Posted by ブクログ
2015年01月26日
今年の4月に亡くなった井上ひさし氏最後の長編小説。場所は昭和21年のシベリア。ソ連極東赤軍の捕虜となった元共産党員小松修吉は、その過去を買われて日本軍捕虜の思想教育の一環として発行されている新聞社に協力を要請される。そこで取材するうちに、収容所から脱走し3千キロ逃走の末、捕まった入江軍医将校からレー...続きを読むニン直筆の手紙を入手する。この手紙にはソ連の体制を根底から揺るがすような秘密が書かれており、小松はこの手紙を武器に極東赤軍と闘争を開始する。入江の脱走劇も小松と赤軍高級将校らとの戦い、レーニンの手紙の行く末は如何にと、ハラハラドキドキの実に面白い冒険活劇となっている。登場する日本人捕虜、赤軍幹部、女性将校らが実際そこに居るかのように生き生きと浮かび上がっている様がすばらしい。また、シベリア抑留は悲惨な話であるが、ドイツ人捕虜には、あのように壮絶な話は無かったことが不思議であったが、その理由の一面もまた理解出来て大変勉強になった。本来はこの連載に加筆され単行本になる筈だったが、作者が亡くなられてかなわなかった。実に残念である。今年一番面白かった小説である。