あらすじ
最高に泣ける、吉田修一
心に傷を負った大学院生・岡田一心は伝説の映画女優・和楽京子こと石田鈴の自宅で荷物整理を手伝うことに。引退した今なお美しい鈴さんの胸に秘められていた波乱万丈な映画人生、原爆が奪った運命と大切な人たち――その過去に触れるうち、一心の胸にあたたかな光が灯る。清冽な感動に包まれる島清恋愛文学賞受賞の傑作長篇。
単行本 2022年1月 文藝春秋刊
文庫版 2025年8月 文春文庫刊
この電子書籍は文春文庫版を底本としています。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
往年の大女優「鈴さん」と、鈴さんの荷物整理を頼まれた学生「一心」の物語です。
不器用なほど真っ直ぐな一心を応援しながら、読み進めていました。
一心の中に芽生えた感情の行方が気になると同時に、鈴さんの出演映画や撮影当時のエピソードにも引き込まれ、まるで鈴さんの人生をともに歩んでいるような感覚にもなりました。
恋愛は、年齢を重ねるごとにさまざまな形へと変わっていくように思えます。
「あの人に幸せでいてほしい」と願うのも、恋愛のひとつの形なのかもしれないと感じました。
Posted by ブクログ
吉田修一のベスト作品のひとつです!
原爆がもたらした悲しいストーリーに泣かされた。
しかし、それでもたくましく健気に生きたふたりの女性。
華やかなスターの光と影。強烈なコントラスト・・・
こんないい作品を描いてくれて感謝しかありません
Posted by ブクログ
とても読みやすく、内容的には戦後を生き抜いた大女優「鈴さん」の荷物の整理をしていくうちに
映画を通して、生き様を通して主人公「一心」が
この引退をした女優に恋心を描いた話だと
思ってた終盤でネットで吉田修一氏の
「ミス サンシャイン」のロングインタビューが
あり、その中で「長崎の原爆を描きたい」
と言うような文章が出てきて、その視点から
読み返したら全く違う印象に変わった。
長崎の原爆を生き抜いた大女優「和楽京子」
の生き様を描いたノンフィクションとしか思えなくなった。実際に活躍された偉人や俳優、女優が
「和楽京子」と共に出てくるので最後には私の中にこの「和楽京子」と言う大女優が存在していたとしか思えなくなってしまった。
Posted by ブクログ
遅くなりましたが、吉田修一さんの「ミスサンシャイン」のレビュー書きます。
読む前から、みん読のみんなの感想が面白くて笑っちゃって、話題に出てきていたみんなの言う、「格がちがう」いっくんと素敵な鈴さんはどんな人達なんだろうとワクワクしながら読み進めました。
いっくんの大失恋、大女優だった鈴さんの映画や親友の話、その親友と鈴さんの被曝体験、いっくんが失恋から立ち直ったころに抱く鈴さんへの恋心、そしていっくんと鈴さんの共通点である、若くして亡くなった大切な人への気持ちを心の奥深くにしまっているからこその2人の心の共鳴。色々な要素が混じりながら素敵なハーモニーでした。
でもやっぱり心に深く響いてきたのは、鈴さんの語る原爆投下された日の話。被爆者として早くに命を奪われた親友の話。
すずさんの、戦争体験を読みながら、吉田修一さんって本当にすごい作家さんだなぁとしみじみ思いました。
そして膻中のお話。身体の中心線と乳頭を結んだ線が交わる場所にある「膻中」。
そんなツボが身体の中にあるなんて、知らなかったなぁ。読んだ後すぐにツボ押しまくったし、娘たちにも伝えました。
去年からずっと続いている激務で体調があんまりよくなくて、でも本を読んでいる間は仕事を忘れて別世界へ連れて行ってくれる。読書の間、ずっと緊張状態が続いている状態から少し解放されるんです。これってすごい事だなぁと改めて読書ってすごいなと思いました。
みん読の感想、ずいぶん遅くなり本当にごめんなさいm(_ _)m
今回はずいぶん遅れちゃったけど、きっと次回には仕事も身体も落ち着いていると思うので、またどうぞよろしくお願いします(^^)
Posted by ブクログ
これだから吉田修一は好きなんだ。
戦後活躍した大女優と大学生院生との物語。
思いがけず戦中戦後の長崎の話が出てきて
姿勢を少しだけ正して読む。
「サンシャイン」の名前に、あんな皮肉が込められてただなんて。
軽くショックを受ける。
さみしくてどうしようもない時は
私も膻中を自分でさすってみよう。
映像化されたら、鈴さんは誰が演じるかなー。
Posted by ブクログ
吉田さんは今 映画で大ヒットしている「国宝」の作者でもあります。
伝説の映画女優・和楽京子と大学院生の岡田一心。
一心が京子(鈴さん)の自宅で、資料や書籍などの荷物整理を手伝う。
バイトを通じて鈴さんの人生の歴史と向き合う。
一心は小学五年生の夏に妹を亡くし、鈴さんは親友を原爆症で亡くしている。
年齢差のある二人が心を通してつながり合う。
大人の恋愛。
出演した映画のストーリーとも絡み合う人生。
とても良い作品でした。
この作品はaoi-soraさん、地球っこさん、松子さんとの一緒に読書を楽しむ「みんどく」。
今回の選書はaoi-soraさん。
とっても素晴らしい本を選んでくださり、ありがとうございました。
とても楽しい読書時間でした。
みなさん これからもよろしくお願いします。
メモ
いい映画女優ってね、呼吸するように演技するのよ。
食べることは生きること、生きることは食べること。
もし、世の中に中心なんてものがあるとすれば、そりゃ、あなたのお母様が作ったごはんよ。
時間がかかるのよ。人の心ってね、大人になってもよちよち歩きなの。ゆっくりとしか歩けないのよ。立ち止まって、でもちゃんとまえに進んでく。だから、周りの人はゆっくりと待ってあげるしかないの。
人ってね、失敗した人から何かを学ぶのよ。
こんなに早くに死んじゃうから、きっとみんな、そう思う(かわいそう)と思うけど。お兄ちゃんだけはお願いだからそう思わないでね。一愛のこと、幸せな女の子だって思っててね。
恋心というのは嫌われたくないと思う気持ちであると。そして愛するというのは嫌われてもいいと思う気持ちじゃないだろうかと。
Posted by ブクログ
ちょうど最近日本映画にハマっているところで読んだので、すごく心に沁みる。伝説の映画女優、和楽京子が出演したとされる小説上の映画作品は架空のものなのに実在していそうな感覚。桃ちゃんにも幸せになってほしい。
Posted by ブクログ
引退した大女優の荷物整理を引き受けた大学院生が恋をする話
来た!吉田さんの純愛純文学。波乱万丈でも平々凡々でもすべては人間であり同じような悩みや傷を抱え生きている、深い共感。愛とは嫌われてもいいと思う気持ち。吉田さんの描く男はみんな優しい
Posted by ブクログ
作家の得意とする暗さがなく楽しめた。でも最後は暗い部分の表れそれが作品の魅力を一段と引き立てている。
異性と性別を超えた共鳴を覚える人に出会えたことが羨ましくもあり、本当にあるのかなとも、またその境地に達していないだけの自分がいるのかなとも、、、
Posted by ブクログ
こんなふうに歳を重ねれたらいいなぁと思う。
現実的に50も歳が離れていて恋愛感情が湧くのかどうかはわからないけど、人間的に惹かれるというのはわかる。
同じように大切な人を亡くして心に傷を隠したままの二人が心の交流によって癒されていく。
人は人によってしか癒されないのかな。
Posted by ブクログ
タイトルと装丁に惹かれてほぼジャケ買いの一冊でしたが、
タイトルにそんな意味があったとは…。
ひょんなことから昭和の大女優・和楽京子こと石田鈴の自宅整理を手伝うことになった岡田一心。
回想での女優としての和楽京子の描写はまるで本当に映画を見ているような熱感で、
一方で現在の鈴さんは穏やかな時間のなかで生きていて。
片付けを通して鈴さんの歴史に触れ、読み終わる頃には一心とともにすっかり鈴さんの虜になってしまいました。
幼馴染の佳乃子を原爆で亡くした経験を持つ鈴さんと、わずか9歳の妹・一愛を亡くした経験を持つ一心。
鈴さんのかつての恋と、一心の恋心。
ふたりの共通点が見えてくるうちに、だんだん二人が近くなっていって、少しの間だけその糸が交わってまた解けてしまう。
でも解けた先にもちゃんと鈴さんはいて、一心の人生を支えていて。
そんなふたりのように、ひとときの交わりでもそこから自分の未来につながるような出会いを繋いでいくのが人生なのかな〜と思ったり。
読み終わったあと心の芯がじんわりあったかくなるような温度感のある一冊でした。
Posted by ブクログ
当初想像していたのとはだいぶ違う内容だった。それは勿論良い意味で。
心に傷を負った大学院生の岡田一心は、
伝説の映画女優である和楽京子こと石田鈴の自宅で荷物整理を手伝うことに。
引退した今なお美しい鈴さんの胸に秘められていた波瀾万丈な映画人生、
原爆が奪った運命と大切な人たち。
その過去に触れるうち、一心の胸にあたたかな光が灯る。
吉田修一作品で言ったら横道世之介に分類される読みやすさと温かさであった。
何より、鈴さんの生きた人生が本当に胸に刺さる内容であった。
ミス・サンシャインに込められた皮肉、
そんなことにも気付けなかった己の無知さ加減も含めて。
鈴さんという存在によって、
主人公であるはずの一心のズルさが非常に目立った。
本当にズルい男だと、最後までそれは拭えなかった。
だから自分の中でこの素晴らしい作品を満点に推せなかったのかもしれない。
とは言え、一心は欠かせない存在なのである。
桃ちゃんのクソさも含めて、物語には欠かせないのである。
この矛盾が何とももどかしかった。
Posted by ブクログ
最初は物語の核となる部分がどこにあるのか分からなかったが読み進めることで和楽京子と一心がそれぞれ異なる人生を歩む中でも重なる部分にこちらが惹き込まれていく。桃ちゃんの件が必要だったのかは微妙なところだが、逆のこの年相応の恋模様が展開されることで読みやすく、また主人公がまだまだ大人にも非情にもなりきれない未熟な少年であることが上手く表現されている。原爆に関して、記述は多くはないがそれでも歴史と和楽京子の人生の重みを感じるには充分な文章だった。
Posted by ブクログ
最近の文庫で、読み切れそうだったので、初読み吉田修一さんです。現代の若者の恋愛の機微をも描く、都会派純文学。知り合いの女性がさらっと「ファンなんです」と言っていました。分かります。私も見習います。
Posted by ブクログ
長崎で被爆した私と彼女
たった一人の親友は亡くなり、私は生きた
そんな悔しさが読み進めるほど、じわじわと迫ってくる
大学院生の岡田一心はゼミの担当教授から、ちょっと変わったバイトを紹介された。
伝説の映画女優・和楽京子の自宅で、資料や書籍などの荷物整理を手伝う、というもの。
本名は石田鈴
〝すずさん〟と呼ばれるその人は、80代とは思えないほど美しく血色の良い女性だった。
鈴さんと過ごしたのは半年間ほどだが、それはとても濃密で、一心の人生に大きな影響をもたらす。
一心は小学五年生の夏に妹を亡くしている。
たったの九年という短い一生だった。
鈴さんは親友を原爆症で亡くしている。
それぞれの心の傷と過去とが交差し、二人の心も重なり合っていく様が絶妙でたまらない。
一心は和楽京子の出演する古い映画やドラマを片っ端から観ていくのだが、その作品が実在のものかと錯覚してしまう。
私は文字を追っているだけなのに、目の前に色鮮やかな映像が映し出されていく。
鈴さんは「必死に生きて、失敗した人の人生」を演じてきたと言う。
考えてみれば誰もが、失敗しながら生きているんじゃないかな?
一心の妹も、鈴さんの親友も、亡くなる前の言葉は「幸せだった」という言葉。
「かわいそう」って思わないでねと言う。
懸命に生きてきた人生は、短くても長くても、失敗しても「幸せ」なのかもしれない。
私もそう思って人生を終えたいし、大切な人が亡くなっても「幸せだったね」と声を掛けたい。
この本は
いるかさん、地球っこさん、松子さんとの
〝みんどく冬の会〟で私が選書しました。
一緒に読んでくれてありがとう(•ᵕᴗᵕ•)⁾⁾
恋愛小説でありながら、戦争とも真正面から向き合った良い作品でしたね。
Posted by ブクログ
伝説的映画女優の生涯を描いたフィクション。
長崎の原爆を生き、戦後のスターダムを駆け上った。
なかなか語られない、"その時代"の話。
理不尽との隣り合わせ。
返せー!返せーーー!!!
読み進めるうちに、幾重にも重なっていく。
ドスンと落ちてくる。こみ上げる。
ふとした一人時間に、おすすめです。
Posted by ブクログ
男女の区別にやかましい昨今、俳優と呼ぶべきなんだろうが、和楽京子(鈴さん)のことは、あえて女優と呼びたい。
話の初っ端から鈴さんの魅力に圧倒される。誰をモデルに書いたんだろう。初めは「京」繋がりで京マチ子さんかと思ったが、文化勲章の話しが出てきたので森光子さん?
鈴さんといっくんの故郷、長崎の悲しい歴史と「ミス・サンシャイン」のネーミングの由来が、鈴さんのアカデミー賞のスピーチが実現しなかった理由なんだろうか。
Posted by ブクログ
期待しすぎた感はある。
好きな名言。
喉元から胸の骨に沿って指を下ろしていくと、その指先がすっと吸い込まれそうになる場所があるはずです。そこが膻中というツボです。寂しくて眠れない夜、ここを押してみてください。そしてゆっくりと深呼吸してみてください。
Posted by ブクログ
誰かモデルがいるのかなー?誰?
と、考えながら読んだけれど
そもそも女優・俳優の知識があまり無く
さっぱり見当がつかず。
面白くなくもないけど、誰かに勧めるほどじゃないかなぁ。
Posted by ブクログ
読みやすいし面白い本でしたが、心を揺さぶられる、とまでは思えない本でした。もちろん、私見です。
主人公の好きな女の子が元彼と切れておらず、それどころか彼女の方が元彼を追っかけていたと知る。そんな苦しい恋の最中に、ふと生まれた別の想い。
という感じでした。
ただし鈴さんの描かれ方は好きでした。
鈴さんは本当に大人で、主人公の若い突っ走りを受け止めるけれどさらりと受け流すところが素敵でした。
Posted by ブクログ
石田鈴の女優として生きてきた背景と、それを知って共鳴していく一心の心情を思うと、なんとも言えない切なさのようなものを感じる。
この感情をなんと呼べばいいのか分からず調べてみたら、「代理ノスタルジー」 「もののあはれ」 あたりらしい。
強烈な印象はなく、静かに余韻を残す感じの物語。
Posted by ブクログ
私の考えた最強の女優っていう話。
「ぼくのかんがえたさいきょうの…」の女優版。
設定が細かく実在の俳優の名前も出てくるし、古い日本映画も好きなので興味深く読めたけど、主人公の若い男の子の話は嵌まらなかった。
Posted by ブクログ
なんとなくふわ~っとしたら話だったけど、ネガティブな感情は起こらなかった。そういう意味でいお話かもしれない。虐待とか悲惨な経験をバネにして…みたいな話が多いけど、成功した大女優の話はスカッとした。
Posted by ブクログ
フォローしている方のレビューに惹かれて読んでみたいと思った。
大学院生・岡田一心が既に引退している伝説の女優・和楽京子こと石田鈴の自宅で荷物整理のアルバイトをすることとなり、そこから交流を深めていく物語。
戦後のエンターテインメントの歴史を辿りながら、その時々に銀幕を彩った色々な女優さんを彷彿させる鈴さんの魅力と生き様がとても面白くスルスルと読めた。
加えて、これまで観てきた映画のエッセンスが詰め込まれたような、著名な映画監督たちとその代表作を思い出させる(架空の)作品が語られていくのも楽しい。
後半には鈴さんと一心の出身地である長崎に落とされた原爆の話が入ってくる。
私も長崎生まれで、小学1年生で県外に引っ越したためがっリした原爆教育を受けたことはないが、それでも父や母から幾度となく話を聞いたことがある。
これまた長崎で生まれ育った作者さんはこれこそを書きたかったとのことのようで、こうしたお話に原爆の話題を入れ込むのはなかなか骨の折れる作業だったと思われるが、前半のエピソードも活かしながら無理なく語られていたように感じた。
それらからすると一心の、桃ちゃんとの顛末や鈴さんに対する淡い慕情は、話の展開の上から必要だったようには思えるが、私にはあまり刺さらなかった。
Posted by ブクログ
帯に泣けるって書いてあったけど私は泣けなかったし泣くところがわからなかった。話も面白かったなとは思わないし何がいいのか?て聞かれたら言えないな…と思うのですが、全員善人でそれぞれが人生を生きているんだなってすごく実感しました。鈴さんがただただ素敵過ぎる。ほっこり。
Posted by ブクログ
読みやすい優しい小説でした
美しい老優が主役かと思いましたが
80歳の女性が若者に恋愛の指南をするお話
最後の一行「僕たちは忘れない・・」のたちは誰なのかな
僕ではいけなかったのかと謎です
それにしてもこの作家さんの作品は幅広く感心
「悪人」「国宝」「ミスサンシャイン」
モデルがいるようでいない
でも確かに参考にしてる人・現場・環境はあります
ないまぜが上手
Posted by ブクログ
原爆やハリウッドデビュー、スキャンダルなど、波瀾万丈な人生を歩んできた鈴さんを描いているにもかかわらず、物語は終始淡々と展開していく。その静かな語り口が、かえって心地よく感じられた。
佳乃子さんという存在が鈴さんの役者人生に影響を与え、さらに鈴さんの言葉が一心の人生を彩っていく。そうして過去から未来へと連なっていく流れが美しく、その過程に深く感動した。
鈴さんの歩んできた歴史、一心の恋や過去、現実だけでなく空想の場面までも織り交ぜながら、これほど読みやすく、綺麗にまとまった作品になっているのは、やはり作者の確かな筆力があってこそだなと。
Posted by ブクログ
引退した昭和の大女優の倉庫の片付けのアルバイトをすることになった、大学院生の男の子。元女優の80代のおばあさんと、通いで来るそれよりは少し若いお手伝いさんと、なにとはない会話をしながら、女優の紹介、それから、男の子の恋愛の顛末を。男の子は、一度就職し、心を病んで辞めて、大学院に入り直していた。カフェの女の子を好きになり、結ばれるが、女の子は別れた元彼を忘れられない。ラストは、数年が経って、家庭を持っている彼が、大女優の死を知るという構成。
女優には同郷の親友があり、むしろ彼女のほうが女優になるべきだったと思っている。二人とも長崎で被爆し、親友のほうはそれが原因で白血病になり、若くして死ぬ。男の子にも、妹が病気で子供の頃に亡くしていたという過去があった。どちらも言う。「(早く死ぬ)私のことを、不幸だとは思わないで。私は幸せだった」
女優の出演作とか本当にありそうで、結婚離婚の顛末もなんとなく頷けるもので、戦後、光を浴び、体を張って生きてきた、カリスマ性のある一人の女性の凛とした美しさが、リアルに伝わってきた。そして一時、その光に触れた男の子。彼が、自分の人生を平凡だと思うくだりがよかった。映像の世界に憧れたこともあったが、現在は不動産の営業をしている。どこにでもある住宅街に住み、妻と子がいる。そういう自分が幸せであると。それを知れたのは、大女優との時間があったからであると。
「和楽京子という伝説の大女優のそばで過ごした時間で一心が教えられたのは、どんなに特別な人も普通の人なのだという、至極当たりまえのことだった。逆に言えば、特別な人など、どこにも存在しないということだ。 言葉にすれば当りまえすぎることだが、この意味をきちんと理解できるようになった人だけが真実の幸福を知るのかもしれない。」