吉田修一のレビュー一覧
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歌舞伎というなじみのない世界を生きてゆく男の物語。非常に重厚な小説だった。語り口は古典劇の口上を聞くような感じであり、また一般の人にはあまりなじみがなくて退屈しそうな歌舞伎の舞台の場面の描写も非常に臨場感にあふれていて、実際に歌舞伎を観るよりも迫力があるのではないかと思ってしまう。主人公の喜久雄は芸の道を究めてゆくのだが、最初は多くの仲間に囲まれていたのが、年を取ってゆくこともあり、また自分がどんどんと芸の高みに登ってゆくこともあり、それにつれてだんだんと孤独になってゆく。その姿が非常に寂しそうで印象的だった。その姿はこの小説を原作にした映画でも描かれるのだが、映画ではあまり描かれることがな
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歌舞伎というなじみのない世界を生きてゆく男の物語。非常に重厚な小説だった。語り口は古典劇の口上を聞くような感じであり、また一般の人にはあまりなじみがなくて退屈しそうな歌舞伎の舞台の場面の描写も非常に臨場感にあふれていて、実際に歌舞伎を観るよりも迫力があるのではないかと思ってしまう。主人公の喜久雄は芸の道を究めてゆくのだが、最初は多くの仲間に囲まれていたのが、年を取ってゆくこともあり、また自分がどんどんと芸の高みに登ってゆくこともあり、それにつれてだんだんと孤独になってゆく。その姿が非常に寂しそうで印象的だった。その姿はこの小説を原作にした映画でも描かれるのだが、映画ではあまり描かれることがな
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私は今、凄まじいものを読んだ。最終ページ、そこにははっきりと稀代の女形花井半二郎がいた。読後、熱いものが胸に込み上げるような感覚があった。
歌舞伎を愛し、歌舞伎に生きた天才半二郎の一生を圧倒的な熱量で描き切った本作。
一つの道を究めるために、すべてを懸け、命を燃やす。その真摯な生き様は、読む者の胸を強く打つ。
普段あまり人間ドラマを描いた作品を読まない私だが、本書には大変満足できた。正直、ドラマやアニメ、バラエティのような分かりやすい楽しさや面白さのある作品とはいえないかもしれない。しかし、彼の人生を密着したまるで2時間の上質なドキュメンタリーを見ているようで、読後には理由を超えた大きな -
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ネタバレ「白河集団公司」!!!(嗚咽)
徳ちゃんって最後の最後まで本っっ当に義理堅くてなんていい奴なの!!!
私は映画が先、原作が後になったけど、結果的に正解だったと思う!
歌舞伎の繊細な大胆な美しさとか、俳優陣の演技の上手さを堪能するために映画がすごく良かったんだけど、映画化で省かれたたくさんの部分があまりにも良すぎるため、「映画に反映されてなくて残念」の気持ちの方が上回ってしまうと思う。
映画では、俊ぼんが逃げて、喜久雄の元カノと子供作って、結構ぬるっと実家と歌舞伎界に帰ってきたようなイメージだったんだけど、原作では戻ることを決めてから父親に許可もらうために踊るシーンもあったし、腕の中で第一 -
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先週、映画「国宝」が、歴代邦画実写の興行収入ランキングで1位になったというニュースがありましたね!「踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」(2003年)が22年間首位を譲っていなかったことも同時に知ることになって、そっちにも驚いちゃったな。
「国宝」は朝日新聞に2017年1月1日から2018年5月29日まで連載され、2018年に加筆修正されて書籍化された作品です。2019年がコロナ禍の始まりだったから、それが無かったら、もっと早くに映画になっていたこともあり得たのだろうか。
私の家族に作者のファンがいます。映画が公開されると初日近くに早々と一人で観に行き、「 -
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ネタバレ任侠の世界から始まる。
主人公の喜久雄は、複雑な家庭で育ち、ヤンチャな少年時代を過ごし、芸能の道へ。
マツや徳次は、派手な存在ではないけれど、喜久雄の最も核になる人物だなと思う。
感情がないわけじゃないけれど、何処か人情の薄さを
感じてしまう喜久雄。そんな喜久雄を熱く支えてくれる2人。そういう人に恵まれて、あぁ、うらやましいなと思う。
妻、彰子は不憫で仕方がなかったけれど、長い年月を経て、変わることってあるんだね。
1番不便なのは「悪魔と取引」を聞かされた綾乃だね。子供にそんな事言うのって、大馬鹿なんじゃないのって思ってしまう。
終わりにかけての喜久雄の変容。
「国宝」って「幸せ」とトレー -
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読後、深い余韻に満たされる。
上巻の感想で、主人公のプロ意識と云う表現をしたが、そんな生やさしいものかとでは無い!特に二人の登場人物の「芸」(歌舞伎)に向き合う情熱?執念?そんなものでは無い、鬼気迫る魂!を味わう。
物語も青年期からの何処か危なっかしい、ガラスに触れる様な感情や出来事!これは登場人物全てに当てはまる!人生の栄枯盛衰、最悪の状態から好転すれば、また悪い事が起こるのではないか?危なかしくて観ていられない!という感情が湧いてくる、反面先が気になって仕方がない!一気に読んでしまう。
重厚な大河ドラマを観た想い!
深い感動と余韻、多くの言葉や感想を残そうと思ったが、言葉が見つからない -
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やっと観た映画が面白かったので原作だとどのように描かれてるのか気になり翌日に購入。はじめは語り口調が読みにくいなと感じていたけど、いつの間にかページを捲る手が止まらなかった!
映画は原作と異なるところ、描かれないところがたくさんあり、読みながら思ってたのはよくあの3時間に綺麗にまとめたなと監督たちに感動した。頭の中どうなってんの?
原作での喜久雄は背中に彫ったミミズクのように恩を忘れない人間味を感じられたり、映画であの人どうなっちゃったの?とモヤモヤしていたところが救われたり、とにかく読んでよかった!
歌舞伎のことはちんぷんかんぷんな私は、映画を観たからこそ小説をより楽しむことができたし、 -
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ネタバレ映画→上下巻
映画と小説は別物。でもどっちも良かった。
3時間長いしトイレも心配…と思ってたけど
原作の内容は正直3時間じゃ全然足りてへんなと感じたし、本筋はもちろん同じやねんけど重要なシーンやったり登場人物が違ってたりと、本を読んでみてビックリしたことがたくさん。
上巻の冒頭からの感じてた違和感が、最後の方で解消されて、(あれやっぱおかしいよな?どういうこと?)てのが最後に分かって、でもモヤ晴れ切らんくて、
喜久雄の親父さん殺したのはあの人で…、でもそのシーンを2代目も目撃してたよな?
とか、その上で引き取った?とか乏しい理解力でなんとか読み切ったけど、これはもう一度映画も見ておきたい。
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この事件の『悪人』とは一体誰なのか…。
元々気になっていた本作ですが、上下巻がセットになり新装版が出たタイミングで購入(そこから積読でしたが笑)。
内容としては保険外交員の女性が殺害かれ、その女性を巡る周りの人たちの物語。愛する娘を失った親、親友、バーで好意を持たれた男、出合い系サイトで出会った男などなど。ひとつの事件を境に色々な人の人生があらゆる方向に。
視点がコロコロ変わる本作では、とにかく感情移入の対象が変わりまくります。ある人の話に耳を傾けていたら横から聞こえてくる話にも共感みたいな。とにかく共感と嫌悪を繰り返しました。
そしてタイトルの『悪人』。今回の事件を通しての