あらすじ
今から20年前──。大学進学のため長崎から上京した横道世之介18歳。愛すべき押しの弱さと隠された芯の強さで、様々な出会いと笑いを引き寄せる。友の結婚に出産、学園祭のサンバ行進、お嬢様との恋愛、カメラとの出会い……。世之介の学生時代の1年間と彼と関わった人々の今を描き、誰の心の中にも、人生にも、温かな光を灯す青春小説の金字塔。第7回本屋大賞第3位に選ばれた、柴田錬三郎賞受賞作。2013年2月公開の映画原作。
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Posted by ブクログ
吉田修一さんは「悪人」、「パーク•ライフ」、「パレード」を読んだことがあります。
(パーク•ライフとパレードは後から実は読んでいたことに気づく)
「横道世之介」、語呂の良さから何となく聞いたことがあったのと、父の本棚にあったので読んでみることに。
吉田修一さんでは4作品目。
田舎から大学進学のため、上京してきた横道世之介が主人公のお話。
月ごとに区切られていたので合間合間に読みやすい。
今まで私が読んできた作品の主人公は事件に巻き込まれたり、逆に起こす側だったり、または複雑な生い立ちだったりすることが多かったが、ごく普通の大学1年生のお話でかえって新鮮でした。
世之介みたいにバイトに明け暮れていた大学生活だったため懐かしい気持ちになりました。
読み進めていくうちに誰もが世之介が大好きになるはずです。
ちょっとズレているところはあるけど、根底に優しさやまっすぐなところに惹かれていきます。
そんな人たらしなところに当の本人が気付いていないところも愛すべきポイントで。
どこにでもいる大学生っぽいけど、どこにでもいない。
かかわる人々に愛されて、プロのカメラマンとして撮影した写真もきっと心を動かされる写真だったんだろうなと思います。
11月のシーンで嫌な予感がして、まさかと思ったらそのまさかで。先を知るのが怖くて途中から文章を隠しながら読み進めました。
数十年後の結末を知ってしまってからはまるで話が変わってしまっように暗転したように感じました。
当然世之介の未来も描かれるのだろうと思っていたのでまるで開けてはいけない箱を開けてしまったみたいな感覚に。
読者目線では何で…とも思ってしまうけど、そのまっすぐさゆえに世之介だったら何度でも同じ行動をするんだろうなとも思います。
すごく印象に残るお話ではないけれど、ふとした時に思い出し、世之介に会いたくなることか容易に想像できるお話でした。
続きがあるようなので読んでみたい。
同じく父の本棚にある「ひなた」も読みたい。
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どんな思い出かと言うと定かでないけど、忘れらない友人っていますよね。なんだろ憎めないと言うか、愛らしいと言うか、それが横道世之介の魅力的なところ。世之介のような人が身近にいたら人生が少しだけ明るくなるような気にさせてくれる青春の作品でした。出会った人に温かさをあたえれるそんな人物になりたいですね
Posted by ブクログ
横道世之介は愛すべき男である。
完璧な人間ではないし際立った個性があるわけでもない。けれど彼と出会った人の記憶には、柔らかく、そして確かに残る。人によって思い出のなかで彼が占める割合はそれぞれだが、世之介に出会った人生とそうでない人生では前者の方が少しだけ幸せに思える。
他人との出会いは自分を構成する大切な要素だ。もう会うことのない過去の人たちから受けた影響や思い出は、今も自分のなかに価値観として息づいている。人はみんな互いに影響し合い、さまざまな色を焼き付け合いながら生きていくのだと思う。
自分が通っている自転車置き場には、整理整頓をしてくれるおじさんが何人かいる。数年前の自分は忙しく、夜遅くに自転車を回収することが多かったのでおじさんたちと顔を合わせる機会はあまり多くなかった。
ある日、久しぶりに夕方のうちに自転車置き場へ行くと、ひとりのおじさんが迷わず自分の自転車を取り出してくれ「今日は早かったね」と声をかけてくれた。 ほんの些細なことだったが「誰かが自分を見てくれていた」という事実が当時はとても嬉しかった。その出来事をきっかけに、自分もおじさんのように人の小さな変化や日常に目を向けられる人になりたいと思った。
おじさんはそのあと仕事を辞めてしまったが、今でもその記憶と価値観は自分のなかに残り続けている。人は一人で生きているようでいて、実は多くの誰かと繋がっているのだと感じる。
世之介が他人に与えた影響とはいったいどんなものだったのだろう。 彼は図太く、能天気で、少し面倒くさがりで図々しいところもあり、同時にお人好しでもある。もし自分が彼の友人であったならきっと一緒にいるだけで肩の力が抜けるような安心感を得られたに違いない。 実在する人物ではないけれど、この本を通して彼に出会えたことで自分は胸の奥が温かくなるのを感じた。
Posted by ブクログ
長崎から大学進学のため上京してきた横道世之介くんの大学1年生の日々 自分の学生時代の記憶が刺激されつつ懐かしく楽しく読みました 寝てばかりの学生時代だけどこの時期に知り合った人、経験した出来事は確実にその人の芯の部分を作っているのだなと感じた 明日私は大学時代の友人に会う予定 10年くらいぶりかな この本を読んで更に再会が楽しみになった
友人と私の第一子は偶然にも同じ日に生まれた
そして明日は彼らのハタチの誕生日
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どこにでも居そうな、どこか抜けている大学生。サークルやバイトの日常生活を通じて、いろいろな人と出会い、楽しいことも辛いことも経験をしていく。とにかく普通の大学生のストーリーだが、徐々に不思議とそのヒトとなりに惹かれてしまう。こうやって人は成長し、人生を生きていく。
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先日読んだ続編が素晴らしかったので、改めてこの大好きな作品を再読。実に15年ぶりくらい?
特別なことはおこらなくて、ゆっくり、でも確実に大人に近づいていく。ささいなことがその後の人生を徐々に形作っていって。自分の大学時代もそう、そんな感じだった。もちろん、世之介と私の青春のエピソードは被らないのだけど。
続編もそうだけど、世之介はここぞの時にその場凌ぎの耳障りのよい優しさを言わない。いおうと思えば言えた、と文中で言いつつもあえて言わない。ここが、この作品のミソなんだと思う。次の瞬間、フワリと交わされなかった相手方は少し大人びた表情を纏う
世之介と並んでこの作品の祥子が大好きなんだけど(もちろん吉高由里子で脳内再生)、今回彼女のセリフが一番ささった。前回気づかなかったなぁ。
「大切に育てるということは「大切なもの」を与えてやるのではなく、その「大切なもの」を失った時にどうやってそれを乗り越えるか、その強さを教えてやることなのではないかと思う」
なるほどね。
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尊敬する年上の友人に、かなり前にオススメしてもらったのに、全然読めてなかった本のうちの一冊。とっても面白くて一気に読んでしまった。
まっすぐでおおらかで、憎めない世之介。どこにでもいそうで、実はなかなかいない、いい奴だなぁと感じた。続編も読んでみようと思う。
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田舎から上京してきた、19歳の横道世之介
大学一年生の話。
人に誇れるような何かがあるわけではないけれど、愛される人柄の主人公。
最後まで読んで、気持ちが沈むわけでも高揚するわけでもなく、じんわりとしました。
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僕は世之介のようになりたかったし、世之介のような友人がほしかった。夢の大学生活はどちらも叶わなかったけど、それはそれで楽しかったなと今振り返って思う。
高校生に読んでほしいな。
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この本を読んでいるとと、大学生時代に戻った感じ、1970 年前後の生まれの人には、読んでほしいかなぁ、大学生時代を思い出すかも。不思議と青春時代がよみがえって面白かった!です。
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特に劇的な何かがあるわけでもない、目に余る奇跡が起こるわけでもない。
長崎から大学進学のために東京へ上京して来た横道世之介、18歳。
そんな彼の東京での日常を切り取っていくお話。
悠々自適な大学生活、サンバ部への入部、風変わりな友との出会い、
そして彼の何かを変えたに違いないお嬢様との恋愛。
青春とは誰かが決めるものでもない。自分が見て感じて得たもの。
横道世之介という青年を観てると、そんな風にすら感じる。
あの頃、自分が見て感じたもの。
気付けなかった青っぽい春のゆらめき。
そんな甘酸っぱいものが溢れ出てくる、やっと思い出したかのように。
Posted by ブクログ
味わったことのない読後感だった。心を揺さぶられた。電車で読んでいなかったら泣いていただろう。
ずっと平和で穏やかで幸せな日々だった。世之介は本当に憎めなくて、だらしがないけどいいやつで、なんだかんだ優しくて、翔子ちゃんとお似合いで、二人はどんな大人になるんだろう、結婚するのかな、と思いながら読んでいた。
それがまさか、この結末なのか....
人生ってこうなのかな。みんな平等に時を重ねていくって思い込んでいるから、簡単に別れたりできるのに。ある日突然いなくなってしまうのかなあ。すごく切ない。
何故なんだ。行かないでほしかった。でも世之介ならきっとそうするんだろうなぁ。世之介らしい最期なんだろうなぁ。
大事な人には会いたいと思った時に会っておくべきだ、と思った。
やはり吉田修一は、一冊一冊が素晴らしい。大好きな作家さんだ。
Posted by ブクログ
大学進学のために上京してきた横道世之介の1年間。
世之介って、ずば抜けていいヤツってわけでもなく、だらしないところもあるごくごく普通の18歳。
だけど誰の懐にもスーッと入ってきて気を遣わせず、一緒にいると肩の力が抜けるような気安さがあります。
押しに弱くていろんな事をあれこれ引き受けるハメに。
正直この本どうしてこんなに人気があるのかな…と思いながら読み進めた中盤、読み味がガラッと変わりました。
大学生の普通の毎日がいきなり尊くなり、しょうもない出来事ほどキラキラしてくる、半端ない切なさ。
疎遠になっても「あいつ今頃なにしてるかな」「あんなヤツいたなそういえば」と、みんながふと思い出し笑いする世之介の存在感。
うーんわかるわかる!わかるからこそ、クーッ。
コレをやられてしまうとキツいんだよなぁ。続編読むの迷っちゃうんだよな。
Posted by ブクログ
私はもう40代半ばだが、ケータイもない、SNSもない時代の学生時代を懐かしく思った。
世之介はどこかぼーっとして抜けてるんだけど、憎めない可愛いやつ。
こういう友達がひとりいたら、きっと人生が楽しいだろう。
話の途中でそれぞれの登場人物のスピンオフが入るのだが、これがけっこうシュールで、別の作家さんが書いたのではないかと思うくらい世之介のいる世界とガラッと雰囲気が変わる。
終わり方には賛否あるみたいだけど、世之介らしいというか…私は良かったと思う。
Posted by ブクログ
横道世之介のように生きてみたい
ふわっとなりゆきでやってみてしまう、そしてその結果を受けとめられる
欲がないんだろうな
だからこそなんだか心に余裕があって、日常の幸せに気づけるのかな
Posted by ブクログ
オーディブルで聴きました。
やはり吉田修一作品はしみじみと良い。それぞれのキャラクターが知り合いにいそうなほど目に浮かんだ。
毒にも薬にもならないけど、いいヤツだったな⋯な知り合いは誰にでもいそう。そういう物語の主人公にはならなさそうな世之介が主人公のお話。
バブル時代だったせいもあるだろうけれど、みんなふわふわ生きている。肩パッド入ったバーガンディのスーツ着ていたんだろうな。それでもそれぞれに成長して、それなりの大人になっていく。祥子ちゃんはやはりポテンシャル高かったなと思う。
さくらは木綿のハンカチーフのその後のイメージ。幸せになっていて欲しい。
ドラマにするとしたら、世之介は満島真之介か神木隆之介か。。と想像していたけれど、高良健吾か。。あまりピンとこない。
Posted by ブクログ
大学生になり上京してきた横道世之介の1年間。特別な事は起こらず、描かれているありがちな大学生生活には懐かしさを覚える。日を経るうちに次第に東京の生活に馴染み、確実に大人に近づいていっている世之介は、ナチュラルでいて憎めない、いい奴だ。
途中、時々挿入される未来は、かなりシリアスな現実だ。読者は、そのシリアスな未来の姿を頭の隅に置きながら今の呑気さを読むから、惹きつけられるのかもしれない。
いずれにしても続編が楽しみ。
Posted by ブクログ
吉田修一さん著「横道世之介」
著者の「国宝」が素晴らしかったので著者作品で人気のこちらの作品も期待して購読。
書店にて知ったがこの「横道世之介」は三部作になっていたので全て購入してきた。
今回の物語は主人公、世之介18~19歳の東京での大学生活の一年間が描かれている。時代設定や大学生の青春譚というところでなんとなく村上春樹さん「ノルウェーの森」を彷彿させられる。
この世之介、とにかく笑えるエピソード満載で久し振りに面白可笑しい物語だった。
主に就寝前に読んでいたのだが笑って何回も眠気が飛んでしまった。
この作品が秀逸だと感じるところが著者の文章力にある。個性的な登場人物のキャラクター設定が素晴らしく、時に愉快に、時にシリアスに、心情や感情の描写が素晴らしい。
そうして本編から数十年後、世之介40歳での死も途中で描かれており、物語が大学一年生の毎月の進行中、その時分に世之介と関わった人達の未来が描かれており、回顧的に当時の世之介を振り返ったりする構成力。そうして彼の後の死を意識しだしてからは、彼の生前の軌跡を追っていくような
読み方に変化していく。お見事。
最後もとてもよかった。
「与謝野祥子以外開封厳禁」とされた封筒。
世之介の母親から世之介の死後に受け取る祥子。中に入っていたのは祥子には何一つ引っ掛かりを感じ得られなかった数枚の写真。その写真達は祥子と約束した世之介のファーストネガの写真達。
世之介の視点から覗かれたそれらの写真。
1枚1枚に世之介らしさが溢れていて、それらが世之介の視線の先の写しの様に感じてしまった。
そしてそれらを誰にも見せずに祥子との約束を守る世之介…
彼が祥子との約束のために封筒に入れて封をし開封厳禁と書いているであろう姿が想像できる。
そうして祥子。ファーストネガの写真を一番最初に見るという約束、それ自体を忘れてしまっているのだろう。
祥子…そりゃないだろう…
だけどそんな祥子だから世之介は祥子を愛したのだろう。
読者には写真の画像は見えなくとも世之介の「愛」はしっかりと見ることができた。
凄く素晴らしい物語だった。
続編も続けて読んでいきたい。
Posted by ブクログ
急に智世が出てきた時には、急に誰の何の話?と思ったが、読み進めて理解できた時に読み返したくなり、それによってさらに物語に惹き込まれた。
東京実家暮らし20代の私からすると、上京して来た昭和の男子大学生の気持ちや当時の時代背景の理解に苦しむところも多々あったが、自分との違いを感じたのも面白かった。
Posted by ブクログ
ああ、そういえば、そういう奴いたよねー。って忘れていたにもかかわらず、つい思い出話に口が止まらない。そうそう!こんなことあって、、って、思い出すと笑いが込み上げてくる。誰かの過去にスルッと通り過ぎた普通の青年。誰かの心にふわっと何かを残している青年。
横道世之介、どこにでもいる大学生。
たぶん、すれ違う青年の中にもこんな男の子がいるのだろう。どこにでもいて、でも唯一無二の青年の、どこにでもある素敵な青春小説でした。
Posted by ブクログ
大学一年生の一年間を、ひと月ごとに切り取った小説。
新学期のワクワクや、「自分も何者かになれるかもしれない」という期待を抱きながら、結局は大きく変わらないまま過ぎていく日々。そんな感覚にとても共感しました。
横道世之介の飄々としたキャラクターはもちろん、登場人物みんなの人間味に触れるたびに愛おしさが増していって、自分の大学生活まで大切に思える作品でした。
気づけば「ちょっと読むつもり」が一気読み。
心にやわらかく残る読後感でした。
Posted by ブクログ
長崎から上京した世之介、大学生一年目の物語。
スマホもSNSも無かった自分の学生時代を思い出す。
途中で未来の話が挟み込まれ良いアクセントになっている。
友達、彼女、そして自分の未来。
それぞれの意外な一面が垣間見える。
話に深みを持たせている。
Posted by ブクログ
そういえばあんな人やこんな人がいたな、と大学時代に出会った人たちを思い出した。
特別なことは起こらないけど振り返ってみれば特別な、世之介の大学での1年が描かれている。
個人的にはラストは違う形がよかった。
日常系のこの物語が郷愁を誘うのは、やっぱりラストがあってこそなので、ちょっとずるい気がするし、ありがちな話の持っていき方に感じてしまった。
過去と現在の話が交互に語られて辻褄が合っていくのが面白かった。
Posted by ブクログ
上京した世之介の一年を描いた作品。
何か、特別な物語があるかというと、日常系といえるのだけど、地方から上京した大学生が過ごす一年がいきいきと描かれている。
ある時期の大学生って、こんな生活してたよなあ、と懐かしく感じました。
そんな中で、平凡だけど、憎めない世之介と関わった人たちの回想がときどき挿入される。彼らは、世之介との日々を懐かしむ。
そのことで、読者もまた、現役の青春物語というよりは、過ぎ去ってしまった青春物語として本作を読み、そこに郷愁を感じるのかも知れません。
Posted by ブクログ
懐かしい昭和の学生時代を思い出した。
AI、スマホ情報化で便利な世の中になったけど、あの頃を振り返ると時間がゆっくり流れていたなぁ…と。
世之介がそう感じさせるのかも。
引き続き、2部、3部作品へと読んでいきたい。
Posted by ブクログ
小説「悪人」のあの主人公(祐一)と世之介は、根っこはきっと同じなんだよな。
ただ、何かものごとに対して無理がないだけで。
何かを良くするも悪くするも自分次第(?)。
あとは、少しの運…
いや、だいぶ運がよい、欲がないからかね。
周りがおもう方へ自から流れて行く。
その時人は、自分を信頼してくれている人を知り。
世之介の真剣さに幸せな自分を見るのかも。