切なく鮮やかに写し取る、16の物語。カンヌ映画祭で新人賞を受賞した女性監督による、初めての小説集。フランク・オコナー国際短篇賞受賞作。

    *****

    けったいな一冊、って印象。奇談、というわけでもなく、前衛的ってわけでもなく、虚実入り混じった印象でもなく。荒唐無稽な話でもなく、あくまでも現実に即した話なのだけれど、ちょっとどこか変。最初はあまりシックリこなくて「あれ、失敗だったかな」と感じたのだけれど、読んでいくうちにドンドンとこの底なし沼みたいなけったいな世界にズブズブと浸ってしまった。

    僕はあまり読書体験が豊富な方ではないので、断言はできないけれど、この短篇集に収録されているものと似たような作品を書いている人を知らない。唯一無二という意味でかなりユニークだと思う。仮に「小説の書き方」みたいなマニュアルがあったとしたら、そのマニュアルを完全に度外視して自由奔放に書き連ね、でも作者自身はそれを全く自覚していない、そんな感じ。読み手側からしたら、好き嫌いが明確に分かれるんだろうな、と思う。

    僕は気にならなかったのだけれど、レズビアンが結構な頻度で登場するし、時にストレートな性表現がでてくるので、そういうのが苦手は人にはちょっと辛いかも。

    0
    2024年09月22日

    Posted by ブクログ

    孤独は孤独なりに繋がろうと、不器用に生きる人たち。この本が人気ってことは不器用に生きていて慰めを必要としている人が多いってことだ。この事実が、私をまた慰めてくれる。私はこの辺のバランスをうまくとれる方だと思うし慣れてしまったからさほどこの本を必要としていない。でも、この本を読むべき人はもっと多くいるはずだ。諦めたからこその光。

    0
    2023年03月19日

    Posted by ブクログ

    孤独で優しく不穏な短編集。何と表現したらよいか迷う短編ばかりですが不器用で純粋な登場人物たちにはどこか共感してしまいます。時折挿入される愛のシーンも寂しい気持ちになります。

    0
    2023年01月04日

    Posted by ブクログ

    80歳を過ぎた老人に海もプールもない土地で泳ぎを教えた経験を語る女性の話とか、あり得ないようでいていや、あるのかもしれんな…と思わせるようなユーモアと魅力があって、息抜きに読むにはちょうどいい。比較するにはポップ過ぎるけど『ワインズバーグ・オハイオ』を思い出した。

    0
    2022年04月15日

    Posted by ブクログ

    読書会の課題図書。
    ジャームッシュの初期の映画を見ているような。
    エイドリアン・トミネの「サマーブロンド」とか、映画で言うと「ゴーストワールド」を彷彿とさせる。
    一時期の村上春樹さんもちょっとこういう感じだった。
    レーモンド・カーヴァーを初めて村上さんの訳で読んだときと似た感覚。
    だが、それから21世紀になり、よりより閉鎖的な気分になってるんだなあ、と。
    その中でも泥の中の蓮、という気分にさせてくれるものもあれば、そうでもないものも…。

    0
    2021年02月28日

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