【感想・ネタバレ】ウィステリアと三人の女たち(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

大きな藤の木のある、壊されつつある家。真夜中に忍び込んだわたしは、そこに暮らした老女、ウィステリアの生を体験する。かつて存在した愛を魔術的に蘇らせる表題作。思いがけぬ大金を得、デパートで連日買い物を続ける女性の虚無を描く「シャンデリア」。いくつかの死、失った子ども、重なり合う女たちの記憶……研ぎ澄まされた言葉で紡がれる、美しく啓示的な四作を収録した傑作短編集。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

表題作と、シャンデリアがとても心に残りました。どちらも主人公と自分と重ね合わせて、ちょっと違った別の私の人生を見るような…本当に川上未映子さんは凄い。

表題作の喪失感はもの凄く、実際にいた子供、いたかもしれない子供、想像の中にいた子供を失うという恐ろしさを、この短編で味わいました。
本当に恐ろしくて悲しい、けど美しいお話しでした。

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2025年03月26日

Posted by ブクログ

存在や記憶、そして愛というもの。
人間がどんな時代も問い続けていくのだろう、
生きている間はそれらを完全に理解することはできないし、死んでもそれはわからないのかもしれないが、
考えないで生きるのは、果たして人間を人間たらしめているのだろうか

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2023年10月23日

Posted by ブクログ

川上未映子さんの短編集。
「彼女と彼女の記憶について」
「シャンデリア」
「マリーの愛の証明」
「ウィステリアと三人の女たち」の四編。

田舎町の中学の同窓会に、出欠の返信も出さず当日に突然現れる女優や、思わぬ大金を手にして、デパートで気まぐれに高価な買物をして一日を過ごす女性などを主人公にした物語

記憶とか、お金とか、愛とか、同じところにとどまることを知らない、曖昧で不確かなものたちについて、独特の言葉で美しい世界を創り出している。

表題作の「ウィステリアと三人の女たち」が良かったです。
向かいに住む主婦が、目の前で壊されつつある大きな家に真夜中に忍び込んで、かつて住んでいたウィステリアという老女の生を体験する。

藤の花びらと、黒いカーディガン姿のウィステリアが、脳裏に焼き付いてしまうほど鮮明に描かれていて、もどかしくて上手く伝えられないような、彼女たちの悲しさや愛の深さ、その表現力が凄すぎて、思わず一気読みしてしまいました。

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2022年10月17日

Posted by ブクログ

瑞々しくって、どこか不穏でフェミニズムを感じる文体が心地よい。物語以前に文体としての個性があるのが真似できないポイントで、だからこそ唯一無二なんだろうな。
表題作はじめ、どの話も抱えるものを持つ女性が主人公で気持ちの移り変わりを自分事として想像するだけで贅沢な時間が味わえる。真夏の果物のような雰囲気から、雨の後のじとっとした湿気なんかも感じるシーンもあり、彩りを感じた。

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2022年07月31日

Posted by ブクログ

初めて読んだ川上未映子の作品。掴みどころがなくて流れるような文章だったけど、綺麗で美しいだけではなく、暗く醜い表現も隠さずに書かれているのがよかった。表紙は最後まで読んでからもう一度見ると胸が詰まる。久しぶりに夢中になって読み終わった本だった。

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2021年06月29日

Posted by ブクログ

短編集。

比喩と言っていいのか、その美しさとか新鮮さに、
身も心も持っていかれて幸せな読書だった。

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2021年06月04日

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〈彼女と彼女の記憶について〉
東京で女優の端くれのような仕事をしながら、嫌みにならない程度に計算し尽くしたブランド品を鎧のように身にまとい、田舎で行われる同窓会に参加した彼女に、私ははっきりとした好感を抱く。
そこで突然ぽんと手渡される記憶の箱。黒沢こずえという少女と仲が良く、一緒に遊んでいたこと。黒沢こずえという少女に自分がかつてしていたこと。そして黒沢こずえという少女が辿ることになったその後の顛末。
黒沢こずえが、独りきりではなく、もう一人の女性と亡くなったと聞いたときの、主人公の心情はどんなだろう。安堵?嫉妬?罪悪感? 何も感じない、なんてことはないはずだ。
私も、誰に会いたいとかではなく、それが喜ばしいものであれ、恐ろしいものであれ、記憶の箱を受け取るためだけに同窓会に参加したい。
確かに存在しているのに、すっかり忘れ去られてよそにいってしまった記憶を突きつけられたい。記憶は、どんなに時が経とうが決してそれがなかったことにはならない。

〈シャンデリア〉
多額の印税が振り込まれることで、暇と財力を持て余して一日中デパートを徘徊している46歳の女性。彼女には生活の不安も悩みもなく、自由を謳歌しているように思えるのだが、どうやらそうではないらしい。
幼い頃に母親と共に貧困で苦しんだ過去は、そして母親亡き後に舞い込んできたお金は、今がどれほど裕福でもすべての景色を無意味なものにしてしまうのだろうか。

〈マリーの愛の証明〉
乙女の園のような、無垢で甘やかなミア寮。元恋人に「私のことを愛していた?」と聞かれたマリーが、真摯にていねいに紡いでいく愛の証明。
愛は、目に見えないうえに正解もなくて、飽くことなくいつまでも考え続けられる気がする。
この短編は初めて読んだときから好きだけれど、数年ぶりに再読して愛の続きに気がついた。ミア寮で看護係として働く40歳のアンナは、7年前に当時1歳の娘を喪った。
もちろん娘にもう触れることはできないけれど、愛していたという事実が確かにそこにあったのだから、今ではきっと違う方法でまた娘に、大きな愛に触れることができるのだということ。

〈ウィステリアと三人の女たち〉
今は空き家だが、大きな藤の木が咲き誇る近所の屋敷に忍び込んだ女性が、夢をみるようにその屋敷で起きた過去を回想していく幻想的で美しい話。
不妊治療に理解がない夫に対して、これまでは言いなりだったのが、それが起こったあとには凜とした強さを湛えている気がした。

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2024年05月08日

Posted by ブクログ

4編からなる短編集。急に金持ちになった私がデパートのシャンデリアの下敷きになって死ぬ夢想をしながらデパートで毎日デパートで買い物する「シャンデリア」の虚無感が良かった。

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2021年08月12日

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美しく、どこか神秘的で、でも残酷で
シャンデリア、川上未映子さんの書くデパート毎回エグくてグロくて煌びやかで最高です。

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2021年05月18日

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「彼女と彼女の記憶について」有名人になってから参加した同窓会で、小学生の頃に一緒に遊んだ記憶のある子が30歳で餓死していた。餓死の真相が分からないところがリアル。もう1人女性が一緒に餓死していたという要素も少し不気味だった。
「シャンデリア」お金の無常さとか命の価値とか色々考えさせられた。

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2025年08月17日

Posted by ブクログ

女たちの、誰にも話すことはないだろうというような出来事や記憶や考えをフィルム越しで見ているような短編集だった。
古い海外の映画を見ているような……舞台は日本で、現代なのに不思議な感覚だった。

最初の短編が刺さりすぎてしまい、その後の物語に入り込みきることができないまま、
大きなシャンデリア、深い森の湖、藤の花と、見ている景色が移り変わっていく。
それでも、ふと集中力が途切れると、西日が当たる小さな部屋と少女の記憶まで巻き戻されてしまう。それくらい衝撃的だった。

美しい文章の裏側でこの物語は何を示しているんだろう、何を感じとることができれば私は納得してこの本を閉じることが出来るのかな、と考えながら、でも明確な答えが見つけられないまま最後のページにたどり着いてしまった。



私自身も、何かのきっかけがないと忘れてしまっている記憶がきっとあるんだろうな。
何かのきっかけで思い出すことが自分の残虐性や偏った嗜好の発現だった時、これまで忘れられていたことがいかに幸福だったか思い知るのだろうな。

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2025年07月11日

Posted by ブクログ

短編集よりは長編派だけど、
川上未映子の文章が好きだと改めて思った。
ストーリーというよりは、文章で読む感覚。

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2024年07月29日

Posted by ブクログ

タイトルだけで読み始めました。
勝手な想像にはまったくかすらず不思議体験。
ミステリーツアーに参加した気分です。

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2023年05月16日

Posted by ブクログ

川上未映子さんの言葉選びは美しい。改めてほう、と思わずため息をついてしまうような言い回しの数々に虜になる。

本作は、彼女と彼女の記憶について、シャンデリア、マリーの愛の証明、ウィステリアと三人の女たちから成る短編小説集。(なんだか最近短編ばかり読んでいる。ほんとはどっぷり長くて素敵な小説に浸りたい)

登場人物は、ほぼ女性。
美しい描写に反して、正直なところ内容は読んだ端から抜けてしまった。

彼女と彼女の記憶については、不気味さを孕みながらも優雅な主人公が美しい。
シャンデリアでは、自分の力で不自由なく日々を過ごす主人公の、気紛れな虚無感が垣間見えて良かった記憶。
毎日デパートに通い、ハイブランドの新作を購入する毎日…。卑しいかもしれないし、きっと心の豊かさは手に入れ難いんだろうけど、人生で一度くらい、そんな生活をしてみたい。笑

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2022年10月02日

Posted by ブクログ

4篇の話が入っているが、なんとなく感覚的に女しかわからない話だなーと思った。4篇とも、ほとんど女性しか登場しない。最後の話だけ、よくある気の小さいモラハラ夫が登場しますが、恋愛場面も女性のみです。
個人的にお気に入りの話はシャンデリア。毎日デパートに入り浸っては目にするアイテム一つ一つのブランドと品物名を心の中に唱える主人公が、優しさで差し出されたハンカチに対してはブランド名を唱えなかった(ノーブランド)けど価値を感じた的なところとか。
人の優しさはプライスレス感動!てことじゃなくて、女はいくら社会的に成功してても、自分の力でガポガポ稼いでも、それでは満たされない。結局暖かい家族、それもできれば優しいダンナと美男美女じゃなくていいから五体満足の二人の子どもがいる女に比べればそういう人達も圧倒的負け組に括られてしまうという世の中の評価を反映してるのかも、なんて感じました。

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2022年08月04日

Posted by ブクログ

「彼女と彼女の記憶について」はホラーだったのか?モヤモヤしたまま話が終わる。
「シャンデリア」が一番面白かったかな。最後に金持ちのおばあさんに言うセリフにびっくりしたけど。
「マリーの愛の証明」はよく分からなかったし、表題作「ウィステリアと三人の女たち」に関しては、妄想⁇と入り込めず挫折…
最初の2作は面白かったのにな。

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2021年07月25日

Posted by ブクログ

女とは、なんてじっとりして混沌とし、強くて時には儚いのか。美しい表現とは裏腹に、異質な主人公たち。その心情に同じ女性として吸い寄せられる。ぜひ男性の感想が聞いてみたい。きっと恐怖でしかないと思う。

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2021年07月22日

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