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おかっぱ頭のやんちゃ娘ヘガティーと、絵が得意でやせっぽちの麦くん。クラスの人気者ではないけれど、悩みも寂しさもふたりで分けあうとなぜか笑顔に変わる、彼らは最強の友だちコンビだ。麦くんをくぎ付けにした、大きな目に水色まぶたのサンドイッチ売り場の女の人や、ヘガティーが偶然知ったもうひとりのきょうだい……。互いのあこがれを支えあい、大人への扉をさがす物語の幕が開く。
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Posted by ブクログ
2015年刊行。川上未映子さんのミクロで鋭くキラキラした言語感覚が余すところなく発揮された傑作だった。言語感覚よりも倫理的問題の方に主眼が向かっていた『夏物語』よりも、私はこちらを推す。 なにしろ語り手が小学生たちなので、「コトバ」との関わり自体が頼りなく、切実だ。「○○だ、でもよくわからないよ...続きを読むうな気がする」というふうに、コトバを挙げてみてはやっぱり違うかも、と首をかしげる所作が繰り返されるなかで、それでいて子もたちの無垢な心の動きが浮き彫りにされていく。コトバとの関係性の微細な揺れがそのまま芸術的な美のおののきのようでもあって、これこそまさに純文学であり、芸術小説だと思った。 最後の方の胸が裂けそうな痛切が心に残る。 光り輝く名作小説である。
高校の時の担任の先生が持ってて、教室に置いてあったんだけど、その当時の私は本が嫌いで読み終わることができず、、、でもずっとミスアイスサンドイッチのことを覚えていて、水色のアイシャドウで大きな目ってことまで覚えていて、ようやく5年ぶりくらいに読み終えることができました!言葉の綴り方というか、表現の仕方...続きを読む、語彙がパッと出てくるものではなくてというか、グングン読み進められた、理解できない比喩というか表現もあるけれど、自分なりにこういうことなのかな?と想像できるのも面白い、ミスアイスサンドイッチに私も会いたいし話してみたいし、というか、麦くんと同じ場所から眺めたいし、麦くんが描いた絵も見てみたい、ヘガティーと麦くんの関係性も素敵で、そして最後の手紙のシーンには大号泣しました、心が綺麗な2人がずっと仲良しでいれたらいいな、また読みたいです
小学生のヘガティーと麦くんにも、それぞれの悩みがあり、それを乗り越えていく、たくましい元気のでる物語でした。
日常をとらえた描写、登場人物の気持ちの移り変わりを繊細に書く技術。川上作品ははじめて読んだが、次も読んでみたいと思える本だった。
麦くんとへガティー、各々悩みを抱えてるけど可愛らしくって、良い子たちで応援したくなる。 へガティのお母さんへの手紙がまた優しくて切ない。
初・川上未映子さん。 この文体、好きかもしれない…。 黒髪おかっぱ頭のやんちゃ娘ヘガティーと、絵が得意でクラスメイトにあだ名をつける名人の麦くん。 ふたりは学校でそんなに目立つ存在ではないけれど、男の子と女の子の最強小学生コンビなのだ。 低学年の頃、麦くんが気になって仕方がない「ミス・アイスサン...続きを読むドイッチ」のことをちゃんと聞いてくれて、会いたいときには会いにいかなくちゃと背中を押してくれたヘガティー。 六年生になってクラスが離れても、悩みを打ち明けたり、一緒に笑ったり、互いを支え合うかけがえのない存在。 家の近所で起こった出来事や、家族のことや、学校の授業、友達との何気ない会話が小学生そのもので純粋で、思いやりに溢れていて、何だか泣けてくる。 川上未映子さんの感性が弾けてる。 思い返せば、小学校六年間のこの時って最高に輝いてる時間だったのかなと思う。 そして、大人になっても、お互い同じくらいの身長だったこの頃のことを、ずっとずっと覚えていてほしいと思う。
気持ちが昂る時、そのときを忘れたくない決して忘れないだろうと思った瞬間、風景が押し寄せてくる。 そしてそれを表現することばがすべて懐かしくて美しい。 江國香織の夏の匂いを読んだ時と同じ、子供のときの子供目線の不思議な世界を感じた。
読み終わった後、ものすごく長いため息がでて、呼吸まで疎かになるほど集中して読んでいたんだと思った。 圧倒的な筆力だと思う。 心理描写のリアリティがすごいんだろうか。 主人公は小学生なので、行動(行動原理)は子供なんだけど、思考のプロセスは大人とかわらない。そんな中で知識や経験が足りなくてうまく立ち回...続きを読むれなかったり、できる事に金銭的な制約があったり。 子供であることの不自由さを知っていたはずなのに、大人になるにつれてどうしてこんな気持ちを忘れていたのか不思議になる。 チグリスの話も読みたいなぁ。
『川上未映子の文体は、ジェットコースターだ。』 「文体」 それは読書という行為において、骨みたいなもので、 いや、五臓六腑みたいなもので、 つまり、目には見えないけど(気付きにくいということ)核みたいなものだ。 料理で例えるなら「塩味」といったところだろうか。 みなさんが本に求めることはたくさ...続きを読むんあると思う。 気になるテーマ、新たな発見、新たな学び、感動、 大どんでん返し、苦悩、共感、、、 それらすべては、本の内容(中身、コンテンツ)に関わるものだ。 もちろん大事だ。実際に僕もほとんどの場合、それらを基準に読む本を選んでいる。 でも、それらをすべてひっくり返すようなものとして 「文体」は存在する。 文体は日本人にとっての「温泉」みたいなもので、 自分に合う文体に触れているとそれはもう心地よくて、 大げさではなく、まさに「文章に浸かっている」という感覚を味わう。 音楽でいうところの「リズム」だと思う。 本の内容は「歌詞」といったところだろう。 本当に聞いているだけで(読んでいるだけで) すでに心地よくて、満足なのである。 確かに、あの村上春樹も言っていた 「文章で大切なのは、リズムです。」 つまり、ここで言っていたリズムとは文体のことだったのか。 やっぱり合点がいった。 『僕は、村上春樹の文体が好きで、 川上未映子の文体が好きなのだ。』 あとどのくらい、川上未映子のリズムに浸っていられるだろうか。 時間は限られている。 <本の内容紹介になってない『あこがれ』の感想> 最後の速度感。走っている。息もつかずに走っている。 疾走感とか、すがすがしいとか、 そんなんじゃなくて、目まぐるしい。 『わたくし率』でも、『乳と卵』でも、『ヘブン』でも 物語終盤の川上未映子は、ジェットコースターなのだ。 「これがこの人の文体なんだよ」、それを思い出した。 でもなんなんだ?いったい何がこう感じさせるんだ? よく分からないけど、あまり簡単に使いたくはないけど 天才だと思う。 やっぱり、出会えてよかった。 <おすすめの人> ・「芥川賞作家で元シンガーソングライター」ってなにそれ気になる、って人 ・「哲学科専攻」ってなにそれ気になる、って人 ・この感想を最後まで読んでくれて、「騙されてなるものか」とか思わずに、素直に「そんなに言うんだったら」といって気になってくれた、心やさしいそこのあなた <おまけ> 『会うための約束が必要になって、その約束をするための約束みたいなのも必要になって、どんどん会わなくなっていくんだよ。』 『だから会いたいときに、会いたい人がいてさ、会えるんだったら、ぜったい会っておいたほうがいいと思うんだよね。』(引用、85頁) みなさんも会いたい人、読みたい本があったら ぜったいに読んでおいたほうがいい、かもです。
小学校高学年の麦くんとヘガティーの男の子と女の子コンビは、大好きなこととかすごく気になることを共有し合える特別な友達。男女として好きとかそういうのではないところが良いです。ヘガティーの映画の銃撃戦アクションの真似に感動したり、絵の上手な麦くんのことをリスペクトしてたり、お互いの世界を大切にしながら自...続きを読む然に歩み寄って共感を交わし会えるところなど、大人にもなかなか出来ないコミュニケーション能力です。悩みがある時にもきちんと向き合って自然に助け舟をだせるところとか、なんかいいですね。この2人の関係が大人の私から見ても羨ましい…としみじみ思いながら読みました。「アルパチーノ」という掛け声でバイバイするとか、「トム・クルーズって、なんかすごくいいよね」「いいよね」「いいんだよね」っていうノリで良さに共感し会えるところとかほんと、なんかもう、すごくいいです。羨ましいです。ヘガティーの母親違いのお姉さんに逢いに行くところは気になって一気に読みました。たぶん長い人生の中で、この物語の中に書かれている出来事はふたりにとって生涯忘れられない思い出となるのでしょう。そのうち受験もあるし、進路が別れていけば、2人で過ごす時間も無くなってしまうかも…だからこの時間はこの時だけのかけがえのないものだったんだと、後で思い返したりするかもしれないですよね。そう考えるとなんだか切なくなります。 胸いっぱいの幸福感と、夕焼け空にバイバイする時に感じるような切なさの両方に満たされました。かわいくて綺麗で甘酸っぱい苺ジャムのようなお話しでした。
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あこがれ(新潮文庫)
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川上未映子
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