前から気になっていたけれど、この方の本を読むのは初めてだ。
これはすごく読みやすく、面白く、気持ちが楽になる本だった。
自身が躁鬱病と診断されていて、
活動として他の方の悩みを聞く「いのっちの電話」というのを通じて、
2万人近い人と話してきた。
それを初めて、公開のワークショップという形でやってみたのがこの本の内容。
ホワイトボードひとつで仕切った架空の診察室の態で、
1対1で悩みを聞きながらも、その話していることはその場にいるみんなが聞いている。
人の悩みを聞くことで、自分と同じであることに気付いたり、
そもそもそれは悩みなのかということに気付いたりする。
悩んでいる当人は、自分の中でぐるぐると、自分だけが悩んでいると堂々巡りをしているが
いざ声に出してみると、見えるもの、分かってくるものが多くある。
坂口さん自身も、処方された薬ではどうにもならず、
自分が心地よく過ごせるための工夫をひとつひとつ試しながら今の生活を見つけている。
身をもって感じていること、考え方、やり方は、同じような悩みをもっている人にも役に立つ。
声に出すこと、語ること、聞くことで良くなっていくことはたくさんある。
それこそがその人だけの「薬」になる。
本を読んで感じたのは、
悩んでいる人はインプットばかりで、アウトプットができていないのが大きな原因ということ。
人と比べたり、ダメだと思ったり、何にも興味がもてなかったりするのは、
中にたまりまくったものが、外に出せていないから。
その塊が体調や気持ちに影響を与えてしまう。
だから「つくる」ことで、外に出すことが大事。
自分なりのアウトプットを見つける、それが自分の薬をつくること。
ダメだと滞っているようでも、実際は自分の好きなもの、やりたいことはあって、
そこで「企画書」を作ってみるのも一つの方法。
キャスティングなど思いついたままに決めて、
実現のための方法を調べ上げて、作って、でもやらない。
この「やらない」ってのがすごいと思った。
やる、となるとハードルは高いし、出来ないことがまた負い目になってしまう。
やらないから、思い切ったことでも書けるし、飽きたらやめればいいし、お金もかからない。
でもちゃんと作ればひょっとしたら、誰かがお金を出してくれてやれてしまうかもしれない。
また「企画書」と思ってちゃんと厳密にやろうとすると続かないので、
テキトーに、気楽に、まず始めてしまうのが大事。
インプットだって、偶然に何気なくテキトーに入ってきているのだから同じような気楽さで。
作ること、表に出すことは大事だけど、気まぐれな力に振りまわされないように、
日課を決めて、同じようにルーチンを続けることが、日々を落ち着かせる薬になる。
作ったものは見てもらうのも大事で、そういう人がまだ見つからなくても、
坂口さんがまず最初の友人になり、見せる人になってくれるというのが心強い。
出来なくて辛いのは、そもそもやりたくないことをやらされているから、という気付きも大きい。
そんな場所からは逃げてOK。
悩みは同じようなのに、やりたいと思うこと、興味を持っていることは人それぞれ。
そこが面白い。
板ひとつで作られた架空の診察室から、筒抜けで共有する人の話は、
声にすることで声にした人が救われ、聞いている人も救われる。
「躁鬱病」などの症例名をつけられる前に、
話すこと聞くことから氷解していく悩みや病はたくさんあるはず。
こころみでやったワークショップは、大きな可能性を見つけたのではないかな。