圧巻の幕引き。喜久雄の芸は人智を超えた域に達し、美そのものに成った。私も心のなかで「三代目!!」と万感の拍手を贈る。
この物語では色々な叫びを共に経験したように思う。仇への恨み、子を喪う哀しみ、病の苦しみ、嘲笑の悔しさ、報われる嬉しさ、生きる上で味わい得るあらゆる感情を揺さぶられた。そうされることで
...続きを読む、2重写しになった歌舞伎という芸能との距離がグッと近くなる。演目の内容を知っただけではチグハグだったり納得出来ない話しでも、理解が及ぶ時代の流れと重ねると表現されたものの意味が拾えるようになる。是非出てきた演目の何かを観劇したい。
徳次との再会がどうなったかは知りたかったところだけれど、徳次ならずっと弁慶を貫いてくれるだろう。
芸能オンチの私でも「これはあの人か…この事件はあれか…」とモデルがチラチラ浮かび、まさに自分が「世間」という立場の人間である事を突きつけられる。竹野の大衆心理の掴み方は、メディアに視線誘導され、また無責任に人を追い込む大衆としての自分を意識させる。時代が変わってゆく中でどう「芸」を極めるか。公人に対して完璧以外を認めない姿勢を改めて、私は「芸」を見つめたいと思った。
書籍は購入した。あとがきもとっても分かりやすく、理解が更に深まる。
先にAudibleで聴いて本当に良かったと思う。歌舞伎素養の無い私には、セリフの字面のみではこの世界観を想像しきれなかったし、映画やドラマだけでは作り手の解釈の影響が大きく、大作であるからこそ複雑で重厚な物語を取りこぼしてしまう。数々の人物を1人できっちり演じ分け、声だけで歌舞伎の舞台を与えてくれた、朗読の尾上菊之助さんにも拍手と感謝を。AERAのインタビュー記事も良かった。
映像も観たいから映画も絶対に見る。難しいだろうなぁ。吉沢くん頑張って!