ブックライブ書店員
「動物保護活動」「動物愛護」って、いったい何をするのか、何が動物のためになるのか、あなたは知っていますか?
動物保護活動の実態を温かく描きつつ、現実も忠実に表現されている本作。
動物虐待や悪徳ブリーダーのニュースに心を痛めている方、
自分にも何かできたらいいなとは思いつつも何から始めたらいいかわからない方には、ぜひ読んでいただきたい一冊です。
動物の保護活動についての厳しい一面や重要性を知る初めの一歩になるのではないでしょうか。
物語は、東京でスタイリストを目指す女性が、競争に疲れ地元に戻り、一人の動物保護活動家と出会うところから始まります。
劣悪な環境で飼育されている動物たちを救うために全力を尽くす動物保護活動家と動物との出会いを通じて、自分自身を見つめ直し、成長していく物語です。
作中では主に動物保護活動の光と影を丁寧に描いており、ペットビジネスの闇や悪徳業者の存在など、現実の厳しさをリアルに伝えています。
よく、「保護動物を譲渡してもらう際に金銭を要求されるのはおかしい」とSNSなどで見かけませんか?
もちろん「保護」と称し実は単に売っているだけなどの悪徳団体もあると思います。
ただ、まっとうな団体も多いのも事実です。
保護団体もその動物を保護するにあたってどれだけの資財・私財を投じているでしょうか。
何に対して金銭が発生するのか、そのお金はどのようにして「何に」使われているのか。
悪徳団体との見分け方は?など様々な情報を得ることもできるのが魅力の一つでもあります。
また動物保護家や一般人の目線だけでなく、動物愛護センター(いわゆる保健所など)からの目線でのエピソードも取り上げられており、行政では「やりたくてもできないこと」、愛護センターで取り組んでいることは何なのかを知ることもできます。
「処分ありきで働いている人なんかいない。」それでも「向き合わないといけない時もある。」という相反する状況を経験している愛護センター職員の言葉が非常に印象的です。
作者もとある記事で「守るために働いているのに守れない」という言葉をマンガにしたとおっしゃってました。
愛玩動物としての購入のし易さ、飼育動物の放棄のしやすさ。諦めることの簡単さ。
動物保護をする難しさ、保護した動物の飼育の難しさ、動物の心のケアの難しさ、譲渡の難しさ、保護団体・センターの運営の難しさ。
動物愛護団体同士の軋轢、SNSでの誹謗中傷、「当たり前」という考えかた、殺処分0とは何なのか。
動物たちのために「自分も何かしたい!」とお考えの方は、まずは「知ること」から始めてみませんか?
動物愛護を考えるすべての人の「本来の目的」はみんな一緒のはずです。
関わるすべての人々が、動物に対する愛情をもって尊重しあって行動することで、悲惨な末路をたどる動物を一頭でも救えるのではないかと考えさせられる一冊です。