吉田修一のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「400字詰め原稿用紙10枚程度で、エッセイを書いてください」と頼まれれば、誰でも、とまでは言わないが、まあそこそこ文章を書いた経験のある人なら何とか書けるのではないだろうか。
最近起こった事件とか、身の回りの出来事とか、友人と交わした何気ない会話などを題材にして、自分の思いを語ればいいのだから。
ところが、同じ分量で「小説を書いてください」と頼まれれば、話は別だ。
僅か4000文字程度の文章の中に、テーマ、人物構成、会話、エピソードなどを上手に散りばめ、起承転結のある一つの物語を構築しなければならない。
私は、それほど短編小説というのは好きではなかった。
というのは、先に書いたような素材や調味料を用いて、簡単に美味しい料理に仕上げてくれる「キューピー3分クッキング」のような短編になかなか出会わなかったせいだろう。
「で、なにが言いたいの?」「だからどうしたの?」
そんな読後感しか湧いてこない小説ばかりだった。
ところが。吉田修一、恐るべし。
著者との出会いは映画化され有名になった「悪人」が最初で、深い感銘を受け、彼の他の作品を読み漁ったのだが、短編が多い。意外だった。
が、彼の短編は珠玉の作品ばかり。
よくぞこの長さで心に響く物語を書けるものだと感心する。
なかでも、この短編集「あの空の下で」。
一編が僅か4000字程度の作品にもかかわらず、見事に余韻の残る、切なくもあり、ほのぼの感もある話ばかり。
ANAの機内誌『翼の王国』に連載されたものなので、舞台は海外であるとか、飛行機での旅に関する話とか制約を受けながらも、そのシチュエーションを活かし、一話一話が心に沁みる。
個人的には「自転車泥棒」が一番好きだ。
まさに彼の真骨頂を発揮した短編集で、単行本化に当たり書き加えた六篇のエッセイも秀逸。
現在も連載が続いているらしく、続編として「空の冒険」も発刊されている。
ANAに乗った時は、是非最新作を読んでみたくなる秀作です。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ書評にも何回か掲載されたこともあるみたいで
吉田修一のなかでも代表作なのかな?
地方都市に住んでいる小百合
ちょっと美形の弟・耕治がいる
だけど弟の彼女・めぐみが平凡すぎて似合わないとイライラ
そんな時、同窓会があってそこであったのは
憧れの先輩・聡史
イライラしてる小百合に先輩からお誘いがあって
東京に向かおうとする小百合だけど
前に本屋であったある一人の青年がいて・・・
という話なんですが(大雑把すぎやわ)
個人的にめぐみと小百合が話してる時
めぐみが言ってたこと
”耕治と付き合う前の自分は燦々たる結果で
どうしてこんなに男の縁がないのか
自己分析したんです”
その分析結果が
何か自分にめっちゃ似てて笑ってしまった
ああ、そうだよね、Mayoもそういうタイプやわ
って・・・何かちょっとだけ勇気をもらいました
最後に小百合が言ったひと言
『私も1度くらい間違ったこと、してみる』
上手く伝えられないけど
恋愛に悩むヒトにはちょっといい薬かも? -
Posted by ブクログ
ネタバレ≪内容≫
大宮の地にそびえたつ地上35階建ての超高層ビル。それはフロアがねじれながら、巨大な螺旋を描くという、特異な構造をもっていた。設計士・犬飼と鉄筋工・隼人、ふたりの毎日もビルが投影したかのように不安定になり、ついにゆがんだ日常は臨界点を超える。
≪感想≫
そびえ立つランドマークとそれに関わる2人の男の日常。Number10から始まりNumber1で終わる各節のタイトルは、歪みの臨界へのカウントダウンとなっている。結末が明確でないことに不満を感じる方もいるのかもしれないが、徐々に歪みに耐えられなくなっていく2人の不安や焦燥感と、その捌け口となる行動がとてもリアルに感じられ、現代の閉塞感を巧みに描き出している点もさすがと思った。建設中のランドマークの各階に貞操帯の鍵を埋め込んでいくという理解し難いはずのその感覚に惹きつけられるのは、僕だけではない、はず。 -
Posted by ブクログ
主人公の一人、隼人は鍵を埋める
作り手として自分だけが知っている秘密を残したいのか
それ以上の意味があるのか
隼人のそれまでの行動がとんでいるのでわかりがたい
もう一人の主人公、犬飼は愛人部屋で
“グローバル経済と現代奴隷制”という書籍を見つける
この本が気になって(実際にある書籍のため)購入
現代奴隷制という相反するような言葉が連なって
ひとつの単語を形成していることはなんだか不思議な印象
最後、これで終わり?と思う終わり方になっている
吉田さんのお話はあくまで生活の一部を切り取ったもの
という形になっている気がする
何か大きなことが起こったとしても
わかりやすいハッピーエンドも哀しい結末もなく
ただ、その後にも続く生活の余韻を感じるよう
それが素敵なんだけど、吉田テイストの余韻は
(あまり明るくもなくカラッともしていないので)
積極的には味わいたくないかも…と思ってしまいます(笑) -
Posted by ブクログ
会社の上司の奥さんが高校時代の知り合いの亜希子だった。
自分が中心にいないと気がすまない彼女は
私を観客に仕立て上げて高校時代は聡史と、
今は安藤さんとの仲を見せつける。
しかし同窓会をきっかけに亜希子と聡史が再燃。
聡史を好きだった私は今日も7月24日通りを歩く。
写真:畠山直哉 装丁:新潮社装丁室
自分の町がリスボンの造りと似ているって知ったら
いつもの景色が全然違った風に見えるんだろうなあ。
絶対絵描きの彼といた方が幸せになるのに、と思いつつも
彼がいたからこそ間違いに踏み出せたのかも。
章題がいまいちだと思ってたんだけど最後のリストとつながってて
うまい!と思った。そっくりだよ本当に。