【感想・ネタバレ】春のこわいもの(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

世界が一変してしまったあの春、私たちは見てはいけないものを覗きこんでしまった――。持てる者と持たざる者をめぐる残酷なほんとう。死を前にして振り返る誰にも言えない秘密。匿名の悪意が引き起こした取りかえしのつかない悲劇。正当化されてゆく暴力的な衝動。心の奥底にしまい込んだある罪の記憶。ふとしたできごとが、日常を悪夢のように変貌させていく。不穏にして甘美な六つの物語。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

初めましての作家さんだったけど吸い込まれるように読んでました。
不気味な雰囲気が漂う物語たち。
言葉では言い表せない読後感がなんか癖になる。

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2025年06月06日

Posted by ブクログ

まずこの小説は、何か劇的なことが起こったり、何か特殊な人が登場するわけではない。私の、あなたの隣に存在しているかもしれない人々。もしくは私達自身かもしれない。無自覚の悪意や、ちょっとした意地悪。身に覚えがあるからこそ読んでいて背筋がヒヤリとする。

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2025年05月30日

Posted by ブクログ

娘について、を読んだとき、どこか共感できてしまうような気がして空恐ろしさがつま先から鳩尾まですうっと広がってくるような気にさせられる。
フィクションなら着地はこうなるんだろうと予測しながら読むのに、そうはならない。そのもやもやがかえってリアル。

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2025年05月29日

Posted by ブクログ

わたがしみたいに柔らかいのに、触れた瞬間どろりと溶けてしまうような春の不穏さを味わえる短編集。

「青かける青」の美しい文章に打ちのめされたあと「あなたの鼻がもう少し高ければ」でスーッと肝が冷えた気分に……。「ブルー・インク」はほのかに村上春樹の風味。

春のほのぼのした心地良さの中に身の毛がよだつゾクりとしたちぐはぐさがあり、夢中で一気読みしました。

「あなたの鼻がもう少し高ければ」が一番お気に入り。どこにでもいる若い女の子のどこにでもありえる日常。現代を生きる若い女の子の心情の生々しさは、もはや物語ではなく現実だった。

SNSの幻惑的な世界に魅了され、小さいスマホ画面から大きな夢を見る女の子たちも、本当は「美しさ」という希望に潜む底知れぬ恐怖に怯えながら心の中で叫んでいるのかもしれない。

多様な価値観が溢れた現代で、美の価値はその流れに逆行し勢いを増しているように思う。美とは、顔とは何なのか、ルッキズムという言葉の本質を考えさせられる物語だった。

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2025年05月20日

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しずかななにかが追い立ててくるようなこわさ。まさにパンデミックの中、身動きできない家の中から感じていたザワザワそのものが文字を、文を成しているような。なぜこれがこわいのか、きっと自分の人生を振り返るとわかる。

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2025年04月28日

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「青かける青」
「あなたの鼻がもう少し高ければ」
「花瓶」
「淋しくなったら電話をかけて」
「ブルー・インク」
「娘について」

世界がどうなるかわからなかったパンデミックの淵、きれいな悪意に満ちている六篇。
うとうと、夢と現のあわいで眠るようにしながら読みおえた。

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2025年04月28日

Posted by ブクログ

蔓延する感染病。

無くなってしまった日常。

続いていく日常。

それまでの当たり前がなくなったことで、
それまで気付かなかった孤独が浮き彫りになったところも
あったのかもしれない。

そんなことを考えさせられるような短編集でした。

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2025年04月27日

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どこにしまい込んだかも忘れていた罪悪感を不意に見つけてしまった瞬間。息苦しく希望ひとつ探す気にもならない未来への不安と、そんな将来にまだどこか期待をしてしまう自分の醜悪さに嫌悪を覚える。行き場のない心のモヤを宙に浮いた掴みどころのない文章で描かれるオムニバス短編。
頭から離れそうにもしつこく渦巻き続ける独特の魅力でした。

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2025年04月21日

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「思いがけない電話がかかってきたとき。もう何年も音沙汰のなかった人の名前をメールの差出人欄に見たとき。べつに自分が何かした覚えもないのに、不安とも後悔ともつかない感情が突きあげて緊張が走り、一瞬で汗をかく。そういう予期せぬ小さな再会が、わたしは怖い」

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2025年04月14日

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美しい言葉、表現に夢中になって読むと、ぞわぞわとこわいものに取り囲まれている感覚になってそのお話がぷつっと終わる。これの繰り返しで一冊読み終わる頃には不思議なこわさにどっぷり浸かり混んでしまった。

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2025年04月06日

Posted by ブクログ

     『春のこわいもの』


川上未映子さん はじめまして♪

六編からなる短編集。
『六人の男女が体験する
甘美きわまる地獄めぐり』
…って帯に書いてあるもんだから
読みたくなっちゃいました♡


収録作品は…

青かける青
あなたの鼻がもう少し高ければ
花瓶
淋しくなったら電話をかけて
ルー・インク
娘について

…となるのですが
読んでる途中 それほど響かず
「ブルー・インク」「娘について」
で夢中になって読んでいました♪
ただ、読み終わってから
ジワジワ〜っと余韻にやられちゃう✨

"地獄"ってほどではないけどね
なんか あとから ジワ〜って…


文章がながれるように…
スーーーーーッって入ってくるの。
(語彙力なくてごめんなさいっ♡)


なんだろう!?
不思議なんだけど…
江國香織さんを思い出しちゃう文体
江國さん 読みたくなっちゃうじゃん♡
ねぇ✨

素敵な短編集でした♡

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2025年04月04日

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著者のInstagramに掲載されたこの本の1ページの文章があまりにも美しく、魅了され購入。
コロナ禍の抑圧された、そして春の胸がざわつくような感情が生々しく描かれていて、文章が息づいているよう。晒された胸の内が美しい日本語で表現されていて、感情が揺さぶられる。その正体は掴みどころがなく、また春がきたら読み返してみようかなと思った。

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2025年05月28日

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未知のウイルスの影響下で迎えた最初の春、その後接触が断たれるとは知らず、身近な人に抱いた苛立ちや後ろめたさ。

こうして記されなければ過去として消えていったはずの、社会が閉塞に向かう中で誰かが抱いた思い、感情。コロナ禍よ早く終われと願ったけど、終わってみれば、当時のことが忘れ去られ、あの日々を過ごした自分たちが「いなかったも同然」になるのはそれこそこわい。"記録"しなければ消えてしまうあの頃の思念に心に留め、書き留めた著者のまなざし。なんだかやさしみを覚える。

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2025年05月16日

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コロナ禍の世界での日常の思いが描かれている短編集。
希望が持てないあの頃のものだからなのか、全体的に陰鬱な感じだった。
思いに共感できる部分もあるけれど、読後感はすっきりしないかな。

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2025年05月06日

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短編集です。私は2番目の「わたしの鼻がもう少し高ければ」が特に気に入りました。胸元を抉ってこられるようなイメージです。

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2025年05月05日

Posted by ブクログ

『娘について』のよしえちゃんの気持ち、嫉妬の形は共感する部分が多かったです。杏奈のお母さんが、自分は女優に"ならなかった"といった言い方をしていること含め、言い回しが癖になりました。
川上未映子先生の文章、スキ

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2025年04月30日

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気になっていた川上未映子さんの作品を、まずは短編集から読んでみようかなと思い手に取りました。

文体が独特ですね。読みづらいということではないです。
川上未映子節にガッツリハマる人もいるんだろうな〜と思いつつ、ちょっと私の感性のストライクには入ってこなかった感じでした。
全部「うん……えっ、おわり?」って感じで。

まあでも自分にもこういうところはあるし、こういう人もいるよね〜って作品群でした。

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2025年04月30日

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初の川上未映子さん。
短編集で読みやすかった。読後感はスッキリしない嫌な感じがするけど、私はそんな本が好きなので読んでみてよかったなと思った。
特に好きだったのは「娘について」
裕福な環境に生まれ育ち、親に甘えて生活している友達に嫉妬し、最後のチャンスを潰してしまった主人公の気持ちには共感できるところもあったし、ゾッとするこわさも感じた。

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2025年04月28日

Posted by ブクログ

何が「こわい」のか。どこが「こわい」のか。考えながら 読んでいたら 急に 「怖く」なった。何が「こわい」
んだろう?どうして「こわい」んだろう?とページをめくりながら じわじわ怖くなってきて。カタチがなく 見えないものは 怖がり度が人それぞれちがうけど「こわい」のだ、きっと。「こわい」は「だるい」と置き換わる地方があって それを踏まえて読み返すと 全く違って、日本語って奥が深い。

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2025年04月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

この本は同じ時間軸を生きる全く別の6人の短編集
コロナに翻弄された春にあらわれた「こわいもの」の話である

私が印象に残ったのは最後の話「娘について」だ
主人公は小説家を夢見るよしえで、女優志望の見砂とルームシェアをしている。よしえは家があまり裕福ではない母子家庭のため、バイトをしつつ小説を書いては応募する日々を送っているが、見砂は過干渉な親からの潤沢な仕送りに甘え、参加費を払うワークショップに参加したり、レッスンを受ける一方で、20歳ほど離れたオジサンと付き合ったり買い物に明け暮れたりしていた。そしてそんな見砂が掴みかけた最後のチャンス。よしえは…。

恵まれた環境。恵まれない環境。環境を言い訳にせず努力する者。環境に甘える者。それを妬む者。負けず嫌いであればあるほど、社会的成功がアイデンティティに直結すると信じているほど、他人と自分という立場しか見えなくなり劣等感に陥ったり誰かより明確に成功者でありたいと望んだりする。その感情が足を引っ張ってしまうことが多々あり、その誘惑が「こわいもの」であると思った

また、もう一話「あなたの鼻がもう少し高ければ」はゾッとするが、とてもリアルだった。
作中での「美人になりたいからギャラ飲みするのではなく美人になってからギャラ飲みするのであり、それは大学に入るお金が無いからGoogleに就職したいと言っているのと同じ」というシーン。驚くほどのかわいい人がギャラ飲みを斡旋し、美人の華々しい生活を発信し、それに憧れる女子が大勢いるという世界。吐き気がすると私は思ってしまうが、苦笑いされブスだと言われたトヨはこの後どうしたのか。美醜への執着と自分が醜いことによる劣等が「こわいもの」なのだろうと思った。

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2025年04月22日

Posted by ブクログ

文庫の新刊で薄かったのもあり、小生初の川上未映子さん。芥川賞作家、現選考委員。自己の内面を問いただすような、静かで美しい6つの短編。新型コロナのパンデミックで、実現できなかったことを振り返る。

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2025年04月19日

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不安や孤独という透明な膜の様なものが世界を覆っている時代。新型ウィルスが広がったことにより、透明な膜に色がつき明確に不安や孤独を感じる様になった。そんな世界を生きる人々の心の中に深く潜り込んでいき光や闇を見つけるそんな物語。

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2025年04月14日

Posted by ブクログ

初の川上 未映子作品。『乳と卵』、『ヘヴン』や『すべて真夜中の恋人たち』と著名な作品がある中で、タイトルと短編集という理由から、手に取った作品。

コロナ期を背景に描いているので、全体的に凄く閉鎖的で読んでいて、余り明るい気持ちになることはありませんでしたが、想像していたよりも、テンポが良くて時代にマッチしているような文体だなぁと感じました❗️面白いかと聞かれたら決して面白いと言える作品ではありませんが、村上 春樹さんを彷彿とさせるような文体もあって、個人的には好きな作家さんです。また気の所為かも知れませんが、心がゾワゾワする感覚が、今村 夏子さんの文章に似た感じがしました❗️

好きな話しは、『あなたの鼻がもう少し高ければ』、『ブルー・インク』、『娘について』の3編です❗️

少しずつ他の作品も読んでいこうかなぁと思っています。

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2025年04月13日

Posted by ブクログ

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「わたし、
 忘れたこと
 ないからね」

六人の男女が体験する甘美きわまる地獄めぐり
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川上未映子さんは「ヘヴン」に続き二作目です。
20代の頃「ヘヴン」を読んで、
当時の私は衝撃を受けすぎて、
そこからは著者の作品に手が伸びず。苦笑

40を目前に、
素敵な装丁と不安なタイトルに惹かれ、
今なら読めるかもと思い手に取りました。

6篇の短編集ですが、
テイストは違えど、
じわじわくる感じは共通していて。

仕方ないのですが、最近の作品はどれもSNSとコロナ禍に出会う頻度が高いなあと改めて思いました。
スマホやSNS等から離れて物語の世界に浸りたいと思いつつも避けて通れないなら、読むジャンル変えなきゃダメなのかもなあと。苦笑

個人的に印象的だったのは「花瓶」「淋しくなったら電話をかけて」「娘について」でした。

結局、SNSが登場する作品が印象に残ってる矛盾です。苦笑

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2025年04月13日

Posted by ブクログ

短編集でありながら、コロナ禍をこれほど普遍的で威力のある物語に落とし込むことが出来るのかと感嘆する。何か良くない事が起きる前、の不安感が全編を通して漂う。無意識の底に沈殿している鬱憤や悪意や欺瞞や諦観といった負の澱が、沸々と浮かび上がり、心を騒つかせる。裕福な友人との関係が描かれた「娘について」が特に印象的だった。

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2025年04月12日

Posted by ブクログ

「娘について」がこわい。点として語られる一つ一つの出来事がある所で線としてつながる瞬間、主人公と友人に違う種類のこわさを感じた。このこわさは、悪意・嫉妬・疑念・恨み・復讐がつまったこわさだと思う。

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2025年04月11日

Posted by ブクログ

コロナ禍の先行き不明な不安感が、罪悪感や焦燥感や消失感や欲望みたいなわけのわからない何かに追い詰められていく登場人物達の心理とうまく連動していて、読んでるだけで息苦しくなる。

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2025年04月06日

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