吉田修一のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
いろんな状況で「逃亡」する人々の話。
なんていうか…やりきれなさが拭えない。
つくづく不公平だよなぁと思う、気づいたらどん詰まり。というか始めっから行き詰まっててどうにもならない。もちろんわかってたけど…何かのきっかけでそのことがもう嫌になって、夢を見ているみたいに、アクセル踏み込んで検問突破したり、郵便の荷物を乗せたままフラッとどっかへ行ったり。
逃亡。願望…ですらないのかなぁ。でも長く人生に苦しんでる人が屋上に登ったら死にたいと思ってなくても突発的に飛び降りてしまうみたいなのににてるんじゃないのかな。
悪人の時も思ったけれど、普通の状態なら真っ先に考える「先のこと」が全く考えられなくなってそう。ていうかそんなことは頭にないんだろう。
なんだろ…普段フツーに暮らしてて、突如異常なことが起こって現実逃避(現実感が喪失)してしまうのはよくある、その時は感覚が上滑りして、意識のうわっつらだけで物事が進んでいく感覚。一時的な、とりあえず的なのはよくあるからわかる。
でもそっから「普通」に戻らないってことなんだよな。
逃げろお嬢さん、警察と宿の主人の温度差が滑稽ですごく見てて笑えた。
普通に今日わーって来たのに、いきなり帰れとか怒鳴り散らし始めて。なになに、何いきなり?ちょっと落ち着いてよって…警察からしたら意味がわからんでしょ笑笑
-
Posted by ブクログ
ネタバレになるけれど、2015年から70年後の世界が描かれていて、構成といい、文章といい、とても面白かったけども、わたしが経験した70年後の世界はもっと面白いのかも。
つまり今、82だから12の時から、現在70年後の世界にいるってこと。
12歳の時(1953年)は今普通に使っているものは無かったか、初期段階。
例えば、テレビジョンの放送が始まって、ブラウン管のでかい箱を駅頭で見上げた記憶。
電話は黒いダイヤル式、冷蔵庫は氷で冷やし、たらいで洗濯(14歳ころ一層式洗濯機ハンドル絞りつきになった)などなど...
人間関係の世界はっていうと、それも変遷だ。社会機構、体制様変わり。
LGBTSなど無いような世界、いや闇の中か忖度の世界だった。
セクハラはあった、けど、それも闇の中か忖度の世界だった。
離婚が少なかったけど、夫婦関係も問題が内包してだけ、などなど...。
しかし、ゆっくりと浸かってきているので、自分がどの位置にいるか自覚しないだけ。
そう、すっかり慣れている自分にびっくりだ! -
Posted by ブクログ
ネタバレ映画のイメージが強くて(観てないけど)、ずっと逃走劇が繰り広げられていると思っていたけど、前半はむしろ淡々と進んでいた印象。登場人物の心情に深入りすることなく、一歩距離をとって紹介が続く。
こんな感じか、と拍子抜けしていたら、いつの間にか祐一にのめり込んでいて…。光代には惹かれなかったけど、(むしろ、トラウマとはいえ自首させてやれよと思ってイライラした)二人の姿は哀れながらも笑うことはできなかった。
ラストの首を絞めるシーン、気になって調べたら映画ではアドリブでキスシーンもあったとか。なんだその演出、そこだけでも観たいもんな。そして、ラストの「あの人は悪人やったんですよね?ねえ?そうなんですよね?」が、切なすぎて…。脳内で動く映画キャストたちがそれぞれハマり役でした。
祐一は母に対するのと同じで、全て自分が引き受けるつもりで、待っててほしくなんかないんだろうけど、読者としてはいつかまた出会ってほしいと思ってしまうな。
「悪人」とは誰だろうな。真面目に生きる人が報われる世の中じゃなくちゃだめだよな。 -
Posted by ブクログ
何気ない1日。何気なく自由気儘に暮らしている世之介。
横道世之介シリーズ、第何弾だろうか?三作目くらいかな。
作中で作者自身がこの物語には、大波や波乱は起こらずごくごく普通の世之介の日常が描かれていると、まさにその通りである。
思えば自分の人生だって、小説やドラマのようなジェットコースターのようなことは早々起こらない。
波乱はないけど、読んでいて安心する。
色々な本を読む中でたまにはこのようにホッコリする小説もいいな。
本編には全く関係ないが、作中で世之介が紹介したアメリカ軍で導入されている寝方は、自分も実践して役立っているw。
1.舌の力を抜く、2.口を緩める、3.徐々に瞼を閉じる。
あらすじは、恋人の二千花と死別して、9年経った世之介も40歳になろうとしていた。
カメラマンとして大成することもなく、下宿を営むあけみと事実婚状態で居候の身である。
そんな世之介を周りの人に支えられ、そして頼りにされながら、今日も日常生活をおくる。
下巻で波乱ならずも何か動きはあるのかな? -
Posted by ブクログ
吉田さんの小説は、『横道世之介』しか読んだことがない。
本書は、短編+エッセイ集。
ANAの機内誌『翼の王国』が初出とのこと。
世之介とはまた違う側面が見えると期待して手に取る。
超短編小説なので、どうしても説明部分が目立って見える。
最初の二、三作は、そんな感じが否めなかったが、「居酒屋」あたりから、だんだん作品との波長が合ってくるのがわかる。
そうすると、やはり展開の鮮やかさに心を奪われる。
エッセイは…
以前NHKのネコメンタリーという番組で、吉田さんと飼い猫との日々が取り上げられていたのを見たことがある。
マンションの様子なども映り、作家の日常生活がほんの少し垣間見えたりする番組だ。
そこで見た印象は、ずいぶんスタイリッシュな生活をしている人、ということだった。
抑制的で、悪く言えばとっつきにくい感じさえあったのだ。
しかし、このエッセイから見える吉田さんは、ぎっくり腰に苦しみ、外国の映画館で、言葉もわからない映画に号泣する人物。
印象がだいぶ違って、自分にとっては面白かった。