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世界が一変してしまったあの春、私たちは見てはいけないものを覗きこんでしまった――。持てる者と持たざる者をめぐる残酷なほんとう。死を前にして振り返る誰にも言えない秘密。匿名の悪意が引き起こした取りかえしのつかない悲劇。正当化されてゆく暴力的な衝動。心の奥底にしまい込んだある罪の記憶。ふとしたできごとが、日常を悪夢のように変貌させていく。不穏にして甘美な六つの物語。
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Posted by ブクログ
本当に大好きな著者さん。川上未映子さんの作品はなんだろう、ずっと宙に浮いてるみたいな、なんだかずっとふわふわしてるような感覚と物語にある不気味さとか悲しさとか美しさがなんとなく掴めないような物語で、その読中の不穏さが充溢した甘美な世界にどうしても浸りたくなる時がある。そんな衝動に駆られることが本当に...続きを読むある。 この短編集で描かれている「春」は、私たちを取り囲む世界が一変してどうにも出来なかった「コロナ禍の春」のこと。人間の醜い部分ややさしい部分も含めて、何もかもが孤立化してしまって戸惑いながらも生きていた日常が思い出されて少し苦しかった。
初めましての作家さんだったけど吸い込まれるように読んでました。 不気味な雰囲気が漂う物語たち。 言葉では言い表せない読後感がなんか癖になる。
意外にも読んだことがない川上未映子。最初は短編から入りたいと思い手に取った本作。春のゆらめきのような怖いものかなというイメージで読み初めて気づく。春とは、あの年の春のことか。 すなわち、コロナ発生から間もないあの春、それがどんなもので生活をどのように変えてゆくものなのかまだ誰もわかっていなかったあ...続きを読むの2020年の3月-4月。 海外で沢山の方々がなくなり始めるも、まだ緊急事態宣言が出されていないころ。うっすら不穏な予感が充満しているけれども自分事になってない、あのふわふわした時期。 その期間を舞台に、6つの短編が収められてる。いずれも感染症が主題ではないが、あのまだ何も知らなかった頃の日常を切り抜いてきているところに思いを馳せて読むと、薄っすら怖い。そんな話。 病気で長期入院している女子。病院ではいつか死ぬときに見る可能性のあるものすべてを今目にしていると手紙で語る。 整形して生まれ変わりたい女子。ギャラ飲みの元締め女子に覆せないヒエラルキーを見せつけられ撃沈。 もうすぐ死ぬ老女。記憶や意識がところどころ飛ぶ中、性交についての夢想がやまない。 ちょっといいなと思う女の子からもらった大事な手紙をなくしてしまう男子高校生。夜中の教室に2人で忍び込むも手紙は見つからず、夜中の学校に狂わされたテンションでそれぞれの別の面が顔を出す。 人生の閉塞感にあえぐ女。共感の的であった作家にある日失望し誹謗中傷を繰り返していたら作家が自殺。逃げ場の無さに拍車がかかり誰かに電話をしたい。 そして6篇目は…よう書けん。夢を追って上京した二人の女子。一方は恵まれた家出身で金に困らず夢への努力も中途半端。そんな相方とその母親にした主人公の意地悪が、数十年の時を経て返ってくる… 純文学よろしく、ざらっとした質感の、居心地の悪い人間の特性が描かれていて、読みながらじっとり汗をかく。 いや違う、この本の感想はそこだけじゃない。なんていうか、表現力がすごいね?この方。情景や心情が赤裸々に伝わり、終始動揺する。知っている風景、知っている感情が、思い起こされる。結論らしき結論が示されないままプツッと物語が終わり、ふぅ、脱力。薄い本なのに読み応えがある。 p.91 行くところがない。あなたは行くところはどこにもない。体はその事実に気づいているが、あなた自身には決して気づかれることがないように、あなたはあなたを気づかいながら、いくつかのふりを混ぜ合わせながら歩かせる。ひとりで、自由で、責任を負わず、自分以外には心を割かなければならない人は誰もおらず、何かを決めて、自分のためだけに何かを決めることができて、こうして自分を歩かせているのは、私自身であるのだと。 p.118 見慣れた校舎の壁や窓ガラスや、ロビーに敷き詰められた煉瓦や、掲示板やウォータークーラーなんかの輪郭が暗い青色に浮かびあがってみえた。校内は外から見るよりも少しだけ明るく感じられて、月が出ているせいかもしれないと思った。それらは濃淡のついた影に濡れてぴくりとも動かず、まるで深い湖の底に水没した校舎の絵でも眺めているようだった。
まずこの小説は、何か劇的なことが起こったり、何か特殊な人が登場するわけではない。私の、あなたの隣に存在しているかもしれない人々。もしくは私達自身かもしれない。無自覚の悪意や、ちょっとした意地悪。身に覚えがあるからこそ読んでいて背筋がヒヤリとする。
娘について、を読んだとき、どこか共感できてしまうような気がして空恐ろしさがつま先から鳩尾まですうっと広がってくるような気にさせられる。 フィクションなら着地はこうなるんだろうと予測しながら読むのに、そうはならない。そのもやもやがかえってリアル。
わたがしみたいに柔らかいのに、触れた瞬間どろりと溶けてしまうような春の不穏さを味わえる短編集。 「青かける青」の美しい文章に打ちのめされたあと「あなたの鼻がもう少し高ければ」でスーッと肝が冷えた気分に……。「ブルー・インク」はほのかに村上春樹の風味。 春のほのぼのした心地良さの中に身の毛がよだつ...続きを読むゾクりとしたちぐはぐさがあり、夢中で一気読みしました。 「あなたの鼻がもう少し高ければ」が一番お気に入り。どこにでもいる若い女の子のどこにでもありえる日常。現代を生きる若い女の子の心情の生々しさは、もはや物語ではなく現実だった。 SNSの幻惑的な世界に魅了され、小さいスマホ画面から大きな夢を見る女の子たちも、本当は「美しさ」という希望に潜む底知れぬ恐怖に怯えながら心の中で叫んでいるのかもしれない。 多様な価値観が溢れた現代で、美の価値はその流れに逆行し勢いを増しているように思う。美とは、顔とは何なのか、ルッキズムという言葉の本質を考えさせられる物語だった。
しずかななにかが追い立ててくるようなこわさ。まさにパンデミックの中、身動きできない家の中から感じていたザワザワそのものが文字を、文を成しているような。なぜこれがこわいのか、きっと自分の人生を振り返るとわかる。
「青かける青」 「あなたの鼻がもう少し高ければ」 「花瓶」 「淋しくなったら電話をかけて」 「ブルー・インク」 「娘について」 世界がどうなるかわからなかったパンデミックの淵、きれいな悪意に満ちている六篇。 うとうと、夢と現のあわいで眠るようにしながら読みおえた。
蔓延する感染病。 無くなってしまった日常。 続いていく日常。 それまでの当たり前がなくなったことで、 それまで気付かなかった孤独が浮き彫りになったところも あったのかもしれない。 そんなことを考えさせられるような短編集でした。
どこにしまい込んだかも忘れていた罪悪感を不意に見つけてしまった瞬間。息苦しく希望ひとつ探す気にもならない未来への不安と、そんな将来にまだどこか期待をしてしまう自分の醜悪さに嫌悪を覚える。行き場のない心のモヤを宙に浮いた掴みどころのない文章で描かれるオムニバス短編。 頭から離れそうにもしつこく渦巻き続...続きを読むける独特の魅力でした。
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春のこわいもの(新潮文庫)
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川上未映子
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