吉田修一のレビュー一覧
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香港、上海、ソウル、東京、4つの都市で暮らす若者を描く短編集。元は『オリンピックにふれる』というタイトルだったものが改題されて『昨日、若者たちは』になっており、4編それぞれの若者たちの人生にオリンピックが何らかの形で「ふれて」来るのだけど、その触れ方や距離感は四者四様でオリンピックを射程圏に目指す距離にいる人もいれば、周囲の人の間接的な視点で触れる人もいて、それは読者である私たちもきっとそう。私にとっては東京五輪もまったく近さを感じないものだったが、自分の人生に何らかの形で触れたという人もいたのでしょう。そして改題されたタイトルでは「昨日」という言葉が用いられて日常が昨日から今日、そして明日へ
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オーディブルで聴きました。
やはり吉田修一作品はしみじみと良い。それぞれのキャラクターが知り合いにいそうなほど目に浮かんだ。
毒にも薬にもならないけど、いいヤツだったな⋯な知り合いは誰にでもいそう。そういう物語の主人公にはならなさそうな世之介が主人公のお話。
バブル時代だったせいもあるだろうけれど、みんなふわふわ生きている。肩パッド入ったバーガンディのスーツ着ていたんだろうな。それでもそれぞれに成長して、それなりの大人になっていく。祥子ちゃんはやはりポテンシャル高かったなと思う。
さくらは木綿のハンカチーフのその後のイメージ。幸せになっていて欲しい。
ドラマにするとしたら、世之介は満島 -
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昔台湾に旅行したときのことを思い出しながら読んで、また台湾に行きたくなった。
食べ物、自然、天気など、台湾の空気感がイメージできる豊かな描写。
台湾に旅行したとき、私は台湾語ができないが、現地の年配の人たちは日本語を喋れた。
それが日本の統治があったから、ということは知っていたが、そして台湾が親日ということも知識としてはあったが、当時から現在まで、日本と台湾がどういった関係性なのか、私は知らない。
台湾人から見た日本と、日本人から見る台湾、その乖離があることが示唆されていた。
台湾と日本の歴史的関係をしっかり学んでみようと思った。
つまり主人公の奮闘や恋愛よりも、おじいさん世代の話が -
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ネタバレ本当は誰かを信じることはできない
思いどおりにいくことなんてない
どんなに大切な人でもそのひとを知ることはできない
優しさや親切も苦労も
例え言葉にしたとしてもそれは想った通りに伝わらない
愛子はぐちゃぐちゃになって前に進み
田代をつなぎとめた
優馬は逃げまくったけど
偶然に直人の想いと最後を知れた
辰哉は田中を殺し、泉は辰哉のために行動した
愛子と優馬の比較をしてしまいそうになるけど
相手を想い信じることを必死にやろうとしたことに違いはない
辰哉が感じた怒りと、田中が壁に書いた「怒」
田中の怒りとはなんだったのか
心が壊れた人間が怒りを感じることができるのだろうか
自分への怒りなの -
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吉田さんの小説は、観客席から舞台を観ているようだ。
それだけストーリー構成がきめ細やかで、頭の中に登場人物がそれぞれ浮かびあがり生き生きと動いている。
作者が長崎県出身であるからこそ、原爆犠牲者について反戦についての強いメッセージを感じたし、戦後の日本人の底力が作っていたパワーも1人の女優の人生を通して感じることも出来た。
ハリウッドでは「ミス•サンシャイン」と呼ばれ、それも原爆を連想させることから本人は納得いかなかった。
強くあるということは、美しい。
しかし辛くてさびしい時、「膻中」というツボを温めてゆっくりと押してみることも知っているから、更に美しいのだと思った。
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ネタバレ国宝から悪人へ、私にとっては吉田修一さんの2作品目。
物事のシロクロなんてそう簡単につけられるもんじゃない。同じ一人の人間であっても時間の経過やその過程で受け取る情報によって変わることもある。そんなことを改めて感じさせてくれる作品だった。日々メディアで目にするアレコレも、きっとその一部の切り取りでしかないのだろう。
祐一の「どっちも被害者にはなれん」がただただ切なかった。そこで加害者側を選んでしまう祐一のそれは優しさとは違うようにも思えて、何とも言えない気持ちになった。
悪人と国宝、全然違う世界のお話なのに、どちらもページをめくる手が止まらなかった。
次は怒りへ。そして悪人の映画版も観てみよう -
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横道世之介を読んだのはもう、随分前だけど、世之介のことがとても気に入り、吉田修一の中ではベストワンだ!と思っていた。しかし、内容を全く覚えていない。読み始めてもなかなか思い出せない。それもそのはず、世之介と彼を取り巻く人々の日常がほのぼのと綴られているだけの小説である。まるで、サザエさんやちびまる子ちゃんのように。けれどもこの小説にはそんな、普通と言われる人は誰も出てこない。けれども、彼らの織りなす1日1日がとても愛おしい。セリフの一つ一つに幸せを感じる。結局、普通の人々なんて、現実世界にも存在しない。それでも、世之介たちの日々からは幸せのカタチが見える。この世之介ワールドにいつまでも浸ってい