吉田修一のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ6月の梅雨のじめじめした雰囲気に何ともまあピッタリ!タイミング加点あり。
湖という、海や川のように流れていくわけでもなく、ただそこにずっとある変わらないその鬱々しさと美しさが、二つの湖と惹きつける人たちを繋げた物語。
老人介護施設、警察、記者、家族でてくるどのコミュニティもなんだか湖と同じ、陰気臭く波も全て飲み込一方で、包み込む受け入れる性質も持っていた。
そんな湖の中の物語で唯一飛び立つ鳥のように、湖から出ようともがいた、もしくは湖の魚を捕獲する鳥のように、そんな陰湿さを壊そうとしたのが野鳥が好きなあの子だったなと思ってしまう。
そしてこの小説自体も中盤までじめじめと何も起こっていないけど、なんだか惹きつけられる空気感があって、終盤のテンポいい展開でなにか変わりそうで何にも変わらないストーリーにになんだか終始ヤキモキして沸々として、欲求不満感が残った総じて6月にぴったりの小説だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ吉田修一を誰かに薦めるとしたら、私はこの本は選びません。もっと面白く、大好きな作品がたくさんありますので...。
なぜそうなった?や、結局なんだった?といった疑問がほとんど解決されないので、読後、あの話はなんだったんだろうというエピソードがいくつも残ります。
さらに、共感できる人物もいないので...なんか全員気味悪いなぁ、と感じてしまいました。
主人公2人の支配・被支配の描写や(それが途中で逆転しているように見えるところも)、旧満州での話など、引き込まれるところもありましたが、結局なんだった?と思う終わり方です。
「どうせ死ぬのだから、何をしてもいい」と人間を非道な実験に利用して虐殺していた人物が、老衰により弱者となったときに、逆に実験に利用され殺された...ということなのかな?
でも、権力者はいかに罪を重ねようとも、さらなる権力を手にしている。鍵になる宮森勲という人物について、もう少し描いて欲しかったです。
731部隊の話は、恥ずかしながらこの作品で初めて知りました。日本人が、これほど恐ろしい人体実験をしていたことや証拠を抹消するために全員を殺していたことなど、衝撃でした。
吉田修一さんは、日本のなかに昔からあった閉鎖性、同調圧力、保身のための隠蔽などを、湖の町を通して描いたのかもしれないな、と思いました。 -
Posted by ブクログ
好きな小説家を問われたら吉田修一を挙げる。巧みなストーリーテリングとそこはかとないフェミニンさ、繊細さをもった小説が書ける人だと思う。
さてエッセイはどうか……というと、小説ほどの巧みさはない。この本はANAの機内誌「翼の王国」に連載されているのをまとめたもの。そういえば、寡聞のせいもあるかもだけど、このシリーズ以外に吉田修一のエッセイって読んだことないから、やっぱりエッセイは苦手なのではなかろうか。
不特定多数が手に取る媒体だから、特に万人受けするサラッとしたものにしているのかもしれないけど、わりとチャラい。ちょっとセレブな空間に行ったとか、珍しい土地へ行ったとか、自慢っぽい筆致ではないけどわりと派手な世界に出入りしている様子がうかがえる。もっと硬派でいてほしいという自分の期待とはずれるからいまいち不満なのかも。