吉田修一のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
著者の吉田修一は、旅行にあう本を探していて、ANAの機内誌で連載しているエッセイをまとめた『あの空の下で』を読んでファンになって以来、追いかけている作家。
特に前述書に収録された「東京画」は、たぶん短編小説のオールタイムベストを選ぶとしたら、ベスト10には入れたいほど気に入っている。
本書は、そんな『あの空の下で』、『空の冒険』に次いでシリーズ三作目となるエッセイ集。旅のちょっとした出来事を、著者独特の視点でうまく切り取っており、エッセイを読む醍醐味を味わわせてくれる。同じ著者の短編集『初恋温泉』と合わせて、旅にもっていくのにぴったりの本だ。 -
Posted by ブクログ
読み終えた後にふらりと旅に出たくなる昭和の名曲・山口百恵さんの「いい日旅立ち」がピタリと来る気分爽快な作品集です。旅と人生の一コマを切り取ったかの様な掌編小説12編と海外旅行記エッセイ6編には本当の意味での悲しみは一切なく辛い過去があってもそれを乗り越えたからこその今の自分がいるみたいなひたすらポジティヴな考えの主人公達が描かれていて前へ進む事を恐れない一歩踏み出す事の希望と勇気をもらえましたね。これらの作品達を読むと過去を悔やんでも仕方ない事で自分の選んだ道を信じて生きる事が大切だと改めて感じましたね。
『願い事』飛行機内で神さまに願う。『自転車泥棒』最悪の気分を救ってくれた届け先間違いの手紙。『モダンタイムス』さり気ない人生の恩人。『男と女』別れても好きな人。『小さな恋のメロディ』後輩男子との久々の再会。『踊る大紐育』米国旅行で世話になった女。『東京画』裏切りを許し合えるのが親友。『恋する惑星』年下男との恋。『恋恋風塵』台湾で別れた女。『好奇心』大学生の息子と母親。『ベスト・フレンズ・ウェディング』一人旅も良い。『流されて』苦しむより楽しむ恋愛。『エッセイ6編』日本人が遥か昔に忘れ去った自由さと純朴さ。 -
Posted by ブクログ
吉田修一の小説を読むのは4冊目くらいですが、かつて読んだ「最後の息子」の主人公の10年後という設定で書かれたのがこの連作短編小説です。
「最後の息子」は、新宿二丁目で働くオカマのヒモをしている若い男の話。
その男が30代になり、子持ちの女性と結婚して4歳になる血のつながらない息子の父親になっている、という設定。
男が家族3人で新宿のバーニーズ・ニューヨークで買い物をしているとき、偶然にかつて一緒に暮らしていたオカマと会ってしまう…というのが表題作にもなっている「春、バーニーズで」。
設定だけ聞くと突拍子もないコメディを連想してしまいますが、いたって静かで細やかな小説です。
吉田修一は、平和で平穏で平凡な日常が、ふとしたタイミングで綻びをみせ突如として非日常が人生に入り込む、その瞬間を描くのがとても巧い。
「夫婦の悪戯」における「狼少年ごっこ」で夫婦が狼狽する場面なんてまさにそう(ただ、その狼狽ぶりを「う、嘘でしょ」「そ、そうだよ」みたいなドモリ科白で表現するのはイマイチのように思えたけど)。
「パーキングエリア」なんて、小説丸ごとが「突発的な日常の崩壊」を表現している。
あと、女性の描写がところどころ佳いですね。
「夫婦の悪戯」で、先に一人で部屋に帰ったはずの妻が実はドレスのまま一人でバーに行ったことを話す場面が妙に気に入った。
現実世界にある固有名詞がためらいなく登場するのも特徴的。
「バーニーズ」がまさにそうだし、「聖蹟桜ヶ丘」「日光金谷ホテル」なんかも。
そういうリアルな固有名詞が出てくるだけで小説全体が親しみやすいものになるような気がする。
もちろん固有名詞のセレクションにセンスが必要だとは思うけど。
ちなみに200頁近くある文庫ですが、文字がゆったりと配置され、しかもモノクロのイメージ写真が多数挟まれているので、思ったよりも分量はありません。
紙も上質なものが使われていて、自分は本屋で実物を手にすることなくネットで注文して買ったので、最初に本を開いたときはちょっとびっくりしました。 -
Posted by ブクログ
「Water」が3つの短編の最後でよかった。清涼感で読み終えることができたから。「最後の息子」と「破片」は薄暗いところがあってちょっと苦手。でも、現実の青春はドロドロ、ギトギトもしている。「Water」はそういったものを泣き笑いで跳ね返す勇気と希望を感じる。凌雲にとって水泳部でキャプテンをしたことがきっとその後の人生でも何かの役に立つだろう。省吾に対する優しい想いは大人になっても忘れないと思う。凌雲は兄の雄大が言うように、人生の最高の時を何度も塗り変えていくのだろう。最高記録は破るためにあるのだから。そして、そのために全力を尽くすだろう。若い頃を懐かしんで『あの頃はよかった』なんてi言うのはずっとずっと先でいい。全力で生きていれば、いまが最高の時だと思う。10代や20代が人生の最高の時と決め込むのは本人だ。その後の人生のほうが長いのに。歳相応の全力で生きていこう。出し惜しみなんかしていたら、思い出にしがみついているみたいな生き方になっちゃうもの。元気出していこう!オレ!