吉田修一のレビュー一覧
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人を信じることの難しさ、苦しさを描いた物語。
若い夫婦が自宅で惨殺され、犯人の男が逃亡して一年が経ったところから物語は始まります。
読み始めは犯人の逃亡劇かと思いきや、それだけではなく、千葉・東京・沖縄を舞台にそれぞれの登場人物の視点で、家族・恋人・友人を信じることができるのか?ということが描かれていました。
一番印象に残ったのは、洋平と愛子の親子。愛子は幸せになれると思いたいのに、心のどこかで娘に対する自信のなさが顔をだしてしまう描写がとても切ないです。洋平が田代に対して逃亡犯ではないかと疑い始めたとき、身近にいる田代の真面目さから逃亡犯なわけがないと思いつつ、逃亡犯との共通点を探してしまうあたりの心理描写はさすがです。
優馬や泉の視点も胸に迫るものが多く、苦しいのに読む手が止まらない作品でした。
今まで読んだ吉田さんの作品の中でもトップクラスに面白かった!まだまだ吉田修一さんブームは続きそうです。 -
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ネタバレ下巻(花道編)も失速せずずっと面白くてすごい!全てを読んで思うのは、春江と彰子がいい女すぎる!春江は俊ぼうを10年間養い、子供を失って心が壊れて薬に溺れた彼の世話もして、同じく薬に溺れた思春期の綾乃(喜久雄の娘)の面倒も見て、時にはプライドも捨てて(テレビ出演)家を守った。彰子も、喜久雄が自分と結婚したのは自分の家目当てと分かりつつ喜久雄を支え続けた。
あと、喜久雄と生駒、喜久雄と綾乃の関係良好そうでなんか良かった。
足を失って、リハビリしてやっとという時にもう一方の足も失うと分かった俊ぼうが荒れるシーン辛かった。
もう1回映画みたい! -
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吉田修一さんの愛と喪失を描いた物語。
恋愛小説であり、戦争小説でもありました。
主人公・一心の日常と、伝説の映画女優だった和楽京子こと鈴さんの人生がリンクして描かれており、『国宝』と似た描き方だと感じました。
戦後、鈴さんの女優人生は、成功に満ちた鮮かな人生に見えますが、その裏には被爆者であることを揶揄されたり、親友の存在が心の傷として残っていることが明らかとなります。
鈴さんが佳乃子さんを長崎港に連れ出し、海に向かって叫ぶシーンは、胸が引き裂かれそうになりました。
鈴さんが佳乃子さんのことを語ると、彼女が影になってしまうという言葉が重く響き、佳乃子さんの人生も引き受けた鈴さんの覚悟に、戦争を生き抜いた人の強さを感じました。
戦争を思い出すこの時期に読めて良かった。
戦争に傷ついた人たちのことを、まだまだ知らなければならないと感じた作品でした。 -
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ネタバレ初読と再読で、印象がまるで変わる作品だった。
ルームシェアをする若者たちの生活が、それぞれの視点から描かれていく。初読では、何気ない日常を追っているうちに、少しずつ空気が濁っていくような不穏さを感じた。
しかし、結末を知ったうえで再読すると、見え方が一変する。
最初から人間関係には歪みがあり、それぞれに焦燥や秘密がある。そして、その秘密は本当に「隠されていた」のだろうかと思えてくる。むしろ住人たちは、互いのことをかなり分かっていながら、あえて触れずに生活を続けていたのではないか。
「知らない」のではなく、「知っているけれど変わらず過ごしている」。
そう考えると、彼らの共同生活は一気に不気味なものに見えてくる。
初読では結末へ向かって不穏さが増していく物語だったのに、再読では、最初から最後までずっと歪んでいたことに気づかされる。
読み返すことで作品そのものの輪郭が変わる。
再読後は、ただ唸ることしかできなかった。 -
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ふと目に止まり導かれるように手に取った吉田修一さんの『ミス・サンシャイン』。
「ミス・サンシャイン」というタイトルから受ける軽やかな印象とは裏腹に、のちのち判明するその言葉が意味する重さや深さに深く納得させられました。
何より、一心君の想いがひしひしと伝わってくる物語で、今の自分の心にこれ以上ないほど響きました。
もし読書の神様がいるのなら、「今のあなたにこそ、これを読みなさい」と手渡されたような気分です。本との出会いはタイミングだと言いますが、まさに今この本に出会えたことに感謝したくなるような、特別な一冊になりました。
やっぱり吉田修一作品好きだ! -
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横道世之介の大学一年生の1年間。続編もあるみたいだけど、上下巻なのでちょっと怯んでいる。
横道世之介、18歳。大学進学のため九州から出てきた。205号室。202号室の人がシチューに誘ってくれたのでご馳走になる。入学式。倉持と知り合いになる。サークルブースをみていると、阿久津唯がくっついてくる。
世之介は一人暮らしを始めて、自分のことは自分でやらないといけないことに気づく。
3人はなぜかサンバサークルに入り、清里に合宿へ。ホテルの配膳の仕事を紹介してくれるという。いつのまにか倉持と阿久津がつきあっている。
中学生の娘の智世が警察に補導されて、一緒にいた18歳の少年とつきあっているという。男の子に会いに行き、別れてくれるように頼んだ。男の子は街を出ていき、智世は中学は卒業したが引きこもりになる。夫妻は世之介を懐かしがる。
世之介は小沢と待ち合わせる。マスコミ研究会に入ったそうだ。ダンスパーティの券をもらう。ルームサービスの給仕をするバイトを開始した。家に帰るとお隣の203号室の前にヤクザさんたちがいる。部屋に急いで入る。
世之介は祥子という女の子に自動車学校であい、つきまとわれる。帰省にもついてくるという。倉持と阿久津の間に子供ができる。 -
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横道世之介シリーズ堂々完結。泣いた。寂しい。
本っっっ当に素敵なタイトル。横道世之介読んだことがある人全員に読んでほしい。
今回もすごく優しい気持ちになれた。心が浄化された。
私のような人間ですら横道世之介読んでいる時とその後一週間くらいは人に優しくしようと思える。継続したいもんだね。
これまでのシリーズでは世之介の現在にスポットが当たりゆるゆると春夏秋冬が描かれていたけれど、今回の作品は時代を遡り、世之介の周りの人の誕生、生い立ち、その両親にまでスポットが当たり描かれていた。亡くなった世之介の元恋人との生活も描かれ、シリーズ最終章とあってかなり死生観に触れた内容になっていたと感じた。
死生観や、登場人物の背景や考え方がこれまで以上に描かれているのもあり、登場人物たちに対し「この人も誰かが命懸けで産んだ人なんだ」と思った。これは小説だしフィクションだけれど、現実もこの小説とそう変わらないと思った。
世之介は「なんでもない一日みたいな人」という一節がある。
なんでもない一日は、平等に訪れ、穏やかで、そして大切さになかなか気付けない。
思い返すと大満足日って意外と沢山あるじゃん、とか、リラックスしている時に永遠を感じることができる、とか
横道世之介シリーズは人生の中の意外と気付いていない、普段の生活の中では見逃してしまうような瞬間を思い出させてくれて、自分の人生が少し愛おしく、素敵なものに見えてくる。
横道世之介シリーズは終わってしまったけれど、横道世之介は私の中に永遠に生き続けるだろう。