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犬を連れ、白樺とモミの林にきのこ狩りにでかけていたチェーホフ。一九七七年のエルヴィスの死と、アメリカ核施設見学ツアー。ユーゴから日本へと逃れてきた女性シンガー。関東大震災の津波で生死を分けた鎌倉の夫婦。震災後に生きるわたしたちを小さな光で導く、いつか、どこかで、起こっていたこと。深い思索にみちた短篇集。
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Posted by ブクログ
ストレートに震災を描いているわけではなく、静かな筆致でじんわりと心に残る短編集です。 どの話もどこかで震災、津波、原子力に繋がっていて、被災された人、直接に被災はしなかった人、3.11を迎えたひとりひとりにそれぞれの暮らし、人生があったことをあらためて感じさせられました。
東日本大震災から想起される「地震」「津波」「原子力」をテーマに、その時そこで生きていた人々に起こったことを、史実を絡めながら著者の想像力で物語にした連作短編集。 まず、とても構成が凝っていて、一瞬エッセイか?と思うような作品もある。また、登場人物の関わりから少しずつ歴史上の事実について触れるという...続きを読む語り方で、非常に抑えた筆致に終始しており、どれもみな、歴史の上では事実はこうだったが、でも実際にそこにいた人々には、暮らしがあって、家族があって、ひとりひとりにいろいろな思いがあって、その時はこんなふうに生きていた、というプロットになっている。 それ自体は、たとえばチェルノブイリの事故であったり、ボスニアの内戦であったり、関東大震災であったり、直接の経験者でない限り、例えば被害者が何十万人だとかこういうことが起きたとか、悲惨な過去の事として理解しているつもりの事柄ばかり。 でも、そこにはやはり、10万、20万という数字ではなく、その裏に隠されたひとりひとりの人生があったのだという事実が突きつけられる。 しかも、それが決して強硬にこちらに思索を迫るのでもなく、ただ、静かに淡々と語られていく。 当事者と、それを情報として伝えるメディアと、それを知る周囲の、または他国の人々と、何を見、何を聞き、何を考え、何を感じるか。 ある意味、そのどれもが真実でどれもが真実ではない。その主体にとっての真実でしかなく、立っている位置が違えば見えるものも違う、その怖さ。 サハリンの話や、エルヴィス・プレスリーの履歴を通してみるアメリカ、ボスニアの内紛、チェルノブイリ、そして東日本大震災。 果たして、私たちはその一体何を知っているのだろう。 初めのうちはあまり好きになれなかった著者の文章であったが、読み進むにつれて強い感動を覚える、深い示唆に富む一冊。 他の作品も読んでみたいなあ。 蛇足。 「チェーホフの学校」でロシア人のキノコ狩りの話が出てくるが、ロシア人は本当にキノコが好きらしい。休日に家族でキノコ狩り、なんていうのは最もポピュラーな家族レジャーの一つだそうだ。この前読んだ「完全なる証明」でも、ポアンカレ予想を解いたペレルマンが、今やキノコ狩りで隠遁生活送っているとあったし、う~ん、なんだっけな、何かのロシアの本でもキノコ狩りについて書かれてあったのを読んだ気がする。写真も載ってた。 (最近、ロシア関連本をたくさん読んでいるので、どれだったか忘れてしまった。) チェーホフ短編集が新しく編纂されて出たやつも読みたいと思っていてチャンスがなかったが、今度こそ読んでみよう。 そして、厨川白村の話が気になり、蝶子夫人の手記が読みたくなったが、どうも本にはなっていない様子…。残念だなあ~。
純文学。 原発・原発事故、3.11震災がテーマの短編集。 「波」はそのままズバリ、3.11の震災...津波...そのときの家族が描かれていた。全然お涙頂戴じゃないのに、感傷もなく、淡々と描かれているのに。「読んでてこんなにツライのに、でも読み続けてしまう」・・・そんな数少ない、上質な短編です。 こ...続きを読むれだけでも読むべき。 引用はほぼ「チェーホフの学校」から。(逆にこちらのほうが感傷的、) この2編だけで☆5つ、他はあまり好きじゃなかったので、 ちょっと考えて☆4にしました。
放射能と津波と地震をめぐる6つの物語。すべて3.11後に書かれている。 叙情的な「お話」でなく事実と現実に狂言回しとして架空の登場人物が配されているために、そのすべてが普遍的な静かな力を持っている。
凄まじいスピードで、自分の中で地震が風化して行く。そんなことを自覚した本でした。 地震が起こった時、ある作家が現実の前に小説のできることは…みたいなことを書いていたけど、できることなどいろいろあって、いかに生々しいエピソードで、地震に備えようという気にさせるかということもあると思う。 地震をテーマに...続きを読むはしているけど、ああいう未曾有の大災害の時の小説の力こそがこの作品の裏テーマのようにも思ったり。
短編集。 1、うらん亭‥震災のニュースを聞きながら、叔父さんを思い出す 2、波‥東北大震災のある家族、アザラシの上に乗って 3、泣く男‥プレスリーと原爆を研究するミチオさん 4、チェーホフの学校‥キノコ狩りに出かけるチェーホフ 5、神風‥サラエヴォの女性シンガーが福島の地震で故郷へ 6、橋‥関東大震...続きを読む災の津波で亡くなった厨川白村 現在と過去とそしてたぶん未来もが、とりとめもなく浮かび上がってくるままに綴られたような感がある。それが地震とか原発とかに触発されつつも、そこには営まれる日常がある。そして、切り取られた日常、あるいは思い出や記憶が、恐い物として差し出されている。
声高に昨年3月のあの震災や津波、あるいは原発事故による放射線被害という一連の出来事を語るわけではなく、それらとは遠くはなれた時代や場所での出来事を通して、ゆるやかに「あの日々」を思い起こさせる物語が6つ並んでいる。 物語の語り口の穏やかさの陰で、悲惨なことを忘れ去ってしまうことの怖さ、この日常があ...続きを読むの日から続いているのだと言う事実を突きつけられる思いにかられる。 ここに収録された作品の多くには本筋とはあまり関係のない作中話が挿入され、その時代と場所を越えた重層構造が物語を一見とらえ難いものにする。まるで関係のない時間軸で紡がれるいくつかの物語が、読み手の心のどこかで焦点を結ぶとき、実に印象深いものになるのだ。 それらはロシアの森できのこ狩りをするチェーホフの人生だったり、エルヴィス・プレスリーの生い立ちだったり、関東大震災時に鎌倉で起きたある作家の津波被害による死であったりする、、、
「チェーホフの学校」 登場人物の誰に重点が置かれているのか 今一つ分からなかったけれど キノコ狩りについて知ることができたし チェーホフを再読したくなった。 「神風」で語られる 「クロアチア」・「ドゥブログニク」そして 「福島」この小説に出会えてよかったと 読後に思えた。 「橋」は、この本のタイトル...続きを読むにピタリとはまった。
上質の文学作品。 震災後に書かれた短編集で、 津波や原発に触れる内容でした。 センシティブな問題なので、 捉え方は人それぞれだと思います。 右か左かでしか物事が判断されかねない 今日にあって貴重な一冊では無いでしょうか。 「波」「泣く男」辺りが個人的には好みでした。 面白い物ではありません。 著者の...続きを読む思索の深さに着いていくのがやっとでした。
世界が変わり、森が変わっても、人びとは生きる。震災後に生きる人たちを小さな光で導く、深い思索にみちた連作短篇集。「うらん亭」「泣く男」など全6篇を収録。 原発や原爆に何らかの関わりのある短編が並ぶ。久しぶりに上品な純文学を読んだ気がしたが、正直言ってやや退屈だった。私の純文学を読む知性・感性が鈍っ...続きを読むてきているのだとしたら問題かも。 (C)
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