吉田修一のレビュー一覧
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「Water」が3つの短編の最後でよかった。清涼感で読み終えることができたから。「最後の息子」と「破片」は薄暗いところがあってちょっと苦手。でも、現実の青春はドロドロ、ギトギトもしている。「Water」はそういったものを泣き笑いで跳ね返す勇気と希望を感じる。凌雲にとって水泳部でキャプテンをしたことがきっとその後の人生でも何かの役に立つだろう。省吾に対する優しい想いは大人になっても忘れないと思う。凌雲は兄の雄大が言うように、人生の最高の時を何度も塗り変えていくのだろう。最高記録は破るためにあるのだから。そして、そのために全力を尽くすだろう。若い頃を懐かしんで『あの頃はよかった』なんてi言うのはず
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朝の種類
(P81より)
朝の歌舞伎町というのはどこかぽかんと気が抜けている。
街全体が大欠伸をしているような感じで、
どういう思考の流れからなのかは自分でも説明できないが、「なんか人間っていいなー」と素直に思える。
浪速の従姉妹漫才
(P142より)
こうやって大阪の親戚たちと会った時というのは、
その代わりに誰かを亡くした時でもある。
祖母、伯母、伯父・・・。
そんな時、彼女たちといると、人間というのは可笑しいから笑うのではなく、
悲しい時にも笑うことがあると教えられる。
いや、本来、笑いというものが人生の可笑しみからではなく、悲しみの底から立ち上がろうとして生まれたものではないのかとさ -
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ネタバレ好きだ!
(P105より)
ぜひ自分が好きなものを「好きだ!」と堂々と口にしてみてほしい。
大切なものを、「大切だ!」と叫んでみてほしい。
新しい一年が始まる四月でもあることだし。
(P106より)
望みを手にするために、誰かの承認を求める必要なんてない。
誰かを羨んだりせず、今の自分自身に満足する。
ユニークで、レアで、大胆な自分自身に。
『怒り』完成
(P167より)
(映画『怒り』の話)今回、この映画のポスターを、
篠山紀信さんが担当されている。
森山未來さん、宮﨑あおいさん、妻夫木聡さんの三人は、笑っているように見えなくもない。
だが、その顔をじっと見つめているうちに、
泣いてい -
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ネタバレ長崎出身の吉田修一さんの描き出す長崎という場所は、なんとも魅力的な土地ですね。これぞ、ある意味、土着的、ということか。自分の中では「悪人」と、この「長崎乱楽坂」は、長崎という場所の魅力をしっかりと描いた小説、ということで、とても好きです。
最後の「悠太と離れの男たち」の章で、東京から、おばあちゃんの法事で長崎に帰省した悠太が、映画の撮影している風景を見かけるやないですか。で、「映画でみる長崎は、ちょっと、よそよそしいよなあ」みたいな感想を、心の中で思うやないですか。あれとか、すっごく好きですね。吉田さんも、自分のまさに生活していた「リアルな」長崎と、映画で見る長崎と、「なーんか、ちゃうよなあ -
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ネタバレ映画では見たことがあった吉田修一さんの作品。小説は初めて。とても読みやすく、最後の息子の意味を見落としてしまい、2回読んだ。
1話 最後の息子:モラトリアムな主人公に母性を持て余すオカマの閻魔ちゃん。ビデオを通しての視点が新鮮で、ショートフィルムを見た気分になった。閻魔ちゃんの優しさが切ない。
2話 破片:母親の死をトラウマとしている兄弟。地元に残り過剰な愛情表現しかできなくなっていまった弟、都会で暮らす自信のない兄。もがきながら進もうとしているが、なんとも将来が心配
。
3話 Water:いきなりの青春。前2話からのずーんとした気持ちを一気に晴らす、疾走感。バスのシーンはもぞもぞし、水 -
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内容(「BOOK」データベースより)
ありふれた「日曜日」。だが、5人の若者にとっては、特別な日曜日だった。都会の喧騒と鬱屈した毎日のなかで、疲れながら、もがきながらも生きていく男女の姿を描いた5つのストーリー。そしてそれぞれの過去をつなぐ不思議な小学生の兄弟。ふたりに秘められた真実とは。絡みあい交錯しあう、連作短編集の傑作。
短編より連作の方が集中力が途切れなくて好きです。どの話も風合いが違っていて硬軟取り揃えた中で、同じ差し色として小学生の幼気な2人が出てくるのですが、その存在感が絶妙。皆悩みが有って自分の事ばかり考えているようでいて、少年たちが気になってしまうあたりでとても親近感が沸