あらすじ
鳴りやまぬ拍手と眩しいほどの光、人生の境地がここにある──。芝居だけに生きてきた男たち。その命を賭してなお、見果てぬ夢を追い求めていく。芸術選奨文部科学大臣賞、中央公論文芸賞をダブル受賞、『悪人』『怒り』につづくエンターテイメント超大作!
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映画より面白い
映画が面白かったので、原作を読んでみた。
大筋は原作通りだけど...やっぱり映画は別物。
なんと言っても徳ちゃん、漢前です。かっこいい。
結局喜久雄は『ぼんぼん』なので徳ちゃんが居なくなると叱ってくれる人も居なくて、喜久雄の孤高感が加速したのかとも思うし、その分芸に磨きが掛かった気もする。最後は社長になっても喜久雄の国宝受賞に飛んでくる所は徳次の義理堅さが出てて良かったです。
あっと言う間に読み終え、何故か脳内で柄本時生さん版徳次が躍動しておりました。
柄本時生さんの徳次.....観たっかなぁ。
《歌舞伎》への底しれぬ愛情。
2025年7月読了。
話題に成っている映画の方を先に観て、映画は映画でとても素晴らしかったのだが、3時間の尺でも『何かのダイジェスト版を見されられている』様な気がして、速攻で原作を読んだ。
映画を先に観ていたお陰で、名前と顔が直ぐに浮かび、劇場で「喰い足りない感」が有ったのを、原作を読むことで本当に心から堪能した。
ただ、劇場版が笑いなしのシリアスタッチだったのに対し、原作は笑い有り涙ありの波瀾万丈な物語だった事が一番意外に感じた事だ。まぁこれだけの作品を映画化するには、ストーリーを相当にカットしなければ3時間どころでは済まないことに成ったのであろうから、致し方無かったのかもしれないが…。
本当に、吉田修一が此処まで《歌舞伎の素晴らしさ》を描き出せるとは思っていなかったので、その事も意外で有り、こうした伝統芸能について《がっぷり四つ》でぶつかった文芸作品は早々出会えないので最大の賛辞を送りたい。
又、映画の方も原作とは異なる解釈では有ったが大変素晴らしかったので、原作と映画、両方とも違う味合いで魅了された事が何よりの喜びだった。
映画はスゴい興収に成っているそうだが、原作ももっともっと多くの人に読んでいただきたい《大傑作》である。
映画を観て、原作を読んで、今また『映画』が観たいな…と思っている。つくづく《歌舞伎の世界》は素晴らしい…。
Posted by ブクログ
歌舞伎というなじみのない世界を生きてゆく男の物語。非常に重厚な小説だった。語り口は古典劇の口上を聞くような感じであり、また一般の人にはあまりなじみがなくて退屈しそうな歌舞伎の舞台の場面の描写も非常に臨場感にあふれていて、実際に歌舞伎を観るよりも迫力があるのではないかと思ってしまう。主人公の喜久雄は芸の道を究めてゆくのだが、最初は多くの仲間に囲まれていたのが、年を取ってゆくこともあり、また自分がどんどんと芸の高みに登ってゆくこともあり、それにつれてだんだんと孤独になってゆく。その姿が非常に寂しそうで印象的だった。その姿はこの小説を原作にした映画でも描かれるのだが、映画ではあまり描かれることがなかったのが、主人公喜久雄を少年のころからずっと支え続けてきた徳次だった。主人公の不良仲間のような人物だが、それでも非常に男気があり、また主人公に対する忠義は強く、またチャンスをものにするための思い切りにも富む人物。いずれも私にはないもので、かっこよくもうらやましくも思えた。映画も非常に良かった、原作と映画とどちらがいいかといわれると、甲乙つけがたい感じ。映画を観た人には原作も読んでほしいと思う。
Posted by ブクログ
圧巻だった。それぞれの人物の描写が丁寧でものすご〜く濃い!!奥行きが深い!!!
「ですます」調の独特の文体で読みにくいかと思ったが、すぐに慣れてあっという間に読み終えた。歌舞伎のことはさっぱりだけど、「歌舞伎役者」として生きる者の宿命というか業というかをまざまざと見せてもらった。徳次、春江、彰子、幸子と脇を固める登場人物も良き。
映画を観ていなかったらこの原作は読んでいなかったと思うが、もし逆だったら物足りなく感じたかもしれない。映画には映画の良さがあり、原作を読んでまた改めて映画を観たくなった。
Posted by ブクログ
私は今、凄まじいものを読んだ。最終ページ、そこにははっきりと稀代の女形花井半二郎がいた。読後、熱いものが胸に込み上げるような感覚があった。
歌舞伎を愛し、歌舞伎に生きた天才半二郎の一生を圧倒的な熱量で描き切った本作。
一つの道を究めるために、すべてを懸け、命を燃やす。その真摯な生き様は、読む者の胸を強く打つ。
普段あまり人間ドラマを描いた作品を読まない私だが、本書には大変満足できた。正直、ドラマやアニメ、バラエティのような分かりやすい楽しさや面白さのある作品とはいえないかもしれない。しかし、彼の人生を密着したまるで2時間の上質なドキュメンタリーを見ているようで、読後には理由を超えた大きな感動が残る。
読む人を選ぶことなく、多くの人にお勧めしたい傑作である。
Posted by ブクログ
「白河集団公司」!!!(嗚咽)
徳ちゃんって最後の最後まで本っっ当に義理堅くてなんていい奴なの!!!
私は映画が先、原作が後になったけど、結果的に正解だったと思う!
歌舞伎の繊細な大胆な美しさとか、俳優陣の演技の上手さを堪能するために映画がすごく良かったんだけど、映画化で省かれたたくさんの部分があまりにも良すぎるため、「映画に反映されてなくて残念」の気持ちの方が上回ってしまうと思う。
映画では、俊ぼんが逃げて、喜久雄の元カノと子供作って、結構ぬるっと実家と歌舞伎界に帰ってきたようなイメージだったんだけど、原作では戻ることを決めてから父親に許可もらうために踊るシーンもあったし、腕の中で第一子が突然死したショックで廃人になってそこからの復活で糖尿病で結果両足を切断したし、相当苦しみもがいていたのが分かって、すごく感情移入した。つらかったね、がんばったね、俊ぼん。泣
息子の一豊がひき逃げしてしまう俊ぼん譲りな一時の心の弱さも描かれてた。
喜久雄の娘の綾音が、自宅の家事で娘が火傷を負って集中治療室とはいえ、病院に駆けつけた喜久雄に思いっきり”お父さんが成功するたびに私が不幸になる”ってぶつける場面もかなり良かった!映画は「悪魔と取り引きする」っていうシーンはあったけど、原作ではかなりはっきりと喜久雄に対する憎しみの感情が現れてた。(そこの印象がかなり強く残ってるけど、綾乃が付き合ってる関取と結婚を決めたり、孫が産まれたりして喜んでる喜久ちゃんかわいかったな)
狂人となってしまった喜久雄だけど、美しい世界の中で最後まで生きられて幸せだったんだろうなぁ。。
Posted by ブクログ
素敵なお話でした。
読み応えある!
映画とは違うけど、このラストもいいなぁ。
これを書くのは資料集めとか大変だったんだろうなぁ、と最後の「参考資料」を観ながら感じました。
そして、これを映画をするのも苦労したろうなぁ、と感じるのでした。
どちらも素晴らしい!
歌舞伎のことをもっと知ってたらもっと楽しめたのかなーとそこだけが残念です。
Posted by ブクログ
後半。映画では描かれなかった場面、登場しなかった人々が多く登場し物語の奥行きを広げます。映画では妖艶な歌舞伎のビジュアルを、小説では登場人物の内面や背景を、それぞれの媒体の長所が互いに補完し合い、作品そのものの輪郭がくっきり立ち上がってくる感じがありました。ラスト喜久雄が観た景色とは?映画とはまた違った描写、表現でただただ圧倒されました。
Posted by ブクログ
任侠の世界から始まる。
主人公の喜久雄は、複雑な家庭で育ち、ヤンチャな少年時代を過ごし、芸能の道へ。
マツや徳次は、派手な存在ではないけれど、喜久雄の最も核になる人物だなと思う。
感情がないわけじゃないけれど、何処か人情の薄さを
感じてしまう喜久雄。そんな喜久雄を熱く支えてくれる2人。そういう人に恵まれて、あぁ、うらやましいなと思う。
妻、彰子は不憫で仕方がなかったけれど、長い年月を経て、変わることってあるんだね。
1番不便なのは「悪魔と取引」を聞かされた綾乃だね。子供にそんな事言うのって、大馬鹿なんじゃないのって思ってしまう。
終わりにかけての喜久雄の変容。
「国宝」って「幸せ」とトレードなんかな。
闇を抱えた多様な人間模様を描きながらも、品のある文章がこの小説の魅力。
Posted by ブクログ
読後、深い余韻に満たされる。
上巻の感想で、主人公のプロ意識と云う表現をしたが、そんな生やさしいものかとでは無い!特に二人の登場人物の「芸」(歌舞伎)に向き合う情熱?執念?そんなものでは無い、鬼気迫る魂!を味わう。
物語も青年期からの何処か危なっかしい、ガラスに触れる様な感情や出来事!これは登場人物全てに当てはまる!人生の栄枯盛衰、最悪の状態から好転すれば、また悪い事が起こるのではないか?危なかしくて観ていられない!という感情が湧いてくる、反面先が気になって仕方がない!一気に読んでしまう。
重厚な大河ドラマを観た想い!
深い感動と余韻、多くの言葉や感想を残そうと思ったが、言葉が見つからない、読むか読まないか?迷っている方がいらっしゃったら是非読んで頂きたい。また、自分の人生を振り返らずにはいられなくなる、
素晴らしい物語に出会えた満足感に包まれる。
Posted by ブクログ
やっと観た映画が面白かったので原作だとどのように描かれてるのか気になり翌日に購入。はじめは語り口調が読みにくいなと感じていたけど、いつの間にかページを捲る手が止まらなかった!
映画は原作と異なるところ、描かれないところがたくさんあり、読みながら思ってたのはよくあの3時間に綺麗にまとめたなと監督たちに感動した。頭の中どうなってんの?
原作での喜久雄は背中に彫ったミミズクのように恩を忘れない人間味を感じられたり、映画であの人どうなっちゃったの?とモヤモヤしていたところが救われたり、とにかく読んでよかった!
歌舞伎のことはちんぷんかんぷんな私は、映画を観たからこそ小説をより楽しむことができたし、それぞれに好きなシーンができて、改めて「映画」も「小説」も好きなだなぁと思えた。
Posted by ブクログ
映画→上下巻
映画と小説は別物。でもどっちも良かった。
3時間長いしトイレも心配…と思ってたけど
原作の内容は正直3時間じゃ全然足りてへんなと感じたし、本筋はもちろん同じやねんけど重要なシーンやったり登場人物が違ってたりと、本を読んでみてビックリしたことがたくさん。
上巻の冒頭からの感じてた違和感が、最後の方で解消されて、(あれやっぱおかしいよな?どういうこと?)てのが最後に分かって、でもモヤ晴れ切らんくて、
喜久雄の親父さん殺したのはあの人で…、でもそのシーンを2代目も目撃してたよな?
とか、その上で引き取った?とか乏しい理解力でなんとか読み切ったけど、これはもう一度映画も見ておきたい。
国宝ってタイトルも小説の方がしっかり回収されてたかな
Posted by ブクログ
映画も見終わったあと主人公2人の美しさと悲しさに心が躍ったが、原作のこの小説は、観終わった映画のさまざまな感動を呼び起こし、さらに1回の映画だけでは分からなかった各場面とそこで演じられる主人公とそれを支える人たちの心情までも伝わってくる感動を覚えた。
映画は映画、小説は小説、ここまで観客、読者の心をよくぞ掴んだと衝撃を受けた。そして小説は映画で演じられなかった場面さえ浮かび上がらせた。
Posted by ブクログ
映画を見てから小説を読みました。
仕事をしていても出かけていても、早く続きが読みたい!と思う小説でした。
映画を見た後に原作を読むと役者さんの顔がチラホラ見えながら読んでしまいますが、今回はずっと自分なりの人物像が浮かんでいて小説に没頭出来ました。
映画を見てからの原作で良かったと思いました。
Posted by ブクログ
映画を観てから小説を読むと違いはあるものの、どちらも面白かった。印象的だったのは彰子。活躍ぶりが素晴らしい。映画では分からなかった女性陣の生き様がどれも素敵だった。
Posted by ブクログ
これぞ国宝 上巻だけでもすごかったのに、下巻も圧巻。でも少し寂しかった。若い頃をふりかえる描写も多く、孤高になっていく様もあり。でも円熟した人物が絡み合っていき、読みごたえは抜群。家事の最中は上巻同様オーディブルに頼み、菊五郎さんの朗読にまた没頭。最後は衝撃的だったが、喜久雄は幸せだったと信じたい。ラストの3行、いいですね。拍手を送ります。
Posted by ブクログ
終盤にかけて周囲から孤立していく喜久雄。読みながら、自分だけが喜久雄の傍らにいるような感覚になっていった。
徳次、なんでこのタイミングなの?
ペルシャ絨毯は持ってきた?
ラスト25ページくらいからの、息が詰まりそうな展開。
これを超える読書に、これから先いつ出会えるかな…と、楽しみになりました。
Posted by ブクログ
舞台、映画、テレビと芸能界の激変期を駆け抜け、
数多の歓喜と絶望と享受しながらも、芝居だけに生きてきた男たち。
血族との深き絆と軋み、スキャンダルと栄光、幾重もの信頼と裏切り。
芸の頂点へと登りつめ、命を賭してなお追い求める夢のかたちとは。
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こんなにまじめに歌舞伎の道を生き抜いてるのに、
ここまでいろんな困難が降りかかるとは。
喜久雄だけでなく俊介もそう。
まさか、病気になるなんて。
せっかく2人でまた舞台に立ち切磋琢磨しているところやったのに。
それを支える妻たちも強い。
私が私がの考えがなく、常に家族のこと、歌舞伎のことを考えてる。
<下>の途中で徳次はおらんくなった。
私はこの物語の中で徳次が一番好き。
ずっと喜久雄やその家族を支えてきて、こんないい人がおるんやと。
最後に登場した時は、約束を果たし感動した。
最後の最後、喜久雄の行動が、
結局どうなったのか理解できないまま終わった。
それでも、お芝居に魅せられ舞台に立つことを生きがいとし、侠客の家に生まれ育ったのにここまで上りつめたことがすごい。
子供の頃から人間国宝になるまでの長い人生、
文章でここまで書けるのがすごい。
実在するかのような、この生き様を目の前で見てきたかのような、小説でここまで成長する姿をリアルに感じたのは初めて。
Posted by ブクログ
遅ればせながら映画を見て感動し、その足で書店にて買い求めて帰りました。
映画と小説は登場人物含め詳細においてはかなり違う点があるため、これはまた別の作品としてとても楽しめました。個人的には、私のように歌舞伎に詳しくない方は映画→小説の順で触れるのが良いかと思います。
語り口調の筋書きがとても耳に心地よく、情景が浮かぶようでした。また何度もゆっくり読み返したい作品です。
Posted by ブクログ
映画を観て、登場人物達の心情をもっと知りたくなり本書を購入した。
読後真面目に「えっ?!」って声が出た。
映画とはまるで違う結末で衝撃的だった。
俊介は歌舞伎から一旦逃げ、更に春江に頼った。
喜久雄はいつも独りで立ち向かい、歌舞伎から少しも逃げなかった。その姿がとても痛々しく、応援しながら読んでいた。
喜久雄が探していた景色。
雪の白。
飛び散った血の赤。
そう言えば文庫版のカバーの背景は「上巻が白」「下巻が赤」。そう言う事なのかと少し鬱々としながら本棚に片付けた私であります。
Posted by ブクログ
映画を観る前に読んだ。最初は文章が読みづらいかなって感じだけど、慣れると逆にナレーションのような感覚でNHKドラマを観ているようで面白かった。
もっともっと読んでいたい、喜久雄を見ていたいという気持ちにさせられた。こんな1人の男の話に夢中になれる本はなかなか出逢えないと思った。読み終えてしまったのが寂しく感じる。読み終えた後も実際に喜久雄という人物が存在しているかのような気分。
歌舞伎界の光と影、血縁、どこの世界にも実際にある話なんだろうけど、どの立場でも必ず幸せとは限らないんだな。
Posted by ブクログ
喜久雄は天才だけど、幸福な人間ではない。
愛した人を守りきれず、名誉にも振り回され、
それでも舞台に立つことをやめなかった。
彼が選んだのは、「誰かと生きる人生」ではなく「芸と生きる人生」。
孤独なのに強くて、破天荒なのにどこか脆い。
物語の終盤で、彼の演じる姿が静かに胸を締め付けてくる。
“あぁ、この人は舞台でしか生きられない人だったんだ”
読後、静かな余韻と喪失感だけが残った。
上下巻とも夢中に読みました。
既に映画は公開されていますが、上巻を読み、どこを切り取って映画化したのか、上巻だけでも色々切り取っても迫力ある映画になりそうで、下巻に進むと更に、幾らでも映画として切り取れるストーリーが幾つも展開していく本です。一体映画は何処を切り取り作ったのか、そう考えながら読んできました。そして思うのは主人公は、歌舞伎役者それとも歌舞伎役者を取り巻く多くの女性達どっちなのか、複雑にからみあう女性達の、なんたる不思議な信頼関係というか線引き潔さよさ、それを許しあう主人公を取り巻く歌舞伎の世界、この微妙な関係や繋がり、寄りかかり助け合う世界を表現する作家の本の構成の妙が素敵な本です。締めに向けては、女形、歌舞伎役者の目に見えぬ心、本人も理解していない境地の世界を表現していき、夢中にさせてくれる素晴らしい本でした。ありがとう。
匿名
最高の小説だった
とにかく余韻がすごかった。
全てを語らず読者に考えさせる隙を与えていて読み終わった後も繰り返し同じ文章を往復していた。
文章がまるで詞のようで流れるように頭にスッと入ってくる。
個人的にはこれを超える作品にはなかなか巡り会えない気がする。
Posted by ブクログ
映画がヒットしているから読んでみた。波乱万丈の人生が描かれている。歌舞伎に興味があると面白さも増すが、残念ながらそれはなかった。でもまた読みたくなる本です
Posted by ブクログ
映画を先に観てから読んだけど、この順番で良かったと思う。
語り口調なせいか?本を読むというよりは、お芝居を観ているような感覚だった。
映像美が圧巻だった映画も良かったが、やはり原作は、本は面白い!と思う作品。
歌舞伎という伝統芸に、複雑な感情が入る血筋という現実が絡み…やっぱり歌舞伎は国宝なんだなぁと思わせられた。
あ〜ちゃんと歌舞伎を観てみたい!
Posted by ブクログ
■はじめに
稀代の歌舞伎役者の生涯を描き切った818ページ。
「あゝ読み切った!」という実感をしみじみと抱いた。読み了えてなお胸に“熱さ”が残る、The芸道大河小説であった。
いざ感想を書こうとすると、「どこを基軸に書けばいいのか…」と立ち止まる。なにしろこの小説、“物語”に加えて“芸道論”と“時代性”が折り重なる三層構造。とにかく入口が多すぎるんです。どこを足がかりに言葉を置くか…思案に暮れながらの感想綴りと相成りました。
■あらすじ
主人公・喜久雄(三代目花井半二郎)は、貧しい家に生まれた少年。歌舞伎に魅せられ、厳しい世界で研鑽を重ねながら才能を開花させ、幾度も傷つき倒れては舞台に戻る。
その道のりには、競い合い、支え合い、主人公の“影”でも“光”でもあった名門出身の俊介という存在があった。ライバルであり終生の友であった彼との関係こそ、喜久雄が芸を極める上で欠かせぬ試金石であり、芸を映す鏡でもあった。
俊介との別れは喜久雄の芸に深い影と決意を刻み込んでいく。いよいよ主人公が到達した“国宝”の域は、自らの努力だけでなく、亡き友の想いと不在を背負って立つ舞台の上で完成していく。
■おっさん的読みどころ
① 「芸を磨く」とは“耐える物語”である
作中で繰り返されるのは、「芸は血筋でも才能でもなく、続けた者の勝ち」という残酷な真理。喜久雄は何度もつまずき、恋も家族も不器用である。それでも舞台に立てば“天才”と呼ばれる。このギャップが痛々しくもリアルで、「天才とは、不安と孤独を燃料にする人種」という描写には、思わず痺れた。
② 歌舞伎は“伝統芸能”でありながら、その裏側は過酷な現代劇
四百年の伝統を背負いながら、その舞台裏には「師弟関係という名の暴圧」「家制度の呪縛」「血筋 vs 実力」「興行としてのビジネス」といった生々しさが横たわり、それらが複雑に絡み合い、「伝統を継ぐとは過去と闘うこと」という真理が鋭く突きつけられる。
③“型破り”とは、古典の“ど真ん中”まで潜った者にしか許されない
喜久雄は古典を徹底して学び、血の滲む修行を重ね、ようやく自らの型に辿り着く。伝統を破るには伝統の核心に触れ、それを血肉にしていくしかない。これこそが「芸道」の本質であり、「研磨に終わりなし」と言われる所以。
④ 芸の孤独は、人生の孤独と響き合う
芸に生きる者は、時に人生が壊れることもある。喜久雄もその例外ではない。著者は、その“影”すらも舞台ではまばゆい光に変えてしまう芸の矛盾と美しさを静かな筆致で炙り出しいく。
■最後に
読み進めるほど胸のどこかがひりつき、喜久雄が歩んだ芸道は、歌舞伎という遠い世界の話ではなく、“生きることそのもの”に重なってくる。
時に残酷であり、孤独さは強まり、それでも舞台へ戻っていく者の背中には、才能よりも“続ける勇気と覚悟”が宿る。最後のページを閉じた今、その静かな熱だけが、心の奥でじ〜んと燃え続けている。
Posted by ブクログ
時間の流れとしては50年以上の長い物語だけれど、ぐいぐい進んで一気に読めた。映画は見ていないが、おそらくだいぶコンセプトが違いそうな気がする。
どこまで行っても、喜久雄が芸(歌舞伎)にどう向き合うか、芸を極めた先に何があるか、という軸が中心にあり、時にそこから大きく離れても、重力に引っ張られるようにまた戻ってきて、むしろ速度は上がっているような、そんな読書感。
Posted by ブクログ
映画を観てから読みました。
映画の最後の方は急足になった印象がありましたが、小説では俊介の死以降の喜久雄の状況が詳しく描写されており、映画で感じたモヤモヤが解消されました。
また、映画では出てこなかった歌舞伎の演目も出てきて興味深く読めました。
Posted by ブクログ
歌舞伎一筋に生きる喜久雄の生涯を描いたお話。
あくまでも喜久雄が主人公だった。何が起きても直向きに芸に向き合う。それは物語として美しいけど家族からすれば寂しくも冷たくも感じるんだろう。喜久雄は言葉にしないから余計に。
それでも家族や仲間を心から大切にしているし暖かい人でもある。…けどもやはり歌舞伎が全て。
生きるうちに少しずつ失っていって狂っていく。その残酷な人生全て含めて喜久雄という作品なんだな。
400頁×2くらいの容量の中に壮大な人生が詰まってた。
俊介もよく頑張った。辛い。
Posted by ブクログ
映画がおもしろくて、どうやら原作があり映画とはだいぶ内容が違うらしいという話を耳にして買ってきた本。
なかなかイメージしづらい歌舞伎の世界。本を読んでても、映画で見た映像が頭の中に甦る。先に映画を見てて良かったなと思った。内容もかなり映画とは異なる。ま、確かにこのボリュームを全て映画で作るのは難しいだろうなと思った。欲を言えば三部作くらいで映画バージョンを改めて観たいが……。
まあそれはともかく、喜久雄の人生はまさに「悪魔と契約した」人生だなと思った。娘綾乃が言ったように、喜久雄が良い思いをするたびに周りが不幸になる…最終的には本人も夢と現がいっしょくたになっていくように思えた。もちろん喜久雄も良い想いだけではなく多大なる苦労もしているけれども。
個人的には、彰子の父が喜久雄を認めるところと、春江が弁天の番組に出たいという流れの幸子のセリフに泣いてしまった。春江が番組に出てその後丹波屋はどうなったのか、まで書いてくれたら嬉しかったな。冗長と思えそうなところもまた人間味があって面白かった。
ぜひ、映画を見たあと読んでほしい。
Posted by ブクログ
狂気と暴力を描き出す吉田修のお話なんだと思う。映画の大ヒットはあれどそれが歌舞伎界の話であろうと、そして人間国宝になった人の話であったとしても…小説でこれだけ世界を描き切っているお話をよく映画に出きたなと思う。未見の映画もぜひ見たいと思った。