あらすじ
吉田修一からの挑戦状。ノンストップ長篇!
ビール会社課長、明良。都議会議員の妻、篤子。TV報道ディレクター、謙一郎。
それぞれの悩みや秘密を抱えながら、2014年の東京で暮らす3人が人生の中で下した小さな決断が驚愕のラストへとつながる――
「週刊文春」連載時から話題沸騰。
吉田修一史上、最も熱い議論を呼んだ意欲作を文庫化。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
吉田修一にハマって読み続けた中の〜一冊。
悪人〜横道世之助、
国宝〜なんてすごい人なんだろう!苦しみ、悲しみ悶えながら読んだ。
吉田リアリズムで説得力抜群
なんせ、あちらこちらのセリフに痺れる
読んだのは何年も前
それでもこのくらいのことは思い出す。畏敬の念は拭えない。
好きダァ。
理想は何度も読みたい、現在読書数を目指してるので。
好きな作家ベスト10の一人。
Posted by ブクログ
吉田修一を読むのははじめて。日常に潜む些細な不穏を描くのが巧いなァと読み進み、最後の章で仰天した!まさかの?!着地点も余白たっぷりで読後の余韻もまた愉しき一冊。
Posted by ブクログ
これ週刊文春で連載してたのー!? それでこの内容!?と衝撃を受けた。リアルタイムで読みたかった。けどそれだと一気読みができないからな…。
最終章はまさかの設定で、村田沙耶香の『消滅世界』(違和感ありでイマイチだった)を思い出したが、こちらは同じくSFのような設定ながら違和感なくストーリーに入り込めた。
私の勝手な感想だと、吉田修一って角田光代を男っぽくしたような印象。淡々とした描写で人間の心情をあぶり出し、日常と事件との境界線をあいまいにさせる。
ちなみに、登場人物の多さを指摘する感想も見られたが、白石一文のアレを読んだところだったので、それに比べれば問題なし! でした。
Posted by ブクログ
吉田修一の見せるもうひとつの世界。
リアル。現実から少しずつずれていく。
このひとの描く世界は手を伸ばすと触れそうで、人物が重厚で魅力的。
主人公のひとりにおいてさえも、見えているものだけでなく、その奥に隠されているものがあり、読み進めてハッとする。
Posted by ブクログ
春、子供のいない夫婦が預かっている、海外赴任中の姉の高校生の息子が、彼女を妊娠させる。夏、市議会議員の妻が、夫の収賄を知って苦悩し、秋、数カ月後に結婚を予定している順風そうなテレビディレクターが、彼女を殺してしまう。そして冬、時代は一気に70年後に飛ぶ。冬の視点者は、「サイン」と呼ばれる、特殊な生まれ方をし、通常の人間とは区別されて生きている男。その「サイン」は、秋、テレビディレクターが追いかけていた研究者が作り出したものである。サインの妻が、春の夫婦の血縁者であったり、もう一人のサインの夫が、夏の市議会議員の血縁者だったりすることが、だんだんわかる。70年前の出来事が、影響している世界。あの時の選択は、間違いだったのか。
初読みの時にはあまり印象に残らず、忘れていたけれど、今回、おもしろくてのめり込むように読んだ。週刊文春連載だったらしく、「セウォル号沈没事件」「都議会セクハラヤジ問題」「iPS細胞」「香港の雨傘デモ」など、当時、世間を騒がしていたニュースが、そのままの形で出、正しいとは何かという問いかけが、ちりばめられている。そして、その影響を受けた70年後は、人間がストレスから解放された社会であり、しかし、その下で、犠牲になっているものがある。
どうということのない夫婦の生活が、吉田修一が書くと、面白いのはなんでなんだろう。春、子のない夫婦のもとに届いた、差出人不明の酒、米の回収は、他の人の感想を読むまで、気づかなかった(ちゃんと書いてあるんだけどー)。
良かった比喩。朝、泥酔状態の若いホスト三人が歌舞伎町のマンションに帰り、登校する小学生が出てくるシーン。
「兵士が野戦病院に担ぎ込まれるように彼らが消えると、代わりに叶音ちゃんが元気よく飛び出してくる。」
Posted by ブクログ
まさに橋を渡るような読書体験だった。春、夏、秋と橋を渡った先には奇妙な冬の景色がある。それは虚構に違いは無いが、我々自身の選択によってはある意味有り得る未来図とも言える。
初めの三篇は極平凡な純文学的作品に見える。iPS細胞、東京都議会野次問題、雨傘革命、マララ・ユスフザイ、東京オリンピック等等、当時としてはタイムリーだったのだろう、リアルと地続きの距離感と世界観で物語は展開する。日常に潜む言語化し難いモヤモヤを抉りながら。人間ってこういうところあるよね、みたいな。それぞれの掌編の繋がりは稀薄で、態々一つの作品としてやる意味あるのかな、なんて考えたけれど……。
最終章「そして、冬」に於いて物語は一気に七十年後の未来へと飛躍する。そこはユートピアともディストピアともつかない「不感の湯」のような妙な心地のする世界だった。まるで承前三篇の答え合わせのようだが、果たして正しく解答は導き出せたと言えるだろうか。
文明は発達し、寒暄を忘れ、もはや不感症のようになってしまった冬を抜けると、再び祝福の春が巡ってくる。
善人なおもて往生を遂ぐ。況や悪人をや。独り善がりの正義は時として取り返しのつかない過ちを犯す。然しそんな過ちを回避する為には、自分の信じる正しさを貫き、時に世界すら敵に回して戦う勇気が必要にもなる。正義とは利己や保身ではなく、利他と公共の為に戦う力だ。
而して戦う為に必要な武器は殺意でもミサイルでもない。一冊の本が、或いは一本のペンがあればそれだけで人間は戦える。そうして戦う人は皆、子供も教師も関係無く、一人の気高い兵士だ。
本書を読み了え、今一度橋を渡り、虚構から現実へと帰還を果たせば、橋の向こうには違う景色が見えていることだろう。
Posted by ブクログ
前半と後半で話が全く違う作品
前半の 日常を丹念に描く作品から
後半のSFの切り替えに驚く
どの時代も どの歴史の1ページでも
どこでも 人は迷いながら
生きていくのだと 思った
Posted by ブクログ
ネタバレになるけれど、2015年から70年後の世界が描かれていて、構成といい、文章といい、とても面白かったけども、わたしが経験した70年後の世界はもっと面白いのかも。
つまり今、82だから12の時から、現在70年後の世界にいるってこと。
12歳の時(1953年)は今普通に使っているものは無かったか、初期段階。
例えば、テレビジョンの放送が始まって、ブラウン管のでかい箱を駅頭で見上げた記憶。
電話は黒いダイヤル式、冷蔵庫は氷で冷やし、たらいで洗濯(14歳ころ一層式洗濯機ハンドル絞りつきになった)などなど...
人間関係の世界はっていうと、それも変遷だ。社会機構、体制様変わり。
LGBTSなど無いような世界、いや闇の中か忖度の世界だった。
セクハラはあった、けど、それも闇の中か忖度の世界だった。
離婚が少なかったけど、夫婦関係も問題が内包してだけ、などなど...。
しかし、ゆっくりと浸かってきているので、自分がどの位置にいるか自覚しないだけ。
そう、すっかり慣れている自分にびっくりだ!
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世間の評判ほど言うほど悪くはなかった印象。
前半3部はまさに吉田修一といった感じでスイスイ読み進められる。
問題の最終章、
まさにフロム・ダスク・ティル・ドーンばりに、
一気にジャンルが変わっていく。
ここで躓くということなのだろう。
だが、過去とされる所謂現代の物語も引き継がれ、
さらにユートピアともディストピアとも言えない未来を
見せられ、それがやけにリアルに感じたのは確か。
欲を言えば、もう少し伏線の回収をしてもらいたかったとこだが、
それは愛嬌。物語に蛇足はいらない。そういうことだ。
Posted by ブクログ
新宮明良・歩美、赤岩篤子・広貴、里見謙太郎・薫子の3組が絡むエピソードが展開し、最後に70年後の世界が出現するという奇想天外なストーリーだが、楽しめる著作だ.佐山京二教授の研修成果が実現されて、サイトと呼ばれる人種が出現している未来の世界が、なんとも奇妙な感じだが、実現性も感じられる.謙太郎が対馬で太鼓を叩く場面が何故か印象的だった.
Posted by ブクログ
あの『悪人』や『怒り』と同じ系統の群像劇を期待して読み始めたら何だか違う。現代を舞台にした3編はそれぞれにつながりがなく、最後の4編目で時代は2085年に。私の苦手なSFチックな話になっているという。
現代の3編でそれぞれの主人公やその周囲の人は、ちょっとした悪事や倫理・正義にもとる行動をとるかとらないかという狭間におかれる。「橋を渡る」ってどういう意味だろうかと思うけど、人間として越えちゃいけないものを暗示しているんだろうかと思いながら読んだ。
4編目の未来でそれまでの3編がつながるんだけど、かといってよかったとも悪かったともいえない読後感。いやいやどっちかというと「そして、冬」ってだけあって、よくない未来。かろうじて、1編目でさわやかな若カップルだった孝太郎と結花が年を重ねた2085年にサインの響と凛にかけた愛情が救いかな。
吉田修一のうまさって現代をリアルに描くところや多様な立場の人の機微を描けるところだと思っているので、未来まで描かなくていいかな。
Posted by ブクログ
主に3人の登場人物目線の話が章ずつ進むというプロット自体は解説にも書かれている通り吉田修一お得意のもの。ただ、各章での展開がいまいちなように感じながら読み進めて、最後4章でどう絡めるのかと思ったら予想の斜め上の展開だった。賛否両論ありそうな展開だけど個人的には前半三章の展開的にこのまま普通に終わらせるだけだったらつまらないよな、と思っていたので予想外の展開なのは良かった。
この作品には現実に起こったニュースがいくつも登場する。登場する、というか前半三章においてはそれぞれの生活の中でけっこうなウェイトを占めていたり、事件の関係者だったりする。吉田修一には『犯罪小説集』という実際のニュースを元にして作った連作小説があるけれど、この『橋を渡る』はお話の中に都議会ヤジ問題とかips細胞とか実際にニュースを賑わせた話題が実際の出来事として出てくるせいかより居心地の悪いような感覚があって、その感覚やニュースに対する吉田修一的な問題提起なのかなと感じる部分もある。特に第4章でとある登場人物の口から語られる「ユートピア、ディストピア」にまつわる発言など。「ニュース」と私たちの日常の境を私たちがとう受け止めているのか、ということを問いかける提起とも感じるのですよね。
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一見バラバラの3人のそれぞれの人生が、最終章で集結する。
コロナ前の未来予想図。
未来は現在より良くも悪くもなっていなかった、という言葉が印象的。
コロナ後、どんな未来予想図を描き出すのか…
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独立したエピソードと思いきや、それぞれが交錯するとは!それも同時代での人の繋がりではなく時代を超えた結びつき。タイムトラベラー系は苦手なのだが今回は楽しく読めた。他作品も読んでみたい。
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様々な人のストーリーが混ざって最後のラストにつながる構造。
人物一人ひとりに重みがあった。
許せること、許せないことだけが人生じゃないよなと思わされた。
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3.0 最後の伏線回収に向けての物語。伏線張りすぎかなあ。売れなくなっても聴き続けるロックバンドのように読み続けたい作家。読んだ方が良いかと聞かれたら、読んだ方がいいと答える。
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各章に主人公がいて、その目線から出来事や家族や友人が語られる。
ささいな事もあるし、深刻な事も。
そして各章でなんだか中途半端に終わった問題が
最終章で回収される。
回収の仕方がSFチックな事に好き嫌いは
あるだろうけれど、私はこのお話しのSF味は
好きだと思った。
ただ、もっと回収して欲しかった。
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3章までは吉田修一の絶妙な表現力含めて楽しく読めたけど、4章目で脱落。ちょっとシチュエーションが吉田修一の文体に合わない気がして最後まで読むことが出来なかった。載せたメディアの性質もあったと思うけど残念。各章がつながらなくても良いので、この雰囲気のまま最後まで書き進めてもらいたかった。
Posted by ブクログ
妻と暮らすサラリーマンの男性、都議会議員の夫を持つ女性、結婚を間近に控えたテレビのディレクター。彼ら3人がそれぞれに主人公。
画廊に勤める妻に新人画家が執拗につきまとったり、議会での性差別的なヤジ問題に巻き込まれたり、新しい生殖技術の取材に立ち会ったりなど、生活や仕事の一環で携わったことが何らかの形で未来に影響していく。
感情の微妙な部分を描くのがやっぱり上手いなと思い、それだけでまあまあ満足していたのだが、最終的にはSFになってびっくりした、
この作家さんはリアリティがある作品の方が好き。
Posted by ブクログ
実在の事件と微妙にリンクさせながら語られる少し不穏な雰囲気のかある3つの物語を読んで、さあ最終話でどう締めるのかと期待していたら、なんとまあ。。。
斬新ではあるものの、好みではなかった。
Posted by ブクログ
第3章の最後から「えっ!?」ってなって、第4章は「え、えぇっ!?そうくるか!?」って感じ。
吉田修一の価値観は個人的にとてもしっくりくる。
Posted by ブクログ
まさかのSFで驚きと残念感が、、、。
時間を置いて読んだせいか、冬の章で、この人誰だっけ?ってなるので、一気に読み進めた方がよいかも。
最後の章以外は、さすが吉田作品って感じ。
Posted by ブクログ
ビール会社の営業課長・明良、都議会議員の妻・篤子、テレビ局の報道ディレクター・謙一郎。各々が人生の中で下した小さな決断が驚愕のラストにつながる。
多少の不自由はあるが、決して不幸な暮らしはしていないほとんどの現代人。私一人ぐらいなら、他人にバレなければ、ちょっとだけならと、些細だけども非道徳的行動を各自が起こすことによって、未来は暗くなる。この意欲的で実験的な作品の数十年後の評価が気になる。
Posted by ブクログ
最初は、なんとなく後味の悪い短編が続いてるだけのように思えて、どこで繋がるんだろうと思っていたら、ラストで急にSFになってびっくりした!
ips細胞の話や議員のヤジなど、実際に起こったニュースが多く取り上げられていたのは、文春の連載だったからなのか?
自分自身いちばん怖かったのは、ヤジを聞いた人がどこにもいない、聞いたと名乗り出る者がいないというシーン。
ここまでのニュースにはならなくとも、絶対に実際起こっているのに、全員が見て見ぬ振りをすることでなかったことになること、それを恐怖と思わない人が確かに存在することが恐ろしかった。
ラストの章で、若干頭が混乱してしまった部分はあるけど、未来の日本や技術の発達にあまりポジティブなイメージを持っていなかったわたしにとっては、少し救われたラストだった。
Posted by ブクログ
「春」の章を読んだ時にハズレたかと思った。
「夏」の章でようやくこの作者らしいザラッとした感じが出てきた。そして「秋」の章で本領発揮という感じがした。
最後の「冬」を読み始めると何の話かと分からなくなるが、進むに連れそういう事かと読めてくる。
ただこの「冬」の締め方がいいかは疑問だ。