吉田修一のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
あの『悪人』や『怒り』と同じ系統の群像劇を期待して読み始めたら何だか違う。現代を舞台にした3編はそれぞれにつながりがなく、最後の4編目で時代は2085年に。私の苦手なSFチックな話になっているという。
現代の3編でそれぞれの主人公やその周囲の人は、ちょっとした悪事や倫理・正義にもとる行動をとるかとらないかという狭間におかれる。「橋を渡る」ってどういう意味だろうかと思うけど、人間として越えちゃいけないものを暗示しているんだろうかと思いながら読んだ。
4編目の未来でそれまでの3編がつながるんだけど、かといってよかったとも悪かったともいえない読後感。いやいやどっちかというと「そして、冬」ってだけあって、よくない未来。かろうじて、1編目でさわやかな若カップルだった孝太郎と結花が年を重ねた2085年にサインの響と凛にかけた愛情が救いかな。
吉田修一のうまさって現代をリアルに描くところや多様な立場の人の機微を描けるところだと思っているので、未来まで描かなくていいかな。 -
Posted by ブクログ
私とオカマの閻魔ちゃんと一緒に住んでいた「大統領」と呼ぶ男は、K公園のオカマ狩りで殴り殺された。大統領の亡くなるまでの痕跡を、いつも持ち歩いていたビデオカメラで撮り、それを見ることで思い出そうとするが…。
吉田修一の作品は、少しずつ積み上げていくタイプの砂山のような作品で、途中で大きくストーリーが展開したりするわけでもないので、あらすじが極めて書きにくい。
初期作品ということで、短編3つ。オカマの家に住み込む主人公、父がなくなって九州に里帰りし、酒屋の手伝いをする主人公、高校の水泳で強豪校に勝ちたい主人公。
ストーリー的には3本目の『water』が一番とっつきやすいので、1本目を読みかけてピンとこない人は3→1→2と読むといい。
個人的には、最近の興味と自分で書いている創作の方向性からも、1本めの表題作が一番印象に残った。同性愛という匂いのしないオカマとの同棲、一方で女性とも関係を続け、ある一点からその関係が崩れていく。
2本目に関しては、適度に事件は起こるし、大河ドラマ的に読めばよいのだろうけど、荒すぎて印象が薄かった。
なにかあるに違いない、と思って読んではいけない作品群。かと言ってつまらないわけでもない。比喩表現はあまりなく、作者のその時思っていることやちょっとした周囲の出来事を、文章にちょくちょく挟み込んでいくのは、同じようなスタイルで文を書いている身にとって親近感を持った。
若い人に読みやすい作品というわけでもない。誰に薦めるべきなのかは難しい。ただ、なにかしら良いものはある作品群だ。 -
Posted by ブクログ
実家が酒屋さんだったり、同性愛が登場したり、三篇少しづつ重なるところがあって、かなりの部分は実話に基づいているんかなと思った。(作者の実家が酒屋さんなのはインタビューに載ってた。)
三篇中、『Water』が一番読後感が良い。
最後の方の、400メートルメドレーリレーのスタート直前のいざこざが、張り詰めた緊張感の一つの表現形として楽しい。(ずっと気遣いしてたのに「ホモはあっち行っとれ!」て、身も蓋もない。。圭一郎が、「凌雲!この前、藤森が別れようって言うてきた。お前のことが好きらしか。俺に隠れてこそこそ人の女にちょっかい出しやがって」と口火を切ったのがどう見ても間が悪いので、しょうがない。。) 言葉遣いが、自分の地元とほぼ同じなので、すごく懐かしい気がした。自分の高校生活とは全然違うけど。 -
Posted by ブクログ
畑野智美さんの「海が見える街」に続いて読んだ。
当たり前だが恋愛小説でもこれだけ違うんだと
思わされた。こちらの「東京湾景」の方が好みだ。
得体の知れない愛や恋に対して真剣に向き合って
いるからこそ傷ついている亮介と愛だの恋だのを
小説の中だけのものと遠ざけている美緒。最後は
歩み寄って、また始めようとする。良いラスト。
でもこれからが2人には大問題。真剣な2人だから
こそ、大変なんだろうなぁ〜。と心配してしまう。
2人には幸せになって欲しいが、難しいよなぁ〜。
読み終えた直後の感想です。あっ、読むのが遅い
俺がほぼ1日で読めました。面白かった。