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Posted by ブクログ
敗戦を迎え混乱する満州。
満州で生まれ育った青年・久三は両親を亡くし、戦争を経てロシア兵にかくまわれている。
ロシア兵たちとは穏やかに過ごしているけど、故郷日本への想いに次第に焦燥感を募らせていく。
ある日、南へ向かう列車が出る事を知った彼は脱出を決意するが…
そこからは最後まで息がつけない。寒さと飢え、疲労と恐怖。共に南を目指すことになった謎の男・汪(高)は、敵か味方かもわからずずっと疑心暗鬼。
いつまで読んでも極寒の大地が続き、状況は過酷になるばかり。
日本を知らない久三。だけど彼を突き動かしてきたのは「自分は日本人だ」という強い想い。厳しい道程を経てきたからこその、あのラストにはクラクラ…
自身も満州からの引揚げを経験している安部公房。父を発疹チフスで亡くし、市内を転々とし苦労してやっと乗れた引揚げの船中でもコレラが流行していたとのことで、その過酷さは想像がつきません。
「終りし道の標べに」と併せて、安部公房自身の引揚体験談もどこかで読めないかなぁ。探してみよう。
Posted by ブクログ
けものたちは故郷をめざす
著:安部 公房
新潮文庫 あ-4-3
ヤマザキマリの「国境のない生き方」にお薦めがあったので、一読させていただきました
逃げ遅れた日本人久木久三と、日系中国人高との、満州からの逃避行
八路軍を巻くように、都市を避ける南下路
眠ることすら難しい凍土の旅程
野犬、狼がうろうろとする、身を隠すことができない原野
氷はあるが、水を飲むことがなかなか許されない
ピストルをもち、なかば脅されながら進む
疲労困憊でわずかな坂を上ることすら時間がかかってしまう
敵とも味方とも分からない連れにも神経を研ぎ澄ませ、久三の生への挑戦が続く
凍傷でボロボロとなる皮膚、パンをもうけつけなくなった胃や、どす黒い血、極限の状態でたよるものは自分ただひとりである
目次
第1章 錆びた鉄路
第2章 旗
第3章 罠
第4章 扉
ISBN:9784101121031
出版社:新潮社
判型:文庫
ページ数:320ページ
定価:670円(本体)
1970年05月25日発行
2018年02月15日23刷改版
2024年02月20日27刷
Posted by ブクログ
順調に思えた故郷への逃避行は、はじめの一日を頂点に地獄へと急降下していく。
銃撃、衝突、凍傷、飢え、裏切り、ありとあらゆる死の淵に立たされながらも、日本に帰れるという希望が何度もちらつく。が、その希望の光は見えたと思った次の瞬間には消え、暗闇を彷徨い歩いていると再び光り、またすぐに消える。消えるたびに絶望が殴る蹴るの暴行を加えてくる。幻の光であると、どこかで知っていながら、それでもすがりつくものがないよりましだと、裏に絶望が隠された希望という扉の取手を回す。
久三の感情、情景描写、ひとつひとつの表現が、鈍い鐘の音のような重さをもって心臓に響いてくる。
すべてが事実にしか思えないほど残酷なまでに現実的でかつ壮大な冒険活劇でもあった。
Posted by ブクログ
第二次世界大戦敗戦の噂を聞いて、診断書を満州から偽造し、逃げて?きたという公房の、半分くらいの体験記だそうです。
敗戦と共に襲われる屈辱、苦悶、苦痛…そして無政府状態に対する怒りと疑問が、この作品には生きることを諦めないというテーマで描かれています。
元々、公房のなかにある
考えることを諦めなければ、必ず閃きがある
というモットーのなか、主人公はひたすら考え抜いて窮地を渡っていくのですが、このモットーは個人的にも好きで、文学に嵌るきっかけにもなりました。
高の指を切断するシーンは、流石、医学部卒なだけあり生々しいですが、生きることを優先させると…と、ひたすら生に貪欲な内容でした。
人間は、いざとなったら案外、生きることに貪欲になるのだということを教わりました。
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小説・文芸
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