吉田修一のレビュー一覧
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ネタバレ初読と再読で、印象がまるで変わる作品だった。
ルームシェアをする若者たちの生活が、それぞれの視点から描かれていく。初読では、何気ない日常を追っているうちに、少しずつ空気が濁っていくような不穏さを感じた。
しかし、結末を知ったうえで再読すると、見え方が一変する。
最初から人間関係には歪みがあり、それぞれに焦燥や秘密がある。そして、その秘密は本当に「隠されていた」のだろうかと思えてくる。むしろ住人たちは、互いのことをかなり分かっていながら、あえて触れずに生活を続けていたのではないか。
「知らない」のではなく、「知っているけれど変わらず過ごしている」。
そう考えると、彼らの共同生活は一気に不気味なものに見えてくる。
初読では結末へ向かって不穏さが増していく物語だったのに、再読では、最初から最後までずっと歪んでいたことに気づかされる。
読み返すことで作品そのものの輪郭が変わる。
再読後は、ただ唸ることしかできなかった。 -
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ふと目に止まり導かれるように手に取った吉田修一さんの『ミス・サンシャイン』。
「ミス・サンシャイン」というタイトルから受ける軽やかな印象とは裏腹に、のちのち判明するその言葉が意味する重さや深さに深く納得させられました。
何より、一心君の想いがひしひしと伝わってくる物語で、今の自分の心にこれ以上ないほど響きました。
もし読書の神様がいるのなら、「今のあなたにこそ、これを読みなさい」と手渡されたような気分です。本との出会いはタイミングだと言いますが、まさに今この本に出会えたことに感謝したくなるような、特別な一冊になりました。
やっぱり吉田修一作品好きだ! -
Posted by ブクログ
横道世之介の大学一年生の1年間。続編もあるみたいだけど、上下巻なのでちょっと怯んでいる。
横道世之介、18歳。大学進学のため九州から出てきた。205号室。202号室の人がシチューに誘ってくれたのでご馳走になる。入学式。倉持と知り合いになる。サークルブースをみていると、阿久津唯がくっついてくる。
世之介は一人暮らしを始めて、自分のことは自分でやらないといけないことに気づく。
3人はなぜかサンバサークルに入り、清里に合宿へ。ホテルの配膳の仕事を紹介してくれるという。いつのまにか倉持と阿久津がつきあっている。
中学生の娘の智世が警察に補導されて、一緒にいた18歳の少年とつきあっているという。男の子に会いに行き、別れてくれるように頼んだ。男の子は街を出ていき、智世は中学は卒業したが引きこもりになる。夫妻は世之介を懐かしがる。
世之介は小沢と待ち合わせる。マスコミ研究会に入ったそうだ。ダンスパーティの券をもらう。ルームサービスの給仕をするバイトを開始した。家に帰るとお隣の203号室の前にヤクザさんたちがいる。部屋に急いで入る。
世之介は祥子という女の子に自動車学校であい、つきまとわれる。帰省にもついてくるという。倉持と阿久津の間に子供ができる。 -
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横道世之介シリーズ堂々完結。泣いた。寂しい。
本っっっ当に素敵なタイトル。横道世之介読んだことがある人全員に読んでほしい。
今回もすごく優しい気持ちになれた。心が浄化された。
私のような人間ですら横道世之介読んでいる時とその後一週間くらいは人に優しくしようと思える。継続したいもんだね。
これまでのシリーズでは世之介の現在にスポットが当たりゆるゆると春夏秋冬が描かれていたけれど、今回の作品は時代を遡り、世之介の周りの人の誕生、生い立ち、その両親にまでスポットが当たり描かれていた。亡くなった世之介の元恋人との生活も描かれ、シリーズ最終章とあってかなり死生観に触れた内容になっていたと感じた。
死生観や、登場人物の背景や考え方がこれまで以上に描かれているのもあり、登場人物たちに対し「この人も誰かが命懸けで産んだ人なんだ」と思った。これは小説だしフィクションだけれど、現実もこの小説とそう変わらないと思った。
世之介は「なんでもない一日みたいな人」という一節がある。
なんでもない一日は、平等に訪れ、穏やかで、そして大切さになかなか気付けない。
思い返すと大満足日って意外と沢山あるじゃん、とか、リラックスしている時に永遠を感じることができる、とか
横道世之介シリーズは人生の中の意外と気付いていない、普段の生活の中では見逃してしまうような瞬間を思い出させてくれて、自分の人生が少し愛おしく、素敵なものに見えてくる。
横道世之介シリーズは終わってしまったけれど、横道世之介は私の中に永遠に生き続けるだろう。 -
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横道世之介シリーズがついに完結。ついに、とはいっても第一作の時点で世之介の結末は示されていたし、続編があるとも思っていなかったので、第二作、そして今回の第三作と続きが読めたこと自体、思いも寄らなかった幸運という感覚です。今回も読み進めて終わってしまうのがもったいなくなるような多幸感に溢れた読書時間を楽しませていただきました。
今回は世之介39歳ということで、今年40になった私としては時代設定はやや異なるもののほぼ同世代の話として自身へ重ねたり重ならなかったりしながら読めたのも楽しかったです。
「なんでもない日常に幸せはあったのだ」と、そう書くとなんとも陳腐になってしまい、この小説と主人公世之介の魅力を言葉にするのは難しく感じます。シリーズ全編を通して人生讃歌であることは間違いないのだけど、今作は特に病で亡くなった恋人であるニ千花とのシーンや、後輩のエバと咲子が子を授かることであったり、世之介の人生観というか死生観のようなものが言葉にされる部分も多く、人生の幸せをより明示的に感じさせやすい作品になっています。「永遠と横道世之介」というタイトルの回収も素晴らしく、シリーズの締めくくりに相応しいあたたかな終わりであったかと思います。映画化も進んでいるということでどんな作品になるか今から楽しみです。
それにしても今作の地の文もなかなか独特ですよね。ナレーション風の『国宝』ほどにはわかりやすくはないし目立ちもしないのだろうけど、時にメタ的な記述も含む独特な三人称視点の地の文が本作の雰囲気全体を支えていて、さすがの吉田修一でした。 -
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ネタバレ国宝がよかったのでオーディブルで聞き始める。
「東洋ではからだのあちこちにツボがあるとされていますその中に壇中というツボがあります、喉元から胸の骨に沿って指を降ろしていくとその指先がすーっと吸い込まれていく先が壇中です。寂しくてどうしようもない時、悲しくてどうしようもない時ここを押さえてみてください、そしてゆっくり深呼吸をしてみてください」
「恋心というのは嫌われたくないと思う気持ちであると。そして愛するというのは嫌われてもいいと思う気持ちじゃないだろうかと。」
久々に感動する本を読んだような気がします
書評より「物語の語り手は、大学院生の岡田一心。彼は指導教授の紹介で、昭和の映画界で一世を風靡した元大女優、和楽京子こと石田鈴の邸宅で、所蔵品整理のアルバイトを始めます。八十代を迎えた鈴は、穏やかで気品ある女性。一心は、膨大な映画関連の品々を整理するうち、鈴の輝かしい女優人生と、その奥にある人間的な魅力に触れていきます。