吉田修一のレビュー一覧
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吉田修一の描く群像劇はやはりピカイチだと思う。
とても素敵な作品だった。
台湾に日本の新幹線が走る。
商社の台湾支局に勤める春香と日本で働く建築家・人豪の巡り合い。
台湾で生まれ戦後引き揚げた老人・勝一郎の後悔。
「今」を謳歌する台湾人青年・威志の日常。
新幹線事業を背景に、
日台の人々の国を越え時間を越えて繋がる想いを色鮮やかに描く群像劇。
出てくる登場人物たちが皆何らかの形で台湾新幹線に関わっている。
これは非常に高等なテクニックだとも思った。
何気ない日常を描き、何でもない台湾人青年に至ってもそういう流れになる。
群像劇で一番難しい繋がりを、いとも簡単に描いている点は流石の一言。
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喜久雄と俊介の人生が対照的でありながらお互いを補うように、まるで太陽と月のように描かれている。映画を観ておらず歌舞伎にも疎いが、ありありと映像が目に浮かぶような、特等席で芝居を見ているような芸の凄みを見た感覚になった。
「…見るもん、やるもん、何から何まで新鮮で、歌舞伎が好きで好きで、稽古がおもろうておもろうて…」
「…歌舞伎が憎くて憎くて仕方ないんでしょ。…でも、それでいいの。それでもやるの。それでも毎日舞台に立つのがあたしたち役者なんでしょうよ」
芸に魅了された者と生まれた時から芸に生きる道を決められた者、この文章にすべてが凝縮されているのではないかと思う。花道篇を読むのが楽しみ。 -
Posted by ブクログ
当初想像していたのとはだいぶ違う内容だった。それは勿論良い意味で。
心に傷を負った大学院生の岡田一心は、
伝説の映画女優である和楽京子こと石田鈴の自宅で荷物整理を手伝うことに。
引退した今なお美しい鈴さんの胸に秘められていた波瀾万丈な映画人生、
原爆が奪った運命と大切な人たち。
その過去に触れるうち、一心の胸にあたたかな光が灯る。
吉田修一作品で言ったら横道世之介に分類される読みやすさと温かさであった。
何より、鈴さんの生きた人生が本当に胸に刺さる内容であった。
ミス・サンシャインに込められた皮肉、
そんなことにも気付けなかった己の無知さ加減も含めて。
鈴さんという存在によって、
主人公 -
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ネタバレ直樹の章の最後で、全くジャンルが異なる本になる。
共同アパートで暮らす5人を丁寧に描いた群像劇のように進んでいく。
サトルが新たに入居して不穏な空気になるがそれがミスリードのまま終わると思いきや、まさかのそれをオチに持ってくる衝撃の展開。
読んでいて全く予想できなかった、ただこの作品のジャンルがとても難しいと思った。
オチありきならミステリーになるのだが、それだとオチの衝撃が無くなってしまうだろう。
しかし、純文学と言われればオチによって全く異なる性質に変わるので純文学ではない、故に非常に難しい本の紹介になる。
紹介する人の技術が問われる小説なのかもしれない。
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やはり吉田修一作品すごいなあ。
いったい悪人とはなんなのか。見栄を張り平然と嘘をつくものなのか。殺しはしないが人の心を弄びなんとも思わないものなのか。追い詰められて人を殺すものなのか。愛を貫いて法を破るのが悪人なのか。知りもしないで外野から批判する者たちなのか。
2人にとっては逃避行だったけれども、孤独な者同士が初めて繋がる居場所だったんだろう。究極に切ない。
長崎弁で書かれているからか素朴さを感じながらもかえって剥き出しの感情が刺さってくる。
「その人の幸せな様子を思うだけで、自分までうれしくなってくるような人たい」という父親のセリフや「祐一、逃げたら駄目よ。怖かやろうけど、逃げたら駄目よ。 -
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昨年の夏に映画版を見た。
三時間超の長丁場。良かったことは間違いなく良かったのだが、それでも後半はなんだかダイジェスト版を見せられたように感じてしまった。
原作は上下巻本なのだから、これは絶対にもっと書き込まれているはずだと確信できたので、一度きちんと読んでみたいと思った。
最初に意外に感じたのが敬体――「です・ます体」で書かれていたことだった。
なぜこの文体を選んだのか。
しかも、その語り口は“神の視点”ではなく、何やら人格を感じさせるものがあり、それが若干ノイズのようにも思えたのだ。
著者は、自身黒子として歌舞伎の現場取材を重ねた上で本作の執筆にあたったという。その取材経験 -
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ネタバレ会社の同僚たちが次から次へと映画『国宝』を観に行きました。映画を観て小説を読んでも小説を読んでから映画を観ても良いよと言われたのですが、映画を観る前に小説を読みます。
読みながら喜久雄のイメージは横浜流星だと思ったのですが違いましたね(笑)。読んでから映画のキャストを見ました。
語り口調で話が進むのも俯瞰的で良いです。
喜久雄はいい人に恵まれましたね。
いつでも喜久雄の味方になってくれる幼馴染の徳次、愛情深い父の後妻のマツ、喜久雄を目の敵にしているように見えるけど実は…な体育教師の尾崎、そして、喜久雄を引き取って稽古をつけてくれた歌舞伎役者の半二郎。半二郎の息子の俊介も喜久雄をライバルとして