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ある朝突然、〈かいわれ大根〉が脛に自生していた男。訪れた医院で、麻酔を打たれ意識を失くした彼は、目覚めるとベッドに括り付けられていた。硫黄温泉行きを医者から宣告された彼を載せ、生命維持装置付きのベッドは、滑らかに動き出した……。坑道から運河へ、賽の河原から共同病室へ――果てなき冥府巡りの末に彼が辿り着いた先とは? 急逝が惜しまれる国際的作家の最後の長編!(解説・ドナルド・キーン)
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Posted by ブクログ
すべてわかったわけではないが、とにかく好きだった 一緒に夢を見ているようだった、楽しい、面白い、悲しい
やったことある人には分かる絶対夢日記だ!! どうやって作ったのかは分からないけど、例えばめちゃくちゃ面白い夢を見て起きた日の夜に、その夢を強く思い出しながら寝ると続きの夢を見れる、そうやって続きを書いたのかも。由希さんは自分の夢日記を見てカンガルーノートを思い出したらしいから、夢を描く時の構造や文章...続きを読むや表現は似てくるのかも。
かいわれ大根から始まる旅。 テンポ良くて、読みやすい。 死が其処此処に配置されているけれども、暗くない。
シュールの極みだった。世界観を楽しむ作品という気がする。あれこれ考えても全く訳がわからないけど、テンポがよくてリズム感もあって読みにくくはなかった。笑い転げるほど面白い場面もあるし、語り口調のおもしろいところもなんかかわいらしいところもあった。景色は暗いのだけども、どんよりとした気持ちになる作品では...続きを読むなかった。 安部公房は初めて読んだけれど、癖になりそう。
天才。 これは夢か現実かわからなくなることが夢の中であるが現実の中で起こしている。 かいわれ大根やカンガルー、ベッドといった周りにあるものをあり得ないものと組み合わせて登場させる。それが癌を患わした自分と重ねているのか、それが小説だと主張してるのか。 人が死ぬときはそんなもんだと言ってるのかもしれな...続きを読むいし自分の妄想で人は死ぬというのを言いたかっただけなのかもしれない。
きっとこの寓話の世界に比べたら、現実なんてバカくらいに単純で平凡なものなのだろう。大学の講義の合間に、あの広場のベンチで、ページをめくる指がスキップしていたのを今でも思い出す。 今ならぼくは、肘に豆苗を生やすだろう。
公房最後の長編とあり、かなり意味深でもある内容でした。 死をテーマに描写されていて、半分まではまあまあ笑って過ごせるが、後半からシャレにならない内容になり、かいわれ大根の行方は結果、主人公の生命であることが解説で分かりました。 かいわれ大根が萎びていけばいくほどに、主人公の場面の置かれている状況が、...続きを読むどんどん死へと近付いていく。 何故、かいわれ大根なのか若干不明ですが、たぶん生命力の強さかなと認識しました。 ラストの新聞記事で、バン!と謎が解ける、公房のトリック。 改めて嵌りました。
ずいぶん前に、Twitterで「脛にカイワレ大根が生えてしまった男が病院に行ったところ、温泉療法を勧められて、自走式ベッドで地獄めぐりをする話」と紹介されていたのを見た。興味を持ち買ってから数年積読されていたのを開いたが、紹介されていた通りの話だった。本当に面白い。今度、友人と読書会で読むことにした...続きを読む。 とはいえ、物語の全体像を一貫したストーリーとして把握するのは、かなり難しい物語だ。とにかく、場面と場面の間に脈絡がなく、「地獄めぐり」の言葉通り、大黒屋、賽の河原、硫黄泉の露天風呂、キャベツ畑、病院……といった場所で、現実にはあり得ない光景に出会っていく。 先行研究なんかを見ていると、大筋としてこの物語を「死」をテーマにした物語であり、「かいわれ大根」は、語り手の「ぼく」を孤独にする存在として読まれているようである。ぼくはどちらかというと、これは、生きる可能性を提示している物語で、その可能性こそが、「かいわれ大根」だったのではないかという気がしている。 卵と野菜とハムのミックス・サンド。風がはためく。サンドイッチに齧りつき、すぐに吐き出した。呆れたことになかの野菜は《かいわれ大根》だったのだ。嫌がらせにしてもひどすぎるよ。吐き気が込み上げてくる。例の医者が、なぜあんなに激しく嘔吐したのか、納得できた。彼は《かいわれ大根》の納豆あえを食べた直後だったのだ。時分のフケの臭いには平気でも、他人のフケには我慢できない、あの生理だろう。(p110〜111) あいにくぼくは、さほどはしゃいだ気分にはなれなかった。運ばれてきたチャーシュー・ヘルシー定食には、たっぷり《かいわれ大根》をあしらった味噌汁がそえられていたのである。(p137) 《かいわれ大根》入りの味噌汁には、さすがに手をつけられなかった。(p140) 一つ目は、賽の河原で、観光客向けに石積みを演じる小鬼たちの引率者が、おそらく親切でくれたのであろう「かいわれ大根」入りサンドイッチに対する反応である。二つ目は、キャベツ畑で母親にベッドを奪われそうになったところを助けてくれたトンボ眼鏡の看護師と行った、ラーメン屋での描写である。 ここでは、「かいわれ大根」は、コミュニケーションの契機として現れてくる。しかし、そのきっかけに対して拒絶反応を引き起こすのは、語り手の「ぼく」の方だ。 見覚えのある植物だ。そう、もしかしたら《かいわれ大根》かもしれない。マヨネーズをかけて、三日に一度は食べている好物の野菜だ。(p14) そもそも「かいわれ大根」は、ぼくにとって好物の野菜だった。そう考えると、引率者が渡してくれたのは、「ぼく」の好物をたっぷりと入れたサンドイッチだったわけで、本来は、好意として受け取ってもいいものだった。 しかも、「他人のフケには我慢できない、あの生理だろう」と語り手は言っているが、「ぼく」にとって「かいわれ大根」は「他人のフケ」ではない。自分の身体の一部であり、一時とはいえ、命をつなぐための貴重な栄養源でさえあった食べ物である。そんな「かいわれ大根」を拒絶してしまうことで、自己疎外してしまうのである。 考えてみれば、物語を通して、「ぼく」が好意を寄せることになるトンボ眼鏡の看護師や、下り目の少女たちと出会うのも、「かいわれ大根」があったればこその出会いだった。「ぼく」は、脛に「かいわれ大根」が生えて、病院にいったからこそ看護婦らと出会うのである。 こうやってみてくると、「かいわれ大根」は、「ぼく」にとってコミュニケーションのきっかけとしてある。それは、ぱっとしないサラリーマンをしている現実世界とは、別の生き方の可能性を提示してくれる場所=治療の場として、地獄があったのではないかということを意味している。しかし、「ぼく」はそれを拒絶してしまう。そして、物語の最期、再び「ぼく」は、カンガルーと出会うことになるのである。 六つの電動ドアが一気に開いた。誰も降りてこない。いや、なにか灰色の小動物の群れが飛び出してきたような気もした。すごいスピードでジャンプしながら、ホームを横切り、闇のなかに散らばっていく。カンガルーにしては小さいので、ワラビーかもしれない。そしてふたたび、静まり返ってしまう。(p228) 元をただせば、カンガルーというのは、サラリーマンとしての「ぼく」の悩みのタネであった。「カンガルー・ノート」と呼ばれる、ただの思いつきの商品アイデアが、上司の目についてしまったがために、新しい商品を具体化されるように指示され、何のアイデアもなく「ぼく」は、悩むのだった。 地獄をめぐる足であったベッドを失い、カンガルーという現実の群れに引き戻されることによって、語り手の地獄めぐりは終わりをつげる。それこそまさに、生の終わりを意味していた。 新聞記事からの抜粋 廃駅の構内で死体が発見された。脛にカミソリを当てたらしい傷跡が多数見られ一見ためらい傷を思わせたが、死因とは認めがたいとのこと。事故と事件の両面から調査をすすめ、身元の確認を急いでいる。(p236) 脛にカミソリを当てたらしい傷跡は、脛に生えた「かいわれ大根」に対する拒否の象徴だろう。死因とは認めがたいとされつつも、脛の傷=「かいわれ大根」の拒否こそ、彼の死にとって致命的だったのではないかと思わせる。 この物語は、自分を他者と結びつけてくれる可能性を拒否することで、自滅していく一人の人間の物語なのだと思う。
脛に「かいわれ大根」が生えた男の数奇な物語。 幻想と現実が入り混じる気味の悪い夢の中を連続して彷徨うように展開していくストーリー内の所々で安部公房お得意のブラックユーモアが光っている。 死をテーマにしているにも関わらず、重すぎずどこか良い意味での滑稽さを感じさせる作品だった。
はじめは「カイワレ大根ってちょっとちょっと〜(笑)」 くらいの軽さで読み出したのですが、ベッドが走り出したあたりから私の頭のキャパを越えた展開になっていきました。 安部公房がこれを病床で、死の影を感じながら書いたとしたら…なんだかものすごく納得です。うまく説明できないのですが。
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