吉田修一のレビュー一覧
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毎日のように 本は読んでいますが 星5をつける本に出会うのは年に1、2回あるかないかです。けして辛口 だからではなく深い感動を得る本に、そう簡単には出会わないと思っています。
しかしその星5を読み始めからすぐに確信したのがこの「 国宝」です。
読み終わったのは 明け方の4時です。一睡もせずに読み切りました。読み終わるのがおしくて最後のページを何回も何回も読みました。
朝日新聞の連載小説なので、新聞で読み続けていた方は、最後のページを読んだあと感動で立ち上がれなかったのではないでしょうか。
歌舞伎の女形、花井半二郎の生涯‥と簡単に言ってしまえばそれまでです。そんな生易しいものではない。これでもかと火の粉が降りかかり、意図せずに 周りを不幸にしながら、芸道に突き進んで行きます。
そして、芸の道に精進するものは時として「他に何もいらないから芸を上手くさせてくれ」と、幸せと引き換えに悪魔と取り引きして祈ります。
真っ直ぐで一途な者の凄味を、これでもかと味わい、ページをめくる手が止まりません。
作者ご自身が実際に舞台の黒衣となっていくつもの歌舞伎を裏から見続けたそうです。ですから歌舞伎場面の臨場感は半端ないです。圧巻です。
このお話に幕切れはありません。幕は下ろさなくていいのです。なぜなら、読者は読み終わってもその余韻がいつまでも続くからです。それを一番望んでいるのは花井 半二郎その人なのです。芸に幕切れはないのです。あるのは、けして幕の下りることのない舞台へと続く花道だけです‥‥。 -
Posted by ブクログ
吉田修一さんのエッセイ読むの、意外にも初めてかも。
人間というものの切なさ、愛おしさが感じられる簡潔な文章はエッセイでも健在で、ああ吉田修一ってやっぱいいなあ、と思いながら読んだ。
特に好きなのは『お盆・花火・長崎』。
長崎ではお盆に墓場で花火したり、精霊流しで100本以上も爆竹を鳴らすのは初めて知った。故人を賑やかに送るの、楽しそうで、どうしようもなく切なくて、最高。
吉田修一さんは、盛大な爆竹と共に精霊船を流し終えた後、宴会に向かって、高揚と虚しさが入り混じったような足取りで歩きながら、亡くなった家族や友人のことを話すのが好きだそうで、それもすごくいいなあと思った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ吉田修一の短編小説集で『逃げろ九州男児』『逃げろ純愛』『逃げろお嬢さん』『逃げろミスター・ポストマン』の4作が収録されている。
どの話も実際にあった事件を彷彿とさせる内容で、個人的には『逃げろお嬢さん』がとても良かったと思う。夫が大麻取締法違反で捕まった舞子が逃亡し、その舞子をかつて推していた宿の経営者宮藤康太がひょんなことから舞子を助け「テレビのドッキリだな」という壮大な勘違いをしてしまい、その結果、大騒ぎになるというもの。
クスッと笑ってしまう表現とハラハラする表現の塩梅が最高でのめり込むようにして読んでしまった。
また、吉田修一は社会的弱者とされる立場の人たちの描写をこちらの心が痛くなるほど上手にしているが、それは作者本人がそのような立場の人たちに本気で寄り添いたいと強く願うからこその裏返しだとも思った。この作品も読み終えたときに自然と優しい気持ちにもなれる不思議な作品だった。 -
購入済み
なるほど、そういうことか!
世之介の人生において、前作には書かれなかった部分のお話。
前作との繋がりは殆ど無いに等しいので、本作だけ読んでも充分楽しめます。もちろん、前作ファンの方は必読です。 -
購入済み
シェアハウスの内情
昨今シェアハウスをしてる人が増えている中、それぞれの暮らしの日常を、部屋の上から見ている感覚で読めました。人には必ず影がある。しかしシェアハウスと言う空間の中では、自分の意思ではなく、自然と別人格を演じる事になる可能性を感じる作品でした。ラストは衝撃的な展開です。
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吉田修一の鷹野一彦シリーズの第3作目。(2018年5月単行本、2020年8月文庫本)。
2作目の「森は知っている」の17歳の鷹野一彦が3作目で34歳になっていた。1作目の「太陽は動かない」の時は31歳だから、順番が違っているように見えるが、この順番で物語を追うのが正解。
「太陽は動かない」での田岡亮一、デイビッド キム、AYAKO、中尊寺信孝も今作でも主要人物として登場する。そして「森は知っている」で失踪した鷹野の親友の柳勇次も。
鷹野の部下の田岡は立派なエージェントに成長、韓国のエージェントのデイビッドは引退していたのに引き戻される。AYAKOは相変わらず敵か味方かわからない動きをするが結局は鷹野を支える。
今作では若宮真司という24歳の若者が最初のダム爆破事件の実行犯を知っている人間として登場するが、実は4歳から中学卒業まで児童擁護施設でAN通信の庇護の元で育ち、鷹野と同じように沖縄の離島の高校へエージェントとしての訓練の為行く直前に心臓欠陥が理由でエージェントへの道を断たれた過去を持っていた。戸籍を喪失した若宮真司が鷹野と終盤絡んで新しい人生を歩むことになるのも胸に込み上げてくるものがある。
いきなり日本のダム爆破事件で始まり、日本の水道の民営化を見越した利権争いにフランスの水メジャー企業VOエキュと日本の大手開発会社東洋エナジーに日本の重鎮政治家中尊寺信孝が絡んだ事件と判る。爆破計画は中止したはずなのに何者かによって計画が遂行された。爆破計画はまだ続く。AN通信の鷹野は中尊寺から爆破計画の阻止を依頼される。これが最初の大筋の物語で、何かつまらなさそうと思っていたら、とんでもない方向に話は展開する。
爆破の首謀者はVOエキュを乗っ取ったリー ヨンソンというシンガポール国籍の人間だとわかる。中央アジアの水資源開発事業が本当の目的で、爆破実行はAN通信の潰滅を意図しながらも犯人の何らかの思いがあるのもわかってくる。その中央アジアに関する事業にもVOエキュがかかわっており、資金の調達にリー ヨンソンはデイビッド キムを使いイギリスの投資会社ロイヤル ロンドン グロースを誘う。
中央アジア最初の対象はキルギス、のちにキルギスはリー ヨンソンが深い関わりがあることがわかり、ビジネスとは違う別の目的があることをAYAKOが突き止め、ロイヤル ロンドン グロースにとりいり、リー ヨンソンと鷹野を裏切る行動に出る。後にまた鷹野を助ける行動に変わるのだが、このあたりが謎の女と言われる所以ではあるが、読み終わった後も未だよくわからない…
終盤リー ヨンソンと鷹野が出会い、顔が潰れていてもリー ヨンソンが誰であるか目を見て鷹野はすぐにわかる。ここはこの物語の最大の見せ場なんだろうなと胸が熱くなる。
鷹野が35歳で引退するのか、リー ヨンソンと若宮真司のその後は? そして今回登場しなかったが鷹野の初恋の菊池詩織との再会はないままなのか。田岡のその後とAN通信のその後も含めて是非続編を期待したい。