吉田修一のレビュー一覧
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解説を読んで、作者は逃亡劇に対する文学作品を得意とするんだなと納得した。
最初の逃げろ九州男児は、一通を逆走し警官に止められたとき、ふと何もかもどうでもよくなり犯罪歴のない男性が母親を乗せたまま車での逃亡劇。走馬灯のように過去の思い出が蘇るが、逮捕され冷静になるものの、最後はまた逃走で終わる。
2作目の逃げろ純愛は、教え子と教師のまさに純愛。結果未成年との交際で逮捕されるがその際に押収された交換日記が何とも青々しい。
3作目、逃げろお嬢さん。あとがきでも述べられている女性芸能人の逃亡劇と、それをドッキリと勘違いした熱烈ファンとの邂逅。
勘違いもここまで来ると立派と思わせる良作。
四作目 -
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引退した昭和の大女優の倉庫の片付けのアルバイトをすることになった、大学院生の男の子。元女優の80代のおばあさんと、通いで来るそれよりは少し若いお手伝いさんと、なにとはない会話をしながら、女優の紹介、それから、男の子の恋愛の顛末を。男の子は、一度就職し、心を病んで辞めて、大学院に入り直していた。カフェの女の子を好きになり、結ばれるが、女の子は別れた元彼を忘れられない。ラストは、数年が経って、家庭を持っている彼が、大女優の死を知るという構成。
女優には同郷の親友があり、むしろ彼女のほうが女優になるべきだったと思っている。二人とも長崎で被爆し、親友のほうはそれが原因で白血病になり、若くして死ぬ。男 -
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■ストーリー
戦後の混乱期に「和楽京子」の名で銀幕に登場し、世界を魅了した女優 石田 鈴。華々しい経歴を残しながらも、今は静かに余生を送る老女。
その彼女が所有するマンションの一室にぎっしりと置かれた資料の整理役としてアルバイトに訪れた大学院生の岡田一心。
部屋いっぱいの段ボールを開ける度に蘇る往年のフィルム・手紙・スチール写真。鈴の傍らで長年支え続けた昌子とのやりとりを通じて、次第に鈴の栄光と痛み、愛と喪失の軌跡が浮かび上がっていく。
やがて、老女と青年のあいだに芽生える静かな心の交流が、過去と現在をつなぐ温かな余韻を生む…。
■読みどころ
この小説の魅力は、なんと言っても「銀幕(映 -
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ネタバレ大学進学のために長崎から東京に来た青年が様々な人と関わっていく約1年間の生活を描いた物語。
この本は2010年の本屋大賞3位となった小説で、読もう読もうと思いながら題名が個人名で何となくピンと来なくて、なかなか読む気になれなかった。
読んでみると、随所に「フッ!」と笑いたくなるような表現があり、楽しく読むことが出来た。まるで、有川浩氏の小説みたいな。。
例えば、
・主人公が上京する時に、母親に無理やりカバンに入れられた雑巾が、アパートで役立った時に、
「息子にとって新生活は希望なのだが、母親にしてみれば新生活は雑巾らしい」
・友人の家に電話をした時に、その母親が出て長話をすることにな -
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パークライフ
淡々と進んでいくストーリーで急な展開はない。その穏やかさに包まれていたら、スタバ女の決意に唖然とした。彼女は何を決めたのだろうか。
スタバが日本上陸したのは1996年、この本が書かれた2002年はスタバは最先端なカフェだったのだろう。猿をペットにしてる人も当時はそんなに多くなかったのかな?終始ちょっと小洒落た雰囲気がある物語だった。
印象に残ったのは、
公園のベンチで長い時間ぼんやりしていると風景というものが実は意識的にしか見えないものだということに気づく。
日比谷公園全体を俯瞰してみると人体胸部図の様に見える。
という描写だ。私は確実に前者で、よく公園には行くが、公園全体を -
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ずっと読んでみたかった吉田修一さん。
テーマ的に重たそう、ボリューム感があり、
見送っていましたが、新刊で見つけた本書。
これなら読めるかも!と思い手に取りました。
大学院生の一心が、
教授の紹介で、
伝説の映画女優だった鈴さんの
自宅の荷物整理を手伝うことに。
「モノクロの夏に帰る」と拝読してたのですが、
こちらもなかなか読み進められず。
一心という名前に対する私の中のイメージと、
作品のなかでの一心の言動が一致せず。苦笑
中盤以降は、第二次世界大戦を経験している鈴さんの過去が明らかになっていき、女の友情に思わず泣きそうになりました。
そして夏が終わるまでに読めて良かったです。
恋