Posted by ブクログ
2016年04月03日
吉田修一作品というと、そこはかとなくおしゃれですっきりサラサラしていて、そしてフェミニンなかおり漂うというイメージなんだけど、それを気持ちよく裏切るような泥臭い話。何しろ、やくざ稼業の一家で大人になっていく少年の話なんだから。
はなれのおばけを信じていた駿少年が青年へと育ち、アルバイトで金をためて女...続きを読むと街を出ようする。そして……。半生記かというと、実は一代記ではないだろうか。駿は若くして生ききってしまったような気さえする。やくざ稼業の一家のなかでは浮いたような、どこか一家を客観的に見ていた彼は、没落していく家から最後の最後でのみ込まれてしまった。
「乱楽坂」という坂が長崎あたりにあるのだろうか。楽しく乱れながら堕ちていく坂ということか。