吉田修一のレビュー一覧
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ただのほのぼの作品かと思いきや、最後の最後で驚かされた!ものすごく恐ろしいようで、だけどどこか暖かくて、どう解釈するべきか迷い考えさせられる作品だった。
「この部屋での、この共同生活は、そういったものを持ち込まないからこそ、成立しているんじゃないか、とも思う。話したいことではなく、話してもいいことだけを話しているから、こうやってうまく暮らせているのだと。」
ーー良介
「飽こうが飽くまいがこの世に悪意は存在するし、目をつぶって過ごそうなんて、そんなの楽観的すぎるよ、と笑う人がいるかもしれない。ただ、そう言って笑おうとする、その悪意にも、私はもう飽きている。」
ーー琴ちゃん
「ここでうまく暮 -
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吉田修一さんのエッセイ読むの、意外にも初めてかも。
人間というものの切なさ、愛おしさが感じられる簡潔な文章はエッセイでも健在で、ああ吉田修一ってやっぱいいなあ、と思いながら読んだ。
特に好きなのは『お盆・花火・長崎』。
長崎ではお盆に墓場で花火したり、精霊流しで100本以上も爆竹を鳴らすのは初めて知った。故人を賑やかに送るの、楽しそうで、どうしようもなく切なくて、最高。
吉田修一さんは、盛大な爆竹と共に精霊船を流し終えた後、宴会に向かって、高揚と虚しさが入り混じったような足取りで歩きながら、亡くなった家族や友人のことを話すのが好きだそうで、それもすごくいいなあと思った。 -
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ネタバレ吉田修一の短編小説集で『逃げろ九州男児』『逃げろ純愛』『逃げろお嬢さん』『逃げろミスター・ポストマン』の4作が収録されている。
どの話も実際にあった事件を彷彿とさせる内容で、個人的には『逃げろお嬢さん』がとても良かったと思う。夫が大麻取締法違反で捕まった舞子が逃亡し、その舞子をかつて推していた宿の経営者宮藤康太がひょんなことから舞子を助け「テレビのドッキリだな」という壮大な勘違いをしてしまい、その結果、大騒ぎになるというもの。
クスッと笑ってしまう表現とハラハラする表現の塩梅が最高でのめり込むようにして読んでしまった。
また、吉田修一は社会的弱者とされる立場の人たちの描写をこちらの心が痛くなる -
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主要な登場人物の中での「悪人」ランキング
僕の中では、
第一位 ボンボンの大学生・増尾圭吾(だんとつ)
第二位 殺された保険外交員・石橋佳乃
第三位 土木作業員・清水祐一
第四位 紳士服店店員・馬込光代
でした。
「人としての正しい行い」がこの小説のテーマかな、と思いました。
誰にも潜む「悪人」の自分。そいつが衝動的に引き起こす悪行。もちろん取り返しのつかないこともあるけど、その悪行の後の「人としての正しい行い」こそ、生きていく上では大切なこと。
それと、人に執着すること、について。
佳乃の父、佳男が増尾の友人、鶴田に語りかける言葉。
長くなるけど、とても心に残ったので引用する。 -
購入済み
なるほど、そういうことか!
世之介の人生において、前作には書かれなかった部分のお話。
前作との繋がりは殆ど無いに等しいので、本作だけ読んでも充分楽しめます。もちろん、前作ファンの方は必読です。 -
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ネタバレ文庫化で購入。
バブル最後の売り手市場に乗り遅れ、バイトとパチンコで食いつなぐこの男。名を横道世之介という。いわゆる人生のダメな時期にあるのだが、なぜか彼の周りには笑顔が絶えない。鮨職人を目指す女友達、大学時代からの親友、美しきヤンママとその息子。そんな人々の思いが交錯する27年後。オリンピックに沸く東京で、小さな奇跡が生まれる。
構成が素晴らしすぎる。
未来の描写の時、ここに世之介がいたらどんな感じだったのかなぁと思わずにはいられない…。
世之介は本当に優しい人。自然と人に寄り添う優しさで。
線路に落ちた人を助けようとして亡くなるっていうのがまさにそう。
“本当に不思議だった。世之介兄ちゃ -
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田舎での生活がよくイメージできた。
狭い世界で暮らす閉塞感
やるせなさ、虚無感 などなど よくわかる
その中で必死に生きること
そもそも老いること と 生きること 何が違うのか
同じようで 違う気がする
意味ある毎日を送るには? やっぱり意味を意識しないといけないのだと思う。
味気ない日常は人間を疲弊させる 虚無感に繋がり、存在意義を疑う。
そしてなんでもない事が良い(実際にはその通りなのだけど)と自分に言い聞かせて、虚無感と闘う。
そしてそれの繰り返し。。
気がつけば、何もできなくなっている 時間も労力も十分ではないと嘆く
そしてまた感謝、日常への感謝 それがずっと続いて、最後は死ぬ。
人生