感情タグBEST3
Posted by ブクログ 2024年01月26日
この方の作品は強烈な没入感を与えてくれる。「怒り」が大好きだが、この作品も並びました。男性作家なのに光代の心理描写がすごいです。終わり方もたまりません。
読み終わった後に感じたこと、
悪に利用されない為に、強くあり、賢くあらないといけない。自分を軽視する人間とは関わるべきではない。必死に生きている...続きを読む人を見下し、馬鹿にする人間にだけはならないように生きていきたい。そして誰かから語られる様々な自分はどれもちょっとずつ自分なのだということ。
「悪人」は誰か?
私にとっては、彼は優しすぎたのだと思いたい。衝動的に殺人を犯してしまった彼は悪でなければならない。なぜなら、殺人を許してはいけないから。でも人として、あの大学生や傲慢さを撒き散らす被害者女性より、思いやりと情のある人間でもあると思う。登場人物を善と悪のどちらかに分類することは私にはできないが、好きと嫌いに分類するならば、間違いなくあの大学生だけは嫌いだ。
Posted by ブクログ 2023年04月23日
決して明るい話ではない。
だけど、自分はこっち側なんだと。どうしてか共感出来る部分多々あり。
生きているなかでの社会での不条理さや不公平感、要領良い人やうまく立ち回れない自分。
吉田氏、好きです。
Posted by ブクログ 2022年10月05日
主要な登場人物の中での「悪人」ランキング
僕の中では、
第一位 ボンボンの大学生・増尾圭吾(だんとつ)
第二位 殺された保険外交員・石橋佳乃
第三位 土木作業員・清水祐一
第四位 紳士服店店員・馬込光代
でした。
「人としての正しい行い」がこの小説のテーマかな、と思いました。
誰にも潜む「...続きを読む悪人」の自分。そいつが衝動的に引き起こす悪行。もちろん取り返しのつかないこともあるけど、その悪行の後の「人としての正しい行い」こそ、生きていく上では大切なこと。
それと、人に執着すること、について。
佳乃の父、佳男が増尾の友人、鶴田に語りかける言葉。
長くなるけど、とても心に残ったので引用する。
ー あんた、大切な人はおるね?その人の幸せな様子を思うだけで、自分までうれしくなってくるような人たい。
おらん人間が多すぎるよ。
今の世の中大切な人もおらん人間が多すぎったい。大切な人がおらん人間は、なんでもできると思い込む。自分には失うもんがなかっち、それで自分が強うなった気になっとる。
失うものもなければ欲しいものもない。だけんやろ、自分を余裕のある人間っち思い込んで、失ったり、欲しがったり一喜一憂する人間を、馬鹿にした目で眺めとる。
そうじゃなかとよ。本当はそれじゃ駄目とよ ー
小説と同時並行で映画を見た。
増島ひかり演じる石橋佳乃はとても危うくて、僕はああいう危うさにころっと引っかかるタイプだ。
だから、増尾は死んでほしいし、清水は不憫で感情移入してしまった(もちろんだからと言ってあんなことしていいわけではない)。
なぜか雨のシーンしか印象に残らないジメジメした作品なので、ジメジメした気分の時に読みたい。
Posted by ブクログ 2022年05月28日
田舎での生活がよくイメージできた。
狭い世界で暮らす閉塞感
やるせなさ、虚無感 などなど よくわかる
その中で必死に生きること
そもそも老いること と 生きること 何が違うのか
同じようで 違う気がする
意味ある毎日を送るには? やっぱり意味を意識しないといけないのだと思う。
味気ない日常は人間を疲...続きを読む弊させる 虚無感に繋がり、存在意義を疑う。
そしてなんでもない事が良い(実際にはその通りなのだけど)と自分に言い聞かせて、虚無感と闘う。
そしてそれの繰り返し。。
気がつけば、何もできなくなっている 時間も労力も十分ではないと嘆く
そしてまた感謝、日常への感謝 それがずっと続いて、最後は死ぬ。
人生を振り返った時に、あ、もっと大切にすれば良かったって、必ずこれだと、感じるのだと思う。
結局長い暇つぶしなんてよく言ったものだけれど、本当にそうか?
本当に何もしなくていいのか?ただの浪費、人生の無駄遣いでいいのか?
主人公は厳しい結末を迎えたが、結局はやるせなさがたまたま悪い方向へ転じただけ。
根っからの悪人 ではない
それが主題のひとつなのだとも思う。
ではどうすれば良いのか?これは難しい。
一つあるのは、諦めないこと。なあなあで生きない事、立ち向かう事、辛くても辛くても、諦めない。
本当の幸 に向けて諦めないことが、幸 なのかもしれない。
Posted by ブクログ 2020年05月06日
読み終えてしばし沈黙。
一体どうやったらこれほどまでにかわいそうで、哀しくて、でも事件としてはごくありふれている、そんな結末を作り出すことができるんだろう。
どの部分が似ている、とかではないのだが、読後感としては中上健次の「枯木灘」に近いものを感じている。
といっても中上作品にあるような、えも言...続きを読むわれぬ神話的空気を纏っているわけではない。
なんかもっと日常的でささやかな幸せを求めていて、それを断ち切ったり断ち切られたりしている登場人物たち。
でも、ただやられているわけではない。それぞれに何かを克服していく。決して救いがないわけではない。
それでも読後、哀しくて、やりきれない。
Posted by ブクログ 2019年09月14日
吉田修一の代表作。本当に悪い奴は誰か。殺人を犯してしまった主人公なのか…。彼は本当の悪人なのか。不幸な事件に巻き込まれて人生が変わる主人公とその周囲の人々。特に主人公の祖母、一人娘を殺害された理髪店の夫婦…彼等のやり切れない気持ちは読んでいて辛い。スリリングな展開と心に押し寄せる悲哀。妻夫木聡、深津...続きを読む絵里が演じた映画も秀逸。祖母役の樹木希林、理髪店亭主役の柄本明。この2人の演技は深く深く心に残る。家族が殺人者、被害者になるのはやり切れないことだと思う。想像が出来ないし、身勝手だけれどあって欲しくないと感じる作品。
Posted by ブクログ 2023年11月29日
悪人とは誰なのか?犯罪を犯した者は悪人なのか?色々と考えさせた。殺人事件の背景には色んなストーリーがある。
人が人を殺めること。これ自体は全く許される行為では無いが、その背景には色んな想いがある。そう思った。
Posted by ブクログ 2023年09月26日
とある男が女性を殺した。
殺人を犯したって事実がある以上男は"悪人"なんだけど事件の背景、登場人物の人柄を知っていくと男に同情してきてしまう。
悪人とは…?ってなる話。
後味は悪いけど考えさせられるの好き。
週刊誌とかの誹謗中傷も、何も知らない第三者が好き勝手言うのは良くないな...続きを読むって思える。
祐一が母親に金をせびってた理由が母親の加害者意識を無くすためって知った時には、なんて良いやつ奴だ!って思った。けど、やっぱ殺人犯しちゃったらダメなんだよ。でもあそこで殺さなくても、祐一は逮捕される結果になっただろうし、不憫だな。
映画も観たい!
Posted by ブクログ 2023年08月19日
映画のイメージが強くて(観てないけど)、ずっと逃走劇が繰り広げられていると思っていたけど、前半はむしろ淡々と進んでいた印象。登場人物の心情に深入りすることなく、一歩距離をとって紹介が続く。
こんな感じか、と拍子抜けしていたら、いつの間にか祐一にのめり込んでいて…。光代には惹かれなかったけど、(むしろ...続きを読む、トラウマとはいえ自首させてやれよと思ってイライラした)二人の姿は哀れながらも笑うことはできなかった。
ラストの首を絞めるシーン、気になって調べたら映画ではアドリブでキスシーンもあったとか。なんだその演出、そこだけでも観たいもんな。そして、ラストの「あの人は悪人やったんですよね?ねえ?そうなんですよね?」が、切なすぎて…。脳内で動く映画キャストたちがそれぞれハマり役でした。
祐一は母に対するのと同じで、全て自分が引き受けるつもりで、待っててほしくなんかないんだろうけど、読者としてはいつかまた出会ってほしいと思ってしまうな。
「悪人」とは誰だろうな。真面目に生きる人が報われる世の中じゃなくちゃだめだよな。
Posted by ブクログ 2023年06月10日
吉田さんの作品では『怒り』を読んだことがあり、
読みながら苦しくやるせない気持ちになった記憶。
でも、人間の奥の奥に隠された感情に迫る感じが懐かしくなり、今回『悪人』を読むことにしました。
誰が本当の悪人なのか、
それを白黒で決めつけることはできない。
誰しもの中に善も悪も混在していて、1人の人間...続きを読むが誰かにとっての悪でもあり、また別の誰かにとっては善だったりする。
本で描かれているのは極端な例だけど、
きっと日常の中でもこの構図は当たり前に存在するんだろうと思った。
祐一のおかした殺人は絶対にいけないこと。
それは揺るぎない事実で、私が佳乃の親だったら間違いなく祐一を120%悪(≒許せない)と思うけれど…
第三者として読み進めると祐一の悪ではない部分も見え、後半はやはり読み進めるのが苦しかった。
そして増尾の悪事のように法で裁かれない悪も存在してしまうことがまたモヤモヤでもあった。
小説で描かれていないその先で、
誰か祐一を救ってくれる人がいますように。
そして増尾にギャフンという出来事が起こりますように。。。苦笑
Posted by ブクログ 2023年01月04日
悪意をもって人に接し悪事を行っているヤツは他にいる(騙してものを売り作るなど)。気持ちが通じ会えない淋しさ、理解しようとしない貧しさ、見栄やプライドの行き過ぎた局面で人を殺めるところまで暴走してしまう悲しさ。一方的・機械的に善悪を分けてしまいがちな風潮のなかで、あえて悪人に徹しようとするきことで、愛...続きを読むするものを守ろうとした悲しすぎる愛の物語でもある。
Posted by ブクログ 2022年10月27日
不器用な人たちばかり。でも人間はそんなに器用には生きられなくて、運が良かったり悪かったり、真面目でも上手くいかなかったり、適当にしたことが上手くいったり、本当に思い通りにならないなあ、なんて思いながら読み進めた。
Posted by ブクログ 2021年12月28日
出会うタイミングや環境の変化次第で、誰もが悪人になってしまうんだなぁと思った。
罪は犯してしまったけど、本当は母親にも周りにも優しすぎる人。
『どっちも被害者にはなれない』
すごく深い言葉。
面白かった。
Posted by ブクログ 2021年12月21日
単純に一人の悪人がいて犯罪が起きる、
というのではなく
長い期間をかけて絡み合ってくる
多くの要素が
結果 犯罪 となり誰かを
悪人にしてしまう
出会う順番が違ったなら
誰もが幸せになったかもしれない
可能性や、
被害者が1番の加害者なのでは
ないかとも考えてしまう
奥深さが絶妙な作品で、
終始暗...続きを読むさがあるものの、面白かった
Posted by ブクログ 2021年12月03日
悪い人、、、
馬鹿にする人、嘲笑する人、人の不幸を武勇伝のように話す人。上げればキリがないほどでてくるが、
怖いのはそれらの昏い部分が必ずといっていい程自身にあるだろう事。
罪を犯した人だけが悪人ではない。
うまく書けない上に月並みな言葉ですが、考えさせられる作品でした。
Posted by ブクログ 2021年09月26日
終わり方がとても好きだった
自分にとっては善人でも、他人からすれば悪人
タイミングや受けた事象で相手に抱く感情は変わる
出会う時期がもう少し早かったら幸せな未来が待っていたのかも知れない
Posted by ブクログ 2021年05月08日
二人が出会えた時期が遅かったんじゃないの?
作者が練り出して練りだして新聞に連載されていた当時、『まだか、まだか?』と待ちわびながら読んでいた。人物の描写が細かく、彼の作品には中毒性を感じる。
Posted by ブクログ 2021年03月15日
悪人とは誰のことを指しているのか
祐一のことなのか
佳乃のことなのか
増尾圭吾のことなのか
ストーリーの展開にスピード感はなく平坦な道を歩いてる印象が強いがずっと読んでいる自分がいて不思議な感覚に陥ってしまう
他の作品も読んでみたいと感じた一冊
Posted by ブクログ 2021年02月02日
久しぶりに吉田修一さんの本を手にとりましたが、考えさせられる作品で読んで良かったと思います。主軸の時間とは関係なく、当時を振り返ったそれぞれの登場人物の思いが事後的に登場しますが、あの時は〜でしたけど、今は〜と思います。みたいに書かれているのが、そのこともふまえて『悪人』とはいったい誰だったのか‥決...続きを読むめつけるのが難しくなりました。
Posted by ブクログ 2020年11月01日
終わり方がなんとも切ない。
祐一と光代が早く出会えていればと思う。
でも出会い系で出会って、いきなりホテルに行ってしまうような関係からお互いのこと本当に好きになるってことあるのかなー。
子供が大きくなったら、なかなか重い話だけど、出会い系危ないよって意味でも読ませたいかな。
Posted by ブクログ 2020年02月12日
心惹かれる文章がちりばめられて
ストーリーは
ある若者が携帯サイトで知り合った若き女性を殺人してしまい
逮捕をから逃れるために
またまた携帯サイトで知り合った29歳の女性とともに逃避行のあげく・・・
と、超単純な事件のようですが
殺された女性の状況、若者のおいたちと性格、一緒に逃げた女性の...続きを読む事情
の多方面から描かれていて、たしかに読み応えありました
構成がいいというより、登場人物一人ひとりによりそったフレーズの部分が秀逸
「そうだよね~、このことってわかる!」
という人間の生き様より浮かびだしたような描写
たとえば
殺された女性が携帯サイトで男と付き合ってることを打明けられていた友人の
「子供のころから友達を自ら選ぶというのではなく、
いつも誰かに選ばられるのを待っているような性格」
だから友人が少なく
会社で全く性格の違う被害者の女性と友達になれほっとしていた
けれどもそんな性格だから
打明けられた友達の冒険を一緒に味わって楽しんでいた恥から
事情聴取に真実を言えず、事件の解決を遅らせてしまう事情
犯人の若者のおいたちのリアルさ、一緒に逃げる29歳女性の寂しさ
文章のそこここにうなずいてしまったのです
そして最後に「あっ!」と驚く結末の人間臭さがおもしろかったですね
この世の中「悪人」なんていない、とは思いませんけど
Posted by ブクログ 2022年06月27日
悪人は誰だ
そう思いながら、読み進んだ
作者の思う悪人、読者が思う悪人
私にとって悪人でも、彼彼女にとっては救う人かもしれない
大切な人は居るかと作者は読者に問いかけた
その人の幸せな様子を思うだけで自分まで嬉しくなるような人と
難しい問いかけだ
Posted by ブクログ 2022年07月06日
切ないなぁ。
人物設定が細かく、その後の人物の行動の理由が分かる。
祐一の性格なら、自分が悪人となることで一生光代を想いながらかばっていくのだろう。
光代は日常生活に戻っているので、逃亡の日々に実感がなくなっていく。そして過去を抱えつつ、前を向くために祐一が悪人だったと思おうとするのだろう。心の...続きを読むどこかではそうじゃない、と思いながら。
切ないなぁ。