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Posted by ブクログ
日常のマンネリ化、人生の退屈さ、生きづらさを感じている人におススメな一冊。
システム的な独自ルールで外的な要因や自分の気分でさえも乱されることのない、自分だけの快適な生活を営む独身女性の主人公シェリルだが、異常なほどの妄想力と自己保身力の強さに、最初は「関わりたくない人だな」という印象を抱き読み始めた。
しかし、上司の娘と同棲するという思いがけない展開から彼女の平穏と思えていた生活が一変し、彼女がもがき、苦しみながらも幸せに感じる意識さえ変わっていく彼女に惹かれ、自分もいつしか応援している感情に変わっていることに気付いた。
ヴァイオレンス、性的、ぶっ飛んだ妄想の描写もあるので避けたくなる読者もあると思うけど、バランスよくユーモラスな描写もあり、笑ってしまう場面も多い。
しかし、この独特な主人公の殻をぶち破った先にある希望みたいなものを、一層際立たせてくれるアクセントになっているところにこの作品の魅力を感じた。
作中「ヒステリー球」とあり作者の造語かと調べてみたら、実際にこうした症状があることを初めて知り学びにもなった。
作者は、独特の個性を持った人を鋭く際立たせ、その生きづらさと救いを描くことが上手く素晴らしいなと感じる。
Posted by ブクログ
ずっと気になってたミランダ・ジュライ。
U-NEXTのポイントは書籍に使ってくことにしたので、
初の長編小説という今作を読んで見ました。
いや〜マジでよくこんな話を思いつくなと。
もうひたすら面白かったのは2人が取っ組み合いを始め、
そしてビデオを模倣して絡み合うようになる展開。
結局、ここでクリーがふいに口にするセリフが
意味深なタイトルになってるとこも本当にイケてる。
シェリルは私の頭の中で完全にエイミー・アダムスだった。
たぶん「メッセージ」の印象かな。
シェリルが自己完結してて閉じてる故に
押しの強いクリーやフィリップスに対して受動的であることが
結果的に頭のおかしい展開を作り出し、
ある意味、夢見てたものを得る結果になる。
ぜんぜん自分と属性の違うシェリルなのに、
まさにその受動性や自分の確信が揺らぎ、
他者に巻き込まれて納得してく感じに
切なさややるせなさを感じつつも、
確実に強くなってるとも思えるからおもしろい。
Posted by ブクログ
予備知識なしで読んだ。自分が普段わりと静かな作品を読むので、最初は面食らった。少年漫画さながらのバトルシーン。途中一瞬任侠感のある言い回しも出てきて、海外小説で任侠って、と笑えた。
それにシェリルの妄想の産物、クベルコ・ボンティなる奇妙な赤ん坊。千と千尋の神隠しの坊みたいで、登場するたびに坊がしゃべってるように思えてならない。
シェリルの奮闘は滑稽でエキサイティングで勢いでどんどん読み進められる。怒涛の出産シーンにはハラハラした。
ジャックには深い愛情を注いでいるがほとんど自分の内で対話しており現実には話しかけていなかった、とシェリルが気づいたとき、読者である私も、シェリルの内側(ほとんど妄想)から現実を見ていることに気づいた。
エピローグのジャック視点から見る2人に、なんだか泣けた。良かったねシェリル。
Posted by ブクログ
映画「君と僕の虹色の世界」「The Future」そして、短編集「いちばんここに似合う人」、ドキュメンタリー「あなたを選んでくれるもの」で、ちょっとイタイ・なんかズレてるこじらせアート女子による、抜群のセンスを見せてくれたミランダ・ジュライの待望の長編小説です。
や、もうこれ、文句なしの傑作で、そのこじらせと妄想が100倍にスケールアップしていて、私は女子ではないんですが、なんかおんなじようなこと考えてる人いるのか!と感情移入しすぎてページ進まないので困りました。松岡茉優の「勝手に震えてろ」も名作でしたがこじらせと妄想はミランダが圧倒的に上です。容赦なくこじらせてます。世界の40代女子のこじらせを一人で引き受けて、まるで「地球のみんなオラに元気をわけてけろ」と孫悟空が元気玉を集めて放つ時のような超エネルギーを爆発させてます。
主人公シェリルの一人称小説で、もはやミランダ本人の私小説といっても過言ではなく、どこまでも赤裸々にそしてカオティックに散乱するディテールの集合体なのですが、内に籠りすぎたエネルギーが容量オーバーで爆破してしまい、溢れんばかりのエモーションをこちらにぶつけて来ます。
ここに書かれているのは、個人的ななにかではなく、おおきな全体のような気がしてなりません。たとえばドストエフスキーのような全体です。それは小説が根源的にもっている本質のことです。
ボリス・ヴィアンとミシェル・ウェルベックがマウンテンハウスで相談しながら女性になりきって書いたみたいな本作は、ミランダ・ジュライのミランダ・ジュライによるミランダ・ジュライとちょっと変わり者と言われる我々のための小説です。猛烈にお勧めします。タイトルについては読めばわかるんですが、センスがありすぎる。
Posted by ブクログ
こんなにヘンテコでエキセントリックでユーモアに溢れた作品ってほかにある?
中年女と若い女が殴り合ったかと思えば、愛し合ってみたり、子育てしてみたり。
ほんとに意味がわからない展開ばかりなんだけど、不思議と嫌悪感はゼロ。むしろ次はどうなるの?とページをめくる手が止まらない。
え、これってアリ?そんな問いはシェリルには愚問。
ぜんぶ、アリ。なんでも、アリ。
信じられないことが起きるのが、ミランダ・ジュライの小説なんだとおもう。
本の後ろに書いてあるコメントにすごくいいのがあるので、それを載せておしまい!
『私たちの愛し愛される能力について、誰にもできない形で教えてくれる。』
Posted by ブクログ
「最初の悪い男」(ミランダ・ジュライ)
「例えばシェリルの家の壁から、世界地図が外れなかったとしたら。」
この物語の主人公、シェリルは43歳独身女性。職場ではある程度の地位を得て、快適な一人暮らしを謳歌している。
本当の自分とか、生きる意味とか、無くても生きていくことはできる。煩わしさを排除して、毎日なにかを少し我慢しながら。
空想の世界では饒舌なシェリル。
人の良い感じがするけれど、その世界では誰かを踏みにじってしまうこともある。
それはそれで、ひとつの人生。誰にも当てはまる人生。
自分を感じずとも、生きることはできる。
だけど。
世界地図は外れる。ミランダの描く世界はひとところには留まらない。
望んだわけではない出来事だったはずなのに、足が臭くて暴力的な美人の娘、クリーが転がり込んできて、偶然は必然かのように、シェリルの人生は回り出す。
世界地図が外れる!
その展開のめまぐるしさ、生々しさ、ページをめくる手が止まらない。
前半は、シェリルのイジイジした様子、優しいようで、決して心を開かない様に、読みながらあんなに悶々としたのに。
新しい価値観に気付いたあとのシェリルの心の声は、センシティブの極み。ヒリヒリと心を打つ。
そして、声を限りの、
ノーノーノーノーノーノーノーノーノーノー。
サンドロップを見たときのこと。虹に似た何かなんてない。美しすぎるエピローグ。ここはもう、何度読み直したかわからない。
これ以上ない美しい気持ち、これ以上ない悲しい気持ち、これ以上ない優しい気持ちに満たされる。もちろんすごく笑わせてもくれる。会話のセンスが、ずば抜けて面白い。
あと、これは個人的な意見です、と前置いた上で書く。
ミランダがこの作品を、子供が産まれてから書いたこともやっぱり作品の手触りがより切実になった要因な気がする。
生まれたての子を昼夜問わず世話するあの、作中に出てくる言葉で言うところの、
「洗脳」、の表現。子を持つ前の自分がいなくなってしまうような感覚。
それでもなにかひとつでも、例えばずっと出なかったウンチがやっと出たりとか、初めて声をあげて笑ったとか、それで帳消しになるようなあの感覚。
すごくリアルだった。
奇跡と偶然で、「私たち」はここにいる。
絶対に、ひとりではないのだ。
作中の様々なシーンが頭をよぎる度、自転車を漕いでいても、バスに乗っていても、どこにいても、甘やかな痛みが鼻を刺しては目が潤む。
素晴らしい映画を観終わった後のような読後感。そしてまた始めから、味わうように読み直す。
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小説・文芸
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