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彼は「手が……アルマジロの手が」というばかりだったのです――。不気味な緊張感を孕む怪奇な作品「アルマジロの手」、美しい姫君に恋をした狸の哀切「心中狸」、むさぼり喰らう快楽にとり憑かれた男の無上の幸福「月と鮟鱇男」の他、「海亀祭の夜」「蓮根ボーイ」「鰻池のナルシス」、そして甘美な爛熟世界に堕ちた男を描く傑作「魔楽」を収録。官能の深みと生の哀しみを短編に昇華させた七編。(解説・鵜飼哲夫)
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Posted by ブクログ
古い時代をベースにしたエロティックな文章で綴られた短編が6篇.戦後間もない情景が出てきて、ああそんなこともあったなと膝を打つ回数が何度もあった.このような形で小説に残っていることは、後の世代の人々が味わえるので素晴らしいと感じたが、ある程度の年代の者にしか分からない感情も多くあるだろう.「蓮根ボーイ...続きを読む」に出てくる少年の行動は、当時の少年の雛形のような感じがした.
「アルマジロの手」が怪談風な話で他の話と一線を画しているが、全体的に第3者から見れば不幸であるが、本人にしてみればそれが幸せ?という話が多く、それが返って、悲哀を浮き出している。
「アルマジロの手」 怪談としてはオーソドックスなパターン 南米風に味付けしている 「心中狸」 夜の淡路・洲本城にて化け狸の悲恋話を聞く もてない男は悲観的 「月と鮟鱇男」 若い愛人に会社をのっとられるおっさん 自然界に定められた負け組 「海亀祭の夜」 徳島の東南部じゃ海亀の産卵をことほぐ 亀に...続きを読むは迷惑かもしれない 「蓮根ボーイ」 終戦直後、福岡市西部の沼沢地にて 最底辺の労働に従事する美少年 「鰻池のナルシス」 母親への愛憎が張り合う心を産み 少年をホモセクシャルに導く 「魔楽」 ホモセックスの快楽は精神的なものに限定される そう決めつけながらも興味は尽きない
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アルマジロの手―宇能鴻一郎傑作短編集―(新潮文庫)
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