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Posted by ブクログ
凄まじい物語に出会った。
この本には、私の怒りがあって、希望があって、願いがあった。
途中で本のページを引っ掻いてしまうくらい、感情を揺さぶられた。
女であるからには逃れられないことはいくつかあって、そのひとつに「出産」があると思う。
子どもを産めるのは私たち女だけであり、選択権はこちらにある。それにあたって社会的な構造、世間体、命とは何か、なぜ産むのか、なぜ産まないのかといった、他からの視点が入り込む。
生命は尊い。
だけど、この世に生を受けたがために苦しみ、死にたい思いをする人がいることもまた事実であるということ。
到底語り尽くすことのできない「生命」について、こんなにも生々しくて、言葉のひとつひとつに結晶化したエネルギーがある小説に、私は初めて出会ったかもしれない。
Posted by ブクログ
すごく奥深い話だった。
女性特有の悩みや葛藤が生々しく描かれている。わたしもアラサーだからなのもあり主人公と似たような悩みを持っていることもあり、共感するところが多かった。こどもをもつこと、もたないこと、結婚すること、しないこと、色んな選択肢があるけど、産まれてきて良かったとすべての人が思える世の中になってほしい。
生きていてほしい。
緑子の思春期特有の悩みや母に対する苛立ちや母を想うきもちにも感ずるものがあったし、彼女の成長にはホッコリさせられた。
情景描写が長くて平和なシーンもあるが、全体的に重いのとショッキングなシーンもあるので読むのを途中でやめてしまおうと思ったときもあったが、学びの多い話でした。
Posted by ブクログ
これはたぶん、生まれ変わりの物語。ただし直線上で続いていく世界の。
心内文がとにかく分厚い、1部がもう壮絶、鬱屈な逡巡です。比較的短いはずなのにページを容易に進めることができないほど、悩み抜かれた言葉たちが全力で迎えてきた。けど良い。
じゃあ2部は?というと、1部ほどの重量感を感じないのにやっぱり進まない。簡単に進んじゃいけない感じ伝わってきた。ノスタルジーもあるし、やっぱり良いです。
読む体力がない時には絶対に読めない、けど読んでどう感じたかを聞かせてほしい。って感じる作品でした。
新作の広告や誰かの解説も入っておらず、ただ純粋な物語で全652ページの大作です。
初めて線を引きたい衝動に駆られました。
楽しかったです。
Posted by ブクログ
親との関係に悩み、AIに相談していた延長で、親子の葛藤を描く物語はないかとオススメしてもらったのがこの作品だった。
「私と母」というよりも、「私とこの先生まれてくるかもしれない子ども」についての話だったので、本来求めていた物語ではなかったけれど、これはこれでとても没頭して読めた。
私自身、母との関わり方に悩み続けているが、「生まれてきたことを後悔」したことは一度もないと断言できる。色々あったし、今も色々あるけど、私は母の子どもに生まれて良かったと思う。当たり前すぎて改めて考えることがなかったこの気づきを得られたのは、今の自分にとってかなり大きな出来事。
Posted by ブクログ
テーマが明確な小説である。
そのテーマに沿って主人公は逡巡し安らぎに満たされ裏切られ葛藤する。
小説としての魅力の一つに、風景の移り変わりや街の情景描写にみられる映像的な描写があると思う。特に、色彩の描写が卓越である。一見なんてことのない周囲の風景を色鮮やかに描き出し、場面をはっきりと脳裏に浮かび上がらせる筆致。著者の幻想的で観念的な文体は、他の作品でもまざまざと感じていたが、今回とりわけ印象に残ったのは、外界を捉えるその眼差しだった。
さて物語はどうか。スリリングな展開が続くストーリーではないので正直一部退屈を感じたところもある。しかし、そんな私を驚愕させる場面が急に現れるのである。しかもその鋭さときたら、心臓を鷲掴みにされ一滴残らず生気を搾り取られるような強烈さである。ここまで核心に迫ることを的確に表現できるものかと、只々その技量に脱帽である。
思えば著者の小説は多く読んできている。
作品ごとに著者の特色を維持しつつ違った読み味を読者に提供してくれる、非常に幅の広い作家である。これからも新作を楽しみにしつつ、著者の異なる分野の作品(エッセイや詩)なんかも手に取ろう、もっと著者を知りたいと思わせる魅力を感じる。
Posted by ブクログ
一冊を読むのに、これほど時間がかかるとは思わなかった。
長編だから、というだけではない。自分が男性であり、父親でもあるという立場から、登場人物たちの考えや感情に足場をかけ直しながら読む必要があったからだと思う。
これまで父親として子育てをしてきた中で、「子どもに会いたい」と思う気持ちは分かっているつもりだった。けれど、その気持ちの前提には、無意識のうちにパートナーの存在があった。
主人公のように、パートナーを持つこととは切り離して、それでも子どもに会いたいと願う人がいる。
そのことを、自分はこれまで十分に考えてこなかったのだと思う。考えてこなかったというより、どこかで考えないままにしていたのかもしれない。
主人公の感情の一部分には共感できた。
けれど、すべてを理解できたとは思わない。
むしろ、この作品を読んで、「分かったつもりにならないこと」の方が大切なのではないかと思うようになった。
作中には、出産そのものを厳しく問い返す言葉が出てくる。
「出産は親の身勝手な賭けだ」
その言葉には、何も言えなくなった。
この世界は、本当に生まれてくる価値のある場所なのか。
子ども本人が望んだわけでもないのに、親が命をこの世界へ送り出すことを、本当に無条件で肯定してよいのか。
考えれば考えるほど、簡単には答えられない。
それでも、自分は子どもの幸せを願わずにはいられない。
誰かの見ている世界では、子を産むことは間違っているとされるかもしれない。
それでも私は、その「間違ったまま」を選びたいと思った。
正しいと証明できたからではない。
正解などないまま、それでも自分の選択と責任を引き受けて生きていくしかないのだと思う。
男性である自分には、「産む」ことそのものはできない。
だからこそ、命が生まれることの重さや、自分には経験できない身体の出来事に、以前よりも畏れを抱くようになった。
そして父親として、その命を育てていきたいと思った。
我が子を見て、
「あなたに会いたかったんだ」
と。
ただ美しい言葉としてではなく、そこに伴う怖さも責任も引き受けた上で、そう思えるようになった。
読み終えたというより、長い時間をかけて、自分の中にあった「産むこと」「生まれること」「親になること」への考えを問い直された一冊だった。
Posted by ブクログ
川上未映子さんの本はエッセイしか読んだことがなくて、なぜかこの話もノンフィクションだと思って途中まで読んでて、主人公が出したはじめての本を筆者の本かと思って検索までして、やっと気付いた(笑)
前半部分の主人公の東京の家に姉と姪が遊びに来る話は、夏の湿気が肌にまとわりつくやな感じ?を思わせる雰囲気のストーリーが面白かった。後半は人と性交できないし独身の身だけど子どもが欲しいという気持ちに突き動かされて物語が進んでいく。確かに「自分の子ども」というまだ実態のないかつ自身の意思を持つものを欲しがる気持ちってなんなんだろうって考えさせられる。エゴなのかもしれないけど、だったらその選択をした自分もその結果である子どものこともちゃんと責任持って幸せにしたい。
自分の子どもとか生育環境とか父とか母とか性とか、もうすべてがめちゃくちゃフェミニズム小説だった。
Posted by ブクログ
川上未映子さん作品三作目。
毎回思うのが、この方の情景の描写は本当に胸に迫るというか、「すべて真夜中の恋人たち」も話の内容はあまり覚えていないけれどラストシーンの真夜中の描写がいつまでも胸に残っていて、それが作品の印象になっている。この作品でもタイトルの通りに夏の中で主人公が立ちすくんでいるようなシーンが目の前に見えるみたいで、特に第一章での姪と観覧車に乗るシーンでの夏の夕方と夜が混じり合っていく時間帯の表現がとても素敵だった。
テーマとしての「反出生主義との相対」については子を持つものとしてはとても重たく、善百合子の主張する「10人の寝ている子どもを目覚めさせる」ことについて、いかに自分が子を持つことへの責任に無自覚であったか考えさせられた。望んで生まれてくる子どもは確かにおらず、「産む側は何を賭けているの?」という問いは鉛のように胸に沈む。私は子らを存在させてしまった。反出生主義の立場に立つ立たないとにかかわらず、子を持つ人間には少なからずその自覚は必要であると感じた。他の方の感想を拝見して、筆者自身がそのような考えを提唱していた時期もあったようなので、ある意味私小説的というか、それでも出産に至ったエクスキューズ(言葉は悪いけど)のような意味合いもあるのかもと思った。
主人公の姉の巻ちゃんがなんとも可笑しく愛らしく、私はとても好きだ。「乳と卵」より先にこちらを読んだので、巻ちゃんの娘、主人公の姪である緑子が思春期に抱えていた「痛み」や「女性としての身体(容れ物)への違和」をどう克服し、あるいは克服せずとも大人になっていったかは描かれていないもののとても気になるところだった。
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小説・文芸
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