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庭・池・電燈付二階屋。汽車駅・銭湯近接。四季折々、草・花・鳥・獣・仔竜・小鬼・河童・人魚・竹精・桜鬼・聖母・亡友等々々出没数多……本書は、百年まえ、天地自然の「気」たちと、文明の進歩とやらに今ひとつ棹さしかねてる新米精神労働者の「私」=綿貫征四郎と、庭つき池つき電燈つき二階屋との、のびやかな交歓の記録である。――綿貫征四郎の随筆「烏蘞苺記(やぶがらしのき)」を巻末に収録。
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Posted by ブクログ
はじめのサルスベリの話から引き込まれてっぱなし。 心地よいリズムの文体でとても優しくて、マジックリアリズムな世界なんだけれど本当に日常で背伸びもない等身大の登場人物。自然と季節の描写も美しく、 漫画化の発表もタイムリーにあってそちらも読んでみようと思う。
時は明治。場所は京都疏水べり。湖で消息をたった旧友の実家の「家守」をすることになった青年文士が、その家での日常を語る、それぞれ植物の名前を題とする28の短編。その殆どの日常にするりと印象的な怪異が起こる。しかし淡々とした語り口と主人公の周りの人々がそれを何の不思議もなく受け入れているせいで、少しも驚...続きを読む異や異様さはなく、とても自然に感じられる。筆の妙。古風で端正な文体が素晴らしい。何度も読み返すべき一書。買ってよかった。
ゆるゆる、あわあわと不思議な日常が綴られた一冊。 「左(さ)は学士綿貫征四郎(わたぬきせいしろう)の著述せしもの。」という一文から始まる本書。 小説家を志す主人公の綿貫征四郎は親友の高堂(こうどう)の父親から「年老いたので嫁に行った娘の近くに隠居する、ついてはこの家の守をしてくれないか」という話...続きを読むを持ち掛けられる。人の住まない家はすぐに傷むので、綿貫がここで暮らして毎日窓の開け閉めをしてくれるのならば、いくばくかの月謝を払おうという申し出に対し、綿貫は英語学校の非常勤講師という副業を辞め、いそいそとこの一軒家で暮らし始める。 私にはピンと来なかったのだけれど「山一つ越えたとろにある湖」「家の北側は山になっている。山の裾(すそ)には湖から引いた疏水(そすい)が走っている。」といった描写から、地元の人などには京都の山科(やましな)辺りのことを書いているな、と見当がつくらしい。湖は琵琶湖のことだ。 ネットで検索をしてみると山科の地元の人が本の記述に合わせて写真と解説文を掲載している個人サイトを見つけた。周辺マップまで作ってあるので実際に散策してみたくなる。本文の中で土地名が具体的に示されることは無い。けれど綿貫の暮らしぶりを読んでいるとそういったことが読み取れる描写となっているようだ。興味深かった。サイトを制作した方は本当にこの作品を読んだ時に嬉しかったんだろうな。 時代も明確に示されることはない。けれど読んでいると何となく「明治くらいの話かな」と分かる。帯文にも「それはついこの間、ほんの百年前の物語。」とある。解説にも「明治三十年後半くらいを想像すればいいのか」と書いてあった。 物語はすべて植物名の全二十八章から成り立つ。 ・サルスベリ ・都わすれ ・ヒツジグサ ・ダァリヤ ・ドクダミ ・カラスウリ ・竹の花 ・白木蓮 ・木槿(むくげ) ・ツリガネニンジン ・南蛮ギセル ・紅葉 ・葛(くず) ・萩(はぎ) ・ススキ ・ホトトギス ・野菊 ・ネズ ・サザンカ ・リュウノヒゲ ・檸檬 ・南天 ・ふきのとう ・セツブンソウ ・貝母(ばいも) ・山椒(さんしょう) ・桜 ・葡萄(ぶどう) 綿貫が家に移り住んでから手間をかけてやった庭のサルスベリが二十年ぶりに満開の花を咲かせたところから物語がはじまる。 ボート部に所属していて湖でボートを漕いでいる最中に行方不明になり死亡した綿貫の親友、高堂が床の間の掛け軸からやってきて「サルスベリのやつが、おまえに懸想している。」と教えてくれる。それで何が起こるかというと特に大きな事件も起こらず次のお話へといく。 読んで分かる通り超常的な事が次々と起こっている。けれど最初こそ河童が出たり、小鬼が出たりすることを珍しがりこそすれ、すぐにそんなものかと受け入れてしまう。また次の話へと進む。章ごとに話が完結するので短編集のような本なのだが、登場人物の会話等から全部の章は時系列で進んでいるようである。日記帳みたいに。 ただ、6月~9月に花が咲く「サルスベリ」から始まって7つ目の章の「竹の花」までは私の世界の四季と合っているように思えるのだが、次の8つ目の章の「白木蓮」は3月~4月に咲く花である。冬が来ていない。 17番目の「野菊」と18番目の「ネズ」19番目の「サザンカ」あたりも厳しい冬の描写が書かれてなくて、冬が無いような感じがする。そういえば夏の暑さにうだっているという話も無かった。 ここが京都というなら盆地特有の「夏は暑く、冬は寒い」という激しい寒暖差があるはずなのだけれど、ずっと気持ちの良い初春から晩秋あたりを繰り返しているように見える。 もしかしたら冬と夏の記録を書いていない、という設定なのかもしれない。しかし、最後の二十八章で「サルスベリの花がいくつかほころび始めているのに気づいた。」という記述があるので一章の時の季節に向かっている風だ。この世界ではこういった具合に良い季節だけを気持ちよく巡っているのではないか。 似ているようで現実世界とは違う、ちょっと極楽めいた所なのだろう。 この極楽めいた場所で清貧の精神を持って生活する主人公の姿勢が気持ちが良く、幻想的な話で読後感が良い。本当に素敵な一冊。
読後の痺れるような爽快感。無人島に持って行くなら、こういう本も欲しい。 征四郎にとって高堂は、自分と対を成すような人。自分でそこまで自覚していなくても、きっと憧れや尊敬を感じていた、本当に大切な友だったのだろう。そんな友を亡くし、悲しみより寂しさの方が強かったのではないか。 そのぽっかり開いてしま...続きを読むった穴を埋めていくのは、木々や花など自然界のもの、妖怪、優しい隣のおかみさん、新しい大切な相棒のゴローなど、征四郎と絶妙な距離を保ってくれるものたちとの日々の暮らし。そしてあちらの世界から時々現れる高堂その人。特にこの高堂との、静かで不安定で無骨な男同士のやりとりが、私にはキュンときた。 大切な友人の家に暮らし、色んなことに巻き込まれる中で、征四郎は根無草から知らぬ間にこの家の地に少しずつ根を張っていく。憂いのない魅惑的なあの世へ誘われても、彼はこの世でまだ生き続けることを決意する。 生きることは楽ではない。死んだ方が楽なのかもしれない。でも大切な守り続けたい何かがあれば、人間は踏ん張って生き続けることができる。征四郎にとってそれはこの高堂の家と、高堂が大切にしていた周りのものたちを守ることであり、高堂という大切な友がいたということをこれから書き残していくことなのだろう。
毎日少しずつ電車で読んだ。学生の頃に読んだ時よりも今読んだ方が好きなのは、「家」や「生活」がより自分のコントロール範囲に入ったからかな?
とても世界観が好きで良かった。梨木香歩さんが素晴らしいと思って調べてみたら、『西の魔女が死んだ』の作者という事が分かり再度購入し、再読する。
とても不思議な物語。なのになぜか懐かしいような、ずっと浸っていたいような気持ちにさせられる。 この空気感が好きすぎて、久しぶりにこれから何度も読み返したい一冊ができた。
不思議な物語 物書きの綿貫征四郎は亡くなった高堂の家のもりをすることになる 亡くなったはずの高堂が時折り現れたり サルスベリとの対話がなされたり たぬきやきつねに化かされたり 河童の抜け殻が落ちてたり 日本的な、目に見えない五感で感じれるものを大事にしたいと思う
ヤッッッバ、どストライクすぎて死んだ。梨木香歩、実ははじめて読んだのだけど、こんなにすばらしい文章をお書きになるの???やばすぎん???(語彙力消失)うつくしい日本語の使い方もさながら、物語もすっごくよかった。まさに家守綺譚。妖しく、ふしぎで、やさしいのかやさしくないのかときどきわからなくなるような...続きを読む、けれども穏やかな非日常。この世界観にいつまでもずぶずぶと沈んでいたくて読み続けていたら、一気読みしてしまっていた。はああ、わたしが死んだらこの本もいっしょに棺桶にぶち込んでほしい。
梨木香歩『家守綺譚』は、静かな不思議が詰まった物語でした。 庭の木が主人公に恋をする場面など、奇妙なのにどこか落ち着いています。 死者との再会も、自然との会話も、日常の延長のように描かれていて驚きました。 大きな事件はないけれど、季節や植物の描写が心に残ります。 読んだあと、身のまわりの自然が少...続きを読むし違って見えるようになりました。 静かな時間に、また読み返したくなる一冊です。
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家守綺譚(新潮文庫)
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梨木香歩
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