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小雨の降りしきる午後、夫の暴力に耐え切れなくなった新谷泉は、家を飛び出した。隠れ場所を捜し、ごくありふれた地方都市に降り立った彼女は、狷介な高齢の女性画家に家政婦として雇われることになる。降り続く雨のなか、時間だけが静かに流れゆく日々を過ごす泉は、思いがけない人物と出会う……。追いつめられ、全てを失った男女の愛と再生の物語。芸術選奨文部科学大臣賞受賞。
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Posted by ブクログ
小池真理子さんの小説は、読んでいてとても心地よく、癒される。上品で、自然に流れる文章に引き込まれ、気付くと物語の世界に自分が居る感覚・・何度も味わっている。大好きな作家さん。
映画監督の夫が振るう暴力に耐えかね行方をくらませた泉と、仕事の過程で罠に嵌められて麻薬所持の容疑者となり、警察の追跡から逃れてきたライターの鉄治。取材絡みで過去に一度だけ接点のあったふたりが、流れ着いた場末の街で偶然にも顔を合わせ、いつしか刹那的恋愛関係へと至る様子を描いた本作の展開は、小池真理子流...続きを読むハードボイルドの様相を呈し、その完成度の高さは私がこれまで目を通してきた彼女の著作のなかでも三本の指に入るマスターピースと言っていい。後半は頁を繰る手が止まらず、一気読みに近かった 訳アリの泉と鉄治。余計な詮索抜きに前者を住み込みの家政婦として雇う老画家の八重子、後者を従業員として雇うゲイバーの主・サクラ。共に口は悪いが人情味溢れる彼女たちの個性がストーリーにアクセントをもたらす。そして何よりも忘れてならないのが八重子の住まいの中庭に立つ無花果の木だ。実のなかでひっそりと隠れるように花を咲かす無花果は世間から隔絶して生きる四人の登場人物の象徴ともなっており、随所で存在感を放つ 小池真理子は物語のエンディングを描くのが取り分け上手い作家だと認識するが、この小説も例外ではなく、結び方が大変いい。先頃読んだ「モンローが死んだ日」にも通じるラストに、思わず私の視界は涙で霞んだ
あぁ〜、やっぱり小池真理子さんは、良いわ!すごい事件が起きるとか、犯人探しとかなくても、もう、グイグイと読まされてしまう。小池真理子さんは、美しい文を書くけれど、それは決して女らしいとか綺麗とかいうことだけではなく、丁寧さと、深みのある力強さと、リアリティがあるので、恋愛ものでも、ミステリーでも、ホ...続きを読むラーでも、良い意味で、品の良い味わいがあるのです! 私自身は「何もかも捨てて見知らぬ地へ行く」ということをする勇気もないし、幸い、逃げなきゃならない事情に陥ったこともないけれど…。それしか選択はないと思えるほど…だけど、死ぬことは絶対考えない、という主人公の泉の心情に、終始いろいろと感じながら読んでいました。 女性画家の八重子も、“世界お人好し選手権があったらグランプリ”になるくらい”の(笑)おかまのサクラも、言葉は乱暴だけど、心根の優しさがあり、とっても良い味出してたなぁ。 黙々と、ただただ生きていった泉に寄り添い、ラストは…良かった。泣けました。 印象的だったところ少し。(人生ってワード多くなっちゃった) ーーーーー 失うものなど、もう何もなかった。だからこそ生きのびることができる、というのは、人生の途方もない皮肉だった。 自分が負わされた傷。図らずも自分が悪魔になって相手に刻みこんでしまった傷。それらを隠蔽し、風化させ、忘れてしまったような顔をしながら、飄々と生きていく以外、方法がないのが人生なのだ。 あたしはね、理由が何であろうが、女に暴力をふるう男は全員、死ねばいいと思ってんだよ。同じクズでもいろんなのがいるけど、そういう男は最低のクズだ。 子を作れば、何かと悩みのたねになるし、作らなかったら作らなかったで、後悔のたねになる。人生は難しいさね。 まじめに答えられると腹が立つから、笑ってりゃいいのよ。あんたも馬鹿ね。 変わり身を早くしなくちゃ、生きていけないじゃないの。人生これすべてサバイバルよ。 ーーーーー
追い詰められた時 あでもなく辿り着いた土地で 彼女にとっていい出会いがあり 悲しい別れもあったけれど ハッピーエンドもありで 最後、サクラの存在が良かった。 サクラバーに行ってみたい
よかった。 泉の追い詰められている感じがリアルで自分も逃げ回っているような気持ちになった。 キャラの強い人たちが周りに多いけれど、それもなんだかよかった。 サクラのバーに行ってみたい。
「ドラマ的展開」が面白く、どんどん読み進めてしまう系統の物語だった。人間ドラマ+微サスペンスという風情。 有名な映画監督を夫に持つ新谷泉は、度重なる夫からの暴力に耐えかねて、ある日夫が不在のうちに家を出た。 そして流れ着いた寂れた地方都市で、老齢の女性画家の家での住み込み家政婦の仕事に偶然ありつき...続きを読む、身を潜めて暮らし始める。 夫に探し当てられるのではないかと怯えながら暮らす中、主である画家の付き添いで行った街のゲイバーで、かつて関わりのあったある男と再会してしまう。 後ろ暗い雰囲気が全開で、泉の怯えが文体からも伝わってくる。 そんな中「ある男」の塚本と再会したことが、泉の人生をがらりと変える。 彼とは良くない因縁があり会いたくない相手だったが、とある犯罪の濡れ衣を着せられて逃亡した末にこの街に流れ着いたという泉と遠からずな事情を抱えていたことが、2人を引き寄せ合うエネルギーとなる。 泉はある意味とてもラッキーで、逃亡先で出逢った画家の八重子やゲイバー店主のサクラなど、まっすぐに「良い人」ではないものの情が深い人たちに恵まれて、人生が好転していった。 人生の流れを左右するのはやはり出逢いなのだと思わされる。 個人的には、もっとゴタゴタ一悶着も二悶着もありそうな気がしたけれど、わりとストレートにあっさりした流れだったように思った。 やじうま的感覚で、ゴタゴタを少し期待してしまったのかも。笑 厚みのある本だけどあっという間に読み切った。 住み込み先の庭に成る無花果がところどころ効果的に現れて、物語にそこはかとないエロティックさを添えていた。
登場人物が少ない事もあり、主人公の泉には全篇通してかなり感情移入しながら読み進める事が出来ました。 夫から理不尽な暴力を受けていた泉 無実の罪を着せられて逃亡する塚本。 理不尽な事が許せない体質なので2人の逃げ隠れしなければいけない状況がもどかしく辛く可哀想で堪りませんでした。 泉が身を寄...続きを読むせた家の画家、天坊八重子と塚本が世話になったおかまのサクラの2人の人物描写も見事で絶えず脳内映像で動いていました。 泉と塚本の行く末が気になり一気に読み進めましたが、しっくりと来るラストで読後感も満足です。
どこかで見たようなベタなストーリーだけど、なかなか好きな話でした。 先も読めて、最後も予想通り。 でも好きだなぁ〜
ありそうでない、なさそうである、 全体的にそんな感じ。 恋も日常も。 なので、映画化された理由がよくわかる。 小池真理子さんの中では好きなほう。
古本屋さんで題名に惹かれ手に取りました。 さらさらと読める美しい文章。大きなことは起きないけれど、ページを捲る手が止まらず一気に読みました。個人的にサクラさんに勇気をたくさんもらった。書かれた時代のマイノリティは今よりもっともっと大変だっただろうに、その精神の強さと美しさに感服。全ての人が愛する人た...続きを読むちと幸せであってほしい願う小説でした。
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