あらすじ
小説、映画ともに大ヒットした不朽の名作。
福岡市内に暮らす保険外交員の石橋佳乃が、出会い系サイトで知り合った土木作業員に殺害された。
二人が本当に会いたかった相手は誰なのか?
佐賀市内に双子の妹と暮らす馬込光代もまた、何もない平凡な生活から逃れるため、携帯サイトにアクセスする。
そこで運命の相手と確信できる男に出会えた光代だったが、彼は殺人を犯していた。
彼女は自首しようとする男を止め、一緒にいたいと強く願う。
光代を駆り立てるものは何か?
その一方で、被害者と加害者に向けられた悪意と戦う家族たちがいた。
悪人とはいったい誰なのか?
事件の果てに明かされる、殺意の奥にあるものは?
毎日出版文化賞と大佛次郎賞受賞した著者の代表作。
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Posted by ブクログ
この事件の『悪人』とは一体誰なのか…。
元々気になっていた本作ですが、上下巻がセットになり新装版が出たタイミングで購入(そこから積読でしたが笑)。
内容としては保険外交員の女性が殺害かれ、その女性を巡る周りの人たちの物語。愛する娘を失った親、親友、バーで好意を持たれた男、出合い系サイトで出会った男などなど。ひとつの事件を境に色々な人の人生があらゆる方向に。
視点がコロコロ変わる本作では、とにかく感情移入の対象が変わりまくります。ある人の話に耳を傾けていたら横から聞こえてくる話にも共感みたいな。とにかく共感と嫌悪を繰り返しました。
そしてタイトルの『悪人』。今回の事件を通しての『悪人』とは一体誰なのか。社会通念上の考えでいけば犯人ですが、今回ばかりはそうも言えないような…。きっとこの誰とも言えない、そして、誰でもなりうる関係をひとつの事件を通して表現したのかなと思ったり、、
吉田修一さんの作品は初めてでしたが、『国宝』や『横道世之介』など有名作品を始めとする多くの名作がありそうなので、こっからさらに読んで行きたいと思います!
Posted by ブクログ
何年も前に「悪人」の映画を見て、「妻夫木くん、金髪似合わんなぁ〜。満島ひかり、安っぽい女の演技上手いわぁ〜」とか思いながら見たんだけど、「国宝」を読んだ後で、そういえば悪人書いたのも吉田修一さんだったなと思って、原作であるこの本を読んでみた。
程度の差こそあれ、みんな悪人。
特に殺された佳乃は悪人だと思った。
裕一は犯罪者だけど悪人ではなかった気がしてる。
救いのない物語だけど、私は好き。
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とても不器用で、正直な生き方、愛し方が切ない。悪人って、人はなんとでも言うだろう。自分の言葉を信じてくれた人の幸せのために自分は悪人にもなれる。何とも深い愛。
匿名
どうしようもない苦しいストーリーです。あの時こうしていればとか、もっと早く出会っていればとか何度後悔しても元には戻れない。根っからの悪人と、本当は優しかった人。苦しくて悲しいけれど、優しくても、絶対にしてはいけない事をしてしまった彼が悪人だと最後に気づかされました。
Posted by ブクログ
とても切ないなんとも言えず悲しい物語だった。
昔映画を先にみててあんまり印象に残らず面白かったイメージがなかったので期待せずに読んだんだけどあっという間に引き込まれた。
祐一、光代、佳男、佳乃、房枝それぞれの登場人物の誰の立場に立ってもそれぞれの切なさが伝わってきてやりきれない気持ちになった。
特にうちにも年頃の娘がいるんで人ごととは思えなかった。
ラストも良かった。祐一にはキチンと罪を償って更生してほしいと思った。
Posted by ブクログ
この方の作品は強烈な没入感を与えてくれる。「怒り」が大好きだが、この作品も並びました。男性作家なのに光代の心理描写がすごいです。終わり方もたまりません。
読み終わった後に感じたこと、
悪に利用されない為に、強くあり、賢くあらないといけない。自分を軽視する人間とは関わるべきではない。必死に生きている人を見下し、馬鹿にする人間にだけはならないように生きていきたい。そして誰かから語られる様々な自分はどれもちょっとずつ自分なのだということ。
「悪人」は誰か?
私にとっては、彼は優しすぎたのだと思いたい。衝動的に殺人を犯してしまった彼は悪でなければならない。なぜなら、殺人を許してはいけないから。でも人として、あの大学生や傲慢さを撒き散らす被害者女性より、思いやりと情のある人間でもあると思う。登場人物を善と悪のどちらかに分類することは私にはできないが、好きと嫌いに分類するならば、間違いなくあの大学生だけは嫌いだ。
Posted by ブクログ
決して明るい話ではない。
だけど、自分はこっち側なんだと。どうしてか共感出来る部分多々あり。
生きているなかでの社会での不条理さや不公平感、要領良い人やうまく立ち回れない自分。
吉田氏、好きです。
Posted by ブクログ
主要な登場人物の中での「悪人」ランキング
僕の中では、
第一位 ボンボンの大学生・増尾圭吾(だんとつ)
第二位 殺された保険外交員・石橋佳乃
第三位 土木作業員・清水祐一
第四位 紳士服店店員・馬込光代
でした。
「人としての正しい行い」がこの小説のテーマかな、と思いました。
誰にも潜む「悪人」の自分。そいつが衝動的に引き起こす悪行。もちろん取り返しのつかないこともあるけど、その悪行の後の「人としての正しい行い」こそ、生きていく上では大切なこと。
それと、人に執着すること、について。
佳乃の父、佳男が増尾の友人、鶴田に語りかける言葉。
長くなるけど、とても心に残ったので引用する。
ー あんた、大切な人はおるね?その人の幸せな様子を思うだけで、自分までうれしくなってくるような人たい。
おらん人間が多すぎるよ。
今の世の中大切な人もおらん人間が多すぎったい。大切な人がおらん人間は、なんでもできると思い込む。自分には失うもんがなかっち、それで自分が強うなった気になっとる。
失うものもなければ欲しいものもない。だけんやろ、自分を余裕のある人間っち思い込んで、失ったり、欲しがったり一喜一憂する人間を、馬鹿にした目で眺めとる。
そうじゃなかとよ。本当はそれじゃ駄目とよ ー
小説と同時並行で映画を見た。
増島ひかり演じる石橋佳乃はとても危うくて、僕はああいう危うさにころっと引っかかるタイプだ。
だから、増尾は死んでほしいし、清水は不憫で感情移入してしまった(もちろんだからと言ってあんなことしていいわけではない)。
なぜか雨のシーンしか印象に残らないジメジメした作品なので、ジメジメした気分の時に読みたい。
Posted by ブクログ
田舎での生活がよくイメージできた。
狭い世界で暮らす閉塞感
やるせなさ、虚無感 などなど よくわかる
その中で必死に生きること
そもそも老いること と 生きること 何が違うのか
同じようで 違う気がする
意味ある毎日を送るには? やっぱり意味を意識しないといけないのだと思う。
味気ない日常は人間を疲弊させる 虚無感に繋がり、存在意義を疑う。
そしてなんでもない事が良い(実際にはその通りなのだけど)と自分に言い聞かせて、虚無感と闘う。
そしてそれの繰り返し。。
気がつけば、何もできなくなっている 時間も労力も十分ではないと嘆く
そしてまた感謝、日常への感謝 それがずっと続いて、最後は死ぬ。
人生を振り返った時に、あ、もっと大切にすれば良かったって、必ずこれだと、感じるのだと思う。
結局長い暇つぶしなんてよく言ったものだけれど、本当にそうか?
本当に何もしなくていいのか?ただの浪費、人生の無駄遣いでいいのか?
主人公は厳しい結末を迎えたが、結局はやるせなさがたまたま悪い方向へ転じただけ。
根っからの悪人 ではない
それが主題のひとつなのだとも思う。
ではどうすれば良いのか?これは難しい。
一つあるのは、諦めないこと。なあなあで生きない事、立ち向かう事、辛くても辛くても、諦めない。
本当の幸 に向けて諦めないことが、幸 なのかもしれない。
Posted by ブクログ
国宝から悪人へ、私にとっては吉田修一さんの2作品目。
物事のシロクロなんてそう簡単につけられるもんじゃない。同じ一人の人間であっても時間の経過やその過程で受け取る情報によって変わることもある。そんなことを改めて感じさせてくれる作品だった。日々メディアで目にするアレコレも、きっとその一部の切り取りでしかないのだろう。
祐一の「どっちも被害者にはなれん」がただただ切なかった。そこで加害者側を選んでしまう祐一のそれは優しさとは違うようにも思えて、何とも言えない気持ちになった。
悪人と国宝、全然違う世界のお話なのに、どちらもページをめくる手が止まらなかった。
次は怒りへ。そして悪人の映画版も観てみよう。
Posted by ブクログ
本当に「悪い」のは誰?何?
表に出なくても「悪い」やつはいる。表に出ない「悪い」ことをしても、なんとも思わない奴はいる。
人それぞれにその人の正義があるから、理解しあうのは容易でない。
頭ではわかっていても渦中にある時はただ、シンドイ。悲しい。
Posted by ブクログ
祐一も光代も未熟な人間。出会うタイミングが違えば幸せだったのかもと思ったけど、このタイミング、この状況があったから強く惹かれあったとも思える。房枝のバスの場面は切なすぎて泣けた。佳男が増尾に会いにいく場面もやるせない。祐一が母親に金をせびっていたのは、そうする事で母親の罪悪感を軽減させたかったからなのか?悪くいうと、自分を捨てた母親への報復?
個人的には前者だと思うけど、とすれば優しい面もある祐一がこんな顛末になりあまりにも切ない。
Posted by ブクログ
この作品はいろんな感情の中でも切なさが突出してしまう
正しいこととか間違っていることとか、そういうの抜きにして苦しくなる
いい意味で、苦しくて好きになれない
Posted by ブクログ
サイトで出会った男女。肉体関係だけのようで感情が芽生え殺人まで犯す。別な女性と同じように出会い感情が芽生え、共に逃亡する。男と女の駆け引きのない世界で、没頭できました。
Posted by ブクログ
悪とは、正しさとは、愛とは、みたいな話をされてるんだろうなあって思ってたけど、終わり方がとても好きだった
アクセントが「悪」人だと思って読んでいたら、悪「人」だった
この気持ちをうまく言葉にできないのがもどかしい
Posted by ブクログ
楽しい。この描写の奥深さ。
たとえば、腕をつたう洗剤の泡、だとかそのかゆみが全身にうつる、とか細かな描写から人物の心の内をのぞかせてくれる。宮部みゆきさんとかもそう。余韻というのか、想像の余地を少し残してくれている。
よくファミコンなんかが再評価される時に使われる、表現しすぎないというプレイヤーの自由。
ああ、吉田修一さんは『国宝(上)(下)』に震撼させられた方じゃないか。本作もまた、シーンと深い思索に落ちていくような感覚を味わった。
祈るしかないようなフィナーレの迎え方が、人間という余韻すら残してくれる。
うん、なんかいいこと言った気がする。
生きたという余韻。
Posted by ブクログ
悪人とは誰なのか?犯罪を犯した者は悪人なのか?色々と考えさせた。殺人事件の背景には色んなストーリーがある。
人が人を殺めること。これ自体は全く許される行為では無いが、その背景には色んな想いがある。そう思った。
Posted by ブクログ
とある男が女性を殺した。
殺人を犯したって事実がある以上男は"悪人"なんだけど事件の背景、登場人物の人柄を知っていくと男に同情してきてしまう。
悪人とは…?ってなる話。
後味は悪いけど考えさせられるの好き。
週刊誌とかの誹謗中傷も、何も知らない第三者が好き勝手言うのは良くないなって思える。
祐一が母親に金をせびってた理由が母親の加害者意識を無くすためって知った時には、なんて良いやつ奴だ!って思った。けど、やっぱ殺人犯しちゃったらダメなんだよ。でもあそこで殺さなくても、祐一は逮捕される結果になっただろうし、不憫だな。
映画も観たい!
Posted by ブクログ
映画のイメージが強くて(観てないけど)、ずっと逃走劇が繰り広げられていると思っていたけど、前半はむしろ淡々と進んでいた印象。登場人物の心情に深入りすることなく、一歩距離をとって紹介が続く。
こんな感じか、と拍子抜けしていたら、いつの間にか祐一にのめり込んでいて…。光代には惹かれなかったけど、(むしろ、トラウマとはいえ自首させてやれよと思ってイライラした)二人の姿は哀れながらも笑うことはできなかった。
ラストの首を絞めるシーン、気になって調べたら映画ではアドリブでキスシーンもあったとか。なんだその演出、そこだけでも観たいもんな。そして、ラストの「あの人は悪人やったんですよね?ねえ?そうなんですよね?」が、切なすぎて…。脳内で動く映画キャストたちがそれぞれハマり役でした。
祐一は母に対するのと同じで、全て自分が引き受けるつもりで、待っててほしくなんかないんだろうけど、読者としてはいつかまた出会ってほしいと思ってしまうな。
「悪人」とは誰だろうな。真面目に生きる人が報われる世の中じゃなくちゃだめだよな。
Posted by ブクログ
吉田さんの作品では『怒り』を読んだことがあり、
読みながら苦しくやるせない気持ちになった記憶。
でも、人間の奥の奥に隠された感情に迫る感じが懐かしくなり、今回『悪人』を読むことにしました。
誰が本当の悪人なのか、
それを白黒で決めつけることはできない。
誰しもの中に善も悪も混在していて、1人の人間が誰かにとっての悪でもあり、また別の誰かにとっては善だったりする。
本で描かれているのは極端な例だけど、
きっと日常の中でもこの構図は当たり前に存在するんだろうと思った。
祐一のおかした殺人は絶対にいけないこと。
それは揺るぎない事実で、私が佳乃の親だったら間違いなく祐一を120%悪(≒許せない)と思うけれど…
第三者として読み進めると祐一の悪ではない部分も見え、後半はやはり読み進めるのが苦しかった。
そして増尾の悪事のように法で裁かれない悪も存在してしまうことがまたモヤモヤでもあった。
小説で描かれていないその先で、
誰か祐一を救ってくれる人がいますように。
そして増尾にギャフンという出来事が起こりますように。。。苦笑
Posted by ブクログ
悪意をもって人に接し悪事を行っているヤツは他にいる(騙してものを売り作るなど)。気持ちが通じ会えない淋しさ、理解しようとしない貧しさ、見栄やプライドの行き過ぎた局面で人を殺めるところまで暴走してしまう悲しさ。一方的・機械的に善悪を分けてしまいがちな風潮のなかで、あえて悪人に徹しようとするきことで、愛するものを守ろうとした悲しすぎる愛の物語でもある。
Posted by ブクログ
不器用な人たちばかり。でも人間はそんなに器用には生きられなくて、運が良かったり悪かったり、真面目でも上手くいかなかったり、適当にしたことが上手くいったり、本当に思い通りにならないなあ、なんて思いながら読み進めた。
Posted by ブクログ
出会うタイミングや環境の変化次第で、誰もが悪人になってしまうんだなぁと思った。
罪は犯してしまったけど、本当は母親にも周りにも優しすぎる人。
『どっちも被害者にはなれない』
すごく深い言葉。
面白かった。
Posted by ブクログ
単純に一人の悪人がいて犯罪が起きる、
というのではなく
長い期間をかけて絡み合ってくる
多くの要素が
結果 犯罪 となり誰かを
悪人にしてしまう
出会う順番が違ったなら
誰もが幸せになったかもしれない
可能性や、
被害者が1番の加害者なのでは
ないかとも考えてしまう
奥深さが絶妙な作品で、
終始暗さがあるものの、面白かった
Posted by ブクログ
悪人は誰だ
そう思いながら、読み進んだ
作者の思う悪人、読者が思う悪人
私にとって悪人でも、彼彼女にとっては救う人かもしれない
大切な人は居るかと作者は読者に問いかけた
その人の幸せな様子を思うだけで自分まで嬉しくなるような人と
難しい問いかけだ
Posted by ブクログ
切ないなぁ。
人物設定が細かく、その後の人物の行動の理由が分かる。
祐一の性格なら、自分が悪人となることで一生光代を想いながらかばっていくのだろう。
光代は日常生活に戻っているので、逃亡の日々に実感がなくなっていく。そして過去を抱えつつ、前を向くために祐一が悪人だったと思おうとするのだろう。心のどこかではそうじゃない、と思いながら。
切ないなぁ。