吉田修一のレビュー一覧

  • 犯罪小説集

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    解説にあるように、登場人物たちの人生、生きる空間が丹念に描かれていて、人が罪を犯すまでが、ものすごくリアルに、近所の噂話かのように感じられる。
    一人一人が身近に思えるので、事件が起こる瞬間には、ああもう取り返しがつかないと、とてつもないやるせなさに襲われる。
    矛盾だらけで、本当に言いたいことは伝えられない、人間の哀しさみたいなものを感じる。

    そんなずっしり重くてしんどい短編集だけれど、読むたびに発見があり、別の登場人物に共感できたりするので、何度も読み返している。
    特に印象的なのは『万屋善次郎』『白球白蛇伝』。

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    2023年06月04日
  • 国宝 下 花道篇

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    毎日のように 本は読んでいますが 星5をつける本に出会うのは年に1、2回あるかないかです。けして辛口 だからではなく深い感動を得る本に、そう簡単には出会わないと思っています。
    しかしその星5を読み始めからすぐに確信したのがこの「 国宝」です。
    読み終わったのは 明け方の4時です。一睡もせずに読み切りました。読み終わるのがおしくて最後のページを何回も何回も読みました。

    朝日新聞の連載小説なので、新聞で読み続けていた方は、最後のページを読んだあと感動で立ち上がれなかったのではないでしょうか。

    歌舞伎の女形、花井半二郎の生涯‥と簡単に言ってしまえばそれまでです。そんな生易しいものではない。これでもかと火の粉が降りかかり、意図せずに 周りを不幸にしながら、芸道に突き進んで行きます。

    そして、芸の道に精進するものは時として「他に何もいらないから芸を上手くさせてくれ」と、幸せと引き換えに悪魔と取り引きして祈ります。
    真っ直ぐで一途な者の凄味を、これでもかと味わい、ページをめくる手が止まりません。

    作者ご自身が実際に舞台の黒衣となっていくつもの歌舞伎を裏から見続けたそうです。ですから歌舞伎場面の臨場感は半端ないです。圧巻です。

    このお話に幕切れはありません。幕は下ろさなくていいのです。なぜなら、読者は読み終わってもその余韻がいつまでも続くからです。それを一番望んでいるのは花井 半二郎その人なのです。芸に幕切れはないのです。あるのは、けして幕の下りることのない舞台へと続く花道だけです‥‥。

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    2026年08月31日
  • 泣きたくなるような青空

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    吉田修一さんのエッセイ読むの、意外にも初めてかも。
    人間というものの切なさ、愛おしさが感じられる簡潔な文章はエッセイでも健在で、ああ吉田修一ってやっぱいいなあ、と思いながら読んだ。

    特に好きなのは『お盆・花火・長崎』。
    長崎ではお盆に墓場で花火したり、精霊流しで100本以上も爆竹を鳴らすのは初めて知った。故人を賑やかに送るの、楽しそうで、どうしようもなく切なくて、最高。

    吉田修一さんは、盛大な爆竹と共に精霊船を流し終えた後、宴会に向かって、高揚と虚しさが入り混じったような足取りで歩きながら、亡くなった家族や友人のことを話すのが好きだそうで、それもすごくいいなあと思った。

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    2023年04月20日
  • 犯罪小説集

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    随分前に『楽園』を見て読みたくなり購入。買ってから短編集と知るw

    じめ〜っとした嫌な蒸し暑さと全てを覆い隠してしまう重苦しい寒さといった温度が感じられる文章だったな。
    不快な温度の中にいると何も考えられなくなるのと同じように、各短編の登場人物達も考え方が一方通行すぎるし人って本当に自分の都合のいい方にしか考えられへんのやなと思った。
    それは悪夢を終わらせる希望でもあるのか。
    あいつが怪しい、あいつに決まってるって次々に言い出すの怖かった。

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    2023年02月04日
  • 逃亡小説集

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    ネタバレ

    吉田修一の短編小説集で『逃げろ九州男児』『逃げろ純愛』『逃げろお嬢さん』『逃げろミスター・ポストマン』の4作が収録されている。
    どの話も実際にあった事件を彷彿とさせる内容で、個人的には『逃げろお嬢さん』がとても良かったと思う。夫が大麻取締法違反で捕まった舞子が逃亡し、その舞子をかつて推していた宿の経営者宮藤康太がひょんなことから舞子を助け「テレビのドッキリだな」という壮大な勘違いをしてしまい、その結果、大騒ぎになるというもの。
    クスッと笑ってしまう表現とハラハラする表現の塩梅が最高でのめり込むようにして読んでしまった。
    また、吉田修一は社会的弱者とされる立場の人たちの描写をこちらの心が痛くなるほど上手にしているが、それは作者本人がそのような立場の人たちに本気で寄り添いたいと強く願うからこその裏返しだとも思った。この作品も読み終えたときに自然と優しい気持ちにもなれる不思議な作品だった。

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    2023年01月04日
  • おかえり横道世之介

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    なるほど、そういうことか!

    世之介の人生において、前作には書かれなかった部分のお話。
    前作との繋がりは殆ど無いに等しいので、本作だけ読んでも充分楽しめます。もちろん、前作ファンの方は必読です。

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    2022年09月05日
  • 初恋温泉

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    短篇集。
    前日に離婚を告げられた夫婦や、過ちを犯して1人で来た旦那や、不倫旅行や、カップル。合計5編。
    最初の初恋温泉と純情温泉が良かった。
    特に純情温泉。
    吉田さんってこんな高校生の恋愛の話を書くんだと少し意外に思った。まだまだ読み足りないな。

    部活でかいた汗や、女子たちのデオトライトや香水の匂いが混ざって、まるで夕方の教室みたいだった。

    この表現で一気に学生の頃、夕方教室に残って友達達と過ごした時間を思い出した。
    純情温泉、とてもよかったなー。
    また読みたい。

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    2022年06月13日
  • 女たちは二度遊ぶ

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    あらためて、クズでチャーミングで社不でセクシーな女性を描くのがうますぎるなと。。
    「遭ったことのある11人の女」を小説にしたそうだが、自分のことをこんなふうに描いてくれる人がいるなんて恐ろしいけれどすこし羨ましい。

    解説の田中敏恵氏
    「男が語る女は、女にとってリトマス試験紙のようだ」

    吉田修一さん、モテるんだろうなぁ。

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    2022年05月18日
  • ウォーターゲーム

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    ネタバレ

    面白かった~~!
    心配してたあの人との再会もできてよかった!

    しかし、すごくスリリングでした
    途中で後ろのページ見たくなったです
    鷹野さんと田岡さん生きてるよねって 
    確認したくなりました。
    突然警察に逮捕されたり
    プライベートジェットから脱出できるのか?とか、ハラハラドキドキでした。

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    2022年03月08日
  • 森は知っている

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    鷹野さんと風間さんが出逢った頃の話です。
    壮絶な過去のトラウマと闘う鷹野さんがどうやってAN通信で働くようになったのか?
    どうして風間さんが車椅子生活になったのか?
    鷹野さんと風間さんのことを知った上でもう一度「太陽は動かない」を読んでみたくなりました。

    富美子さんの気持ちも少しわかるような気がして 読んでいて苦しかったです…

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    2022年03月03日
  • 初恋温泉

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    短編集です。かなり好きな作品でした。
    表題作は、そのタイトルから想像していた内容とは全く違いました。読み終わった時、なるほどそう来たか、と思いました。
    ただの恋愛小説かと思って読んだら良い意味で裏切られます。切なく、ほろ苦さのある味わい深い作品でした。

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    2021年11月03日
  • 路

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    台湾高鉄が開業までの道筋を、日台のさまざまなキャラクターの目線から伝える半分ドキュメンタリーのような小説。
    一気に読めました。
    台湾の文化や台湾人の考え方や感覚まですごく丁寧に表されていて素晴らしいと思った。

    春香が抱いた、
    台湾の人が日本を思う気持ちに比べると、日本人が台湾のことを知ろうとする気持ちは、あまりにもお粗末としか言いようがない、
    という気持ちにも非常に納得。

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    2021年10月03日
  • 最後に手にしたいもの

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    どのお話も旅に出ているような気分になれだけど、台湾でマルーン5が最高でした。
    私もコロナ前はとあるバンドを追っかけて海外へ行っていました。コロナ禍が落ち着いたらまた絶対に行くつもりですが、ライブが始める前のドキドキした気持ちや周りのお客さんとの会話。どれもこれも共感できる話ばかりで涙ぐんでしまいました。本当に旅は素晴らしい。早く行けるようになると良いな。

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    2021年06月12日
  • ウォーターゲーム

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    日本版、MIF(Mission Impossible Force)のようなAN通信社シリーズは、この三冊で完結と書いてある。
    まだ、続きを書いてほしいと思う。
    スケールが大きいコンゲーム。
    しばし、時を忘れて別の世界へといざなう娯楽作品だ。
    小説も、映画も、ぜひ次回作の制作を祈念しております。

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    2021年03月25日
  • 森は知っている

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    映画は、「太陽は動かない」と本作品「森は知っている」をあわせて、また違った作品を構築していた。
    どちらも、時を忘れて楽しめた。
    次巻の「ウォーターゲーム」を早速読み始める。

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    2021年03月25日
  • パレード

    購入済み

    シェアハウスの内情

    昨今シェアハウスをしてる人が増えている中、それぞれの暮らしの日常を、部屋の上から見ている感覚で読めました。人には必ず影がある。しかしシェアハウスと言う空間の中では、自分の意思ではなく、自然と別人格を演じる事になる可能性を感じる作品でした。ラストは衝撃的な展開です。

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    2021年03月12日
  • ウォーターゲーム

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    文句なく面白い。
    シリーズの映画のCMもやってるけど、個人的にはちょっとだけイメージが違うかも。

    シリーズものだと知らず一作目が未読なのが残念。今から読んでもちゃんと面白いかしら?
    中盤で興奮の種明かしがあってそこからのスピード感が気持ちいい。こういう展開、読後感がよろしくて好き。

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    2021年03月04日
  • 最後の息子

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    面白かった。

    3つの短編どれも読み終わるとスーッとした。
    どの主人公もとても順風満帆とは言えない生活の中で、周りを思いやり思いやられながら言葉を選び、周りと共存していく。

    ちょっと荒み気味のガサついた心が癒された気がする。

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    2021年02月20日
  • ウォーターゲーム

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    吉田修一の鷹野一彦シリーズの第3作目。(2018年5月単行本、2020年8月文庫本)。
    2作目の「森は知っている」の17歳の鷹野一彦が3作目で34歳になっていた。1作目の「太陽は動かない」の時は31歳だから、順番が違っているように見えるが、この順番で物語を追うのが正解。
    「太陽は動かない」での田岡亮一、デイビッド キム、AYAKO、中尊寺信孝も今作でも主要人物として登場する。そして「森は知っている」で失踪した鷹野の親友の柳勇次も。
    鷹野の部下の田岡は立派なエージェントに成長、韓国のエージェントのデイビッドは引退していたのに引き戻される。AYAKOは相変わらず敵か味方かわからない動きをするが結局は鷹野を支える。
    今作では若宮真司という24歳の若者が最初のダム爆破事件の実行犯を知っている人間として登場するが、実は4歳から中学卒業まで児童擁護施設でAN通信の庇護の元で育ち、鷹野と同じように沖縄の離島の高校へエージェントとしての訓練の為行く直前に心臓欠陥が理由でエージェントへの道を断たれた過去を持っていた。戸籍を喪失した若宮真司が鷹野と終盤絡んで新しい人生を歩むことになるのも胸に込み上げてくるものがある。
    いきなり日本のダム爆破事件で始まり、日本の水道の民営化を見越した利権争いにフランスの水メジャー企業VOエキュと日本の大手開発会社東洋エナジーに日本の重鎮政治家中尊寺信孝が絡んだ事件と判る。爆破計画は中止したはずなのに何者かによって計画が遂行された。爆破計画はまだ続く。AN通信の鷹野は中尊寺から爆破計画の阻止を依頼される。これが最初の大筋の物語で、何かつまらなさそうと思っていたら、とんでもない方向に話は展開する。
    爆破の首謀者はVOエキュを乗っ取ったリー ヨンソンというシンガポール国籍の人間だとわかる。中央アジアの水資源開発事業が本当の目的で、爆破実行はAN通信の潰滅を意図しながらも犯人の何らかの思いがあるのもわかってくる。その中央アジアに関する事業にもVOエキュがかかわっており、資金の調達にリー ヨンソンはデイビッド キムを使いイギリスの投資会社ロイヤル ロンドン グロースを誘う。
    中央アジア最初の対象はキルギス、のちにキルギスはリー ヨンソンが深い関わりがあることがわかり、ビジネスとは違う別の目的があることをAYAKOが突き止め、ロイヤル ロンドン グロースにとりいり、リー ヨンソンと鷹野を裏切る行動に出る。後にまた鷹野を助ける行動に変わるのだが、このあたりが謎の女と言われる所以ではあるが、読み終わった後も未だよくわからない…
    終盤リー ヨンソンと鷹野が出会い、顔が潰れていてもリー ヨンソンが誰であるか目を見て鷹野はすぐにわかる。ここはこの物語の最大の見せ場なんだろうなと胸が熱くなる。
    鷹野が35歳で引退するのか、リー ヨンソンと若宮真司のその後は? そして今回登場しなかったが鷹野の初恋の菊池詩織との再会はないままなのか。田岡のその後とAN通信のその後も含めて是非続編を期待したい。

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    2020年08月22日
  • 橋を渡る

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    吉田修一にハマって読み続けた中の〜一冊。
    悪人〜横道世之助、
    国宝〜なんてすごい人なんだろう!苦しみ、悲しみ悶えながら読んだ。
    吉田リアリズムで説得力抜群
    なんせ、あちらこちらのセリフに痺れる
    読んだのは何年も前
    それでもこのくらいのことは思い出す。畏敬の念は拭えない。
    好きダァ。
    理想は何度も読みたい、現在読書数を目指してるので。
    好きな作家ベスト10の一人。

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    2020年08月06日