吉田修一のレビュー一覧
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現場で何となく生きる男の寂しさ。貞操帯をつけても誰にも気づかれないくらいの存在であることに漠然とした不安を感じる、だからプロポーズって流れが良かった。
毎朝五時に起きて現場に向かう。重い鉄筋を肩に担ぎ、仕出しの弁当を食って、午後はまた重い鉄筋を肩に担ぐ。土曜の夜には毎週「KENTOS」で朝まで踊り、ときどき東京の女を引っかける。そしてまた、月曜になれば五時に起き、重い鉄筋を肩に
担ぐ。なんとなく、みんながそれを知っていると思っていた。自分がそんな一週間を送っていることを、本当になんとなくだが、みんなが知っているのだろうと誤解していた。もちろん何の根拠もないのだが、まさか誰も知らないとは思っても -
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多方面から熱くお勧めされた映画は、私が個人的に観たくないシーンがあることを知ったため、結局、鑑賞していません。縁あって、原作を読むことができました。
青春篇は、主人公の幸せとはいえない生い立ちからか、高度経済成長期の日本が時代背景にもかかわらず、どことなく陰鬱な印象が頭から離れませんでした。
上巻では、私は、喜久雄に対し、わだかまりを持ちつつも、腹を決めて喜久雄の世話をする幸子の姿がとても心に残りました。女性については、物語の中心ではないかもしれませんが、幸子に女性の意地、逞しさを感じました。途中、幸子が宗教に救いを求めようとするところも、強いだけでなく、弱い部分も描かれていて、人間味があっ -
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ネタバレ台湾新幹線を舞台に日本と台湾をつなぐ恋の物語、とでもいいましょうか。
商社勤務の春香と、春香を思い日本に留学し就職までした人豪。彼らのすれ違いが物語のメインに据えられます。
この恋物語、行く末は分かりませんが(続編出そうな)、逢えそうで逢えないヤキモキした展開。その長々と続く悲恋っぷりは以前読んだ平野啓一郎氏の『マチネの終わりに』に通ずるところありました。
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もちろんこの作品、それだけではありません。
現地人に恋し、妻子と仲が悪くなる安西の話(駐在(たまに)あるある)、日台の仕事のスピード感の話(これまた駐在あるある?)、はたまた台湾新幹線の整備工としてぐうたら人生を改めようとす -
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喜久雄の器の大きさがかっこいい。歌舞伎の家元の俊介とヤクザ出身で歌舞伎の女形の才能がある喜久雄が、自分たちの芸に一生を捧げた話。子供時代から大人までの波瀾万丈な人生。ひたすら歌舞伎が好きな喜久雄が素敵。
映画は観れなかったけど、本より映画の方が楽しめるだろうなと思った。
歌舞伎の演目ごとの解説があるのは面白かった。こういう知識を持って歌舞伎を観れば面白いんやろなと思った。
以下ネタバレ
ラストは解説が欲しい。
最後は歌舞伎の世界に入りすぎて現実と混同してしまった?
完璧な芸を達成できたから、悪魔の契約を回収する感じで最後は死んだってこと?
中国からの来客は徳ちゃんだと思う -
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三篇収録されている短編集。
最近吉田修一さんの作品にハマっていて、いくつか読んでいますが、何かから逃げている、または目を逸らしている男性を描いている作品が多いように感じます。この三篇の登場人物たちも、何かから逃げている男性。『熱帯魚』の大輔は、同居している子連れの真実やその娘の小麦、義弟の光男や近所に住む時先生に対し、養っている、気にかけていると思っていますが、その思いはどこか、本心とは違うところにあります。自分の淋しさを埋めるために過剰に介入し、その見返りを求めているような描写がとても切ない。
『グリンピース』は吉田作品の中で、一番嫌な男性(笑)でも、それより『突風』の新田の方が、相手の人生 -
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温泉を訪れる五組の男女を描いた恋愛小説。
表題作『初恋温泉』は、初恋の女性と結婚し、がむしゃらに働いて成功するが、夫婦で温泉に出かける前日、妻から離婚を切り出されるというお話し。主人公の重田は、妻には自分が一番幸福な瞬間を見せたいと思っていて、それ以外のダメな部分は見せないようにしていました。妻の立場からすると、良い面も悪い面もすべて見せて欲しい。一番幸福な瞬間を一緒に喜ぶだけのパートナーは、どこかお飾りのような気もして、なんだか寂しい関係であることが読んでいて感じられます。好きな相手だからこそ、輝いている自分だけ見せたい夫と、好きな相手だからこそ、すべてを見せて欲しい妻。自分自身、夫婦関係を -
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昭和後期の地方任侠家の盛衰のなかで、少年の心の成長を追う物語。
主人公の駿と弟の悠太が身を寄せる三村家は、叔父にあたる長男・龍彦がヤクザの組長、次男・文治がチンピラ、文治を慕う正吾と猛々しい男たちばかり。幼い駿はそんな男たちの中で育つ中、自死した三男・哲也と思われる幽霊を離れの家で見ることに。
暴力・酒・女に荒くれる男に自分もなっていくと思いつつも、どこか違和感を感じながら成長していく過程が繊細に描かれています。駿は三村家の男たちにある意味呪われていて、それが消化されるようなラストが良かった。歳を重ねていくうちに、駿が哲也に似ていく様子が少し恐くも感じました。