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音大を中退した小説家志望の「ぼく」、同級生は魔法のような音を奏でるピアニストの卵。その彼女の潮里に、ぼくは片想いしている。才能をもつ者ともたない者。それぞれが生身のからだをもって何百年という時間をこえ体現する、古典を現代に生き継ぐことの苦悩と歓び。才能と絶望と恋と友情と芸術をめぐる新・青春音楽小説!
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Posted by ブクログ
読書開始日:2022年4月7日 読書終了日:2022年4月8日 所感 憧れと嫉妬って紙一重だけど、 その一重部分を表現するのが本当に上手いなと思う。 ただただ憧れてなにかを諦めるわけではなく、かといって嫉妬をガソリンにして、粘るわけでもなく、憧れに対して爽やかに近づく姿勢。 自分は各作品の主人公に憧...続きを読むれる。 本作も好きな作品だった。 楽譜や音楽の新たな一面も見れた。 筆者からは芸術の色んな面を見せてもらっている。さまざまなものに興味を持つ。 一番好きなシーンは、ショパコン当日の名古屋の喫茶店で、潮里と源元の完璧なカップル感に、きちんとぜつぼうできたこと。 なにかの天才が宿った瞬間だった。 天才の考え方もとても好きだった。 他にも好きな文章がたくさん。 嗜虐性と悪感情は関係無い。嗜虐性が猫と女を寄せることすら、というか 女の子に冷たくし、女の子にキラキラとすかれる 女の子は優しい放任より、誠実な奔放の方が紙一重で好き 好意も愛情も無いからこその絆 死者との交信=楽譜、楽譜は絶対 すきな相手にすきと告げる鮮明な言語化 文学=自分から離れた自分=それが真の自分 印象的な光景 みんな目に映るものを信じるけど、みんな目に写ってるのは同じじゃ無い。同じも同じじゃ無いも証明できない うまく絶望できていいなあ、絶望も才能のうち 艱難 そういうジンクスを完成させている途中 視聴覚は遅れてやってくる。みんな未来を見ながら遅れた現実を生きる。過去を見つめる音楽が、一本の線でつなげてくれる? 訥々 現代社会にコミットする最適解は、過去を尊重、未来へ活かすため、今の言語を目一杯犠牲にする。スクラップアンドビルド ショパンの200年前を現在に繋げる運動 天才は現象であり、人間では無い 才能の言外、語られない才能周辺を書きたい 食パン=白うさぎのようなしょっかん 鬱は鬱を脱却する動悸が無いから鬱。深い底で居心地の良い絶望にさらされ、そこには能動も消極も無い。客観的にはそこから抜け出すコツなんて知ってる 蹲る 呻吟 寺田くんの誠実なルーティンワークの背中に、かれの心痛をぼくはみる いくらぼくが純粋だときても、それを証明する運動を一泊要する時点で純粋とは程遠い 破綻した文法にあらわれる客観思考 完璧なカップル感を前に、絶望 天才を呼んで宿す、宿すことを慣らす 才能のないぼくは、愛のないぼくは、まだ孤独を知らない ゾンビになろう 懊悩 音と音を繋げる、音楽を志向する。記憶も同じ
刊行当時、出版社の営業から珍しく営業がかかったことを覚えている。私はウェブマガジンの編集者だった。 町屋良平の過去作と比べることが許されるなら、この作品は、なんというか当人の「湧き上がる文学的な衝動」(という嘘くさくて軽薄な言い方は極めて失礼と承知)とか、だいたいそれに類する、有り体に言えばモチベ...続きを読むーションの種類が異なっていてで、外的要因によって企画され、細やかな取材やリサーチによって固めあげられた作品なのかな、という印象をなんとなく、だかしかし強く受けた。なんでこの作品はこんなに固有名詞が多いのだろうか。 『しき』にあった福原鈴音のピアノコンクールの場面や、描かれなかったプロセスを、拡大して、細密に言語化したような作品として私は理解した。がしかし、研ぎ澄まされた身体の感覚、運動神経から思考と言葉を立ち上げる天才が、なぜこの本を書いたのかやっぱりイマイチよくわからないし、あくまで個人の感想としてという留保の範囲で、本作をどう位置付けていいのか謎。 全体としての印象は、他の作品とそれほど変わらないような気がするのだが、細部のあり方がとても気になった(特に中盤まで)。それは前述した作品の成り立ちへの勝手な妄想を根拠づけそうな感じがして、あまり深く考えたくないと思ったりした。 中途半端なところで書き出した感想は、やはりガタガタに歯車が狂っている。私は動揺して、だが安心している。とはいえ読み終えると、やはり町屋良平は天才なのだから、いつものように食らった。名古屋行きからのコンクールへの怒涛の流れが凄まじい。 一音目に混じる不協和音、それを引きずりながらも持ち直しはじめる第二楽章、そして悪魔的舞踏センスによる圧巻の第三楽章という源元の演奏は、そのまままさに本作の構造のアナロジーとなる。書き出しを捨てて、アナロジーを成立させることを選んだ町屋良平の文学者的冒険心に圧倒される。 「青春ぽえむ」という感想を見たが、それは本作を物語としてのみ認識しようとする意思の結果からだろう。これは小説であり、身体と言語と感覚について、いかに描出できるかの実践プロセスそのものだ。だからやはり、人は他人と同じ世界を見ることが基本的には叶わないということを認識させられる。そのことに絶望しつつ、そこにしかない希望というものもあるのだろう。それが文学の追い求めるものなのかもしれないと思ったりする。
淡い色の金平糖を常温の水に入れて優しく転がしたような、物足りない甘美さのある一冊。小説ってこういうのだよなぁと思った。意味分からんところとストーリー性の比率が自分にとってはちょうど良かった、なんというか曖昧さとか不明瞭さが邪魔になってない、ちゃんと余韻になっている。登場人物のすべてを簡潔に説明しなく...続きを読むたっていい。そのバランス感覚が肌に合う。 恩田陸の「蜜蜂と遠雷」を思い出したけど、ピアノってほんと小説に向くなぁ。どちらもピアノ奏者を介して、あらゆる表現のスペースを獲得しているというかなんというか…誰かや何かを宿らせたり人格憑依させるの、RPGにおける魔法のエフェクトみたいなもんで、何か引き込まれるものがある。 独特な鉤括弧の使い方や多用される平仮名も、意図は汲みきれんけど読み進める上で邪魔にはならない。文体も好き。 あと、34項「すきな相手にすきと告げる鮮明な言語化は、いちど経験したら病みつきになった」にはめちゃくちゃ同意した。そうそうそうなんだよってなった。これなんでなんだろうな。
主人公がたんたんとしているせいか、曇りガラスからのぞいてるようなきもちで読んだ なんかすこし幸せでいい
今ちょうどショパンコンクールが開催されているから、何か関連した本がないかな、と思ったらこんな面白い本が。 音大でピアノを学んでる源元と、音大を辞めて小説家を目指してる主人公。 いつも源くんはショパコンの配信を見てる。17回大会。 そんな2人を軸に源くんの彼女潮里ちゃんと、同じバイト仲間の寺田くんの奇...続きを読む妙な毎日。 読みやすかったし、なんか面白かった。
100年近く続いている「ショパン国際ピアノコンクール」予選に挑む音大生と、その友人達が繰り広げる物語。主人公は、コンクール出場者ではなく、その友人である。コンクール予選に挑む友人は、本気を出すとショパンが乗り移ったゾンビのような天才的な能力を持ち、魅力的で賢い彼女もいる。一方で、主人公は、同じ音大生...続きを読むながら、ピアノを諦めて小説に挑戦している。また、主人公の彼女に片想い中。限界を知ってピアノを諦めた心境、小説をなかなか書き出せずにもがく様子、叶わぬ恋愛など、20歳過ぎの葛藤と情熱が描かれている。どうでも良いことでトコトン悩んだり、衝動的に無茶をしてしまう学生らしさが微笑ましかった。
言語化できないものを表現する手段としての音楽。その輪郭をなぞる、理屈っぽい言葉。 なんだか自分も「本を読み続けるゾンビ」のようなものだなあと思えました。
音大を中退し小説を書く「ぼく」 ピアニストへの道を突き進む「源元」 源元の彼女で同じバイト仲間の「潮里」 常に「ぼく」から見た一人称で語られる。 挫折と羨望、そして叶わぬ恋… 独特の文体、唐突に挿入される「ぼく」の小説。 好き嫌いが分かれそう。
こじらせ系の青春ストーリー。 青春って泥臭くて、エゴや欲にまみれていて、めんどくさくて、でも美しいって言われる不思議なものだなと。
光がほとばしる音を言葉で紡ぐ作品。 空想と会話とモノローグが散らばる様子に僕はリアリティを感じとった。
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ショパンゾンビ・コンテスタント
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町屋良平
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