吉田修一のレビュー一覧
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ネタバレ過去と現在2つの事件に関わる満洲と滋賀の2つの湖。
そのとても美しい情景と子供の残虐さが共通している。
そしてそれを知っている大人が口を噤んでしまうことも。
真実を語ることと沈黙を貫くこと、子供のためにどうすべきなのだろう?
また、誰でもいいからとにかく犯人を作り上げる、という警察の悪しき構造もとてもよく描かれていた。
他人の幸福や真実と自身の立場や利益に利益相反がある時、どちらを大切にするのだろう?
なぜ人間はそんな選択ができてしまうのだろう?
そして、主人公の増幅していく「誰かに従属したい」という仄暗い欲望。
これは程度の差こそあれ、誰しも持っているものなのかもしれない。
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ネタバレたどり着いた場所は、あの日夢見た世界。
お互い苦難の道を行く俊介と喜久雄。励まし合い、競い合い、高め合う日々が戻ってくる。それは歌舞伎のために他の何もかもを犠牲にする日々でもあった。
不幸を引き換えに高みに近付いていく喜久雄。俊介には病が降りかかる。競い合う俊介を亡くした喜久雄はどこまで行くのか。人としての領域を逸脱していく喜久雄を、誰も止めようとしなかった。時代の移り変わりが歌舞伎を、芸術を消費しても、もう喜久雄には関係なかった。
歌舞伎の演目には詳しくないので、知らないものがたくさんあった。子を思う親の気持ち、恋人を思う娘の矜持、主君への忠信など、歌舞伎にはさまざまな情が現れる。それ -
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ネタバレ己ひとつで成り上がれ。
任侠の家に生まれた喜久雄は、抗争で父を失い、縁のあった歌舞伎の大名跡のところで部屋子になる。そこには跡継ぎを約束されていた俊介がいた。競い合って仲良く成長していく2人だが、半二郎の降板に代役として喜久雄が指名されたことから、俊介が出奔し——。
持たざる者と奪われた者。語りが話に引き込む。映画は観ていないけど、映像として映えそうな作品ではある。帰ってきた俊介は、万菊が言ったように恨みを抱きながらそれでも舞台に立たざるを得ないのだろうか。喜久雄はどこまで自分を抑え込みながら爆発を待つのだろうか。最初の頃にあった、復讐をしないと言われながら、自分の中では機会をうかがってい -
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フォローしている方のレビューに惹かれて読んでみたいと思った。
大学院生・岡田一心が既に引退している伝説の女優・和楽京子こと石田鈴の自宅で荷物整理のアルバイトをすることとなり、そこから交流を深めていく物語。
戦後のエンターテインメントの歴史を辿りながら、その時々に銀幕を彩った色々な女優さんを彷彿させる鈴さんの魅力と生き様がとても面白くスルスルと読めた。
加えて、これまで観てきた映画のエッセンスが詰め込まれたような、著名な映画監督たちとその代表作を思い出させる(架空の)作品が語られていくのも楽しい。
後半には鈴さんと一心の出身地である長崎に落とされた原爆の話が入ってくる。
私も長崎生まれで、小 -
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歌舞伎の事はよくわからぬ私の感想なんぞとも思うが。
このような世界は血が全て。そう私は思っていたが、これを読むとそうじゃなくても才能があれば上を目指せる世界のようだ。気になるのでググってもみたが確かに3割ほどは血の外からで、最後は養子の形で継いでいる。
上巻は青春篇で、誕生から20代まで。「血」の俊ぼんと、ヤクザの血の喜久雄。匂いたつような女形の二人は歌舞伎によって出会い、才能によって分断する。
上巻最後は二人の運命が反転しそうな雰囲気で終わるが、下巻でどうなっていくのか。
歌舞伎の一端に触れる感じ。平凡な私は断然喜久雄を応援してる。
ザ、昭和の世界で、ノスタルジー感もあります。親が