あらすじ
昼間の公園のベンチにひとりで座っていると、あなたは何が見えますか? スターバックスのコーヒーを片手に、春風に乱れる髪を押さえていたのは、地下鉄でぼくが話しかけてしまった女だった。なんとなく見えていた景色がせつないほどリアルに動きはじめる。『東京湾景』の吉田修一が、日比谷公園を舞台に男と女の微妙な距離感を描き、芥川賞を受賞した傑作小説。役者をめざす妻と上京し働き始めた僕が、職場で出会った奇妙な魅力をもつ男を描く「flowers」も収録。
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「なんにも隠してることなんてないわよ。逆に、自分には隠すものもないってことを、必死になって隠してるんじゃないのかな」
ビデオの時計は、電話をかけたときが「20:34」で、受話器を置いたときが「20:43」だった。あと一分でちょうど十分だったのだが、その一分で何が話せたというわけでもないのに、その一分で何かが話せたような気もした。
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読んでいると、人は何か決定的なことを取りこぼしながら、それでも生きていかなければいけない、むしろそれが必要なんじゃないかとおもった。
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表題作「パークライフ」よりも、同収録「flowers」がとにかく圧巻。
「同じルートを廻っていると、ふっと外へ飛ばされるような気がする」
生活に「僕」を縛り付けるような地元のしがらみや仕事のルーティンが、墓石やビールケースなどやたらと重みを強調する仕事で表現される。
対比される元旦や鞠子の軽やかさ、自由さ。同僚の妻と堂々不倫をしたり、公衆の面前で金太郎の喜劇を演じてみたり。露悪的でありながら、どこか自由。
心を通わせていたはずの彼らや、また兄弟のように接してきた従兄弟と、どうしようもすれ違っていく瞬間。
壊れたシャワーを浴びながら元旦を殴り付けたあの日のように、鞠子ともいつか、壊滅的な出来事を迎えるのだろうか。「いち抜けたぁ」とふっ飛ばされる衛星のような、そんな結末を想像してしまうようなラスト。
吉田修一ならではの何とも言えないモヤモヤ感を存分に感じられる傑作だった。
オススメです。
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⚫︎受け取ったメッセージ
公園は人が入ってきて出ていく。
体は食べ物が入ってきて出ていく。
同じ人が来る、同じ食べ物が入る。
でも、違う人も来るし、違う食べ物も入る。
毎日毎日、同じように見えていても、絶対に同じ日はなく、気づかない間に、少しずつ少しずつ変わっていっている。小さな変化を受け取るという丁寧さを思い出させてくれた。
⚫︎あらすじ(本概要より転載)
昼間の公園のベンチにひとりで座っていると、あなたは何が見えますか? スターバックスのコーヒーを片手に、春風に乱れる髪を押さえていたのは、地下鉄でぼくが話しかけてしまった女だった。なんとなく見えていた景色がせつないほどリアルに動きはじめる。『東京湾景』の吉田修一が、日比谷公園を舞台に男と女の微妙な距離感を描き、芥川賞を受賞した傑作小説。
⚫︎感想
私は、とても「パーク・ライフ」が気に入った。
公園は、平和で事件が起こらない場所として期待されている。本書も公園のように、特に何か大きな出来事が起こるわけではないのだが、ちょっとした不思議な出会いや出来事がある。そのちょっとした出会いや出来事の積み重ねが多くの人の日常であり、その中で本当に気づかないくらい少しずつ変わっていく。また、人体模型に惹かれる主人公が描かれている。人間が食べ物を摂取して、排泄するその淡々とした流れにも、気づかないくらい少しずつ体に変化がもたらされる。気にしなければ、ただただ流れていく日常が、丁寧に描かれるとこうなるのか…と思うと、自分の日常も、当たり前だが同じ日は二度とないと意識すると、なんでもない日が少し大切に思える。当たり前だと思っていることは当たり前ではないなどと、使い古されたフレーズは常に頭の中にあるつもりでいるが、改めて感受性豊かに、丁寧に生きていくことを思い出させてくれる1冊だと思う。
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パークライフは大きなことは何も起こらない。
読みやすいので一気に読めてしまう。
フラワーズ、こちらの方が惹かれた。
出てくるキャラがいそうでいないが、感情移入できる。ところどころで「おっ」となる展開もある。
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芥川賞受賞作、作家は話題作『国宝』の吉田修一氏
文章が上手いなあ、スラスラと入ってくる
こういう自然な成り行きの対人関係が大好きなので、自分の現実生活にも起こってほしい
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収録されている2話のうち、タイトルにもなっているパークライフが良かった。
以下、ネタバレあり
公園から過去の話を思い出し、そこからさらに過去の初キスの話へと展開されて、また公園に戻ってくるところ。複雑な構成だが、スッと頭にイメージできて、自分も体験している感じになれた。人物同士の距離感が不思議。夫婦は離れていて、夫婦じゃない、初見同士の方が近い。最後のふわっとだけど何か芯のある終わり方。
全体的にさっぱりしている。
2話目は1話目と違い内容が気持ちの良いものではなかったので★-1で、トータル★4とした。
ただ、表現というか、時系列が前後する構成はこちらも健在で、読みものとしておもしろかった。
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パーク・ライフ
大きな公園には様々な人が集まる。仕事の息抜き、散歩、運動など。
仕事の昼休みを公園で過ごす女性と主人公の交流のお話。
文体、雰囲気が好みだった。主人公が淡々としている作品好きになりがち。
心を新鮮な風が通り抜けたような読後感。
flower
パーク・ライフが爽やか寄りならflowerはドロドロ寄り。
上京した主人公の変化の話。月日を重ね、職場の人間や妻との関係が緩やかに変わっていく。
職場の先輩、元旦が印象的。私には想像もできない思考回路を持ち、理解はできないけどその人の中にある理念を通して生きているように見える人物を読むのが興味深かった。終わりは何かを暗示していそうなんだけどうまく言語化できない。
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横道世之介から流れつき拝読。出てくる人物がみんな魅力的に浮かび、くすっと笑えるのがとても好きだった。パークライフにて、電車内で友人と間違えて話しかけてしまった彼女と偶然にも再会したときの声の掛け方が気に入った。さっき何か言い忘れたことがあるような気がして、つい走ってきちゃったなんて、
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パークライフ、面白かった。
月9ドラマの3話目くらいまでの、おしゃれで、何かが始まりそうなワクワクだけを取り出してる感。実は事の顛末とか感動的な展開とかって要らなかったのかも、とか。
flowers のほうはそこまで。
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「パーク・ライフ」何気ない日常を綴っているように見えて、不思議と心惹かれてしまう表現が多かった。主人公のぼくが公園に座り目を見開いた瞬間、あらゆる景色が大小問わず一気に押し寄せてくる場面がある。その感覚は私が幼少期にブランコに乗りながら感じた感覚に似ており、遠い記憶がふっと呼び起こされたような不思議な気持ちになった。 「flowers」はエゴや虚栄心など人間の負の感情がひたすら描かれており、読んでいて辛かった。一人の悪意が周りの人へドミノ倒しのように伝わっていく様子に戦慄した。作者の作風は振り幅が大きい。
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んー何だかよくわからない本だったな。
前半の話はかろうじて読めるけど、後半の話は好きな感じではないしで、なぜこれが評価されているのかわかりませんでした。。
自分が悲しい。
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パークライフ
淡々と進んでいくストーリーで急な展開はない。その穏やかさに包まれていたら、スタバ女の決意に唖然とした。彼女は何を決めたのだろうか。
スタバが日本上陸したのは1996年、この本が書かれた2002年はスタバは最先端なカフェだったのだろう。猿をペットにしてる人も当時はそんなに多くなかったのかな?終始ちょっと小洒落た雰囲気がある物語だった。
印象に残ったのは、
公園のベンチで長い時間ぼんやりしていると風景というものが実は意識的にしか見えないものだということに気づく。
日比谷公園全体を俯瞰してみると人体胸部図の様に見える。
という描写だ。私は確実に前者で、よく公園には行くが、公園全体を俯瞰して何かに見立てたことがなかった。そんなこと意識的に考えたこともなければ、意識的に考えても公園の形が立体的に思い浮かばない。いつも見ていた様に思っていたこともよく見てはいなかったことに気づかされた。
朝井リョウ氏が中学生の時にこちらの本を読んで何だかわからなかったといっていたので読んでみたのだが、とっくに大人になった私も同じ様な感想を抱いた。
flowers
人々の多面性を感じた。見えているパーツによって、いい人にも悪い人にも見える。
パークライフが淡々とした日常の物語だったので、flowersのグロさや生々しさが際立っている。パークライフもflowersも絵だったとしたら同じ作者だとは思わないだろうなぁと思った。
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パーク・ライフ
いやあ、なかなか謎。
謎だけど淡々とした特に事件が起こらない日常。
ぽけーと文字を追うにはちょうど良いような
ふーん、へえー、って。
で…どうした?って、感じではあるけど、まあそんなもんか
表紙の刃物持ったレゴみたいな人が、結局なんだったんだろうか
ゲームみたいなロゴ
ゲームの中のようなふわふわした文体
2話目のflowersは更に謎だった。
なんだったんだ?
国宝の方とは思えないほどの、違う世界観だった。すごい振り幅の方だな。
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ふわっともわっといい感じで読めたし、日常のどこにでもあるふうな風景の中で、人の日常を面白く覗かせてもらったような。
けれど、そこから何を読み取るのか?だと言われると私には、よくわからなかったぁー。
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中編2編。
どちらも女性が謎すぎる。
パークライフ
馴染みのある日比谷公園が舞台だったこともあり、すんなり入れたのだが、この女性は理解できなかった…
微妙な距離、というより、なんかふわふわして現実感が無い印象。
今度日比谷公園に行ったら、この人や気球を揚げる老人を探してしまいそう…
flower
元旦氏も謎だが、奥さんが普通なようでいて…
「国宝」を観る前にもう1冊くらい氏の著作を読んでおきたい。
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100pの短編小説。
読後感も悪くないし、ふわっとした感じなのだが、一つ一つの要素が重なって一般的ではない。夫婦の留守を守りながらサルの世話をするとか、公園内で偶然あった女性と昼休みに何度も会う様になるとか、母がアパートに泊まりに来ているが、自分はそこでは暮らしていないとか。
そういうのが何個も重なっているので嘘くさく感じてしまう部分もあった。
Posted by ブクログ
「国宝」の著者の他作品を読みたくて適当に購入。
芥川賞受賞作とおびにあったから吉田修一氏の初期の作品なのかな。
構成が匠というか、奇をてらったというか、不思議な構成。
いえ、読み手の自分が慣れていないだけでしょう。
読後には構成が素晴らしいなと思った。章別に無造作に出てきた人々がそれなりに何らかの線で繋がっていた。いや、無造作と思わせるところに才能や苦心がつめられているのかも。ホントに無造作にこういう構成が出来るのならそれが才能なのかもしれないけれど。この小説は好きになれない。知ってる世界とあまりにも遠くて「そうなんだ」としか感想が書けない。
そして、なさけなくなる。みじめにさえも。
でも、多くの人は感動してたくさん買われて芥川賞だね。
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表紙のデザインが素敵だったので読んでみる。
この作品は芥川賞受賞作品みたいだが、
難しいことは私には分からない。
『パーク・ライフ』は男と女の微妙な感じが良い。嫌いじゃないよ。これは。
同時収録の『flowers』は嫌い。すごく嫌。
何か、人の嫌な部分が出てて嫌。
『flowers』だけなら☆1つ。
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他の方の感想を見ると、この小説は2000年代初頭の東京の空気感がよく描かれているとのこと。僕が上京したのは2015年のことで、その時代の東京を知っていたらもっと深く没入できていたのかと思うと少し損した気分になった。
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【要約】パークライフ:身の回りにある微妙な関係を、主人公が独自の視点で物語る。
flowers:配送業の同僚とのやりとりから、過去や自分の曖昧な部分を写しだす。
【感想】どちらの話も特に何かすごく深いというわけでもないが、読み手が情景を想像できるように緻密に登場人物の気持ちを描いている。
序盤で、見ず知らずの人に話しかけて案外上手く切り返されたり。高級ホテルに宿泊していたり。突拍子のない内容に、まず惹きつけられた。
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表題作のパークライフよりもflowerが印象に残った
単純だけど、登場人物に苗字が同じ人や名前が同じ人が出てきたのでなんか妙な感じ
自分の名前が小説に出てきたのは初めてで少し嬉しい
結末はあやふやで
主人公の心情のまんまだと思う
でもなんか、なんとなく、、、それでもいいなって思った
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「2000年代あたりの東京」という感じの小説。
「自分の視点」からブレずに書き続けるというは思った以上に難しいなと。
読みながら、登場人物の視点が混ざってくる感覚で読んだ。
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芥川賞を受賞した吉田修一さんの作品。
「パーク・ライフ」
「flowers」
「パーク・ライフ」
うーん……。
なんと言えばいいのかしら?
優しい小説?
主人公の暮らしの中で起こったことを、淡々と説明してくれるの。結構具体的に…。
「えっ!そんなことあったの?」
でもなく…
「へぇ〜」とか「ふーーん」とか、たまにクスッとしたりして…みたいな…何にも起こらないお話。
わたしは嫌いじゃないけど。
あっ!そうだ!
弟の話をビール飲みながら、お菓子食べながら聞く感じが近いかも。
何にも起こらないんだけどね……。
「…………っで?」って感じ。弟だしね!!
ただ……
「flowers」こっちの方がスゴイかも。
職場の人間関係だったり…夫婦関係だったり…
「パーク・ライフ」と似てる感じで僕が語るんだけど……。濃さが違うの。ギュッとした感じ。
そして、爽やかじゃないの。
吉田修一さんっぽいなぁって思う。
でも……だからかなぁ…許せるちゃうんだよなぁ。
Posted by ブクログ
表題の「パーク・ライフ」と「flowers」を収録。吉田修一の作品は初めて読むが、他の作品は「パーク・ライフ」みたいなのか、それとも「flowers」みたいなのか、もっと読んでみないと分からない。
大きく劇的な展開はなく何処か淡い色彩感で全体を描いたような作品と思えたが、あえてそういう風な設定にしたのであろう。
主人公の日比谷公園でのことの方より、大学先輩夫婦から頼まれて過ごしているマンションの方がよくよく考えたらおかしくあり、どこか物憂げさのない儚げさが作品全体通して見え隠れする。
しかし名前の知らない(あえて聞かない)女性と、ふとしたことから出会い、公園で所謂逢瀬とまでは行かないまでも会うことなどは、本来中々あり得ないことであろうが、こういったところが現代においてもあり得そうなこととして描いているところが、妙なリアルさがあろう。しかし恐らくは読む人に評価が分かれそうなところでもある。
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生徒が「ビブリオバトルで紹介してみたい」と言ってきたので読んでみました。
『悪人』や『横道世之介』で有名な著者が、デビューから数年たったころに書いて芥川賞を受賞した作品です。
文章はきれいで、(こう言っては失礼ですが)芥川賞作品としては読みやすい方だと思います。描かれている情景も、主人公の心情も違和感なく読んでゆくことができます。
ただ、読後感としては「で、だからなに?」という印象が強く、私の中では印象深い読書体験にはなりませんでした。
生徒がどのような紹介を考えているのか、聞いてみるのが楽しみでもあります。
Posted by ブクログ
日常の中でモヤモヤとするけど、そんなに注視するわけでもないぼんやりとした心のささくれを丁寧に綴っていく。何も進まないし、解決しないが、ほのぼのと時間を潰したかのような満ち足りた退屈さがここにはあった。
ラストにあった「よし決めた」の一言が、爽やかなワサビのような風味を生んでいる。
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芥川賞を受賞作ということで読んでみた。短い本だったので、これをもってこの読者を評するのはフェアではないとは思うが、読んだ限りよくも悪くもないといった印象。読みやすい文体かつ比喩表現のテクニックも高いが、心動くシーンは少なかったかな。
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タイトルの「パークライフ」は他の吉田作品とは毛並みが違かった
ゆるく淡々としたややオフビートな文体は伊坂幸太郎ぽさを感じた
洒落た会話が心地良くこんなのも書いてたんだと驚き
登場人物のキャラクターも全員素晴らしく日比谷公園の近くに住んでる人は羨ましいなと読んでいましたがいかんせん何も起こらない(笑)
でもいつかこの本を持って日比谷公園行ってみようと思う
個人的にはもう一つの「Flowers」の方が好みだったかも、わかりやすいし
Posted by ブクログ
なんかいいなあ〜と思った。ラストシーンのよく分からなさが好き。
そこにあるものが本当に「そこにある」状態になるのは見ている側が意識して見つめているからで、ぼくは彼女と出会う事で初めて公園を本当に「そこにある」ものに出来たのかな〜っと思った。
flowersはずっと嫌な雰囲気で終わった。
吉田修一、集団の突発的な暴力を書くのが上手い気がする。
どちらもよく分からない感じではあるけど一気に読み切れる面白さがあった。やっぱり好きだな〜この作家。