吉田修一のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
数年ぶりに再読。とにかく読みやすい。
オムニバスのなかで描かれる主人公たちの自意識は、共感できるものもあれば、到底できないものもあり、さまざま。
「女たち」とタイトルにあるが、どちらかというと、男の側に軸足がある。「女たち」は、男の自意識を作品に昇華させるためのテーマでしかない、と感じた。
こんなこと言ったら身もふたもないが、男の自慰のような作品だと思う。
自分をクズでダメでと自虐しつつ、でもその自分自身と、「自分自身からの逃れられなさ」全体を愛しているような。そんな作品。
人生の中で女たちとすれ違う男たちの肥大した自意識。その自意識に、読者は自分を重ね、気持ちよくなるのではないか。
読みやすい文体で整えられているが、男が自分を慰撫するような手触りの作品だと思うので、好みじゃない人も多いだろうと思う。
でも自分は読んでて気持ちよくなってしまった。
特にCMの女が好きだった。キャラクターが何を言いたいかわかる、と思ったので。
文庫版の解説は、あまり良くないと思った。この作品を読んで、「女性が描けていない」という感想を持つ人がごまんといることくらい、誰にだって予想できるだろう。
そしてこの解説に良くなさを感じることで、この作品そのものに対する感じ方も変わるというか、没入していたところから急に、2026年の現代に引き戻される感覚があった。そういう意味では優秀な解説と言えるのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ風呂上がりの火照った肌に鮮やかな刺青を躍らせた猛々しい男たちが集う三村の家。父親を事故で亡くし母親の実家に暮らし始めた7歳の駿とまだ幼い弟の悠太。
叔父の文治が刑務所に入っている間、家を仕切っていた正吾。母親の千鶴を家の離れに連れこむ姿を何度も見ている。
ある日駿は古ぼけた離れの一隅に幽霊がいることに気づく。祖父母に幽霊の話をすると
ヤクザ稼業に手を染めることなく女たちを連れ込むことなく絵を描き離れで首を吊って死んだ母親の弟、哲也の存在を知る。
徐々に幽霊との会話の内容の全てを話さなくなった駿はバスケ部でひとつ年上の石倉にいじめられる。狭い街では三村家の人間と関わりあいたくない者も多いことを知った小学5年になった駿。
ようやくバスケからも解放され美術部に入った中学生時代。
別れ話の末に父親が母親を刺し殺し、祖父と暮らしている同級生の明生と部活に使う写真撮影の約束をしていた駿。
刑務所からでてきた文治に駆り出され、祭りの出店の番をさせられ学校を休んでいた。
言った所で自分の意見は通る訳もなく、しかし明生がわざわざ来てくれたことに羞恥の気持ちも芽生え素っ気ない態度になる。
ある時父親がわりだと思っていた正吾が三村家と組を捨て神戸へ姿を消した。
祖父は呆けて亡くなりずっと文治の内縁の妻として祖父の世話をしてくれていた奈緒も葬式が終わると家をでていった。
しばらくして母親の千鶴も正吾を追って家をでていく。だか正吾はヤクザの抗争で殺されてしまう。
高2で中退した駿はアルバイトに明け暮れる。そんな時に再会した梨花と東京にでるために二人で金を貯める。
今度こそ自分で道を切り開くつもりでいたのに弟の悠太に母親の千鶴を一緒に迎えに行って欲しいと懇願される。
大学生になった弟の悠太は祖母の三回忌の為に東京から母親と兄の駿が暮らす実家に帰省する。
母親が戻ってきてから兄は仕事もせずに離れに籠って絵を描いているらしい。
最後の章だけは弟の悠太目線になっていて死んだように生きている自堕落な兄、駿を軽蔑しつつ母と兄を見据えるつもりがあるような終わり方だった。
駿が不憫でならない。ずっと世間からの目と母親に振り回されあの夏まではずっとここをでていくつもりで生きてきたのに。
亡き叔父の哲也に姿もやることも似てきた駿が悲しくもあり怖さもあった。
-
Posted by ブクログ
吉田修一は天才すぎないかい。
作品の幅が広すぎる。
そして、奥深かったり重かったり軽かったり。
自由自在。
ほんとにすごいの言葉しか出てこない。
今回、この作品を3部作と知らずに、2作目から読んでしまいショック!笑
今から1作目と3作目も楽しみ!
無理な設定もあるものの、
どこかリアルに思える筆力の高さ!
風間がAN通信に入ったことだけは、腑に落ちなかったものの、
それぞれのキャラクターが生きていて
もう中盤からは一気読みでした。
福祉人だっただけに、孤児を使うAN通信は許せませんが
どんな世界にいても
生きることに意味がある。
そんなことを思った作品でした!