吉田修一のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
評価が低めだったので、恐る恐る読みましたが、私としては満足。吉田修一さんのこの人間の描き方が好き。絶望を感じる人間の醜い部分に反して美しい湖の描写が印象に残る。本来人間もこの湖の様に美しさと、底知れぬ怖さを持っているのだと、雨が降り、風が吹き、環境が荒れると波が立つように、人も環境に左右され荒れるのだと、そんなことを感じとりました。
何気に伊佐美さんの描き方良かったな。どうしようもない権力や金や悪に負けた時、人は捻くれてしまうものだと思う。正しさとか、純粋さとか、諦めを装って生きていかなければやってられないこともある。
映画化されるとのことだが、なんとも不安な配役。松本さんは好きだけど、あの -
Posted by ブクログ
ネタバレ最初、読んでるうちは、インモラルな性愛に目が向きがちで、これ、映画化ってどうするんだろう…、みたいな野次馬的な見方をしていたのですが…
吉田修一さんを見縊るもんじゃありませんでした
それは様々なインモラルについての描写の1つに過ぎなかっただけ
この時代に、1番弱く崩しやすい者を追い込み吊し上げる集団
ある一定数の、金と権力を持っている者の振る舞い
戦時中の正誤が歪んだ中での歪んだ行為
そして、終盤に露わになる事実に、やはり吉田修一氏もはたして盛り込んできたかと放心しました
昨年、「ロスト・ケア」が口火を切り、「正欲」「月」とセンセーショナルな映画が公開されました
今まで、見ないように -
Posted by ブクログ
感想を思いめぐらしていたら、もう一度始めからしっかり読んでしまった一冊。
感想書きプロではないのに間を置かずに再読するなどと、長い読書人生初めてのこと。
社会派ミステリーに属する内容と思われるのだが、登場する刑事たちがなにしろ悪徳者そのもの。
でも、なぜか排除できないものもあるのだ。
罪ありきの過酷な取り調べ、冤罪になりそうな筋書きを作る刑事たち。おまけに聴取している参考人との不徳な関係は何なんだと思う。
その警察官圭介と事件関係者佳代との不倫関係は、強烈なサディズムとマゾヒズムの関係。不道徳極まりないと嫌悪するも、なんと生き生きと描かれていることか。
そしてその陰に隠れるように、もみ -
Posted by ブクログ
いろんな状況で「逃亡」する人々の話。
なんていうか…やりきれなさが拭えない。
つくづく不公平だよなぁと思う、気づいたらどん詰まり。というか始めっから行き詰まっててどうにもならない。もちろんわかってたけど…何かのきっかけでそのことがもう嫌になって、夢を見ているみたいに、アクセル踏み込んで検問突破したり、郵便の荷物を乗せたままフラッとどっかへ行ったり。
逃亡。願望…ですらないのかなぁ。でも長く人生に苦しんでる人が屋上に登ったら死にたいと思ってなくても突発的に飛び降りてしまうみたいなのににてるんじゃないのかな。
悪人の時も思ったけれど、普通の状態なら真っ先に考える「先のこと」が全く考えられなくなって -
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ネタバレになるけれど、2015年から70年後の世界が描かれていて、構成といい、文章といい、とても面白かったけども、わたしが経験した70年後の世界はもっと面白いのかも。
つまり今、82だから12の時から、現在70年後の世界にいるってこと。
12歳の時(1953年)は今普通に使っているものは無かったか、初期段階。
例えば、テレビジョンの放送が始まって、ブラウン管のでかい箱を駅頭で見上げた記憶。
電話は黒いダイヤル式、冷蔵庫は氷で冷やし、たらいで洗濯(14歳ころ一層式洗濯機ハンドル絞りつきになった)などなど...
人間関係の世界はっていうと、それも変遷だ。社会機構、体制様変わり。
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