吉田修一のレビュー一覧
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ネタバレ映画のイメージが強くて(観てないけど)、ずっと逃走劇が繰り広げられていると思っていたけど、前半はむしろ淡々と進んでいた印象。登場人物の心情に深入りすることなく、一歩距離をとって紹介が続く。
こんな感じか、と拍子抜けしていたら、いつの間にか祐一にのめり込んでいて…。光代には惹かれなかったけど、(むしろ、トラウマとはいえ自首させてやれよと思ってイライラした)二人の姿は哀れながらも笑うことはできなかった。
ラストの首を絞めるシーン、気になって調べたら映画ではアドリブでキスシーンもあったとか。なんだその演出、そこだけでも観たいもんな。そして、ラストの「あの人は悪人やったんですよね?ねえ?そうなんです -
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「永遠と横道世之介」を読む前にもう一度振り返ってみようと思い再読した。
2009年に読んでから年数は経っているから細かなところは忘れていた。
だが、一気に世之介の世界観に浸る。
長崎から東京へ出てきて大学生活が始まり、サンバサークルの倉持と阿久津との出会いや加藤のアパートに入り浸っていた頃。
バイトに明け暮れていた頃でもある。
自動車教習所で知り合った祥子と夏休みには実家で過ごしたり…と。
確かに出会いとともにいろんなものが増えていく…という感じでアパートの隣人の京子が言うように一年経つとあの頃より隙がなくなった。
ドンピシャな表現である。
飄々とこなしている世之介は妙に人を惹きつけ -
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何気ない1日。何気なく自由気儘に暮らしている世之介。
横道世之介シリーズ、第何弾だろうか?三作目くらいかな。
作中で作者自身がこの物語には、大波や波乱は起こらずごくごく普通の世之介の日常が描かれていると、まさにその通りである。
思えば自分の人生だって、小説やドラマのようなジェットコースターのようなことは早々起こらない。
波乱はないけど、読んでいて安心する。
色々な本を読む中でたまにはこのようにホッコリする小説もいいな。
本編には全く関係ないが、作中で世之介が紹介したアメリカ軍で導入されている寝方は、自分も実践して役立っているw。
1.舌の力を抜く、2.口を緩める、3.徐々に瞼を閉 -
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続編の続編が出たということで
一から再読することにしました(^^)
今回は単行本にしました
こんな表紙だったのか
久々の横道世之介ですが
やっぱり好きだなあ
まずは口調がいい。
世之介を読んでる間は
自分や子供の行動を
頭の中で世之介のナレーションの口調に
変換してる自分がいて笑えます
(ここのいるのはもちろん世之介である。みたいに)
そしてテンポもいい
読むほどに空気感が好きになる気がします(^^)
世之介はどこにでもいるような学生で
どこか抜けてて
隙だらけで頼りないイメージだけど
ふとした瞬間に
おお!と思うようなことを
気づかずにやってるところが素敵
倉持も、加藤 -
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吉田さんの小説は、『横道世之介』しか読んだことがない。
本書は、短編+エッセイ集。
ANAの機内誌『翼の王国』が初出とのこと。
世之介とはまた違う側面が見えると期待して手に取る。
超短編小説なので、どうしても説明部分が目立って見える。
最初の二、三作は、そんな感じが否めなかったが、「居酒屋」あたりから、だんだん作品との波長が合ってくるのがわかる。
そうすると、やはり展開の鮮やかさに心を奪われる。
エッセイは…
以前NHKのネコメンタリーという番組で、吉田さんと飼い猫との日々が取り上げられていたのを見たことがある。
マンションの様子なども映り、作家の日常生活がほんの少し垣間見えたりする番組だ -
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吉田さんの作品では『怒り』を読んだことがあり、
読みながら苦しくやるせない気持ちになった記憶。
でも、人間の奥の奥に隠された感情に迫る感じが懐かしくなり、今回『悪人』を読むことにしました。
誰が本当の悪人なのか、
それを白黒で決めつけることはできない。
誰しもの中に善も悪も混在していて、1人の人間が誰かにとっての悪でもあり、また別の誰かにとっては善だったりする。
本で描かれているのは極端な例だけど、
きっと日常の中でもこの構図は当たり前に存在するんだろうと思った。
祐一のおかした殺人は絶対にいけないこと。
それは揺るぎない事実で、私が佳乃の親だったら間違いなく祐一を120%悪(≒許せない) -
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『ああ、俺、もしかしたらずっと逃げたかったのかも』
ヒリヒリした緊迫感の中で逃亡の果てにつぶやいた者の言葉だ。4つの短編のどれもが、ふとしたことがきっかけで逃げなければならなかった者たちの、明日は我が身の物語である。
どのお話も、つい先日 テレビのニュースで見たようなリアルな現実感がある。逃亡するだけの犯罪を犯したということよりも、ごくまっとうな人々が事件を起こし逃げるまでの過程がストンと腑に落ちて共感を呼ぶ。作者 吉田修一さんの、人間の心の動きを見つめる目が好きだ。優しい。
ふと、偉大な社会派推理作家、松本清張さんを思い出す。松本清張さんも犯罪の背景と、罪を犯した者の心理に共鳴を覚える描 -
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NHKでドラマ化されたものを観たこともあり、原作である、こちらの本も読んでみました。
ストーリー全体としては若干強引さを感じたので「★★★☆☆」かも、と思ったのですが、部分部分での人間関係の描き方については、胸が熱くなったところが多かったこともあり、「★★★★☆」としました。
個人的には、「台湾新幹線を実現する上で、欧州連合と日本連合が折り合いをつけていく具体的な過程や技術的なところをもっと厚くしてほしい」と思いながら読んでいました。
が、おそらく、著者としては、ここ100年ぐらいの日本と台湾の関係を軸にした人間模様や台湾の人々や風景を描きたかったと思われるので、「この本のような内容にならざ