吉田修一のレビュー一覧
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表面上は実際にありそうな風景。
仕事に邁進しつつ恋愛問題もそれなりに抱え他人の厄介事にも巻き込まれ、自分だったらげんなりしそうな状況も世之介は軽やかに日常のように過ごしていく。まぁ、それを可能にしているのはあけみさんの手腕によるところも大きい訳で何なら彼女が一番偉いと思うが。
それでも世之介の人に労力を惜しまないところはとても魅力的だ。楽しんでいるのがまたいい。偉ぶらない(出来てない)のは更にいい。ある程度正直に生きていてそれが羨ましく、直前に読んだ伊坂幸太郎の逆ソクラテスに出ていた子供を思い出す。あの子と世之介を引き合わせたい(笑)
このシリーズを最初から読んでる人とここから読んだ人では捉え方、日常に対する深みがまるで違うはず。
妙に記憶に残る人。
気付けば好きになってしまってる。
世之介の飾らなさに。
あけみさんの切なさに。
何だか泣き笑いのような気持ちでページを手繰った。
さぁ、いよいよ下巻に入ります。
読みたくないけど読まずにいられない。 -
Posted by ブクログ
昨年映画を拝見。
「あんな風には生きられないよなぁ」
まさに邦画の最高峰。その世界観に心酔。
そこから頃合いを見て原作にトライ。
徳次の存在でかい!その他数多のキャラ含め映画では削ぎ落とされてしまったのは尺的に致し方ないが、先に映画を観てその後原作の流れは正解だった。
上下巻を小分けに少しずつ読み進めて2週間程度で読破したが、重厚感のある濃密な文章なのにさくさく読み進められ、読み終わってしまうのが寂しくなる過去にないほどの充実した読後感。
最後の方は映画主題歌である井口理の歌が頭の中ずっと流れてたのも心地良い時間。
青春時代から良い事ばかりではなかったものの、芸に取り憑かれた"美しい化け物"としての幕切れは、喜久雄にとって然るべき姿と言わざるを得ない。それは様々な人たちの夢、献身、悲劇が積み重なり生まれた。
いやー、凄まじい世界を観た。
「いつまでも舞台に立っていてえんだよ。幕を下ろさないでほしいんだ」
「もうこれで十分だろ。おまえはよくやった。本当によくやったよ。この五十年、おまえが戦ってきたその姿、俺だけじゃない、みんなが忘れるもんか」
直接交わされた会話ではない。キーパーソン竹野の感情は敬意と哀れみ入り混じるものだったと思われ、読んでるこっちの気持ちもそこにスッと乗っかれる。
美しい化け物と悪魔は表裏一体同じものなのか。悪魔がその世界へ引き摺り込んだのか、悪魔が認めて拍手を送ったのか。
日本人も知らない日本文化の陰陽が魅せる狂気と絢爛を取りまとめた作者に脱帽! -
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大好きな横道世之介!
大学を卒業し、就活もパッとせずバイトで生活する世之介
「横道世之介」を友達に勧めるときにどう説明したら分かってもらえやすいかずっと考えてた
簡単に説明すると愛されキャラの世之介くんがちょっとずつ成長し人との繋がりを作っていく
なんだけどそれだけじゃない良さがたくさんあって、なにか上手く伝えられないかずっと考えてたけど
今回で少し分かった!
まずは世之介が「善良」なこと
そしてどこか自分たちと重なるところがあるところ
唐突に何の前触れもなくフッと、もう何年も会ってない同級生や昔の職場で出会った人のことを思い出すことがあるけど、ストーリーの展開がそうなんだろうなと
そしてその友達もどこかで生活していて、自分は知らないけど人生が進んでてそれが大樹のように枝分かれしていて(当たり前のことなんだけど)そう思うと無性に愛おしい気持ちになる -
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映画を観た後に小説を読みました。
映画でいまいちピンとこなかった部分は、なるほど、こんんにざっくりカットされていたからだったのかと、伏線じゃないけど伏線回収する感じでとても楽しく読むことができました。
(彰子はもっと大きな役割があったんだ!とか、藤駒と自身の娘にもっとちゃんと関わってたんだ!とか、万菊さん全然菊雄推しじゃないじゃん!とか)
実際の歌舞伎は数回しか鑑賞したことがなく、詳しくないので、映画のビジュアルを観ていなければ、歌舞伎の描写画面を読んでもピンとこなかったと思うので、歌舞伎に詳しくない私のような人は、映画を観てから読むとより楽しめると思います。
下巻に続く
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Posted by ブクログ
なんともまぁ不思議で魅力的なキャラクターで、めちゃくちゃいいやつかって言われればそうでもないし、くず要素もかなりあるし、なんどけども愛されるし、憎めないし、という表現の難しい男なんですが、、、
人として善良であるべき、それはわかるけどなかなかそうはいかないもんで、そんな中何意識するわけでもなく自然とそうあるこの男かっこいいなと思ったりしました。憧れます。
たとえば人からこんな人いるんだよって聞くととっても良い人そうに見えるんだけどさ、実際そばにいたらそうでもないからね、極端に頼りないし。
ってのがたぶんほんとその通りなんだろうなとは思います。笑 -
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人を信じることの難しさ、苦しさを描いた物語。
若い夫婦が自宅で惨殺され、犯人の男が逃亡して一年が経ったところから物語は始まります。
読み始めは犯人の逃亡劇かと思いきや、それだけではなく、千葉・東京・沖縄を舞台にそれぞれの登場人物の視点で、家族・恋人・友人を信じることができるのか?ということが描かれていました。
一番印象に残ったのは、洋平と愛子の親子。愛子は幸せになれると思いたいのに、心のどこかで娘に対する自信のなさが顔をだしてしまう描写がとても切ないです。洋平が田代に対して逃亡犯ではないかと疑い始めたとき、身近にいる田代の真面目さから逃亡犯なわけがないと思いつつ、逃亡犯との共通点を探してしまうあたりの心理描写はさすがです。
優馬や泉の視点も胸に迫るものが多く、苦しいのに読む手が止まらない作品でした。
今まで読んだ吉田さんの作品の中でもトップクラスに面白かった!まだまだ吉田修一さんブームは続きそうです。 -
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吉田修一さんの愛と喪失を描いた物語。
恋愛小説であり、戦争小説でもありました。
主人公・一心の日常と、伝説の映画女優だった和楽京子こと鈴さんの人生がリンクして描かれており、『国宝』と似た描き方だと感じました。
戦後、鈴さんの女優人生は、成功に満ちた鮮かな人生に見えますが、その裏には被爆者であることを揶揄されたり、親友の存在が心の傷として残っていることが明らかとなります。
鈴さんが佳乃子さんを長崎港に連れ出し、海に向かって叫ぶシーンは、胸が引き裂かれそうになりました。
鈴さんが佳乃子さんのことを語ると、彼女が影になってしまうという言葉が重く響き、佳乃子さんの人生も引き受けた鈴さんの覚悟に、戦争を生き抜いた人の強さを感じました。
戦争を思い出すこの時期に読めて良かった。
戦争に傷ついた人たちのことを、まだまだ知らなければならないと感じた作品でした。