吉田修一のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
著者の作品で描かれる、人間模様が魅力的で、
楽しみにしてページをめくったこちら。
物語の主人公、大きく年が離れた老女と青年。
苦難を乗り越え強く生きてきた鈴さんと、彼女に魅了されていく一心。
2人の心のつながりが、読んでるこちらにじんわり伝わる。鈴さんの存在が、その後の一心の支えとなり続ける所に、縁の尊さを強く感じる。
ところが私が印象的だったところは、
一心と桃ちゃんのくだり。
味のついていない水が苦手な桃ちゃん。
「だって、普通の水って、薬飲んでるみたいなんだもん」
それに対して何も言えない一心。
自分が水が好きなこと。人生の最後に口にしたいものは何かと聞かれたら、一杯の冷えた水がいいと思 -
Posted by ブクログ
ネタバレこのままだらっと何ともない生活が淡々と続いていくのかなあなんて呑気な気分で読み進めていたら、最終章で突き放された。
書いてある言葉の意味は分かるけれど、全然意味が分からなくて、戸惑いながら読み進めた。
人の多面性って侮れないですよね...と再認識させられた。
みんな平凡だしみんなやばいやつ(なんとなく、吉田修一の根底には一貫してこれがある気がする)。
以下備忘
すごくタイムリーな(8日前に神戸で起きた、エレベーターで乗り合わせた男性に若い女性が刺殺された事件を連想するような)結末で、今読んでてラッキーだった。
病院の待合室で、まさにその事件がニュース番組で取り上げられているのを横目に見ながら -
Posted by ブクログ
信じたい、けれど信じ切ることができない。
愛子も洋平も、優馬も、北見も。
はがゆさに、読んでいて息苦しくなる。
辰哉は信じたいと願った相手から、裏切られた。
それが「怒り」なのか。
騙された、裏切られた、そうやって誰かのせいにしている人間を、「怒り」は捕える。
洋平は言った。
「でもな、田代、ああいう奴らにつけこまれるのは、自分に自信がない人間だからなんだよ。それを知っててああいう奴らはつけこんでくるんだよ。」
『ああいう奴ら』を「怒り」に置き換えて読むことができる。
誰かを信じることと、自分を信じること。
誰かを信じられないということは、信じたいと願う自分自身を裏切ってしまうことだ。
-
Posted by ブクログ
「国宝」の著者の他作品を読みたくて適当に購入。
芥川賞受賞作とおびにあったから吉田修一氏の初期の作品なのかな。
構成が匠というか、奇をてらったというか、不思議な構成。
いえ、読み手の自分が慣れていないだけでしょう。
読後には構成が素晴らしいなと思った。章別に無造作に出てきた人々がそれなりに何らかの線で繋がっていた。いや、無造作と思わせるところに才能や苦心がつめられているのかも。ホントに無造作にこういう構成が出来るのならそれが才能なのかもしれないけれど。この小説は好きになれない。知ってる世界とあまりにも遠くて「そうなんだ」としか感想が書けない。
そして、なさけなくなる。みじめにさえも。