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Posted by ブクログ
本作は、少なくとも三〜五作目は実在の事件をもとにして書かれていると思うのだけど、明記されていないのはなぜだろうか
ばからがき…大王製紙井川 ギャンブル狂い
よろずやぜんじろう…『つけびの村』でも有名な山口連続放火殺人事件
白球白蛇伝…元千葉ロッテマリーンズ投手強盗殺人事件
実際の事件がモチーフになっている犯罪小説は、人間の業の深さ、生い立ちや環境次第で一歩間違えば誰でも犯罪者になり得るのではないかと思わせるリアリティさが増す
完全なるフィクション(あり得ない筋)も面白いが、
こういう背景が本当にあったのかもしれないと思わせてくれる事件小説は、実際の報道内容と照合させて書かれているものもあるし、作家さんの想像力に依るものもあるだろう
人間の残酷さが実際には恐ろしいのに、なぜ小説やドラマ、漫画の中ではその描写を『娯楽、エンタメ』(より良い言い方が見つからない)として『楽しめる』のだろうか。没頭できるのだろうか
深淵を覗いた気がするからだろうか
Posted by ブクログ
いずれも実際に起きた事件を題材とした短編5編。どの作品もラストに曖昧さを残すが現実と創作の差異を読んで想像する。
誰しも犯罪者となる隙間が見える。
「青田のY字路」
北関東連続幼女誘拐殺人事が題材か。
そのうちの一件「殺人犯はそこにいる」で取り上げられた冤罪事件“足利事件”を意識したかな。
それだけでなく類似犯罪も取材の上かと思う。
少女達の誘拐殺人は許せるものではないが、
犯人であろうと地域住民から追い詰められる男の行先。数々の状況や生い立ちそのものへの不信感。
「曼珠姫午睡」
弁護士の妻英里子の中学の同級生が殺人犯で捕まる。内縁の夫の保険金殺人。目立たなかった少女の中学卒業後の変貌。中学のちょっとした関わりからか、彼女は自分の店名に中学の思い出を源氏名に英里子と名乗っていた。
犯罪とは無縁の英里子がふと踏み外す日常。
後妻業などかな。
「百家楽餓鬼」
バカラ、ギャンブルに堕ちていく御曹司。
今、タイムリーな話題。記憶に残る上場企業創始一族の社長がカジノで多額の借財を重ねた事件。
寝食を忘れて没頭していく様子、本人はすでに思考できない状態が背筋が凍る。
「万屋善次郎」
62歳善次郎が限界集落で5人の高齢者を殺人放火。善良な男が、集落で孤立、高齢者たちからの軋轢で追い込まれていく。
田舎暮らしでの孤立は過酷。余所者、上下関係と理不尽な掟もある。
「白球白蛇伝」
家族の希望を背負いプロ野球選手となった青年。貧しい家庭だったが、家族は才能ある青年に協力を惜しまない。
華やかな活躍は短かったが、一度経験した贅沢を引退した後も続けていく。そこには破滅しかない。
Posted by ブクログ
何というか、良い人も悪い人も彼(吉田修一氏)の描く人間の人となりが鮮明過ぎて、見知った人の話のような錯覚に陥る。
全く異なる5編からなる犯罪にまつわる物語なのだけど、隣近所でおこった事件を見せられている感じ。
だから決して読後感が良いわけではない。
1話終えるたび「嗚呼…。」となんとも言えない重りを背負わされるよう。
例えば、幼い頃からよく知ってる近所の子どもに「お母さん刺しちゃった」とインタホンごしに聞かされるような…そんなオモリ。
偏見、嫉妬、小さなプライド、欲、思い込み、集団心理、傲慢…人のダメな部分をあげたらキリがない。
そんな中に置いても、田舎の閉鎖的な街で生まれる集団心理の怖さが印象に残る。
「青田Y字路」「万屋善次郎」
そして何の罪もない非力な子どもがいつだって割りを食うことになるのがやるせない。
「白球白蛇伝」
余談ですが…
「青田Y字路」と「万屋善次郎」は、1つの物語として映画になってます。
『楽園』佐藤浩市、綾野剛(Netflix視聴可)
今年の21冊目
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