吉田修一のレビュー一覧
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「普段レストランで態度の悪い店員に当たっても世之介は苦情を言うことがない。どちらかと言えば、そんな店に入った自分に運がなかったんだと考える人間である。」(p.242)
「あの、自分で言うのもあれだけど、俺、みんなから『お前は隙だらけだ』って言われますよ」(p.373)
「大切に育てるということは『大切なもの』を与えてやるのではなく、その『大切なもの』を失った時にどうやってそれを乗り越えるか、その強さを教えてやることではないかと思う。」(p.402)
「いろんなことに『YES』って言ってるような人だった・・・もちろん、そのせいでいっぱい失敗するんだけど、それでも『NO』じゃなくて、『YES』って言ってるような人」(p.413)
「ああ、そうか、と世之介は思う。誰かを傷つけたことがないんじゃなくて、傷つけるほど誰かに近づいたことがなかったんだと。」(p.426)
「『ダメだ、助けられない』ではなくて、その瞬間、『大丈夫、助けられる』と思ったんだろうって。そして、そう思えた世之介を、おばさんはとても誇りに思うんです。」(p.467)
優しすぎる世之介が、将来断固たる行動を起こすまでになる。どのような経緯を辿ったのか?続きが読みたくなった。 -
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ネタバレひりひりする恋を描く、とびっきりクールな青春小説。
「熱帯魚」
大工の大輔は子連れの美女、真美と同棲し結婚を目指すが、そこに毎日熱帯魚ばかり見て過ごす引きこもり気味の義理の弟の光男まで加わることに。奇妙な共同生活の中でふたりの間には微妙な温度差が。
「グリーンピース」
いつだって自分の気分に任せて、彼女の千里振り回してきた草介。友人の鷹野と彼女の椿さん。椿さんの品の良さと千里の興味のない映画の話が出来る唯一の存在。
仕事が決まらないことで大喧嘩し、千里が出ていった。
鷹野から来た電話で、千里との浮気を告白される。それ以前から椿さんと二人きりで映画鑑賞に行っていた草介。
浮気を知った椿さんと草介。椿さんが罪悪感に苛まれる程、椿さんが好きではないけど夢中になって好きだ好きだと口説く草介。
二人の行方は。
「突風」
会社の有給を使い突然、リゾート地で駆け込みアルバイトを始める新田。
無愛想な海辺の民宿の主人の下で働きはじめるが、そこには何をやらせても不器用過ぎて怒鳴られまくる妻のすみれも同居していた。
2階の窓からいつも寂しそうに海辺を見ているすみれの頭を優しくなでる新田。
どこか子供っぽさの残るすみれと、どんどん距離が縮まっていく。
「逃げればいいのに」砂まみれ新田の車をこっそり洗車してくれていたすみれを夜のドライブに誘う。
高速に乗りどんどん民宿から離れて行く。
「こんなに簡単に逃げられるのに」車はついに東京へ。
付き合う直前が一番盛り上がる。
子連れ美女の子供も、連れ子同士の再婚で二年間だけ兄弟だった引きこもりの弟も全て受け入れてる俺カッコいいが透けてみえてる大輔。
思い通りに操りたい俺様だった草介。奪う程好きでも無いのに椿さんを口説く。
挙げ句は思い通りだったはずの彼女千里に浮気され、許す。いや許せないと悶々。
最後の新田は散々、思わせ振りしておいて人妻をまるで逃避行するようにドライブに誘うも最後には・・・・。
プライベートでかかわったら不幸な未来しか見えない男達。
私がイメージしていた青春小説なんて爽やかなものじゃないけれどじっとりとした背徳感が後をひく感じ。
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重たいテーマの本が続いて、無性にエッセイが読みたくなった。そして久しくエッセイの本を読んでいないことに気づいた。誰のを読めばいいのかもわからなかったが、たまたま見つけた吉田修一さんの本作に吸い寄せられた。タイトルも気になったし、これまで数作読んで、吉田修一さんのファンになり、人柄に触れてみたいと思ったからだ。
結果から言うと、ドンピシャだった。ANAの機内誌に連載していたとのことで、旅もののお話が多いのがよかった。情景描写を読んでいるだけで行ってみたいと思わせてくれる。それでいて、日常のありふれたきまづい瞬間などを切り取っていて、しかもそれがちょっと笑いそうになったり、どうなっちゃうの?と思わせたりする筆力はさすが!新作を含め、まだ読んでいない作品はいっぱいあるので楽しみでならない。 -
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ネタバレ読み逃していた初期の作品を読む。
「日曜日のエレベーター」
30歳の渡辺。
生きるのが下手、というか雑というか。
「日曜日の被害者」
女友達からの電話に
3人で出かけた旅行先の出来事が思い出される。
「日曜日の新郎たち」
東京見物に来る父親を出迎える息子。
2人の微妙な関係がバランスよく描かれる。
「日曜日の運勢」
実家暮らしの兄と、何をするにも煮え切らない弟。
兄弟の会話に引き込まれる。
(連作短編集の要といえる幼い兄弟との関わりも深くなる)
「日曜日たち」
東京で働く女性。
恋人から受けたDVを自立支援センターに相談。
そこからセンターで働くことになる。
成長した兄弟との再会も描かれている。
それぞれのタイトルがいい。
幼い兄弟を軸に、物語が進むのも良かった。 -
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芸術選奨文部科学大臣賞、中央公論文芸賞をW受賞、
作家生活20周年の節目を飾る芸道小説の金字塔。
1964年元旦、長崎は老舗料亭「花丸」――侠客たちの怒号と悲鳴が飛び交うなかで、この国の宝となる役者は生まれた。男の名は、立花喜久雄。任侠の一門に生まれながらも、この世ならざる美貌は人々を巻き込み、喜久雄の人生を思わぬ域にまで連れ出していく。舞台は長崎から大阪、そしてオリンピック後の東京へ。日本の成長と歩を合わせるように、技をみがき、道を究めようともがく男たち。血族との深い絆と軋み、スキャンダルと栄光、幾重もの信頼と裏切り。舞台、映画、テレビと芸能界の転換期を駆け抜け、数多の歓喜と絶望を享受しながら、その頂点に登りつめた先に、何が見えるのか? 朝日新聞連載時から大きな反響を呼んだ、著者渾身の大作。