作品一覧

  • いかれころ(新潮文庫)
    5.0
    1巻506円 (税込)
    昭和の終わり、南河内に暮らす一族の娘に縁談が持ち上がる。女性は25歳までにと見合い結婚する者も多い時代。本人の考えを他所に、結納金や世間体を巡り親戚中の思惑が忙しくぶつかり合う。その喧噪を、分家に暮らす4歳の奈々子はじっと見つめていた――「家」がもたらす奇妙なせめぎ合いを豊かに描き、新人らしからぬ力量と選委員が絶賛、三島由紀夫賞&新潮新人賞ダブル受賞のデビュー作。(解説・町田康)
  • 骨を撫でる
    4.0
    1巻1,980円 (税込)
    「きょう日、みな金、金、金や。けったくそ悪い」どの家にもそれぞれ汚点となる人間がいた。そこから家族にがたがくるのか、家族にがたがきているから勝手をする人間が出てくるのか。わりを食うのは優しく、弱い立場の人間だ――。土地と血縁に縛られ、しぶとく、したたかに生きる人間の姿を描き出す表題作ほか一篇収録。

ユーザーレビュー

  • いかれころ(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    よかった。
    4歳の幼児を視点人物にしているが、その記述は三十数年後に回想しながら行っている。
    ために、当時は見えなかったあれこれを分析する冷静さと、当時見えた世界の豊饒さと冷酷さとが、混じって融合して。
    文体がいい。
    インタビューによれば文体について、作者は石牟礼道子「椿の海の記」からの影響を語っているが、題材からはどうしたって中上健次を思い出さざるを得ない。
    土地や口調からも。
    どうなんだろうか。
    しかも、少女の見た世界、という視点設定ではあっても、実際は母久美子の強烈さが、裏テーマ。
    となると、中上健次の「鳳仙花」のような今後が想像される。
    ネットで知っただけだが、実際、次作「骨を撫でる」

    0
    2024年07月31日
  • いかれころ(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    幼女の頃の記憶を回想し、家族・一族の歪みや窮屈さをとらえる構図。家族とは何か問われる今の時代らしいテーマだと思う。

    大人は子供を半人前と考えて子供の前で油断してさまざまなことを晒し、それを子供は繊細な感覚で正確に捉えている。
    子供を主人公とする作品は、子供が観察者として最適だからなのかと思わさせられた。言葉にしないだけで子供はたくさんの情報を頭に抱えている。

    心の移ろいよりも情景の描写が多く、言葉にせずとも様々なものを感じさせる。また、全体の不気味さや暗さに胸が詰まると思えば、草花の描写が美しくそのバランスが素晴らしかった。静かな作品ながら、するすると読ませる力がある。

    志保子のカゴの中

    0
    2022年03月29日
  • 骨を撫でる

    Posted by ブクログ

    「骨を撫でる」と「青いポポの果実」の2作品。ピンと張った空気から来る緊張感、ゾクゾク、ゾワゾワ感がこみ上げてくる。どちらかと言うと負の感情を抱きがちな作品ですが、それでも読ませる力がある話。
    「骨を」は、「家」「血」「土地」などという田舎特有の閉塞感のあふれる環境で生きる人たちの話。
    「青い」は大雑把にいうと幼年期・成熟期の生と性の話。どちらも、「ああ、この人たちにとっては生き辛いのだろうな。どうにかならないのかな」と思いながら読んだ。読後感は悪いのですが、気になる作家さんです。 

    0
    2021年10月14日

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