吉田修一のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
原爆やハリウッドデビュー、スキャンダルなど、波瀾万丈な人生を歩んできた鈴さんを描いているにもかかわらず、物語は終始淡々と展開していく。その静かな語り口が、かえって心地よく感じられた。
佳乃子さんという存在が鈴さんの役者人生に影響を与え、さらに鈴さんの言葉が一心の人生を彩っていく。そうして過去から未来へと連なっていく流れが美しく、その過程に深く感動した。
鈴さんの歩んできた歴史、一心の恋や過去、現実だけでなく空想の場面までも織り交ぜながら、これほど読みやすく、綺麗にまとまった作品になっているのは、やはり作者の確かな筆力があってこそだなと。 -
Posted by ブクログ
▪︎パーク・ライフ
日常の一部を切り取ったかのような、なんの変哲もない生活の中に隠れたストーリーを、男女の絶妙の距離感を表現しつつ、特別にしてくれている感じが好きだった。
目を開いているのに目の前のものは見えていなくて、別のことを考えている時の解像度が高くて共感した。オチに関しては、私は深い考察をするような思考を持ち合わせてないのだけれど、日常にオチなんてものはないのだから、それでいいのだろう。
▪︎flower
「この世にある花の数だけ、人には感情がある」
良い言葉だと思った。花をテーマに数多くの複雑な感情や人間模様を描いていて、シリアスな場面とは裏腹に鮮やかな表現にのめり込んでしまった。 -
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専門を極めていくと確かに孤独になっていきます。ついてこれる人がいなくなると言うのはおこがましいですが共感しあえる人がいなくなるのは事実でしょう。この物語ではそんな中でも支えてくれる人はわずかですがいつも近くにいるのですよという希望が読み取れるのではないでしょうか。本人は気付かないでしょうけど。
ひとりの歌舞伎役者の生涯を通して、長い人生、時代とともに変わりゆくことばかりです。変わらないものはなくこの世の無常を知らされます。
しかし移ろいゆく世の中でも阿古屋という芝居ではたとえ人の心がかわりまた自分の人生が終わろうともあの美しい思い出だけは誰にも奪えないのだと伝えてくれます。それだけでこの人生満 -
Posted by ブクログ
大学進学のために上京してきた横道世之介の1年間。
世之介って、ずば抜けていいヤツってわけでもなく、だらしないところもあるごくごく普通の18歳。
だけど誰の懐にもスーッと入ってきて気を遣わせず、一緒にいると肩の力が抜けるような気安さがあります。
押しに弱くていろんな事をあれこれ引き受けるハメに。
正直この本どうしてこんなに人気があるのかな…と思いながら読み進めた中盤、読み味がガラッと変わりました。
大学生の普通の毎日がいきなり尊くなり、しょうもない出来事ほどキラキラしてくる、半端ない切なさ。
疎遠になっても「あいつ今頃なにしてるかな」「あんなヤツいたなそういえば」と、みんながふと思い出し笑いする