吉田修一のレビュー一覧

  • パレード

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    若者の群像劇と思いきや、予想外の結末に読後は呆然としてしまいました。
    悩みを相談したり、ご飯を食べに行ったり、一見仲が良さそうな4人ですが、『本来の自分』と『同居を成立させるための自分』の違いがそれぞれの視点で描かれています。サトルという人物が登場することで、4人をより客観的にみる視点が加わり、この関係性の違和感に気付かされていきます。特に印象的だったのは、直輝の章で、「相手に思いやりを示さないことで、いつの間にか俺は、彼らの良き兄貴分に祭り上げられている」という一文がありますが、それはあくまで主観であったことを結末で知らされるところです。
    仲が良さそうに見えて、誰も本来の自分をださないし、誰にも関心がないということ。読んだ後、じわじわと恐さを感じた作品でした。

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    2026年05月09日
  • 東京湾景(新潮文庫)

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    吉田修一さんの恋愛小説。
    どんな愛にも終わりは来るとうそぶく亮介と、愛の力を疑いながら、でもどこかで信じたい美緒。身体を重ねるふたりは、身体の関係の「その先」に向き合うことに。心をさらけ出す恐さや、素直になれないモヤモヤした思いが、二人の何気ない言葉や行動で感じられる描写がたまらなく良かったです。
    二人の関係性は、美緒の友人・佳乃の「始まるのが恐くて、お互いに目をつぶったまま抱き合ってただけじゃない!」という言葉そのもの。そんな二人のラストシーンは、最高にドラマティックでした。

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    2026年05月05日
  • ミス・サンシャイン

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    こんなふうに歳を重ねれたらいいなぁと思う。
    現実的に50も歳が離れていて恋愛感情が湧くのかどうかはわからないけど、人間的に惹かれるというのはわかる。
    同じように大切な人を亡くして心に傷を隠したままの二人が心の交流によって癒されていく。
    人は人によってしか癒されないのかな。

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    2026年05月01日
  • ミス・サンシャイン

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    ネタバレ

    タイトルと装丁に惹かれてほぼジャケ買いの一冊でしたが、
    タイトルにそんな意味があったとは…。

    ひょんなことから昭和の大女優・和楽京子こと石田鈴の自宅整理を手伝うことになった岡田一心。
    回想での女優としての和楽京子の描写はまるで本当に映画を見ているような熱感で、
    一方で現在の鈴さんは穏やかな時間のなかで生きていて。
    片付けを通して鈴さんの歴史に触れ、読み終わる頃には一心とともにすっかり鈴さんの虜になってしまいました。

    幼馴染の佳乃子を原爆で亡くした経験を持つ鈴さんと、わずか9歳の妹・一愛を亡くした経験を持つ一心。
    鈴さんのかつての恋と、一心の恋心。
    ふたりの共通点が見えてくるうちに、だんだん二人が近くなっていって、少しの間だけその糸が交わってまた解けてしまう。

    でも解けた先にもちゃんと鈴さんはいて、一心の人生を支えていて。
    そんなふたりのように、ひとときの交わりでもそこから自分の未来につながるような出会いを繋いでいくのが人生なのかな〜と思ったり。
     
    読み終わったあと心の芯がじんわりあったかくなるような温度感のある一冊でした。

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    2026年05月01日
  • 日曜日たち

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    特に何も起こらないけど短編5つを通して最後に兄弟は幸せそうだった。
    「日曜日の被害者」の遊んでる若者の雰囲気、平成感が好き。結構キツいことされるけど。
    「日曜日の運勢」の優柔不断なモテ男の憂鬱も面白い。男女のやり取りがやっぱり好きなんだなって気づく。あと吉田修一が好みって気づいてきた。

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    2026年04月26日
  • 最後の息子

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    吉田修一さんのデビュー作品。
    『Water』は、高校の水泳部員たちを描いた青春小説で、とても清々しい作品。大会の最終日、メドレーリレーの前にケンカする4人がめちゃくちゃ尊い。
    個人的には『最後の息子』と『破片』がとても好きで、どちらも閉鎖的なコミュニティでの息苦しさや、昔ながらの男女の価値観が描かれていました。
    デビュー作でこんな作品を描いてしまう吉田修一さんはやはりすごい。
    別の作品も手に取ってみようと思います。

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    2026年04月25日
  • 路

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    日本の新幹線の台湾への輸出事業を背景に、両国の人たちの交わりや、すれ違い、その中に生まれる静かだけど深い思いのドラマ描写。
    人生におけるタイミングであったり、出会いの奇跡、必ずしも成就しないことだったりが、自分に優しい気持ちを与えてくれたように感じられた。

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    2026年04月25日
  • 怒り(下) 新装版

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    2026.04.22 ★4.6

    上巻は静かに淡々と時間が流れ、下巻からは怒涛の展開。

    3ヶ所に居る身元不詳の男は一体誰なのか
    誰が誰を信じていて、誰が誰を信じられないのか
    「怒り」は誰が誰に向けたものなのか

    一気に色々なことが起こり、ページをめくる手が止められない。

    正直、読み進めるのが辛く感じる展開もあったが、ほんの少しだけ光が見える終わり方だった。


    ↓↓↓内容↓↓↓

    山神一也は整形手術を受け逃亡している、と警察が発表。
    洋平は一緒に働く田代が偽名だと知り、
    優馬は同居を始めた直人が女といるところを目撃し、
    泉は気に掛けていた田中が住む無人島であるものを見てしまう。
    日常をともに過ごす相手に対し芽生える疑い。三人のなかに、山神はいるのか? 犯人を追う刑事が見た衝撃の結末とは! 

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    2026年04月22日
  • 路

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    吉田修一の描く群像劇はやはりピカイチだと思う。
    とても素敵な作品だった。

    台湾に日本の新幹線が走る。
    商社の台湾支局に勤める春香と日本で働く建築家・人豪の巡り合い。
    台湾で生まれ戦後引き揚げた老人・勝一郎の後悔。
    「今」を謳歌する台湾人青年・威志の日常。
    新幹線事業を背景に、
    日台の人々の国を越え時間を越えて繋がる想いを色鮮やかに描く群像劇。

    出てくる登場人物たちが皆何らかの形で台湾新幹線に関わっている。
    これは非常に高等なテクニックだとも思った。
    何気ない日常を描き、何でもない台湾人青年に至ってもそういう流れになる。
    群像劇で一番難しい繋がりを、いとも簡単に描いている点は流石の一言。

    メインとなるのは、学生時代に一度会ったきりの台湾人青年を
    未だに心のどこかで思っている春香とその台湾人青年・人豪の
    もはやすれ違う運命としかいいようがないもどかしい関係。
    やはりタイミングというものは重要なのだなと思わせてもくれる。

    物語は7年の歳月を描いているが、
    変わりゆく台湾の情景など、読み手のこちらも台湾にいるかのような
    そんな風に錯覚してしまうほどの描写が多く飽きが全く来なかった。

    中国名の登場人物や地名が多い場合に陥る、
    この漢字どう読むんだっけ?問題は最後までついて回るのだが、
    それさえ乗り越えれば、
    台湾という地がとても身近になるそんな体験をさせてくれる良作である。

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    2026年04月20日
  • ウォーターゲーム

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    水道の利権をめぐる策略と情報戦。色んな企業、国、政治、それぞれの私利私欲が絡み、スパイ&アクションのエンタメ要素ががっつり高めで面白い!展開がテンポ良く変わるので飽きずに読める。ただ、前の2作と比べるとあまりにも現実離れしすぎているというか出来すぎている感はあって、前半はそんなにのめり込めなかった。でも、終盤の畳み掛けるような展開が好き過ぎた。
    スピンオフも出して欲しいな。

    あと、ファッテューチョンってスープ、初めて知った。仏も飛んでくるってすごい!どんな味なんだろ?!

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    2026年04月11日
  • ミス・サンシャイン

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    当初想像していたのとはだいぶ違う内容だった。それは勿論良い意味で。

    心に傷を負った大学院生の岡田一心は、
    伝説の映画女優である和楽京子こと石田鈴の自宅で荷物整理を手伝うことに。
    引退した今なお美しい鈴さんの胸に秘められていた波瀾万丈な映画人生、
    原爆が奪った運命と大切な人たち。
    その過去に触れるうち、一心の胸にあたたかな光が灯る。

    吉田修一作品で言ったら横道世之介に分類される読みやすさと温かさであった。
    何より、鈴さんの生きた人生が本当に胸に刺さる内容であった。
    ミス・サンシャインに込められた皮肉、
    そんなことにも気付けなかった己の無知さ加減も含めて。

    鈴さんという存在によって、
    主人公であるはずの一心のズルさが非常に目立った。
    本当にズルい男だと、最後までそれは拭えなかった。
    だから自分の中でこの素晴らしい作品を満点に推せなかったのかもしれない。

    とは言え、一心は欠かせない存在なのである。
    桃ちゃんのクソさも含めて、物語には欠かせないのである。
    この矛盾が何とももどかしかった。

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    2026年04月11日
  • パレード

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    小さなきっかけで集まった、お互いに無関心な緩い関係性の5人の話。ゆるい日常にだんだんと暗雲が立ち込めて、ラストに繋がった。まともそうな人が実は、というとこまで含めて親近感がわく小説だった。
    長く付き合う関係性もいいけど、人生の中で数年程度の刹那的な関係っていいよね。

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    2026年04月10日
  • ミス・サンシャイン

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    最初は物語の核となる部分がどこにあるのか分からなかったが読み進めることで和楽京子と一心がそれぞれ異なる人生を歩む中でも重なる部分にこちらが惹き込まれていく。桃ちゃんの件が必要だったのかは微妙なところだが、逆のこの年相応の恋模様が展開されることで読みやすく、また主人公がまだまだ大人にも非情にもなりきれない未熟な少年であることが上手く表現されている。原爆に関して、記述は多くはないがそれでも歴史と和楽京子の人生の重みを感じるには充分な文章だった。

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    2026年04月07日
  • 怒り(下) 新装版

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    信じる 信じない 信じられない
    信じていたのに裏切られる

    結局最後は自分自身を信じることができた者だけが、自分にとって大切だと思う人のことを信じることができるのだろう

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    2026年04月07日
  • 怒り(上) 新装版

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    最初はよくわからないまま進んでいたけど、後半はかなり面白くてサクサク読めた。続きが非常に気になる。
    下まで読んでもう一度ちゃんと感想書こう。

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    2026年04月05日
  • 永遠と横道世之介 下

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    なんでもない一日。
    春の、夏の、秋の、冬の。
    そんななんでもない一日みたいな人。

    心が洗われるような本でした。

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    2026年04月04日
  • 路

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    台湾新幹線のお話という事でもっとプロジェクトXっぽいかと思いましたが、いい意味で予想を裏切ってもらいました。

    吉田修一さんの作品は人間を描くのが上手だといつも感心しますが今回はいい方の人間臭さが目立つ内容で台湾の人の優しさ、おおらかさがとても心地よかったです。

    後、一番は台湾の空気、匂い、そして南国の蒸し暑さ、それがすごく伝わって来ましたね。

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    2026年03月29日
  • パレード

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    ネタバレ

    直樹の章の最後で、全くジャンルが異なる本になる。
    共同アパートで暮らす5人を丁寧に描いた群像劇のように進んでいく。
    サトルが新たに入居して不穏な空気になるがそれがミスリードのまま終わると思いきや、まさかのそれをオチに持ってくる衝撃の展開。
    読んでいて全く予想できなかった、ただこの作品のジャンルがとても難しいと思った。
    オチありきならミステリーになるのだが、それだとオチの衝撃が無くなってしまうだろう。
    しかし、純文学と言われればオチによって全く異なる性質に変わるので純文学ではない、故に非常に難しい本の紹介になる。
    紹介する人の技術が問われる小説なのかもしれない。

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    2026年03月28日
  • 永遠と横道世之介 上

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    少し前に読んだ『太陽は動かない』でもコメントしたが、改めて吉田修一の表現力の広さ(深さ?)には恐れ入る。『横道世之介』シリーズの三作目として、これまでの軽妙な表現や内容は、『悪人』『怒り』『犯罪小説集』等の「重さ」と『太陽は動かない』の「ダイナミックなアクションもの」とは全く別物で、シリーズの期待どおり思わず笑ったりホッとさせたりしてくれる。第一作目の映画化のとおり、世之介は主演の高良健吾君をイメージしながら読んでしまった。
    (小説の内容については下巻も含めて全て読んだところでコメントさせてもらう。)

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    2026年03月27日
  • 悪人 新装版

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    やはり吉田修一作品すごいなあ。
    いったい悪人とはなんなのか。見栄を張り平然と嘘をつくものなのか。殺しはしないが人の心を弄びなんとも思わないものなのか。追い詰められて人を殺すものなのか。愛を貫いて法を破るのが悪人なのか。知りもしないで外野から批判する者たちなのか。
    2人にとっては逃避行だったけれども、孤独な者同士が初めて繋がる居場所だったんだろう。究極に切ない。
    長崎弁で書かれているからか素朴さを感じながらもかえって剥き出しの感情が刺さってくる。
    「その人の幸せな様子を思うだけで、自分までうれしくなってくるような人たい」という父親のセリフや「祐一、逃げたら駄目よ。怖かやろうけど、逃げたら駄目よ。逃げたってなんも変わらん。逃げたって誰も助けてくれんとよ。」という祖母のセリフが心に沁みていく。

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    2026年03月25日