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会社を首にされ、生きたまま自分の「死体」を売ってロボットにされてしまった機械技師が、人間を酷使する機械を発明して人間に復讐する「R62号の発明」、冬眠器の故障で80万年後に目を覚ました男の行動を通して現代を諷刺した先駆的SF作品「鉛の卵」、ほか「変形の記録」「人肉食用反対陳情団と三人の紳士たち」など、昭和30年前後の、思想的、方法的冒険にみちた作品12編を収録する。(解説・渡辺広士)
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Posted by ブクログ
これが70年前に書かれてるのが信じられない!表題作と、「耳の値段」がよかった。とくに「鉛の卵」は第四間氷期を思い出すようなSFでめちゃくちゃ面白くて一気に読んだ!
失業した男は死のうと思った そこに若者がやってきて 死体を売ってくれという 売られた死体は(生きてはいるが) ロボットとなり、機械を作る なんだかわからないが 復讐のような機械を‥ 盲腸を羊のものにした男 食べ物は藁 ある実験が行われた 食料不足のための準備として 噛んで噛んで噛んで 藁を飲み込ん...続きを読むでいく 人肉を食用とした人類 そのために飼育される人々 反対運動が始まる 冬眠箱に入って100年後に 目覚めるはずだった男 80万年もの月日が経って カプセルが開いた そこでみたものは‥‥ などなど なんだか背筋がぞわぞわするような なんだかあるかもしれないと 思うものやら 安部公房らしい物語が続く SFの世界であったり 戦争の悲惨さや 貧しさの末に 自殺した女性の幽霊物語などもあり 最後まで一気に読んだ どれもなにかを訴えているようで なんだかせつなくもなった
久々の安部公房面白い。こんなにSF感あふれる作品を出してたのかと驚きます。また全編に死が充満しています。自分の子供の頃は死は日常だった。ばあちゃんは死んでしまうし、じいちゃんは死んでしまうし、叔父さんは死んでしまう。恐ろしいけど、人間はいつか死んでしまう儚い存在だということ思い知らされていたんだと思...続きを読むいます。親戚付き合いも少なくなり、同居家族も少ない現代の子供は死に接する機会も少ないのかな? 冒頭の作品からして若くして失業してしまった主人公が失意のあまり自殺を図る。が、どうせ死ぬんだったら役に立ってみないかと怪しい誘いにまんまと乗ってしまう。君そんなだから会社馘にになるんだよ〜。機械はその工業的能力において人間を超えるのみならず、思考し、選択し、記憶する。では、人間の存在理由はなにか?という問いかけに対し、”機械のよきしもべとなることである”と言い切っているシーンがあります。おいおいこれまさに今の話か!と驚くとともに、うすうす勘づいてきていたけど、やっぱりそうなのかなと背筋が寒くなる。もう死んだも同然の年齢になって、機械のしもべとしてしか役に立たないなら生きている死体だが、それすらできなかったら死んだ死体だ。どっちにしろ暗い未来しかないぞ汗
大学4年生だったかな。まぁ、十何年も前のこと。ちょっとお手伝いしてたバイトのマスターが、好きな本なのだと、いくつか本を下さって、そこに安部公房の砂の女があった。それまでは、高校の教科書で赤い繭が載ってて、奇妙で怖い感じの話を書く人くらいの印象だったのだけど、 そこからどハマりして、いくつか呼んだ記...続きを読む憶がある。 でもこの初期の短編は、読んだことがなかった。 久しぶりなのもあるし、初期なのもあると思うけど、初めはちょっと入り込みにくかった。 後ろの方の、耳の値段や、鏡と呼子、鉄の卵辺りで、あぁこれこれ、そうだ、この感じ、となった。 少し長いお話の方が、私には合ってたのかも。特に鉄の卵が良かった。突飛な状況と、見方が変わることによって全然世界が違く見えてくる感じ。 今から70年とか前の話で、時代を感じるものもあれば、全然色褪せないものもある。鉄の卵のシチュエーションとか、進撃の巨人?とかDr.stones?とか思っちゃったりして。 また、読み返してみようと、思った。
小学校の高学年くらいに「棒になった男」や「他人の顔」が紹介されていたのを読んで興味を惹かれて手に取った一冊。 ファンタジーやSFか、カフカのような不条理モノか、乾いていながら、新宿ゴールデン街的な雑さと人間の粘度ある文体からにじみ出る別世界、でもそれは非常に身近で、そんな世界の話に引き込まれた。 ...続きを読むご本人も亡くなり、あまり話題にのぼるという事も無い気がする作家だが、新潮文庫に変わらずあるのが嬉しく、また懐かしく、最近読んだスタージョンあたりに刺激されて久々に手に取ってみた。 又吉くんオススメの帯がついていたが、これをきっかけに読者が増える事を期待する。 また、ラジオドラマ「R65の発明」はYouTubeにあげられているが、非常に良く出来た脚本、演出、俳優さんで、良い意味で?ゾッとする。
アヴァンギャルド。 もはや死語であったはずの前衛がこの2020年に再読して生き生きとしてしまう。 「天は人の上に人を作らず」 ある種の人たちは自らの事を選ばれた人間だと思ってはいないだろうか。 実際には誰もが誰かを選んでいるだろうし、同時に誰も誰かを選んでなどいない。 無知のヴェールという...続きを読む概念がある。生まれる以前に人間は平等だが生まれた直後に不平等となる。 生まれた国、地域、親を選ぶことはできず、ヴェールを被された状態である。 だからこそ、明るみに出た瞬間に、恵まれた存在は公共性を保持するために努めなければならない。 無知のヴェールについて、日本人はあまりにも知らなすぎ、考えが浅はかすぎるのではないか。 この短編集を通してそんなことを考えてしまう。 貧困、搾取、復讐。 こんな時代は去ったと言えるのだろうか。 「死んだ娘が歌った・・・」 からは自由意志のもとに搾取され続ける貧困農民が描かれる。 P.138『「働きながら貯金ができ、働きながら勉強できてありがとうございます」と大きな声で言い、それに続いて、みんなも同じことを声をそろえて言いました。」』 グロテスクで悪趣味だ。 しかし、これと同じことを技能実習生なる制度のもとで行なっている。 ある学校教育でもこのレトリックが美徳であると教育している。 我々日本人の本質的なグロテスクさはいっこうに変わることなく生き続けてしまっているのではないか。 自己責任論が好きな新自由主義とは、昭和ではないのか、すなわち、近代への退行でしかないのではないか。 「人肉食用反対陳情団と三人の紳士たち」 立場(階級)の差異が人の共感性を阻害してしまう。さらには高度に組織化されていればいるほど痛みや苦しみを感じ得ないようにされている。 これは単なる幻想に過ぎないのだろうか。 プレモダンな世界。 猜疑心、同調圧力、搾取、無関心。 これらは決して過ぎ去ったものではなく、この現在も継続・保続されているように思えてならない。 安部公房というアヴァンギャルドがリンボ界へ忘れ去られる時を迎えることはできるのだろうか。
相変わらずの突飛な発想力で、生から死、死からその先へとくるくる変わる短編集です。 テーマはヒューマニズム。 機械にされた人、藁を食べる人、死んだ人間が生者を観察したり、公房独特の180度の発想の転換で楽しませて…というのもありますが、これからの教訓になる一冊です。 鉛の卵で、予期しているのが怖いくら...続きを読むいに当たっているのが凄味があり、またじっくり読み直したいとも思いました。
「死んだ娘が歌った・・・・・」について 一文あらすじ 家が貧乏なために出稼ぎで上京した少女が、「自由意志」によって殺される話。 メモ 職場の上司から「自由にしてよい」と命じられ、出稼ぎ先を首になった少女は、欲しくもない自由を手に絶望して自殺する。 近代以降の人間は、自由を万人が持つべ...続きを読むき絶対不可侵の権利のごとく認識してきた。しかし、自由とは権利なのだろうか。自由とは、意図的な力が加わらない状態のことではなかったのだろうか。 自由を権利として定義づけ、あたかも義務かのように個人に課すこと、これは暴力にほかならない。これこそ、かつて自由を求めて闘った人々の共通の敵であったはずだ。金と力ある者が自由を牛耳る世界において、その逆の者がそれを謳歌できるはずもなく・・・少女は死んだ。 これは現代においても起こりえる、あるいは今まさに起きている悲劇の縮図であり、非常に諷刺の効いた作品であると思う。 「鏡と呼子」について 一文あらすじ 四六時中望遠鏡で村民を監視し、鏡と呼子をつかってあやしい動きをとる住民を告発する老姉弟の家に下宿した教師の話。 メモ 部外者である主人公が、ある奇妙な村に入り、その村の異常さを内面化して出られなくなってしまう物語。『砂の女』の筋とたいへんよく似ている。違いがあるとすれば、もちろん流れが同じなだけで細部はまったく異なるわけだが、諷刺している位相が異なるように思う。これももちろん明確なことではないが、あえて特徴を切り出すのであれば、『砂の女』が抽象的な問題を諷刺しているのに対し、『鏡と呼子』はより現実的な問題を諷刺しているのではないだろうかと思う。 『砂の女』の場合、読んだときにわたしがふと想ったのは、砂の村の住民の生活様式と雪国の住民のそれとが酷似しているということだった。「雪かきをしなければ住めない場所になぜ住むのか」と問うことは、(極端にいえば)「食べなければ生きられないのになぜ生きるのか」と問うようなもので、人間は毎日せっせと異常を積みあげているのかもしれない、なんてことを思った。 『鏡と呼子』の場合、現代の監視社会の発展に対する諷刺がはっきりと読みとれる。たとえば、望遠鏡はありとあらゆる場所に設置された監視カメラ、鏡と呼子は世界中にはりめぐらされた情報伝達システムの寓意と考えることができるし、そのなかで「問題がないことが問題」と語る村民たちは、監視社会のなかで得体の知れない不安を感じる現代人の寓意と考えることもできる。 この作品のなかでもっとも印象的だったのは、主人公の教師のスピーチと村にある道のコントラストだった。教師は次のようにいう。 「世の中には、いいこと、悪いことの、二つがあるように言われています。しかし、なにがいいことで、なにが悪いことか、はじめからはっきりとした区別があるわけではありません。(みんな、あわてるだろうな)道は はじめから道だったのではなく、人が沢山そこを通るようになってから、はじめて道になるのです。だからどの道も、かならずうねうねと曲がっているのです。それは道をきめることのむつかしさを物語っています。(名 文句だが、どこかで読んだ気もするな)だから、諸君も歩きたいと思った方なら、道がなくても歩いていく勇気をもって下さい。やがて、そこが、本当の道になるのかもしれないのですから・・・・・」 本人のいうように、たしかにありきたりな感じもしなくはないが、悪くもないスピーチだ。しかし、この常識的な発言を嘲笑するかのように、村にはただひたすらにまっすぐな道が通っている。抗うことのできない、なにか大きな力が働く世界。安倍公房はこの作品で、監視社会に潜む問題点だけをあぶり出すだけでなく、社会的圧力と闘う人ひとりの無力さと、個人を支配せんと近づく無言の構造体の異常さをあらわにしたと思う。 引用 Kは大きな音をたてて、自分の喉を飲込んだ。巨大な三角形が、大きな口を開けてすぐ後ろにせまってきているように思われた。―304頁より
安部公房との出会いは、高校2年生の時に使用していた現代文の教科書の中だった。 本書にも収録されている「棒」という素っ気ないタイトルが冠せられた10ページ程度の作品で、非条理、無説明、急展開な内容に惹きつけられた。 数年後に「砂の女」を読み、少し違う雰囲気だけど良いなと思い、「棒」を連想させるタイトル...続きを読むの「壁」の世界観は自分にははまらず、「箱男」にもそこまではまらなかった。 しかし、短編集である本書は、良い意味で作者の混沌さが薄れており、良質なSFものとして楽しめる。 それらはサイエンスフィクションでもあり、藤子不二雄に絵を付けてほしい 少し不思議な物語でもある。 時代背景や設定も現代、近未来、遠い未来、ディストピア化した社会など豊富で飽きさせない。 個人的に面白いと思ったのは、犯罪行為を生業とする会社の社員心得だ。 「犯罪者は、犯罪を生産するばかりでなく、また刑法を、刑法の教授を、さらにこの教授が自己の講義を商品として売るために必要な講義要綱を生産する」という挑発的な序文から始まり、犯罪という行為から生まれたものや、美徳についての文章に唸らされる。
どれも世界観が完成されているから、現実を忘れて没頭することができる 読んでる瞬間のみならず、余韻でもその逃避を与えてくれる 安部工房の作品に出てくる人間、主に他者は、他人に対して猜疑心と利己心ばかりしかなく、温かみを感じない 根源的な感情がほとんど恐怖と虚栄心に限られているように思う そのため小説...続きを読むによく見られる理想やロマン主義的側面への疑問や嫌悪感が浮かばずに、こちらも淡々としかし恐々と読み進めることができる
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