吉田修一のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ犯罪は意外と自分と遠い存在ではない。
実際の事件をもとにしている。短編集。結末が明確に書かれていない作品も多く、読者自身が考える必要のある、深みのある一冊だった。
個人的おすすめは、万屋善次郎、百家楽餓鬼、白球白蛇伝!
《青田Y字路》
街や風景の描写が丁寧で、情景がすぐに浮かんで一気に話に入り込めた。圧倒される感じとか恐怖がリアルで、読後はやるせない気持ちになる現実感のある怖さを感じる。
村社会の怖さや差別、誰もがトラウマから犯罪者にもなりうるし、誰もが犯罪に巻き込まれるかもだし、逆に誰かを犯人に仕立ててしまう側にもなるかもしれない。同情する気持ちと「もしかしてお前が犯人か?」って疑う気持ちが入り混じって、すごく複雑な後味が悪い話。
《曼珠姫午睡》
唯一踏みとどまってくれた話。
《百家楽餓鬼》
勉強も仕事も頑張って懸命に生きてた人が、落ちぶれていく様が描かれていて悲しかった。最後は、餓鬼になってしまいました。
「あと少しやれば勝てる。」この気持ち、分からなくもない。
夫婦で真逆の生活をしている点も印象的で面白かった。
《万屋善次郎》
1番心が震えた話。とにかく苦しかった。
限界集落で起きた連続殺人事件。
犯罪者側の気持ちの方が理解できてしまった。
不器用ながらも真っ当に生きて、大切な人を大切にしてきたであろう善次郎がここまで追い詰められないといけなかったのか。報連相出来なかったことが、村八分にされるまで悪いことだったのか。謝罪しても許されないことだったのか。村のために日頃から動いてくれていた善次郎にこうなるまで誰も手を差し伸べることはなかったのは何故だろう。なら、自分なら巻き添えをくらってでも手を差し伸べることはできただろうか。沢山考えさせられた話。
言葉を話せない犬のレオと善次郎が重なって見え、辛かった。
《白球白蛇伝》
過去の栄光とプライド、家族からの期待を背負い捨てられなかった人の話。
気持ちが分かる部分があるからこそ辛いが、ここまで背負い続ける必要はあったのか。殺す必要は本当にあったのか。
最後の子供の涙が辛かった。 -
ネタバレ 購入済み
血
今回も一気読みしてしまいました。市駒と彰子の一途さ、けなげさがいじらしいです。反対に、春江だけはどうにも嫌いです。映画で高畑充希さんが春江役をやってましたが、あのものほしげな上目遣いの顔を思い出してしまい嫌悪感があります。
-
Posted by ブクログ
この事件の『悪人』とは一体誰なのか…。
元々気になっていた本作ですが、上下巻がセットになり新装版が出たタイミングで購入(そこから積読でしたが笑)。
内容としては保険外交員の女性が殺害かれ、その女性を巡る周りの人たちの物語。愛する娘を失った親、親友、バーで好意を持たれた男、出合い系サイトで出会った男などなど。ひとつの事件を境に色々な人の人生があらゆる方向に。
視点がコロコロ変わる本作では、とにかく感情移入の対象が変わりまくります。ある人の話に耳を傾けていたら横から聞こえてくる話にも共感みたいな。とにかく共感と嫌悪を繰り返しました。
そしてタイトルの『悪人』。今回の事件を通しての『悪人』とは一体誰なのか。社会通念上の考えでいけば犯人ですが、今回ばかりはそうも言えないような…。きっとこの誰とも言えない、そして、誰でもなりうる関係をひとつの事件を通して表現したのかなと思ったり、、
吉田修一さんの作品は初めてでしたが、『国宝』や『横道世之介』など有名作品を始めとする多くの名作がありそうなので、こっからさらに読んで行きたいと思います! -
Posted by ブクログ
横道世之介の1作目を読んでからだいぶ立つが、その時から感じていたのは知り合いからこんな奴いるんだよって言う話を聞いてる感覚。
そんな世之介の話を久しぶりにあった友人から聞かされて、あー相変わらずだな世之介は、でもなんだかんだ色々経験してるんだな、自分もこの10年とかで色々あったなと振り替えさせられるような感覚。
人生で一番大切なことはリラックスすること、と本の帯にも書いてあった。帯を見たときは違和感があったが、世之介がどういう思いで誰に言ったのかを知ると、あー世之介はこういう奴なんだな、と思わされる。
人って変わってないようで少しずつ変わっていく、それが良いことどうかはわからないけど。
後になって思い出せる一日が自分にはどれだけあるだろうか。 -
Posted by ブクログ
過去に関わりのあった女性をふと思い出した、みたいな話が何本もまとまってる短編集。
恋愛関係、肉体関係、バイト先や会社の同僚など関係性はそれぞれ。
僕も普段生活している中で、何がきっかけになったのかはわからないくらい急に、ふと誰かを思い出すことがある。昔付き合ってた人とかはもちろんだけど、辞めた会社の元同僚とか、ワンナイトした人とか、飲みに行った店でその場限りの話し相手になってくれた人とか。特別なエピソードがあったり、僕の人生に大きな影響を与えたわけでもない人たちだったとしても、思い出すとなんだか心が疼くというか懐かしくてたまらない気持ちになる。いま何してるのかな、あれからどんな人生を歩んでいるのかな、くらいには思う。そんなふうに、一瞬だけ人生が交わった人たちが存在していて、そんな瞬間がたくさん詰まっている短編集だった。 -
Posted by ブクログ
今まで読んできた吉田修一作品とはまた違う雰囲気ではあったけど、改めて彼の文章が好きだなあと思った。
各章で性別も年齢も異なる人物の目線で語られる構成で、文章の書き方を変えている。本当に別の人が書いたみたいに違う。
5章の短編で、東京に生きる5人の男女を描いている。それぞれが人生の分岐点にいて、でもそれは劇的なものでもなく誰にでも訪れる日常の1ページ。東京には華やかな人生を生きる人もいるけど、ほとんどは"その他大勢"なわけで、しかし彼らにも決してドラマチックではないドラマがある。
そして、同じ時、同じ街に生きていても交わることのない彼らの人生に現れる2人の幼い兄弟。各章の主人公たちには点にしか見えていないその兄弟が、線になって繋がっていく。もしかしたら、そんなふうにして僕たちの人生も成り立っているのかもしれない。見えない繋がりがあって、回り回ってどこかで全く知らない人の人生と影響しあって生きている。