町屋良平の一覧
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表題作の「青が破れる」に「脱皮ボーイ」「読書」の短編、さらに「青が破れる」のマンガ、尾崎世界観との対談も併録された短編集。
何はともあれ、「青が破れる」である。文庫の紹介文に文藝賞の際の評価なんだろうけど、藤沢周、保坂和志、町田康が絶賛したこともわかる佳作。
文章の長短、リズムの変化、淡々とした描写
...続きを読むなど、作者が小説を使って新たな表現というか体験を描こうと模索していることがよくわかる。それは例えば次のような文章に表れていると思う。
「ハルオの彼女は、「ボクシングやってるの?」とはいわなかった。/「はー、空がたっかー」/といった。」
「夏澄さんに/・・・・・・ きて/とまたいわれ、夏澄さんちにいく。午前十時。/着いた瞬間に、「よかった。はやくきてくれて、ありがとう。留守番お願い」といわれた。鍵を摑んだまま、玄関の前に立ち塞がるように待っていた。/夏澄さんに「ありがとう」なんていわれるのは、初めてのようなきがした。」
ひとつ目は表紙にも引用されているので印象的だけど、二つ目は適当にページを開いて目についたものの引用だ。まあ、全体的にこんな感じで終始文章を味わいながら読ませてもらった。
短編「脱皮ボーイ」「読書」は「青が破れる」とはまた少し文章のテイストが異なる。「読書」は古井由吉や松浦寿輝を思い出させた。
芥川賞受賞作も読んでみたいと思った。
Posted by ブクログ
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ボクサー志望の「おれ」(秋吉)、友人のハルオ、その彼女で難病のとう子、秋吉の不倫相手の夏澄、ボクサー仲間の梅生・・・。徐々に死に向かっていくのだけれど、独特なひらがなと漢字の混じり合いの文体に、柔らかさも感じました。そこが救いかも。
彼らのギリギリのところで生きている緊張感や精神の危うさを感じながら
...続きを読む、こういう気持ちって身体的な経験でなくても精神的な経験として誰もが通っていく過程なのかもしれない。
とう子の「空たっかー」という一言が忘れられない。こういう作品好きです。
Posted by ブクログ
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読書開始日:2022年4月7日
読書終了日:2022年4月8日
所感
憧れと嫉妬って紙一重だけど、
その一重部分を表現するのが本当に上手いなと思う。
ただただ憧れてなにかを諦めるわけではなく、かといって嫉妬をガソリンにして、粘るわけでもなく、憧れに対して爽やかに近づく姿勢。
自分は各作品の主人公に憧
...続きを読むれる。
本作も好きな作品だった。
楽譜や音楽の新たな一面も見れた。
筆者からは芸術の色んな面を見せてもらっている。さまざまなものに興味を持つ。
一番好きなシーンは、ショパコン当日の名古屋の喫茶店で、潮里と源元の完璧なカップル感に、きちんとぜつぼうできたこと。
なにかの天才が宿った瞬間だった。
天才の考え方もとても好きだった。
他にも好きな文章がたくさん。
嗜虐性と悪感情は関係無い。嗜虐性が猫と女を寄せることすら、というか
女の子に冷たくし、女の子にキラキラとすかれる
女の子は優しい放任より、誠実な奔放の方が紙一重で好き
好意も愛情も無いからこその絆
死者との交信=楽譜、楽譜は絶対
すきな相手にすきと告げる鮮明な言語化
文学=自分から離れた自分=それが真の自分
印象的な光景
みんな目に映るものを信じるけど、みんな目に写ってるのは同じじゃ無い。同じも同じじゃ無いも証明できない
うまく絶望できていいなあ、絶望も才能のうち
艱難
そういうジンクスを完成させている途中
視聴覚は遅れてやってくる。みんな未来を見ながら遅れた現実を生きる。過去を見つめる音楽が、一本の線でつなげてくれる?
訥々
現代社会にコミットする最適解は、過去を尊重、未来へ活かすため、今の言語を目一杯犠牲にする。スクラップアンドビルド
ショパンの200年前を現在に繋げる運動
天才は現象であり、人間では無い
才能の言外、語られない才能周辺を書きたい
食パン=白うさぎのようなしょっかん
鬱は鬱を脱却する動悸が無いから鬱。深い底で居心地の良い絶望にさらされ、そこには能動も消極も無い。客観的にはそこから抜け出すコツなんて知ってる
蹲る
呻吟
寺田くんの誠実なルーティンワークの背中に、かれの心痛をぼくはみる
いくらぼくが純粋だときても、それを証明する運動を一泊要する時点で純粋とは程遠い
破綻した文法にあらわれる客観思考
完璧なカップル感を前に、絶望
天才を呼んで宿す、宿すことを慣らす
才能のないぼくは、愛のないぼくは、まだ孤独を知らない
ゾンビになろう
懊悩
音と音を繋げる、音楽を志向する。記憶も同じ
Posted by ブクログ
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読書開始日:2022年3月2日
読書終了日:2022年3月3日
所感
とても好きな作品。
装画通りの読後感。
インドが一瞬でも舞台になる作品はなぜか自分の中で外れがない気がする。
岳文がかなり拗らせてる。
でも自分と重なる部分は沢山ある。
さも自分しか考えつかないような思想を神秘に感じ、ひけらかして
...続きを読むしまう感じなんか特に。
冬実の岳文への一言は完全に自分へもぶっ刺さった。「女のこの言外のかしこさを、舐めたらだめだよ。あなた程度の神秘なんて、みんなすぐにわかる、でもことばにしないだけ」
惚れた女のこにたびたび水に落とされる部分もわかる。本当は落とされていないんだろうけど、岳文の記憶の脚色。
ずぶずぶに落ちていく気持ちよさもわかる。
破壊衝動。
されたい衝動。
駆られる。
純粋は犯罪であり、暴力というのもとても共感できる。なんか不思議だ、純粋は良さだというが、純粋はすぎると上記の通り。
この世に純粋なんてものは実はないんだ。
ちょうどいいところを純粋と言って、それがわからないから岳文なんだ。
なんか通ったことのある道を少しだけ違う人格で見てるような気持ちになった。
これまでを思い出せるいい作品。
日記がモチーフになってるからかな。
良作。
手のひらと手のひらが繋がる経験は、他の何にも代替の効かない、まったき閃光
こういうときに、季節が役
いわせてもらえた、と言う感謝の気持ちが湧き上がる
体温と拒絶の温度との落差に耐え切れず、ぼくはしずかにからだを離した
現世的幸福と幻想的幸福を区別すべきでない。
あまり現実に拘泥すると、現実の範囲が狭まる
日記を誰かに見せると、都合の良い物語になる。岳文は記憶の脚色を自覚している
女のこの言外のかしこさを、舐めたらだめだよ。あなた程度の神秘なんて、みんなすぐにわかる、でもことばにしないだけ
ぼくと冬実の会えない時間は、こんなにも違った
垂れる滴の圧倒的おもさが、じぶんのからだの外枠を象る
言語よりは非言語、意識よりは無意識で会話していると信じているぼくらの、拭いがたいノスタルジー
慇懃無礼
合理的にことを進めるだけの謝意
官能的な検索
長考を、待っててくれた
わたしは男らしいよりやさしいを優先する。そりゃときどきは、男らしい本能が欲しい時、女の本能が燃える時もある。だけどわたしの個性は人間としての優しさを優先する
耳朶をはむ、魔除け
ことばの介在しない曼荼羅
からだのすみずみにまでリズムを充填させ、なんでもない道でも楽しそうに歩く人間が、いつだってモテる
他人のことが怖いから、他人に自分をみつけて、委ねようとする。
自分を、他人に預ける。
好きな女の子の心の中に住みたかった
恋をしているときは心身をまるごと相手に預けたかった。それでもあまる個の核が残る。それが厭わしい。
7/10くらいが共感できるようなことを、情熱と自分の文体を保ち続けながら書き、言うこと
純粋こそが暴力、犯罪
岳文の純粋は壊す。ゆえに小さくなりたい。
変な衝動は、純粋なんだ
能動でも意思でもないなにかが、たびたび岳文を水に落とす、どこかへいけと
日記、まちがっていたのは実感とことばの関係ではない、流れ
キャッチの距離
Posted by ブクログ
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他人と自分は絶対的に違い、思考は共有できないということ。
さらには、自分の思考さえ人は言語化できないということ。
それでも、ひとは「バラバラのまま重なり合える」ということ。その美しさ。涙が出るほどの、美しさ。
この小説のやっていることは、星野源が「うちで踊ろう」で提示した世界の美しさと同じだと思う
...続きを読む。
それぞれの登場人物の思考が、明確な区別なく、入り乱れる構造をとる本作。それぞれの思考は言語化されているようでありながら完全には言語化されえず、その人物自身にもその正体は把握できないし、まして他人にそれは絶対に伝わらない。
しかし、明確に違う人たちが同じ世界に同じ時間を生きて、四季が過ぎていくということ。その美しさに勝るものなどない、ということがはっきりと伝わってくる。
そして彼らの教室への馴染めなさ。それはかつての自分のそれで、その熱量のない馴染めなさ=それが決して切実な問題ではないということがとても気持ち良い。
類型的な学生生活の描き方を明確に拒絶することによって達成される、解像度の高い描写。
町屋良平は、やはり天才である。
Posted by ブクログ
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