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Posted by ブクログ
吉田修一の鷹野一彦シリーズの第3作目。(2018年5月単行本、2020年8月文庫本)。
2作目の「森は知っている」の17歳の鷹野一彦が3作目で34歳になっていた。1作目の「太陽は動かない」の時は31歳だから、順番が違っているように見えるが、この順番で物語を追うのが正解。
「太陽は動かない」での田岡亮一、デイビッド キム、AYAKO、中尊寺信孝も今作でも主要人物として登場する。そして「森は知っている」で失踪した鷹野の親友の柳勇次も。
鷹野の部下の田岡は立派なエージェントに成長、韓国のエージェントのデイビッドは引退していたのに引き戻される。AYAKOは相変わらず敵か味方かわからない動きをするが結局は鷹野を支える。
今作では若宮真司という24歳の若者が最初のダム爆破事件の実行犯を知っている人間として登場するが、実は4歳から中学卒業まで児童擁護施設でAN通信の庇護の元で育ち、鷹野と同じように沖縄の離島の高校へエージェントとしての訓練の為行く直前に心臓欠陥が理由でエージェントへの道を断たれた過去を持っていた。戸籍を喪失した若宮真司が鷹野と終盤絡んで新しい人生を歩むことになるのも胸に込み上げてくるものがある。
いきなり日本のダム爆破事件で始まり、日本の水道の民営化を見越した利権争いにフランスの水メジャー企業VOエキュと日本の大手開発会社東洋エナジーに日本の重鎮政治家中尊寺信孝が絡んだ事件と判る。爆破計画は中止したはずなのに何者かによって計画が遂行された。爆破計画はまだ続く。AN通信の鷹野は中尊寺から爆破計画の阻止を依頼される。これが最初の大筋の物語で、何かつまらなさそうと思っていたら、とんでもない方向に話は展開する。
爆破の首謀者はVOエキュを乗っ取ったリー ヨンソンというシンガポール国籍の人間だとわかる。中央アジアの水資源開発事業が本当の目的で、爆破実行はAN通信の潰滅を意図しながらも犯人の何らかの思いがあるのもわかってくる。その中央アジアに関する事業にもVOエキュがかかわっており、資金の調達にリー ヨンソンはデイビッド キムを使いイギリスの投資会社ロイヤル ロンドン グロースを誘う。
中央アジア最初の対象はキルギス、のちにキルギスはリー ヨンソンが深い関わりがあることがわかり、ビジネスとは違う別の目的があることをAYAKOが突き止め、ロイヤル ロンドン グロースにとりいり、リー ヨンソンと鷹野を裏切る行動に出る。後にまた鷹野を助ける行動に変わるのだが、このあたりが謎の女と言われる所以ではあるが、読み終わった後も未だよくわからない…
終盤リー ヨンソンと鷹野が出会い、顔が潰れていてもリー ヨンソンが誰であるか目を見て鷹野はすぐにわかる。ここはこの物語の最大の見せ場なんだろうなと胸が熱くなる。
鷹野が35歳で引退するのか、リー ヨンソンと若宮真司のその後は? そして今回登場しなかったが鷹野の初恋の菊池詩織との再会はないままなのか。田岡のその後とAN通信のその後も含めて是非続編を期待したい。
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