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大きな藤の木のある、壊されつつある家。真夜中に忍び込んだわたしは、そこに暮らした老女、ウィステリアの生を体験する。かつて存在した愛を魔術的に蘇らせる表題作。思いがけぬ大金を得、デパートで連日買い物を続ける女性の虚無を描く「シャンデリア」。いくつかの死、失った子ども、重なり合う女たちの記憶……研ぎ澄まされた言葉で紡がれる、美しく啓示的な四作を収録した傑作短編集。
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Posted by ブクログ
表題作と、シャンデリアがとても心に残りました。どちらも主人公と自分と重ね合わせて、ちょっと違った別の私の人生を見るような…本当に川上未映子さんは凄い。 表題作の喪失感はもの凄く、実際にいた子供、いたかもしれない子供、想像の中にいた子供を失うという恐ろしさを、この短編で味わいました。 本当に恐ろしく...続きを読むて悲しい、けど美しいお話しでした。
存在や記憶、そして愛というもの。 人間がどんな時代も問い続けていくのだろう、 生きている間はそれらを完全に理解することはできないし、死んでもそれはわからないのかもしれないが、 考えないで生きるのは、果たして人間を人間たらしめているのだろうか
川上未映子さんの短編集。 「彼女と彼女の記憶について」 「シャンデリア」 「マリーの愛の証明」 「ウィステリアと三人の女たち」の四編。 田舎町の中学の同窓会に、出欠の返信も出さず当日に突然現れる女優や、思わぬ大金を手にして、デパートで気まぐれに高価な買物をして一日を過ごす女性などを主人公にした物語...続きを読む。 記憶とか、お金とか、愛とか、同じところにとどまることを知らない、曖昧で不確かなものたちについて、独特の言葉で美しい世界を創り出している。 表題作の「ウィステリアと三人の女たち」が良かったです。 向かいに住む主婦が、目の前で壊されつつある大きな家に真夜中に忍び込んで、かつて住んでいたウィステリアという老女の生を体験する。 藤の花びらと、黒いカーディガン姿のウィステリアが、脳裏に焼き付いてしまうほど鮮明に描かれていて、もどかしくて上手く伝えられないような、彼女たちの悲しさや愛の深さ、その表現力が凄すぎて、思わず一気読みしてしまいました。
瑞々しくって、どこか不穏でフェミニズムを感じる文体が心地よい。物語以前に文体としての個性があるのが真似できないポイントで、だからこそ唯一無二なんだろうな。 表題作はじめ、どの話も抱えるものを持つ女性が主人公で気持ちの移り変わりを自分事として想像するだけで贅沢な時間が味わえる。真夏の果物のような雰囲気...続きを読むから、雨の後のじとっとした湿気なんかも感じるシーンもあり、彩りを感じた。
初めて読んだ川上未映子の作品。掴みどころがなくて流れるような文章だったけど、綺麗で美しいだけではなく、暗く醜い表現も隠さずに書かれているのがよかった。表紙は最後まで読んでからもう一度見ると胸が詰まる。久しぶりに夢中になって読み終わった本だった。
短編集。 比喩と言っていいのか、その美しさとか新鮮さに、 身も心も持っていかれて幸せな読書だった。
〈彼女と彼女の記憶について〉 東京で女優の端くれのような仕事をしながら、嫌みにならない程度に計算し尽くしたブランド品を鎧のように身にまとい、田舎で行われる同窓会に参加した彼女に、私ははっきりとした好感を抱く。 そこで突然ぽんと手渡される記憶の箱。黒沢こずえという少女と仲が良く、一緒に遊んでいたこと。...続きを読む黒沢こずえという少女に自分がかつてしていたこと。そして黒沢こずえという少女が辿ることになったその後の顛末。 黒沢こずえが、独りきりではなく、もう一人の女性と亡くなったと聞いたときの、主人公の心情はどんなだろう。安堵?嫉妬?罪悪感? 何も感じない、なんてことはないはずだ。 私も、誰に会いたいとかではなく、それが喜ばしいものであれ、恐ろしいものであれ、記憶の箱を受け取るためだけに同窓会に参加したい。 確かに存在しているのに、すっかり忘れ去られてよそにいってしまった記憶を突きつけられたい。記憶は、どんなに時が経とうが決してそれがなかったことにはならない。 〈シャンデリア〉 多額の印税が振り込まれることで、暇と財力を持て余して一日中デパートを徘徊している46歳の女性。彼女には生活の不安も悩みもなく、自由を謳歌しているように思えるのだが、どうやらそうではないらしい。 幼い頃に母親と共に貧困で苦しんだ過去は、そして母親亡き後に舞い込んできたお金は、今がどれほど裕福でもすべての景色を無意味なものにしてしまうのだろうか。 〈マリーの愛の証明〉 乙女の園のような、無垢で甘やかなミア寮。元恋人に「私のことを愛していた?」と聞かれたマリーが、真摯にていねいに紡いでいく愛の証明。 愛は、目に見えないうえに正解もなくて、飽くことなくいつまでも考え続けられる気がする。 この短編は初めて読んだときから好きだけれど、数年ぶりに再読して愛の続きに気がついた。ミア寮で看護係として働く40歳のアンナは、7年前に当時1歳の娘を喪った。 もちろん娘にもう触れることはできないけれど、愛していたという事実が確かにそこにあったのだから、今ではきっと違う方法でまた娘に、大きな愛に触れることができるのだということ。 〈ウィステリアと三人の女たち〉 今は空き家だが、大きな藤の木が咲き誇る近所の屋敷に忍び込んだ女性が、夢をみるようにその屋敷で起きた過去を回想していく幻想的で美しい話。 不妊治療に理解がない夫に対して、これまでは言いなりだったのが、それが起こったあとには凜とした強さを湛えている気がした。
4編からなる短編集。急に金持ちになった私がデパートのシャンデリアの下敷きになって死ぬ夢想をしながらデパートで毎日デパートで買い物する「シャンデリア」の虚無感が良かった。
美しく、どこか神秘的で、でも残酷で シャンデリア、川上未映子さんの書くデパート毎回エグくてグロくて煌びやかで最高です。
「彼女と彼女の記憶について」有名人になってから参加した同窓会で、小学生の頃に一緒に遊んだ記憶のある子が30歳で餓死していた。餓死の真相が分からないところがリアル。もう1人女性が一緒に餓死していたという要素も少し不気味だった。 「シャンデリア」お金の無常さとか命の価値とか色々考えさせられた。
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ウィステリアと三人の女たち(新潮文庫)
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川上未映子
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